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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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66、封印が解かれた悪魔王

今まで強大な相手は何度か戦ってきた。


それこそ文字通りの大きな相手とも渡り合っており今更どんな敵が来ようが怯むような事など無い。


だが今現れようとしている相手はそれよりも次元が違う。



古の時代に世界を恐怖のどん底へと叩き落とした恐るべき悪魔王デーモンロード。


長い封印から今目覚め、解き放たれようとしている。




「グォォォォ………」


低い唸り声を上げながらその悪魔は姿を現した、以前の青い竜と同じくらいの巨体を誇り背中に大きな翼を持ち全身が赤色の強靭な肉体を誇る。更に魔力はとてつもない物を秘めておりシュウは嫌でもそれを感じ取り珍しく頬に冷や汗が伝って滴り落ちていった。



「こいつが……デーモンロード……!」

巨大な魔物や魔族は見慣れていたはずのカリアも規格外の悪魔王に圧倒されそうになる。間近に感じる圧倒的な威圧感、こいつは間違いなく強いと持ってる剣を握りしめていた。



「(くくく、後は持ってる魔法薬をこいつにさえ使えば……!)」

カリアの剣からどさくさに紛れて逃れたガーランはデーモンロードに気づかれないように近づき、自分の持つ魔法薬をデーモンロードへ使おうと企んでいた。これで自分の意のままに操ってやろうと。







だが、その時デーモンロードはギロッとガーランの方へと視線を向けた。

「!?」

デーモンロードに睨まれたガーランは動きが止まる、まるで金縛りにあったかのように彼は動けなかった。


今までどんな相手に睨まれようが自分が怯んだり恐れたりするような事など一度たりとも無かった、だがガーランはデーモンロードに今睨まれて動く事が出来ずにいた。手に持つ魔法薬、それをデーモンロードへと施す予定が此処で急ブレーキとなってしまう。


するとデーモンロードは巨大な掌をガーランへと向けた。



ドォォォーーーーーーーーーーッ



「ゲアァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


デーモンロードの掌から魔力を凝縮させた紫色のエネルギー波が発射され、近距離でまともに浴びてしまったガーランは断末魔を上げながら身体が消し炭となり命を絶たれた。


規格外とは分かっていたが実際目にすると恐ろしい魔力だった。あのガーランをあっさりと殺し、皮肉にも彼の企みはこれで終わったのだ。



しかし連中の計画は潰してもデーモンロードは今健在だ、これが神殿を抜けて地上へと出てしまったら大変な事になる。

それこそ古の時代の繰り返しとなってしまう事だろう。



「(とんでもない魔力だ!本当に魔王である僕に並ぶ程かそれ以上……!)」

デーモンロードから発せられる魔力量にシュウはこれまでに無い危機感を持っていた。

国へ侵攻する時の戦いで此処までの敵は誰一人としていない、だが目の前に居る化け物は規格外。この悪魔をどう攻略すればいいのか。


シュウはデーモンロードの動きを見ており、カリアも傍で同じく観察。ディーは遥か後方へと下がらせる。

この状況で彼を守りながら戦う余裕など無い。








「…………此処は……何処だ……」

「!」

カリアやシュウ、それにディーの声でもない。それはデーモンロードの口から発せられた言葉だった。

此処が何処なのか分かっていない様子。永き封印から目覚めたばかりで意識がハッキリしてないのか、それとも当時とは全く光景が変わってしまったからなのか。


「…………分からぬ……我は…………何者なのだ……」

場所だけではなかった。デーモンロードは自分自身が何者なのかも把握していない、一体どういう事か。封印を永く施された影響でそれは記憶に障害を起こさせてしまったのだろうか。



「あいつ、自分が何者でどういう奴なのか……分かっていないのか?それにしてはガーランの奴を攻撃したみたいだが」

「デーモンロードが無意識に防衛本能が働いて良からぬ事を企んだガーランを敵とみなして攻撃した……からかな?……ん?だとしたら」

先程の出来事をカリアは思い返す、デーモンロードはガーランを排除していた。ガーランはデーモンロードを魔法薬で操り支配しようとしていた。その邪な心を見透かしたからなのか、ああなってしまった訳だが。


その時シュウは考えた。ひょっとしたら、という考えが彼の中で浮かび上がる。




「キミはデーモンロードという名だ」

「……?」


デーモンロードの前にシュウは現れた。ガーランのように突然あの消し炭にされるような魔力をぶつけられるのではとカリアは心配するが、シュウは片手で制した。任せて欲しいと。



「デーモンロード……魔族の少年よ、それが我が名なのか?」

「ああ。キミは古の時代からそう名乗ってる」

見た所本当に自分が何者なのか分かっていないようだ、デーモンロード自身にシュウは悪魔王について話す。デーモンロードはシュウの方へと向いており遠くからディーと共に見守るカリアは何時ガーランを消した魔力を発動させて来るのかと警戒しており緊張状態は続く。



