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新たなる世界

あれ?

なんで意識があるんだ?俺は死んだんじゃないのか?

…何も見えない真っ暗だ。てか目開いてるのか?

分からない。もしかしてこれ…植物人間ってやつか?

いや、違う…少しだけど体が動かせてる…気がする。


いい機会だ。今までの反省会をしようじゃないか。


俺の名前は木本源蔵。夢は科学者。おふくろの名前は…


何時間経っただろうか…いや、何日たった?もう同じことを何回も反省しているぞ。

…気が狂いそうだ。何か、他のことを考えよう!うん。そうしよう。


ここは一体どこなのか。

病院のベッドの上か?あ!!もしかして本当に臓器売られて今俺人間の一部として動いてるってことか?


…何考えてんだよ…俺。ここはきっと死後の世界だ。死んだ人間は皆こうなるんだよ。


「私の・わいい・・ちゃん。」


なんだ?誰の声だ?


「ゆっく・・きく・・・だよ。まっ・・・・ね」


聞き覚えのない、誰かの声…

途中、よく聞こえない。でも、まるで母親のような声で俺を安心させてくれる。


「・・たの・前・ゲン・・だ・」


俺は心地よい声と共に眠りについた。





…俺は、何時間寝てたんだ?

お?お!おーー!!体がさっきよりも動かせるようになっているぞ!!

まさかこれ、本当に俺、まだ生きているんじゃないのか!?

やっぱり俺、植物人間になってたのか…後ちょっとだ!後ちょっとで、おふくろと親父に謝れる!!




「おぎゃあ…!」


なんだ!?眩しい…目が…目ぇ~閉じてるのに!?明るすぎんだろ…


「んぎゃーーー!おぎゃっ!ぎゃっ!ぎゃああああああ!」


それにこんなに泣いてんのは誰だよ。ってお、目が慣れてきたぞ!!もうそろ目開けれるかも!


俺が目を開けた先にあったのは涙を流している若い女。

そして、この女に抱かれている俺…泣いていたのは俺だった。


「ゲンゾー。」


ゲンゾー?俺のことか?


「産まれてきてくれて、ありがとう。」




この人は、俺の新しい母、ミコト・ジャランヌ。世界有数の大富豪だ。

そして俺は大富豪の息子ってわけだ。

そして、俺には一人っ子ではなく姉がいる。姉の名前はキツネビ・ジャランヌ。俺より三歳上だ。

…父はいないらしい。俺が生まれる一月ほど前にドラゴンに殺されたようだ。


まぁ、大富豪って時点で俺の人生は勝ち確だな!!


と五歳ごろまでは思っていた。


「ゲンゾー!!」


今は絶賛修行中だ。どうやらこの世界は剣と魔法が支配しているらしい。

母は魔法使いらしい。黒い髪に細い腕、そして…悪魔のような瞳。この瞳のせいで俺は体が竦みあがる。

姉のキツネビや俺の瞳はいたって普通だ。家族で母だけがこの恐ろしい瞳をしている。


「ねぇゲンゾー。二人で森に冒険しに行かない?ママにばれないようにさ。」


こいつは俺の姉であり、生粋のガキ、キツネビだ。

女の癖して悪戯ばっかしている。俺を巻きこんでな。何もやっていない俺も一緒に怒られる。最悪な姉だ

だが、見た目は結構いい。今は俺八歳だから…キツネビは十一歳か?十一歳にして美しい顔立ち、母譲りの綺麗な黒髪、そして、天性の才を持っている。母以上の魔法の使い手だ。魔法だけでなく、剣術さえもキツネビの右に出るものはそういない。


そして俺は黒髪のくせ毛。朝起きたときは地獄を見る。

俺は別にこのままでもいいのだが、召使が色々としつこい。本当にこの髪は大っ嫌いだ!!

だけど、それ以外は結構いいんだぜ!顔も体も才能も。キツネビよりは才能無いけど。あの人がおかしいだけだ。




俺は十三歳になった。ここで俺は一つ気づいたことがある…

歳を重ねるにつれて前世の記憶が思い出せなくなってきている。もしかすると大人になるころには一切記憶が無くなっいるかもしれない。そうなると非常に良い!!!あんな記憶ないほうが新たな人生楽しめるってもんだ!!!




「キツ姉ちゃん。」


「どうしたゲンゾーよ。」


「俺、なんか忘れてる気がすんだよね…」


「何をー?」


「わかんねー。でも…すげえ大事なことだった気がする。」


俺は何かを忘れてしまった。俺を構成するうえで一番大事な何か。


「…ゲンゾー。忘れたものを追いかけるのは無意味だ。」


キツ姉ちゃんは明日、この家を出る。今日が話せる最後の日だ。


「日々、新しいことを知る。ただそれだけでいい。」


…そうだな。これから新しい俺を作ればいい。でも…


ドゴォォォォォォォォンッ!!!!!!!


なんだ!?なんの音だ!?


「ゲンゾー!!ここで待ってて、私が見てくるから!」


「チョッ待ってよキツ姉ちゃん!!」


俺はキツ姉ちゃんの後を追いかけて館の外に出た。


「何だよ…これ…」


館はものすごくでかい。そこら辺の島よりもはるかにでかい。

そのぐらいでかいんだ…

俺は何回も目を擦った。信じられない…

館には…俺らの家には、謎の巨大な塔が館の半分以上を崩壊させていた。

謎の塔は館を貫通し、地面に突き刺さっていた。そしてこの瞬間も、塔は少しずつ地面により深く埋まってゆく。


「ママは…」


え?


「ママはどこ…」


塔は一番てっぺんの階層以外はすべて埋まった。

白く、神々しい。だが、何とも言えない恐ろしさが塔を支配していた。


「姉ちゃん…」


キツ姉ちゃんは…


「俺が母さんを探しに行くよ。必ず見つけるからさ、安心して待ってろよな!」


俺はそう言って謎の塔に向かった。




「母さーん!!返事してくれよー!!」


返事がない。塔の周りにはいないのか?

いや、居るはずだ。塔が突き刺さったのは母さんの部屋の近くだ。


ん?俺は目を見開いた。

誰だ、あいつ。


塔の目の前には耳が尖った金髪の女が胸の前で両手を合わせている。

こいつは…エルフか!!


間違いない。こいつはエルフ。本で見た特徴と一致している。

でもなぜだ?なぜエルフがこんなところにいる?エルフの住む森はこことは真逆の場所にあるはずだ…


「おい!そこのエルフ。なぜこんなところにいる?」


エルフは両手を下し、塔の壁に手を触れた。


「オマガ クオリ ラバク」


呪文?


「何をする気だ!答えろ!!」


エルフは呪文に長けた種族だ。呪文を唱えることで魔法を変化させたり、強化することができる。そして解除も。


「イカス リンチ」


その瞬間、塔には文様が浮かび上がり、入り口が開いた。

禍々しくも引き寄せられる。この感覚。

エルフは吸い込まれるように塔に入っていった。

俺も後を追い、塔に…


「ゲンゾー!待って!!」


キツネビ…


「母さんは俺が助けるよ!」


母さんを助ける?違うな。俺は気になるんだ。この塔は何なのか。あのエルフは、何者なのか。

…きっと、母さんは生きていない。なら、母さんの仇として、この塔を攻略する。


俺は変わった。過去を追いかけるのではなく。未来を追いかけるようになった。

一本の剣を持ち、少しの食料をカバンに詰めた。


俺の人生、全てこの塔に懸ける。


俺の体は自然に塔の中に吸い込まれていった。

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