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終わる、世界  作者: 美咲
第1章
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私の田舎は、ここから遠く離れた、海の近くのさび付いた町だ。

東京では見られない、人工的に植えたわけではない自然の木や草花が

ほんの少しだけれど根付いている希少な地域。

今では滅多に見られない緑に彩られたその故郷はのどかで良いところだけど、

私は誰かに出身地の話をした事は1度もない。


何故ならその町は、カルト教団の巣窟なのだから。


昔はひっそりと活動していたらしいが、ある報道がきっかけで連日マスコミが押し寄せてきて、

今では周知の事実になっている。

外の人は絶対に寄り付かないので、閉鎖されたその町はどこか異様な空気を放っていた。


私の両親ももちろん、その教団に属し、信念とやらにどっぷりと浸かってしまっていた。

「愛」という実体のないものを崇拝し、廃止されたはずの「結婚」という制度で

愛し合う男女を縛りつけ、「家庭」を築きながら生活をするという異様な集団。

その上夫婦の宝という名目で子供まで産んでしまうのだ。


子供は役所に申請して許可をとらなければいけないのに。完全に違法行為だ。

そう遠くはない将来、人類が滅びる事がどうして分からないのだろう。

子供なんて自己満足で産んでも、その子の人生に責任が持てるはずがないのに。

「結婚」を廃止にした政府も、確かそういう理由を公式に発表していたはずだ。


その日はすぐではないのかもしれない。

でも遠くはない未来に必ず地球は人類の住める惑星ではなくなる、と。

国家を担えるような存続させるべき遺伝子を持つ子か、

もしくは環境改善の研究者になれるような血を引く子でもない限り、

子供なんて絶対に産むべきではない。


それでも、何も知らない小さい頃は優しい両親に大切に育てられ、私は幸せに暮らしていた。

可愛がられ、愛情を注がれ、両親が大好きだった。


でも。中学生くらいだっただろうか。

町に下らないゴシップ雑誌の記者が現れ、たまたまそこにいた私はインタビューをされたのは。


その時はインタビューされる意味が分からなかった。

ただ、自分が雑誌という凄いものに載るかもしれない期待にドキドキしながら

馬鹿正直に質問に答えていた。

話が終わると記者はありがとうと手帳をしまい、私の顔を見ることもなく素っ気なく去ろうとする。

その冷たい横顔に私は慌てて記者を引きとめ、雑誌名と発売日を無邪気に尋ねた。


何せ自分の発言が雑誌に載るのだ。

13年そこらしか生きてない女の子にとって、それは魅力的な大事件だった。


言いたくなさそうだった記者も、私のしつこさに根負けした様子で面倒臭そうに答え、

逃げるように振り返ることなく去って行った。

後から思い出すと反吐が出るくらい腐った目をした男だった。

けれど当時の私は初めての経験にテンションが上がり、ニコニコと満面の笑みを浮かべ、

手まで振って男を見送った。



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