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もつれそうになる足を窘めながら、私は息をきらして再び隣り町の本屋に駆け込んだ。
本屋になら私の知りたい情報があるだろうと単純に思って店内に入ってみたものの、
一体どのコーナーで真実が調べられるか分からず、私はしばらく不審者のように右往左往した。
結局さっきの雑誌が売っていた週刊誌コーナーで、
手当たり次第に雑誌を開いてみることにする。
どのくらい時間が過ぎただろう。
片っ端から目ぼしい雑誌を読み漁っていると、ふと1冊の特集に私の目は吸い寄せられた。
そこには私の生まれた町の写真とともに、「カルト教団」とやらの記事が嫌味なくらい詳しく載っていた。
下世話な内容に吐き気すら感じる。
けれどそれに耐えつつ読み進めるに従って動悸が激しくなり、身体がカッと熱くなった。
何ページも特集が組まれていてかなりのボリュームがあるその記事を、
私はご丁寧にも最後の1行まで一気に読み、静かに雑誌を閉じた。
あまりにも集中して読みすぎたせいか、目が乾いてヒリヒリする。
さっきまでの熱さは急速に冷え、心の中は異様なほど静まり返っていた。
力の入らない身体を引きずるように出口へ向かう。どこへでもいいから歩き出したかった。
店員の「ありがとうございましたー」と間延びした声が、ヤケに耳に障った。
“人類の終わりの兆し
もう戻れない環境破壊
未来を描けなくなった人間
意味を持たない生”
読んだ記事のフレーズが途切れ途切れになりながら、頭をぐるぐる回って離れない。
「・・・知らなかった、そんな事」
“子供を産む事はエゴ
終わりへと走る世界に残される子供達
いつか来る最後に向かうだけの…”
「人間がいなくなる…?」
私が通う学校では、つい先日将来の夢についての作文が宿題だったのに。
未来はないというのか。
“愛を教える反社会組織の教団の子供に教える偽りの夢と希望
法律を無視し、幼い子の一生を巻き添えにした身勝手な主張には嫌悪しか感じられない”
「私は・・・子供は・・・」
「生まれるべきじゃなかったんだ」
微笑む父と母。
あの笑顔は嘘ではないだろう。
けれど頭に浮かんだ父と母の笑顔はどこか狂気をはらんだ笑顔へと変貌した気がして、ギュっと目を閉じた。
重い足を引きずるようにトボトボと歩いた。
半ば無意識に、自分の家に向かって。
できればどこかへ逃げ出したい。
でも13歳の私にとって、反社会だろうが虚像の町だろうが、帰る場所はあの町しかなかったのだ。