表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わる、世界  作者: 美咲
第1章
4/64

そして待ちに待った発売当日。

私は町の入り口にそびえる門を乗り越え、こっそり外へ出てお小遣いで雑誌を買った。


この町には本屋がない。

その時は疑問に思う事もなかったが町を出て気付いた。

ここには「外」に触れるような本屋のような施設やテレビのようなツールはないのだ。

絵本や小説はいくつか家にあったし、いつ出版されたか分からないような古びたものだった。

おそらく両親が町に越す前に買ったものに違いない。

だから私は本屋やテレビというのは存在は知っているが、

うちのような一般家庭にはあまり関係ない、特別なものだと思っていた。


両親を驚かせようとワクワクしながら手の中のものを大切に抱え、一目散に町へ帰った。

雑誌に載ったと知ったら2人とも喜んでくれるだろうか?


早く読みたい。早く読みたい。

はやる気持ちは好奇心に勝てず、家まで我慢できなくなった私は、

門の内側まで戻ると、目の前にあった防波堤に腰かけ一心に雑誌をめくった。


その記事を見つけた時の衝撃は今でもハッキリ覚えている。


『カルト教団に潜入取材!何も知らない幼き犠牲者!』


そして私のインタビューが、少しだけ捻じ曲げられて載っていた。


(カルト教団?犠牲者?)


聞き慣れない単語を頭の中で繰り返すも、何の事だかさっぱり意味が分からない。

でも、とても禍々しい響きだと思った。

その後もその記事は、私の住む町の恐ろしさを淡々と、

でも人々の好奇心を煽るような印象的な言葉をあちこちに散りばめながら書き綴られていた。


私のいる幸せな世界と雑誌に載っている世界は同じものなのだろうか。

見出しの犠牲者という哀れまれた言葉から奇妙な違和感に襲われて、ぶるっと身震いする。


なにか、大人達は重大な事を隠している。それは直感だった。

その瞬間、私は弾かれたように立ち上がり、

握り締めすぎて皺がついた雑誌を持ったまま、再び町を飛び出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説ランキング登録しています→Wandering Network
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