階層950、949→900・新たなる世界
俺は夜中に起きた。
まだ辺りは暗く、目を光らしているフクロウが見える。
前に村を燃やしちまったから皆外で寝ている。これじゃやるもんもやれねえな。
少し離れ、ギソの基地が見える丘に来た。
あそこに、さらなる階層への道がある。俺は正直迷っている。このまま旅を続けていいのか。旅を続けたとして、無事に帰ってこれるのか。いや、きっと帰ってこられる。そんなに嫌な想像してても意味がない。
「俺は天に誓う。必ず無事に旅を終わらす。そして…」
「何してるの?」
「ミリン…」
なんか恥ずかしいな。
「なんでこんな時間に起きてるんだ~ミリン。」
「え?なんでって…もう朝だよ。」
あ。少々想像が長引いてしまったようだ。
「エルフ探し、頑張ろうね!」
「あーいや、もう大丈夫だ。」
「え?どうして?」
「エルフを見つけなくても旅が続けられるってことだ。」
「どういうこと?エルフを見つけるのが旅なんじゃないの?」
「知らん!!」
俺は強制的に話を切った。
でも確かに…なんで俺は旅なんかし始めたんだ?いや、これは旅か?もとはといえば、母さんを助けるって言って塔に入って行ったんだよな、俺。いや、これも違う。俺は…何しに来たんだ…
「エルフを探さないんなら、どこに行くの?」
…まあいいか。考えてもきっとわからん。過去のことはいいんだ。
「ギソ基地に戻る。」
「何か忘れものでもしたの?」
「違うわい!!ギソ基地が新しい旅の出発点なんだよ!!」
「出発点…なんだかワクワクしてくるね!!私、ちゃんと頑張るから!!置いて行かないで下さいね!ゲンゾーさん。」
「…俺さ、ずっと昔からさん付け嫌いなんだよね。ほらさ、なんかキモイじゃん?」
「わかりました…ゲンゾー!ちゃんと私を護ってね!!」
はぁ。
「ピヨッシーに護ってもらえよ。」
「照れてるでしょ。」
ミリンってこんな女だったっけ?悪女のような眼差しで俺を見てくる。
別に照れてるとかめんどくさいじゃなくて、ピヨッシーしかお前は護れないだけだ。
そして、村の人々に見送られながらギソ基地に向かった。
向かっている途中、色々な発見があった。
①ミリンは脅かすと態度が小さくなる。何回か用を足した後、バレない様に後ろに回って脅かしたりしていた。その結果、ミリンは出会ったばかりのような態度に急変した。ま、これが仲を深めるってことだな。
②ピヨッシーの舌は死んでいる。何回かピヨッシーに、そこら辺んの雑草を、山菜だと言って食わせた。その結果、ピヨッシーは気づきもせず、美味い!!なんてほざきやがった。俺は腹いっぱいになるように、雑草の根に着いた土を落とさずにピヨッシーに食わせた。ま、これがお互いを知るってことだ。
③俺は弱い。ミリンとピヨッシーにボコられた。以上。
「着いたな。ギソ基地。」
「なんだか懐かしい気分になってくるよ。」
「僕も僕も~。」
五分後…
俺らは今、空を飛んでいる。どういうことか。それは…
「これが階層900に繋がる道か~。」
「これ、俺の目がおかしいわけじゃないよな?なぁミリン、俺の目がおかしいだけだろ?」
「たぶん…私も同じの見えてる。」
「二人とも何言ってるの?これただの穴じゃん。」
そう。そこには大きな穴が開いていた。俺はいったん帰り、下に行く作戦を考えようとした瞬間…
「キャアァ!」
「え、ちょま…」
ミリンが躓いた。俺を巻き込んで。
「二人とも待ってよ~。やっふぉーい!!」
とまぁこういうことだ。
また前みたいにピヨッシーが巨大化してくれるのならいいけど…今はそんなことできなそうだ。
「お腹痛い!!ゲンゾー!!ミリン!!助けて!!」
バサバサバサバサァ
服が靡き、人生二度目の音が聞こえた。
木のバケモンをぶっ倒して落ちたぶりだな。
「ゲンゾー、どうするの!」
ヒュゥゥゥゥゥーーーー
なんだ…この音。
あ、あれは…え?マジであれ何?鳥?違う!早すぎるし、デカすぎる!!それに…羽が動いてない!!
いや、え、なんかこっち近づいてくる!?やばいやばいやばい!!
「ミリン!ピヨッシー!!俺の手に掴まれ!!」
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーー
ドスッ!!!!!!
そして俺らは、謎の空を飛ぶものにぶつかり、その上に乗っかれた。
一話から読み返したらちょっと説明不足感があって、ちょっと付け足しさせてもらいます。ゲンゾーは16歳です。