階層900・空中庭園
「ゲンゾー!ゲンゾー!!」
「起きろゲンゾー!」
ヒュイット
「ひゃ!!急に…起きた…」
「やっと起きたのか。おせーぞゲンゾー。僕はもうずっと起きてるんだぞ!!」
「いや、ここは、どこ?」
辺り一面見ず知らずの場所。草が生え、草原かと思い後ろを見ると、そこには巨大な窓があり、その窓の向こう側は、青白い無限の空が広がっている。
「ここは空中庭園だ。」
空中庭園?ん?
「てかお前誰?」
「私か?私はサイエン・朱雀。よろしく。」
「いやよろしくって…」
なんなんだこの女…俺の嫌いなタイプだ。まず見た目。なんだよその男みたいな恰好は…女なら女らしい服を着ろ!!それとその目。すげえ隈できてんじゃん。大丈夫か?少しでもびっくりさせたらポックリ逝っちゃいそうな感じだな。
「急に君達が空から降ってきてびっくりしたよ。よく無事でいられたね。普通なら死んでてもおかしくないよ?」
その目の隈、よく起きていられるね。普通なら気絶しててもおかしくないよ?って、何考えてんだよ俺。
俺っぽくないな?また魔法に掛かってんのかな?でも…なんか違うんだよな~。これは魔法じゃない気がする。ま、俺も変わったってことだな。
「…サイエンさん。あの鳥のような空を飛ぶあの…あれ、そうあれって何なんですか?」
そう言って窓の外に映る空飛ぶものを指で指した。
「君、飛行機知らないの?」
俺は小さく頭を縦に振った。
「もしかして…君も?」
ミリンも小さく頭を縦に振った。
「そんな人なんているんだ…」
「飛行機なんて初めて聞きました。それと、空中庭園って何ですか?」
「あ!分かったぞ!!君達もしかして…」
「ん?」
「ん?」
「僕には聞かないの?」
「発展途上国から来たんだね!!ようこそ!科学の国、エルダンへ!!」
はってんとじょうこく?なにそれ?
「この国エルダンは、世界有数の先進国。世界の最先端を行く大国だよ!」
大国…エルダン…そんな国聞いたことが無い。薄々気付いてたけど…塔の中の世界は完全に元の世界とは別なんだな。
「うん。わかった。んで俺の質問に答えてくれよ。」
「え?質問?」
聞いてなかったのかよ…
「空中庭園ってのは何なんだ?」
「知りたい?」
俺は縦に大きく頭を振った。
「教えてあげる。空中庭園ってのは、この国エルダンの新たな都になる場所だよ。」
「なる場所って、まだ作り終わってないの?」
「よくわかったね。まだこの都は完成してない。本当なら、半年前には完成しているはずだったの。」
随分と延期しているんだな。
「延期の理由とかはなんかあんのか?」
「延期の理由?ちょっとね、新しく都を作るのに反対している組織があってね。その組織に軍事的にも政治的にもじゃまされているの。」
「軍事的にもって…もしかして戦いとかも起きたりしてるんですか!!」
ミリンの言う通り人が死ぬ戦いも怒っているかもしれないな…
「・・・はい。そのせいでこの場所。空中庭園が今、放棄されるかもしれないの。」
空中庭園・・・空中・・・え?
「もしかしてこの場所…飛んでたりする?」
「え…何言ってるのゲンゾー!そんなわけないでしょ!」
「そうだぞゲンゾー!そんなことありえない!!」
「飛んでますけど。」
今日初めて二人と一匹が同時に同じことを思った。
「え?どゆこと?」
サイエンは少し考えるようなしぐさを見せた。
「ここ、空中庭園は、大きな重力操作装置で浮かんでいるの。あそこに窓みたいな物があるでしょ?あれが重力操作装置の一部。向こう側にもあるよ。」
なんかすげえでかいんだな。
「そして、この地面の下。私達が立っている地面の中に大元の重力操作装置が埋められている。」
「なんで埋められてるの?」
「邪魔だから。」
ドドドドドドッ…
なんだろこの音?
「あ、怒られちゃう…みんな、早く!」
「早くって何を!」
「私の飛行機に早く乗って!」
「あそこに置いてあるのも飛行機?なんですか?」
サイエンはミリンの方を向き、目を光らせて話した。
「そうなんだよッ!!この飛行機は他の物とは違うの!!私が一から作って完成させたエルタンの科学の結晶!!今から私以外の人が乗るなんて思ったら…もー!!ワクワクして止まんないよッ!!」
「ははは…凄いね…」
「ほら!早く乗って乗って!!」
世界は広いな。