オリエンス国へのプロローグ
いっけな~い。遅刻、遅刻。
すみません。
「道中気をつけなさい」
「何か困った事や嫌な事があったらすぐに帰ってきなさいね。お母様が物理で解決してあげるから」
「おねぇ~さま。行かないでぇ~」
お父様を始め家族が声をかけてくれる。お母様、うん、それ止めてね。喧嘩になっちゃう。
ついに表敬訪問に向けて出立する日が来ました。
今回は公式の行事なので一応セレモニー的なものも催してもらいました。
王都に住む市民たちが私達を一目みようと広場に集まってくれています。
みんな~。ありがと~!ちゃんとケリをつけれくるからね~!
私は心の中で手を握りしめて血の涙を流しながら、でも表面ではにこやかに手を振り返した。
大げさじゃないからね。
『王都 オリエンス行き 特別列車 発車しま~す』
車内に流れるアナウンスを聞きながら、なんかいかにも私が乗車してますよ的な内容が少し恥ずかしい。
「あのアナウンス変更できないの?」
私は無駄だと思いながらもハンスに確認してみた。
「姫、この車両は普段12両編成なんです。でも、まるまる一両貸し切りになっているんですよ?不満に思う人がでてきます。それを解消する為ですのでどうかご配慮ください」
そうよね~。お父様なんか始めは車両全部を貸切ろうとしていたから慌てて止めたもんね。
皆の移動手段だし。かと言って馬車は時間がかかるし、車は維持費が大変そうだしね。
ん?転移魔法?それは、戦争するときぐらいしか王族は使わないよ?
だってびっくりするでしょ?急に自分の庭に知らない人が入ってきたら。
そこは、エチケットだよね。大人の配慮だよね。
もちろん、今回の人数ぐらいだったできちゃうからね?王族すごいでしょ?フフフ。
電車の移動速度も落ち着いてきたので私はハルトに『エヘん』とわざとらしく咳ばらいをすると、ハルトがこっちを見てきた。
「姫、どうかなされましたか?」
「実はね、今回の訪問の順番を書いてきたの。結局、機密事項もあるからハルトもあまり分かってないでしょ?」
「はい、そうですね。直近の移動場所を護衛のチーフから連絡をもらうぐらいですね。」
「まあ、ハルトは基本的に私と一緒に居る事になると思うから軽く頭に入れておいてよ」
といいながら私は一枚の紙を食事用の簡易テーブルに広げた。
あっ、そうそう。もちろん特別車両だから個室だけじゃなくて応接室みたいな場所もあるよ。
でもこの私の移動日程の内容は極秘扱いなのでちょうど私の部屋を整理してくれていたハルトを捕まえて力作を見せようと思ったの。
「まず始めに、オリエンス国のカエルラ城に行って、次にメリーディエース国のルベル城に行って次にオッキデンス国のアルバス城に行って、最後にこのセプテントリオ国のアーテル城に行くっと」
「どう?ちゃんとトレースせずに模写したのよ!すごいでしょ?」
私は自慢げにその紙をハルトに見えるように持ち上げた。
「姫・・・。」
「ん?何?何?」
ちょうど紙でハルトの表情が見えなかったので紙を下におろすと、呆れた表情でこちらを見ていた。
「昨日、姫、夜更かししましたよね?」
ギクッ。
「えー?んー?してないよ~。だって夜更かしはお肌の敵ですもの。オーホホホ」
「明日は早く起きるので早く寝てくださいってバレリアさんも言ってましたよね?」
あー確かに言ってたかも。
「今日はバレリアさんと二人で悩んでいたんですよ。お化粧ののりが悪いですねって」
「あ~あれ?そうかな~?今日も私を綺麗にしてくれてありがと~」
私は、この快適な車内で非常に嫌な汗をかいていた・・・。冷や汗というものかもしれない。
はぁ~。向かい側から溜息が聞こえてくる。
「とりあえず・・・。この紙を僕の事を考えて書いてくれたのはとても、とても嬉しいので頂きます。大丈夫です。他の人には見られないように厳重に保管しますから。」
「アッ、ハイ。ドウゾー」
私はその紙をまるめるとそのままハルトに渡した。
ハルトはキリっと表情を決めると
「それでは今からこれを大切に保管してきますので、一旦失礼します。ドアの外に護衛とバレリアさんが待機していますので何かあればお声かけください」
「は~い。分かりました~」
「それと、到着時間は明日の午前10時となっております。到着後駅でオリエンス国から迎えがきますのでそれに乗って王城まで向かいます。細かい日程はまた明日お話ししますのでよろしくおねがいしますね」
「は~い」
ハルトは連絡事項を伝えると部屋から出ていった。
私は一度伸びをしたあと、車窓を眺めた。
「ウェールの王子ってどんな人なのかなぁ~。怖い人じゃないといいのにな~。」
私は、この訪問が無事に終わるように祈りながら再び車窓を眺めた。




