捜索隊・決心
「ミリン、ピヨッシー、起きて。」
「んにゃ」
「グースピー…」
「あ、おはよう…ございます、サイエンさん…こんなに朝早くからどうしたんですか?」
憂鬱な朝だな。なんか、なんもしたくない。
別に私はゲンゾーと婚約してたわけじゃないし、でもなんか、裏切られ気分だよ。
「今日はミリンの任命式だよ。」
「にんめいしき?」
「そう。ミリン、行く場所無いでしょ?それに、お金がないとこの世界は生きていけないよ。」
お金なんかいらないよ。
「だから昨日、私の上司に連絡してみたんだ。そしたら、新しい捜索隊に入れてやってもいいって。」
「捜索隊?なんの?」
「他の人に言わない方がよかったかもだけどさ、上司にこの世界のことを話してみたの。この世界は塔の中にある世界だって。そしたらさ、上の階や下の階に繋がる道がこの世界に見つかるんじゃないかって。」
道…
「やりたくない。」
私は布団に包まった。
今は何もする気が起きない。でも、やる気が起きないからって何もやらないのはだめだよね。
でもさ、やっぱり、何もやりたくないよ。
「…そっか…わかったよミリン。勝手に話し進めちゃってごめんね。でもさ、入りたくなったらいつでも私に言ってね。」
そう言ってサイエンは静かに部屋のドアを開けた。
「ちゃんと、ごはん食べるんだよ。」
…素直にサイエンの話を聞くことができない…
私の魔法が…サイエンを操っているのかもしれない。そう思うと、私は一人で芝居をしている気分になってくる。全員、私に操られている人形。そうにしか見えなくなってくる。
…そうだ、いいこと思いついた。私の魔法をゲンゾーに掛ければいいんだ。そうすれば、また話せる。ずっと私が魔法を掛けて、前のようなゲンゾーに戻せばいい。そうすれば…
「入らなくてよかったの?」
え
「僕は入りたかったヨ!」
そうだ、ピヨッシーには私の魔法が効かないんだ。
私の唯一の敵、私がゲンゾーに魔法を掛けても、ピヨッシーがいたら魔法が解かれてしまうかもしれない。そしたら、もう一生、ゲンゾーとは面と向かって話せない。
私の手はぴくつきながら、ピヨッシーの体に触れた。
「でもできない…」
私は優しくピヨッシーを持ち上げ、胸に抱いた。
「殺せない…ピヨッシーは私の…」
「お腹空いたヨみりん。ご飯食べ行こうヨ。」
最後まで言わせてよ…
「うん、行こっか!サイエンの所に!!」
私は力強くガッツポーズを決めた。
「え!?ご飯は!?」
「ご飯はサイエンと話した後!少しぐらい我慢してよピヨッシー!」
「えぇ~」
私はピヨッシーを抱いて、スキップをしながら部屋を出た。