階層950・ミリンの思い
「なあミリン?なんで優しかったギソがこんなことしてたんだ?」
まぁ大体見当はついてる。ミリンの魔法で狂っちまったんだ。
となると魔法をどうにかしないといけねえな。
「私の魔法です…またお父さんに怒られてギソ君所に逃げたんです。」
村長って結構スパルタなのか?いやいや、関係ないことは考えんな!この魔法の正体を暴くんだ。
「私は慰めてもらうつもりでした。でも…
『お父さんは嫌いかい?』
『あんなのお父さんじゃないよ。いっつも私を怒るんだ!もううんざりだよ』
この時私16歳だったっけ?思春期真っ只中だったんです。」
ミリン静かそうなのにな~。思春期なんかあったんだ。
生き物ってやっぱ不思議だな~。
「このころの私は本当にお父さんのことが嫌いだったんです。
『私、いつも思うんだ、お父さんいなくなればいいのにって。』
『ミリン。』
ギソ君…急に真剣な顔をして私に話してきたんです。
『お父さんがいなくなればもっと君の笑顔が見れるのかい?』
私は頷きました。ホント、バカですよね。」
ミリンの魔法は精神に語り掛ける系の魔法か?
いや、少し違うかな…
「このあと、私とギソは村に行きました。
『ミリン、これを持って。』
ギソに渡されたのはナイフでした。鋭く光を反射し、私に希望をくれました。」
何かわかった気がする。ミリンの魔法は”望む未来”だ。
勝手に自分の望んだ世界へと変わってゆく。
あの時、ミリンはギソにお父さんを殺してもらうことを願った。
そしてギソはその通りに動いた。最もミリンに都合の良いように。
「私はそのナイフでお父さんを殺そうとしました。でも…
『うぐ、うう。』
私じゃ殺せなかった。そしてギソにもお父さんを殺してほしくなかった。
私は家を飛び出し、村の中心に立っているギソに抱き着いた。
ギソはまるで私の気持ちが見えているように振舞ってくれました。
私を攫ってくれたんです。お父さんから私を救ってくれた!」
この魔法、やばいな…
魔法にかかった生き物は皆、ミリンに干渉される。本人の気が付かぬうちに。
俺も、魔法に操られているのかもしれない。怒りが湧いてきている。
さっきまでは何も感じなかった。ミリン…今君は何を考えているんだ。
ミリンは静かに微笑み、その白い肌を、美しい瞳を俺に見せた。
「俺は今、君を殺したい気分なんだ。」
「うん…」
死にたいのか…ギソを悪役に仕立て上げ、人生を壊した自分を。最愛の人を殺した自分を。
そして今、新たな被害者を出さないために自分を殺そうとしている。映画の主役みたいな人生してるな。
全ては台本通りってか?どうしような…どうしたら魔法は止まる?ミリンは死ななくて済む?
「ミリン、自殺しようなんて考えんじゃねえぞ。」