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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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63、企む者達との対峙

自分を消そうと企んだベーザ、世界平和よりも自らと国の利益を優先した男。問題ある人物で一番の権力を持っていたこの男が今息絶えた状態でカリアの目の前に居る。


カリアはベーザの状態を確認すると息は間違いなく止まっており、出血の状態を見れば死んでいる事は間違い無い。

他の騎士のように狂った状態で出てくるか、それとも何食わぬ顔で平然と待ち構えて来るのかと思っていたが意外な程にあっさりとした最期をこの男は迎えてしまっていた。


「……」

ヴァント王国とベーザへの復讐と報復、カリアにとって目的の一つだったのだが王国騎士達は狂い果ててベーザは既に死んでいる。

対象者がいなくなり、元々あったヴァント王国とベーザに対する怒りをぶつけられる者が消えた。カリアはただ黙ってベーザを見下ろしていた。

「これが、世界の王の頂点に君臨していた男の最期か……」

シュウは遺体となったベーザを見て小声で呟く、ベーザが死んだ今ヴァント王国はもう終わりだ。だが表の騎士達は自分達の王が死のうが生きようが戦いを止める事は無いだろう。


「こんな地下神殿で誰に看取ってもらう事もなく、か。……次に生まれた時は良い道を間違えず歩くが良い」

ベーザの亡骸の前でカリアは両手を組み、目を閉じ祈りを捧げた。

色々あった憎い相手ではあるがせめてもの情けだった、次に生まれ変わった時ベーザが今度は善人として今世で悪の限りを尽くした分働いてもらいたい。カリアに出来る事はそう願っての祈りぐらいだ。



「ベーザが死んでいるとなると、もうヴァント王国は何も機能していないね。街に人がいなくて騎士団はあの通り手が付けられない、……僕達より先にガーランやアスが此処に乗り込んでヴァント王国を崩壊させたのは間違い無い」

「ああ、奴らを放置したら他の国が同じような目に遭う恐れがある。見つけるぞ、あの二人をなんとしても」

ベーザの亡骸から離れ、カリアは先へと歩き始めシュウとディーもベーザをその場に残し歩いてその場を去る。


ヴァント王国の国王ベーザ、彼は人知れず神殿で死んで行った。唯一の救いは勇者カリアに祈りを捧げてもらったぐらいだ。



神殿の奥へと進み、人や魔物の気配は無い。城であれだけの魔物達が居て神殿にも居るものかと思っていたがそこまで兵力に余裕が無いのか別の意図があるのか。

カリアを先頭に進みシュウも背後を注意しつつ魔力の反応を探る。

「ん……?」

その時、魔力を探っていたシュウは何かに気付いた。

「覚えのある強い魔力を感じるね、嫌な感じの」

「後半のを聞いて誰なのか把握した。奴か」

シュウの感じ取った魔力、嫌な感じのと聞けばカリアは鞘から大剣を抜き取った。収めたままでいる必要は無い、奴らが居るならば戦いは確実に起こるだろうと予感しており戦いの中で剣を抜く時間のロスも惜しい。


変わらず前方や後方を注意しつつ先へ進み、神殿は一本道が続く。


やがて大きな扉の前にカリアとシュウは立つ。

「この奥か?」

カリアがシュウへと短く尋ねるとシュウは首を小さく縦に振り、奥に居るとカリアに教える。ディーを後ろに下がらせてカリアは勢いよく扉を蹴り開けた。


「アス!ガーラン!」

カリアは二人の魔物の名を叫ぶ。部屋に突入すれば居るであろうその二人、扉の中にある部屋はかなり大きな部屋となっており余計な物は置いておらず神殿を支える柱がいくつかあるぐらいだ。

そして部屋の中央に位置する場に名前に反応する者達が居た。


「意外ですねぇ、此処を嗅ぎつけて来るとは。てっきり王の間にそのまま行くかと思いましたよ、これまでのあなた方の行動を思えば」

「ケッ!てめぇがうっかり此処の事を教えたんじゃねーのか?頭脳派気取りのお喋り野郎だからよ!」

吸血鬼の頂点に立つアス、獣達を統べるワーウルフのガーラン。この騒動を引き起こしたであろう者達がそろい踏みだ。

「私はそんな無駄な事などしませんよ、むしろあなたの方が何も考え無しでうっかり教えたのではないですか?」

「ああ!?」



「……随分と仲が悪いみたいだね」

アスとガーランは何やら険悪と言ってもいいぐらいの言い合いであり、シュウはアスの以前の会話を思い出す。前もアスはガーランに対してあまり良い感情は持っていなかった。同じ目的を持つ同志とはいえそんな親しい馴れ合いなどは全くしていないようだ。

