階層900・SとM
「私はただ、あなたとこの世界を巡りたいだけです!戦う気はありません!」
「世界って、この階層の世界のことか?」
俺は炎の斬撃をユウグレに向かって飛ばした。
「それが聞く人の態度ですか!」
「相手が相手だからな。炎の雨!」
空を紅く染め、重力に任せ落ちる炎は、良くも悪くも周りの黒いローブの人達をも巻き込んだ。
「綺麗な雨ですね。少し、熱くなってきました。」
そのまま塵になっちまえ。
「服、脱いでもいいですか?熱くて熱くて…」
何だこいつ…舐めてんのか?炎が空から降ってきてんだぞ?まあ服着ててもあんま関係ないかもだけど。
それでも敵の前で堂々と隙を作るなんて。…まあいいさ。
「お前の焼死した遺体はそこら辺の地面に埋めといてやるよ。」
「本当ですか!それなら心配いりませんね!堂々と服が脱げます!」
チッ舐めやがって。
俺は服を脱いだあいつの目の前に飛び、怒りを最大限詰め込んだ。
「正義の鉄槌!!…ありゃ。」
「そんな大振りの攻撃は当たらないよ!ってありゃ?」
あ。
「ぶ…私のブラが…」
なかなかいい体してんじゃねえか。ほんと、その性格と、ムカつく目ん玉が無ければ最高だったのにな。
「ちょっと!これじゃあ捕まっちゃいます!炎の雨止めてください!服燃えちゃう!」
「死ね。」
青い上空に、一つの巨大な塊が浮かんだ。その色は赤黒く、太陽のように辺り一面を照らした。
「世界を照らす光」
「え、ま…まってよゲンゾー!私、死んじゃいます!私、ただあなたとお話がしたかっただけなんです!」
「話す。人と人が意思を通ずるための一番簡単で理想的なこと。それが、”話す”だ。」
「うん。そうだね。私も同じ考えだよ。だからさ、魔法を解いて、ね?」
「魔法?なぜこれが魔法だと分かる?」
「わ、私も魔法が使えるから…なんでも話す!なんでも言うこと聞くから!その魔法…解いてください…」
こいつ…弱い?
「お前、なに言ってんだよ…。」
「ほ、本当に何でもする!裸で街だって歩くし、自分で自分の首絞めたりもする!お腹をぐりぐりしたり、喉に手を突っ込んだりもします!だ、だから何でもします!許してぇ。」
こいつ…ただの変態か?こいつのさっきまでの言動と今の言動が全然違う。
何を考えてんだ?
「一つ聞く。お前の本当の名前は?」
おどおどしながら話した。
「わ、私の名前は…」
それにあの眼だ。さっきまでとは違い、別人のような眼だ。
「ヨアケ・アサヒです!名前言いました!許してください殺さないでください!」
もう訳分かんねえよ。
俺は魔法を解いた。