麗らかな春の日差しにもはやり影はあるようです(裏)
少しだけ幼い子に対してのセンシティブな表現が含まれています。
お気をつけてお読みください。
あっそうそうサンス王子の弟クスター王子視点です!
「兄様・・・」
兄様の特別な人しか入れない中庭で、他国の王族と親し気に会話をしていた。
そんな表情は以前は僕の前でしかしなかったじゃないか!
と大声で叫びたくなるのをグッと我慢しながら二人の逢瀬を睨みつけてからその場を立ち去った。
「せっかくあの女を閉じ込めたのに。次から次へと兄様を誘惑する。兄様はきっと今回も嫌々相手をしているのだと思う。前回と同じように」
僕は、いつもの癖で爪を噛みながら移動していた。そして人通りの多い廊下に移動すると、あの王女様の傍仕えがソワソワしながら誰かを探していた。まぁ~、思い当たる人は王女様しかいないけどね。
「ハルト?こんなところでどうしたの?」
僕はハルトを見つけて驚いている風を装うと、ハルトは慌てて駆け寄ってきた。
「クスター王子!」
時々こいつは僕と同じ立場かのような振る舞いで接してくる。王族と自分を同じと捉えているのだろうか?
「あのぉ~。うちの姫を見かけませんでしたか?」
僕に話しかけながらも周囲をキョロキョロと確認している。ちょっと失礼な奴だよな!
「う~ん。知らないかな?アンニーナ様は公務で誰かと会ってたりしないの?」
「それが、今日はお休みの日でして。少し城下町を見学にいこうかなという話をしていたんです」
いやいや、今僕の兄上とすっごい距離で話し合ってたけど?大丈夫?
そのことを伝えたいがそうすると兄様の居場所を教えなければならない。一介の使用人が入れるエリアではないからね。せめてアンニーナ様のように王族でないと・・・。
「残念ながら僕は知らないかな。でも、アンニーナ様のことだから約束の時間にはきちんと戻られるのではないのかい?」
僕は、僕と同じぐらいのハルトに目を合わせてニコリと笑った。
この笑顔をするとたいていの人は頬を染める。
「う~ん。そうですね。とりあえず部屋に戻って姫を待ってみます。すみません。ありがとうございます」
ハルトは僕の破壊力抜群の笑顔に興味を示さずにそのまま戻っていった。
「・・・おかしいな?」
僕は少しだけ魅了魔法を使うことができる。これは政治的にはとても便利で自分に有利になるように使ったりしている。もちろん時々、少しだけ・・・ね?
もちろん、効かない相手もいる。ある程度の高位貴族以上には僕のそれは効果がなかった。なかなか恥ずかしかったが自分の力も知っておきたかった為、何人かに試してみた。
僕がもっと幼かったころはその魔法を自分が使っていることを理解できず必要以上に他人にまとわりつかれて怖い思いをした事があった。
勘違いした低位貴族が僕の魅了魔法をまともに受けてしまい気があると思い込みどこかの部屋に連れ込もうとしたのだ。
幼い子供が大人に対して抵抗しても歯が立つわけもなくただただ恐怖に震えあがっていた。
「ぼっ僕もクスター王子の事をお慕いしていました」
その低位貴族が元々僕に気があるのは薄々感じていたがそのような行為を強引にするとは思わなかった。
そして、人は本当の恐怖を身に受けると体が動かないというのも身をもって知った。
そのままその貴族の顔が近づいてくる。僕はとギュッと目を瞑ると
「うわっ。」
体が急に軽くなり抱きしめられていた。
この香りは・・・。
「おにいさま・・・」
サンス兄様が相手を思いっ切り蹴飛ばしていた。
普段は温厚な兄様がここまで怒っているのを僕は見たことがなかった。
「貴様、相手が誰だが分かっての愚行なのだろうな」
地の底から這い出るような低音で相手に問いかける。
「サンス王子、こっこれは誤解なのです。お互い愛し合っての事!」
その貴族も負けじと言い返していた
「こんなに怯えている幼い子をみて貴様は合意とのたまうのか」
兄様の何かがキレる音がした。
その瞬間、僕は兄様の胸にギュッと抱きしめられお何も見えず聞こえない状況になった。
しばらくすると、わめいていた相手が静かになった。
「連れていけ。その者の家には追って沙汰を出すと伝えよ」
警備にそれを伝えると、何かが引きずられる音がした後、パタリとドアが閉まった。
「もう大丈夫だよ?怖かったね」
いつもの兄様の声に戻り僕は安心したのか
「サンス兄様・・・」
とだけささやくとそのまま意識を失ってしまった。
最後までお読みいただきありがとうございました。