「我がその名である事は理解したが、何故そのデーモンロードたる我が此処に降り立ったのかが分からぬ。自分が悪なのかそれとも正義なのか……我は何をする為に来たのか」

自分の記憶だけでなく自分が何をする為にこの世界に来たのか、デーモンロードはそれを分かってはいない。


「一つ聞こうデーモンロード。目の前に泣いている子供が居たとする、その子供をキミは……躊躇なく葬るか?」

シュウの突然の質問だった。デーモンロードはこれまでの話を聞けば破壊の限りを尽くしていたという、これが本当ならば子供だろうがなんだろうが消し去るだろう、先程のガーランのように。



「……理由なく何故泣いている子供をいきなり消さなければならんのだ?何故泣いているのか訳をまずは聞くべきだろう」

デーモンロードからは意外と言える回答が帰って来た。これまで聞いてきたデーモンロードとはイメージが違う、いくら記憶が無いとはいえ古の時代に世界を破壊し尽くさんと暴れてきた悪魔王とは思えない。

自分が正義なのか悪なのか分からないと言うが、シュウはこれを聞いて少なくとも悪の方だとは考え難いと思った。

「そういう考えになるという事は、キミは悪の方じゃないね」

「では正義か?」

「それもどうだろうね……何しろ僕も正義という訳ではない、だからと言って僕も泣いてる子をいきなり葬るは無い」

「お前も正義か悪、どちらなのか分からないのか」

「まあね。どっちの行動なのか分からない事を散々やってきた身なもんでさ」


カリアからすれば不思議な光景だった、古の悪魔王デーモンロード。現在の魔王シュウ。どちらも世間からは恐れられる存在同士が今こうして向かい合い話し合っている。

自分だけだったらデーモンロードとの戦いはおそらく避けられなかったかもしれない、戦ってなんとしても地上に出さないようにしようと。


だが仮に戦い以外でデーモンロードをなんとか出来るであれば、それに賭けてみたい。それが今シュウは出来るかもしれない、カリアは無言で剣を鞘へと収め腕を組み二人の魔の会話を見守る。




「人間が魔をどんどんと暮らし難い環境へと追いやって行ったので僕達は魔王軍として多くの者を葬ってきた、その人によってはそれが正義になったり悪になったりもするから……僕もどっち寄りなのか分からない。案外みんなそうなのかもしれないよ。自分は本当に正義なのか、悪なのかって」

「……我だけではないのか、正義か悪か分からないというのは」


「ねえ、デーモンロード。提案があるんだけど聞いてもらってもいいかな?」

「提案?何だ言ってみるがいい」

気づけばシュウとデーモンロードはかなり話している、打ち解けているのかどうか分からないが話は聞いてもらえる辺り険悪という事は無さそうだ。


その中でシュウはある提案をした。



「キミのやる事が決まるまでの好きな期間で構わない、僕に力を貸してくれないかな?」

「お前に力を?」


デーモンロードに協力を求める、これを聞いたカリアは驚かされる。古の悪魔にそうするという発想は全く無かった、話し合いで解決どころかデーモンロードの助力を得ようとしている。此処にアスやガーランが生きていたら間違いなく耳を疑う事だろう。



「そこにいる人間の勇者カリアと僕は人間と魔、この世界の者達が平等に暮らし生きて行ける世界の実現を目指してる。キミは魔族の象徴とも言える存在だ、そのキミの力を借りられると僕としては大いに助かる……けど勝手な僕の頼みだね。どうするかはデーモンロード、キミの自由だ。気に入らないならそれで構わない」

シュウは自分の気持ちを包み隠さず打ち明けデーモンロードへと選択を委ねる。これは危険な賭けでもあった、1歩間違えればこの場でデーモンロードと刺し違えるかもしれない。だがシュウはあえて今のまっさらな状態と言ってもいい悪魔王に賭けた。


後は彼がどういう選択をとるのかにかかっている。




「その世界というのは……我も居て良い世界なのか?」

「当たり前だよ、人間と魔が平等に暮らす世界だ。キミだって例外じゃない」

シュウの言う世界、伝説の種族エルフだけではない。古の悪魔王デーモンロードも暮らしていい世界だとシュウはハッキリとデーモンロードを見上げ真っ直ぐ彼の顔を見て言い切った。



「うむ、良いだろう。その世界興味がある、それにお前はどうも面白いと思える。お前にそこの人間が築く世界がどうなっていくのか見たくなってきた。力を貸そう」

「!良いの?」

「だから力を貸そうと言ったのだが?」


驚く事にデーモンロードはシュウの提案を受け入れた、案外あっさりとした回答に提案したシュウも驚く程だった。戦いを正直な所覚悟はしていたが、デーモンロードが噂ほどの破壊の限りを尽くす悪魔ではなかったのが大きいかもしれない。



「……はは……つくづく驚かされる魔王だな、お前は……」

戦いを覚悟していたのはシュウだけではない、カリアもこれまでに無い死闘を覚悟はしていた。デーモンロードとかつてない戦いになる、それが話し合いの前に持っていたイメージだ。


しかし実際は話し合いで解決しデーモンロードが協力してくれるという結末、これにカリアは苦笑するしかなかった……。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、大詰めでボスとの死闘が始まるのか!?という流れでしたが……話し合いで解決しました。戦いそうな最大の敵のような感じだったのが戦わない、そんな回でした。


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