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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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59、大混戦

騎士団の行軍というのは本来厳しい規律の元で隊列を組み、それぞれ前衛や中衛に後衛と分かれ進むのが基本である。

世界最強の騎士団と言われるヴァント王国騎士団もまた例外ではない。



だがその規律も今の狂い果てて獣同然の騎士団には存在しなかった。


不規則な並びであり正気を失い武器を振り回し味方同士であるにも関わらず争い、敵味方の区別もつかない彼らは獣よりも厄介なのかもしれない。



正気を失い自我を無くした騎士団にシュウは非情なる命令を下す。


魔王軍は全力で向かって来る騎士団を皆殺しにしろと。



下手に生かしておいて狂ったまま街へと向かってはそれで大惨事が起こる可能性がある、それに騎士団の精神はもう完全崩壊しているように思えて元に戻すという希望はおそらく無いだろう。


滅ぼすべき敵にそこまでしてやる程シュウは、魔王は甘くなどない。








「ぬおおおお!!!」


ザシャァァッ


先陣を切ってゼッドは最前線にてヴァント騎士団と激突、斧を振るって騎士団の身体を鎧ごと真っ二つに切り裂いた。

あまりに異常な程狂っているのでこういう致命傷を浴びても生きて立って来るかもしれない、そんな可能性も考えられたが、流石にそんな状態で生きてる人間はいない。

いくら狂っていようが人体そのものが変わっているという事は無いらしい。

「ゾンビの類いとは違うか、普通に殺す事は可能……」

倒れた騎士の状態を確認すればゼッドは声を張り上げた。



「恐れる事は無い!奴らが狂って化け物じみてようが所詮は人間、俺達魔王軍の勝利に全く揺らぎはしないぞ!」











ゼッド率いる竜の軍団が前線で大暴れしておりカリアとシュウはその後ろからクレイの石人形の護衛付きで前進して行っている。

「カーーーー!」

そこに襲いかかる一人の狂ったヴァント騎士、明らかに正気を失っており真っ直ぐカリア達へと武器を持って迫って来た。獲物と認定されたせいか。



「フン!」


ズバッ


「ガァ!」


カリアは襲って来た騎士を大剣の横薙ぎ一刀で切り伏せ、騎士は短く悲鳴を上げた後にそのまま動かなくなった。

「間近で見ればなんとも不気味なものだ、魔法薬を使われたのかミーヤ王女の時みたいに凶暴化魔法をかけられたか……」

「後者の可能性は無いね、そういった魔法の痕跡は無い。だとしたら魔法薬が有力かもしれないけど……あんな大勢の騎士団が得体の知れない薬であろう物を進んで飲むかな?」

「……私なら飲まんな」

シュウは先程から魔力を探っているが狂った騎士にそのような魔法が施された後は発見されていない。魔法薬を自分で飲んだのか、誰かに飲まされたかだが狂う事を知らずに飲んだのだろうか。何かしらの方法で騎士団全員に飲ませた、そうでなければ今の状況に持っていく事は無理なはずだ。

「ただ、そんな事して一体何になるんだろう……騎士団を狂わせて存分に戦わせる事で得があるとなると……」

「国王ベーザが追い詰められて悪魔に魂でも売ってそうさせたのかもしれない、魔王軍を倒す為ならもはや手段など選んではいられないと」

「そうなるとアードと傭兵団の時に出て来たワイバーンまでベーザの仕業って事にならない?いくら実験台とはいえ自分の領土の砦や騎士団を犠牲にしてお釣りが来る程……とまでは行かないような」

ベーザが追い詰められ、禁断の手段を用いて騎士団を化け物にしたと思うカリアだがシュウはワイバーンの時に彼は自らの砦と騎士団を犠牲にしようとした事になると、ベーザがやったとは考え難い。そんな考えが二人にありつつも今は戦闘中。


