第1話─勇者召喚─
アルディア王国神殿_____。
「さぁ、国を、そして世界を救う勇者を召喚するのだ。」
王国の神殿の中心。床に描かれた複雑な魔法陣、その周りを囲む数十人の魔術師。そしてその様子を見守る王や家臣たち。
魔法陣の周りの魔術師たちは、小声で呪文を唱えている。かれこれ数時間、彼らは唱え続けていた。
今、この世界は魔王率いる魔族たちに侵されようとしている。
そんな危機的状況を救う唯一の方法、それが──勇者召喚──なのだ。
世界が危機的状況に陥るとき、異世界から召喚された勇者は、強力な力を授かり、この世界を救うと言われている。
それは、この世界に何千年も前から伝わる伝説であり、今、まさにその伝説が動こうとしている。
そして、今──勇者が召喚されようとしている。
眩い光が魔法陣を包み込む。誰もが目を細め、顔を背ける。その光が鎮まると、中央に現れた人影。
勇者が──
「成功だ!!!」
光が収まり、ようやくその姿がはっきりと見える。
魔法陣の中心に立っていたのは──
「どこじゃここは!?美智子!無事か!?」
「落ち着いて、貴方。私はここにいるわ。」
心許ない白髪を頭に散らし、腰に手を当てて声を荒らげるおじいちゃんと、
おじいちゃんの肩に手を添え、白髪混じりのグレーの髪に、着物を着た腰の曲がったおばあちゃん
──であった。