となると連携だとかそういった事は出来ない確率が高いように思える。



「っと、こいつらを前に吸血鬼野郎と言い合いなんざしてる場合じゃねえ……!」

「話は終わったのか?もっと言い合いをしていてもこっちは一向に構わんぞ」

カリアはアスとガーランの言い合いが終わるのを待っており、ガーランが自分と向き合うとカリアは冗談混じりに大剣を右手に持ちながら言い放った。

「生憎そんな訳にはいかねぇんでな、新たな魔王復活までもう1歩まで来てんだ」

「デーモンロード……それは表に居る騎士団とか全員狂わせて計画が進むものなのかな?見た限りだとあれは完全にキミ達の味方、手駒という訳じゃない。僕達どころかキミ達魔物に、騎士達での同士討ちすらあった。魔法薬は失敗じゃないの?」

シュウはガーランへと魔王復活に拘る彼に騎士団達が狂い果てた事についてデーモンロードの復活と関係があるのかと問う。



「それが問題無いのですよ、誰が相手だろうがひたすら戦い続ければ良い。それこそがデーモンロード復活へと繋がるのです。どうせ彼らはまともな状態で戦力が満足に揃ってない状態では大国といえど総力を上げて来た魔王軍には万に一つの勝ち目も無い、ならばゴミなりに役立ってもらおうと……あれですよ」

戦い続ければ問題無い、彼らが狂い果てようが全く知った事ではないとばかりにアスは不敵に笑った。

「ヴァントの国王さんは狂わせる事もなく殺したのかな?途中に死体を見かけたんだけど」

「此処の神殿の事を教えてもらわなきゃならなかったんでなぁ、神殿についてはなんでもヴァント王国の国王だけが代々知り、受け継がれてく流れらしい。そんで案内させて用が済んだからさっさと殺してやったのさ」

シュウの問いに対して答えたのはガーランの方だった。途中でベーザが倒れていたのは神殿まで案内させ、その役目を終えたので洋済みだと隠さず得意げに語る。



「この地下神殿は元々デーモンロードの封印を守る為に建てられた物だそうですが、今となってはただの神殿。本来守るべき立場であるヴァント王国はもはや何も出来ず狂い滅びるのみ。後は古の悪魔が目覚めれば……素晴らしい魔の世界が待っているのですよ、我々魔族が頂点に立ち人間は全員滅び行くという世界が!」

アスは大げさに両手を広げ、その世界を歓迎するかのように遥か頭上の天井へと向かって叫んだ。



「楽しい?そんな世界、僕は嫌だな。人間の作る食べ物が食べられない、飲み物も飲めない世界なんて。虚しいだけの世界に何の価値があると?」

アスとガーランが望む魔の世界をシュウは全否定。彼らの世界はただ虚しくつまらない空っぽの世界、暮らすのであればシュウはそういう世界は絶対に嫌だと魔の世界を拒むのだった。


「無論私も、全人間を滅ぼすというのは黙ってられんな。貴様らを此処で討ち滅ぼし全部を終わらせてやろう!」

カリアは剣の切っ先を向けて戦う意思を示した、人間全員の味方。とは今更言うつもりは無いが人と魔の共存する世界の実現に向けてアスとガーランのような連中は倒さなければならない。此処で倒さなければ全世界の人間どころではない、生き物の生命が危機に晒されるかもしれないのだ。



「フン……分かってはいましたが、あなた方とことん我々と張り合いたいみたいですねぇ。そんなに死にたいならお望み通りにしてあげましょう。デーモンロード復活を特等席で拝むチャンスを自ら棒に振った事を死んで後悔するといい!」

吸血鬼の牙を剥き出しにして笑うアス、その際に魔力も解放。アスの身体が紫色のオーラに包まれ戦闘態勢へと入っていく。


「やっとこの時が来たかぁ!ぶっ殺してデーモンロードにその身と魂捧げさせてやるよクソ女勇者にクソガキ魔王がぁぁーーー!!」

雄叫びを上げつつガーランは剣を抜き取り軽く振り回してから切っ先をカリアとシュウに向けた。こちらも臨戦態勢だ。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、カリアかシュウに成敗されるよりも前にベーザは他の者の手にかかり複雑な心境であろう回でした。此処に来てアスの煽りが増しているかも……。


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