思考はそこそこにして今は目の前の戦いに集中しなければならない。







「ガァァァーーーーーー!!」


またも騎士がカリアへと雄叫びを上げて迫る、剣を獣の牙と思わせるかの如く剣を振り回して来ていた。


ドスッ


「ガ…!」


その剣がカリアに届く前に騎士の胸に矢が飛んで来て突き刺さり、騎士は仰向けに倒れる。カリアがやったものではない、シュウでもない。二人とも弓矢は扱った事など無い。


これほどの弓矢の名手は十中八九彼女だろう。


「戦場で呑気におしゃべりとかしちゃって、お二人さんホント仲が良いよねぇー」

狂った騎士団を前にしても何時も通りの明るい調子でテシが弓矢を持ってカリアとシュウの元へ駆けつけ、後ろにはエルフの戦士達も付いている。

「テシ、すまんな」

「いいよいいよー。しかしまあ話は聞いてたけど見事に狂ったもんだね」

カリアが礼を言い笑顔でテシは返すも狂った騎士団が戦ってる光景を前に笑みは消える。



「ワイバーンに塗られた薬を人間が使うとああなっちゃうのかな……?同じ魔法薬で実験したとするなら」

「翼竜と人間じゃ体の構造から全く違うだろうからそれで効果は色々違ってくるかもしれないね、話ではワイバーンはあんな狂ってなくてまだまともだったらしいし」

テシと話しつつシュウは先程のアードの話を思い返していた。

ワイバーンはオークキングのバガスという者が言っていた事を傭兵団の仲間が聞いてそれをアードが聞いた事だが特殊な魔法薬の実験で強化されたらしい、その時のワイバーンは今の騎士団のように狂ってはいない。むしろバガスの合図で出てくる程であり言う事はよく聞いていたとの事だ。


今の暴走する騎士団の連中には到底出来ない。











「何でおめぇと一緒に行動なんだよ…」

大空を自身の翼で飛ぶバルバ、普段なら彼が軍団を空で率いて意気揚々と敵を倒しに向かうのだが今回は状況が違った。

横で赤いドラゴンに乗り、同じように空を飛び大空で並んで飛んでいるアードがバルバと共に空からヴァント王国へと進んでいる。


「不満を言ってる場合か?プロの戦士ならそれで文句言うなよ」

「ケッ、人間の小娘が生意気言いやがる」

「いいね。ちゃんと小娘と言ってくれる所は好感度アップだ」

「おめぇの好感度なんざ求めちゃいねーよ!」

何処かアードに振り回されがちになってきているバルバ、不満ではあるが空を飛ぶ戦士としてはこれ以上無いぐらいに強力な助っ人だ。世界有数のドラゴンライダーが当初は敵としてどう迎え撃つか考えていたのが今は味方という立場。


こうなる事はバルバだけでなくアードの方も予想してなかったかもしれない、人間の女性と空を並び飛び魔王軍と協力をするというのが。




地上は多くの暴走した騎士団と魔王軍が交戦、ヴァント王国には空を飛ぶ戦士がいない。このまま空を飛ぶ者達は何の問題もなくヴァント王国の王城へと強襲をかけるのも時間の問題だ。



だが、そう甘くはないとばかりに彼らにも思わぬ障害が立ち塞がる。





「ケーー!」



「!こいつは!」

突然現れた血のように赤い色をした鳥、アードにとってはつい最近見ていて記憶に新しい大型な鳥の魔物ブラッドバードだ。

「なんだ?野生の奴がこっちに迷い込んで来やがったのか?」

同じ魔物であるバルバにとっては馴染みあるブラッドバードで特に驚きはしない、突然野生の物が現れたのかと考えていたが…。



「カーーーーー!」


1体のブラッドバードから大勢のブラッドバードが空を飛び、ヴァント王国の前に守るようにその場を飛んでいる。


「何だこいつら!?何で人間の国を守ってやがんだ!」

野生の魔物がヴァント王国を守ろうとしている姿にバルバは信じられないといった感じだ。


すんなり強襲という訳には行かずバルバとアード達の前にも敵は居た。










地上で戦うゼッド達竜の軍団は向かって来る騎士団を片っ端から倒し続けていた、このまま確実に向こうの数を減らせれば自ずと勝利は見えて来る。

そしてヴァント王国への道が開かれれば一気に制圧へと走る事が出来るはずだ。



「ウオーーー!」

その時、騎士団の雄叫びとは違う。同じ魔物であるゼッドには馴染みある声が耳に聞こえて来る。


「この雄叫び……ワーウルフか!?」

ゼッドの読み通り騎士団に混じりワーウルフが竜の軍団へと襲いかかる、ヴァント騎士には行かず魔王軍だけを正確に狙って武器を振るって魔法を使用していた。



「貴様ら、何故ヴァント王国に!」

魔物が今のヴァントに何故協力をと叫び、問うも向こうは答えずに戦いを仕掛け続けている。


なら答えは一つ、彼らはヴァント王国に協力して魔王軍を倒すつもりだ。ならばゼッドは魔王軍の長として騎士団もろともワーウルフ達も倒すと気を引き締め戦いに臨む。









そしてカリアとシュウの方にも立ち塞がる者が居た。





「これはこれは勇者カリアに魔王シュウ、遠路はるばるヴァント王国へようこそ」

戦場にいながら礼服に身を包むその男は優雅な一礼をする。初対面の時と同じだ。


「お前は……アス!」

カリアはその姿を見れば大剣を構え、隣に居るシュウは静かに目の前に居る吸血鬼の頂点に立つ男アスを見据える。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、狂った騎士団に続いて魔王軍ではない魔物達まで乱入の大乱戦となりました。

まさにカオスな展開。


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