階層900・サボリ魔
「朱雀、なんか言うことあるか?ないよな?」
「あ、ありません。」
「なんでまた実験放り出して外ほっつき歩いたんだ?」
「え…えと~。ひ、飛行機に、私の尖兎剋雲号に乗りたくて…あ、あははは…」
「・・・給料引いとくからな。」
サイエンは暗い顔をして部屋から出てきた。
「見苦しい姿を…あ、あは。」
「仕事さぼるのはダメだろ。」
「うんうん。僕もそう思うよ!」
「実験は好きなんだけど…実験より尖兎剋雲号の方が好きなんだよね。」
「せんとこくうんごう?あの飛行機のことですか?」
サイエンさんは私の目をまっすぐと見つめ始めた。
「そう!あの飛行機の名前は《せんとこくうんごう》!!私の処女作であり、未来永劫に最高傑作!!」
「サイエンって何歳なの?」
「ピヨッシー。レディーに年を聞くのは…」
「19歳です。誕生日は5月2日。世界最年少の科学者です。」
科学者…
「なんか…凄そうだな!科学者って何をやるんだ?」
「う~ん。簡単に言うと、”魔法”を実現することですね。」
魔法?
「魔法ならできるぞ。」
「え?嘘つかないでください。」
「本当だけど?」
「じゃあやってみてくださいよ!」
「うん。」
俺の右手から小さな炎を噴射した。
オレンジ色の光が部屋を包み、不思議な雰囲気が漂った。
「これが魔法だ。お前らはできないのか?」
ん?何やら様子がおかしいぞ?
「本当に…魔法?」
「魔法だぞ。」
「何も手に付けたりしてない?」
「付けてないけ…」
「義手だったりしないよね?」
ムニムニ
「あ、本物だ。」
「これで信じてくれたか?」
「・・・分かりました。信じます。信じるから…」
やばい?なんか嫌な予感がする。なんか心臓がバクバクうるせえし…
「私にも魔法、教えてください!!」
嫌な予感は当たらなかった。だけど、まだ心臓は静かにならない。まるで何かに怯えているかのように…
「私、魔法を使えるようになったら…」
ババババババババ!!ドンッ!!!!!!
「何が!?くっ!?」
ドゴゴゴゴーーーーン!!!!
床がガタガタ揺れてまともに立てねえ。
何が起こってんだよ。
プゥゥゥゥ!!!ゥゥゥゥ~~!!!!
「お前ら大丈夫か!」
「私とピヨッシーは大丈夫!!」
「みんな!急いで私についてきて!!・・・急いで!!。」
バコーーーーン!!!!
「な、まじかよ。」
さっきまで俺らがいた場所に、大きな穴が開き、穴の周りはドロドロに溶けている。
タッタッタッ…
「みんな止まって!」
「サイエンさんどうしたんですか!」
「…もう中に入り込まれている。」
「入り込まれているって何が?」
「敵兵…ちょっと話したよね、空中庭園建設に反対している組織のこと。」
「うん。」
「その組織の名前は心理平和協会。平和を謳っている癖に、無駄な戦いを起こすバカ共だ…」
「つまり敵ってことか?」
「…うん。」
「そっか。」
敵なら別に倒してもいっかな。
俺は剣を右手で掴んだ。
右腕はもう動かしても痛くはないぐらいには治った。これならいける。
「炎の剣。」
「ゲンゾー!まだ右腕完治してないんだよ!!」
「大丈夫だって!俺に任せろ!!あ、それと、サイエン、尖兎剋雲号?のとこに行くんだろ?」
「なんで分かったの?」
「勘。まあ後で俺を迎えに来てくれよ。そんじゃな。お前ら気をつけろよ!」
「いたぞ!!」
「な、なんだ!?あの剣、炎を纏っている!!」
「そんなのどうでもいい!早く撃て!!」
ババババンッ
「うわっ!?何それ!?」
な、なんだよこれ…ものすごい速さで飛んできた!当たったらひとたまりもないぞ!!
「止めるな!撃てぇ~!!!!」
だけど、真っ直ぐにしか飛ばないみたいだな。あいつらが持っている武器の先端。あの穴から真っ直ぐ石が飛んでくる。真っ直ぐなら、避けられる。それに…
「炸裂散弾!!」
魔法も使えない奴なんかに俺は負けない。