階層950・神の審判
な…
俺とピヨッシーはドラゴンのいた場所に戻っていた。
そこには、噛まれたような跡が残っている赤いドラゴンの死体。
そして、何もせず、ただ唖然と立っているミリン。
「何があった。」
無駄だと思うけど、一応聞いてみた。
・・・やっぱり何も答えない。考えるしかないか…
なぜドラゴンは死に、ミリンが生きているのか。
考えなくても分かるか…ミリンは死ぬのが怖くなったんだ。だからドラゴンはミリンを襲わなかった。でもどうしてドラゴンは死んでいるんだ?わざわざ殺す理由は無いはずだ…
でもまあいい。死にたくないと思ってくれたなら。
「村に帰るか?それとも…」
「あの…ゲンゾーさん…私を、ミリンを…旅に同行させてください。」
「別にいいけど。…あ…また俺魔法に掛かってるのかもしれなーい。」
ま、それでもいいけど。
「だ…ダメですか…」
俺は頭の後ろで手を組んだ。
「ん、いいよ。ミリンを護れるのはピヨッシーだけだからな。」
「ゲンゾーさんじゃないんですか…」
「え!?なんで僕!?」
「俺は簡単に魔法に掛かっちまう。でもなんでかピヨッシーは魔法には掛かっていない様子だった。だからミリンは俺じゃなくてピヨッシーを頼れ。わかったか?」
ピヨッシーは意外と俺より強そうだしな。
「は、はい。」
「なんでも言ってね!僕が護るから!!」
ドラゴンの肉を剥ぎ取り、焚火に火をつけ、肉を焼く。
ドラゴンの肉を食うのは初めてだ。ドラゴンは並の人間じゃもちろん。熟練の魔法使いや剣士でも倒せない。もちろん俺も。
「ゲンゾーさん…右腕大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。痛い、剣持てない。戦えない。」
「ですよね…あの、これよかったら。」
そう言ってミリンは緑色のでかい葉っぱを俺の右腕に巻いてくれた。
「これは?」
「これはヘルスハーブです!食べたら美味しいし、ケガしたところに貼ると、ちょっと痛いけど治りが速くなるんです!。」
ちょっと痛い?
・・・俺は右腕に着いたハーブを眺めた。右腕は次第に熱くなり、ブルブル震えだした。
これ毒じゃないよな?本当に大丈夫なやつだよな?ミリンに聞こうと思った。けど…凄いニコニコで肉を焼いている。今までの彼女からは想像ができないほどの眩い笑顔。我慢するか…
ドラゴンの肉は美味しかった。今日はいい日だったな~。そう思ったのは束の間、夜、寝る時に腕の痛みが倍増した。寝れなかった。この瞬間、人生最悪な日に変わった。