階層949・ピヨッシー 死す
「子分。殺した。お前。」
聞きずれえ喋り方だな。
「あぁ、すまなかったな。」
全部お前らが悪いんだろうが!!
俺は剣に纏った炎を消し、剣技だけでこいつを倒す。
だけど…こいつの肌固すぎんだよ!!なんで片手で斬撃受け止めてんだよ!!
「すぅ~~~、ふぅ~~~」
息を整え、剣を構える。
さっきまでの大雑把な切り方ではなく、繊細に、力強く、敵の弱点を切る。
ギソの弱点はどこだ。
・・・悪魔、そうだ!悪魔が彫られている胸を攻撃してみよう。
「子分。仇。取る。」
ギソは右腕を振り上げ、その巨体を存分に見せつけてきた。
存在感やべぇ~。こいつの姿を見ていると時が止まったかのように周りが遅くなる。
「お前。死ね。」
きた。こいつはその巨体のせいで動きが鈍い。
ガランドーーーン!!!!
うぇ!?
ギソの攻撃が鉄の扉に当たり、吹き飛んで行った。
「キャアァーーー!?」
やべぇ、娘さんが。
「ピヨッシー、娘さんの所へ行ってくれ!俺は何とかしてこいつを外に出す!!」
「ピヨッ!!」
へへ、小さな見た目してるくせになんであんな頼もしいんだろう?
ピヨッシーの飛ぶ姿を見ていると上から拳が降り注いだ。
「鋼の鎧。鋼拳。」
ひや!?
バランシャン!!!!
チッ!!わかったぞ。こいつの肌が異様に硬い理由が。魔法で体を鋼に変化させているんだ。
だけどわかったところでだな…いや、鋼になるときは見ている限り攻撃をするときと受ける時だけ。
奇襲だ!!あいつの気づかない間にぶった切ればいいんだ!!
「ついて来いよ、錆青鋼。」
娘さんが閉じ込めている部屋に走り込んだ。
そこにはピヨッシーと若い獣人がいた。
「君が村長の娘さん?」
若いっつっても俺よりは年上っぽいけどな。
その姿は村長さんには悪いが、本当に村長さんの娘なのか疑うほど白く、美しい。
雪を駆ける白い狐のような護ってあげたいと、無意識に思ってしまうような愛くるしさがある。
俺は、後ろを警戒しながらも娘さんに近づく…
「来ないで!!」
娘さんはどんどん後ずさり、俺から離れていく。
俺はこの景色に違和感を覚えた。何かが足りない。
「おい狐!!」
娘さんを狐呼ばわりしてしまった。だが今そんなの気にしている場合じゃない!!
「小鳥を見なかったか!赤くて、俺の拳ぐらいの大きさの!!」
俺は拳を向けて指差した。
俺がピヨッシーのことを話すと、娘さんは静かに床を指差した。
そこには赤黒く染まり、床に倒れ込んでいるピヨッシーの姿があった。
「鋼の鎧。」
「誰だよ…こんなことしたやつぁ!!」
俺は取り乱し、錯乱した。周りが見えなくなり、次第に熱くなっていった。
「鋼拳。」
バガドーーーン!!!バガン!!!
俺は右腕を横から殴られ、壁に激突した。
あーー。死ぬわこれ。右腕完全に折れたわ。さっきまでとは違い、次第に冷たくなっていく。
目の前には拳を握ったギソ。その後ろには泣き崩れている狐。
剣はもう持てない。俺は右利きだ。それに、剣がどこにあるかもわからない。
「子分。謝れ。」
謝れだと?嫌だね。俺は甘やかされて生きてきた末っ子だぜ?そんな奴に謝る能力なんてない。
俺は目をそらし右下を向いた。そして動かせる左手を銃の形に変え、撃った。
「パン」
グシャァ・・・・・・・バガン!!!!!
ギソの悪魔が彫られている胸が一瞬グシャっと縮まり、破裂した。
胸には穴が開き、血の滝が出来上がった。
「よくやった。ピヨッシー。」
ギソの肩に白く、黄金に輝くピヨッシーが着地した。
まだまだ小さいけどさっきよりは格段にデカくなっている。
でも一つ気になることがある。
「ゲンゾーやったぞ!!僕がギソを倒したんだー!!」
なんで喋れてんの…