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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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58、魔王の非情な命令

「間違いありません魔王様、騎士団の連中がただならぬ様子で進軍……それも普通にではなく手当たり次第の物を斬って進んでます、自分の味方であろう騎士すらも……!」

バルバの部下であるバードマン、彼に改めて偵察へ向かわせるとバルバの目撃とアードの話が一致する。

ヴァント騎士団は本当に狂いながらも進軍してきていた。その姿は戦術の欠片も何も無いという。


「絶対にそうやって進めとか……命令されて、じゃないよね?」

クレイは大砲を整備する手を止めてシュウ達と合流、話を聞き騎士団は命令されてそうしているのかと考えもしたがいくら王の命令が絶対とはいえ狂いながら味方をも斬り捨てながら進軍しろ、などという命令を聞くとは思えない。

命じる方もそれで得られるメリットは無いはずだ。

「ひょっとして、かもしれないけど連中は薬か何かを飲まされたかもしれない」

「薬?」

アードは何か心当たりがあるようで発言するとカリアや他の魔王軍の者達もアードに注目する。


「以前此処の砦で魔物達が襲撃してきた事があってね。その中に普通の奴とは違うワイバーンが出て来てそいつは非常に強力な力を持っていた、その時に大将であるオークキングの奴が言ってたんだよ。そいつは特別だ、特殊な魔法薬の実験によって強化されたワイバーンだってさ」

此処の砦でシュウ達魔王軍が制圧する以前に砦は魔物達に襲撃されていた。魔王軍の中にオークキングを名乗るような魔物はいない、つまりそのオークキングは魔王軍ではない魔物。

誰かが魔法薬の実験を行いワイバーンにそれを施し強化させたのだ。


「つまり今回の騎士団もその可能性がある、そういう事でしょうか?」

「ワイバーンはあんな狂っちゃいなかったけどね。ただ……なんとなく同じ匂いがした」

ミナは同じようにヴァント騎士団にも魔法薬を使わされたのかとアードに問うが以前のワイバーンと比べると騎士団の方は狂い過ぎている、人間では効果が違うかもしれない上に違う薬を使った可能性もある。

現状では全く同じ魔法薬を使用されたかどうかは誰にも分からなく机上の空論な状態だ。



「どっちにしろ狂ってる事に変わりねぇって!そこの竜使いの野郎が言うようにあいつらはやべぇ!」

「あ、ちょっといいかな?そこのバードマン君」

バルバは未だ落ち着きが収まっていない様子であり、野郎と言われたアードはバルバへと近づく。



ガッ



「かっ!?」

突然バルバは下から伸びて来た手に首を締められる、アードが右手一本でバルバの首を締めていたのは遅れて気づく。

「俺は野郎じゃない、何処を見て判断してんだ?ちゃんと女だからな」

口元に笑みを浮かべつつもアードの目は全く笑っていない、野郎と言われた事が気に食わない様子である。

顔立ちは中性的であり頭がボサボサとバルバはそれで男だと勘違いしたのだろう、加えて言葉遣いが男と変わらないのもある。


「ストップ、部下の無礼は謝罪するから今は離してくれないかな?貴重な飛行戦力を失いたくないんだ」

「オーケー。魔王直々の謝罪に免じて許そう」

シュウはアードへと男扱いしたバルバの無礼を代わって謝罪、それを見てアードはバルバを掴んでいる手を離した。


「ごほっ!ごほっ!て、てめえ……やわそうな顔して凄ぇ力で締めやがって……!」

「おかげで落ち着いただろ?さっきまでのお前、随分と動揺酷かったぞ」

バルバは自身の首をさすりながらアードを睨みつけてきた。その睨む視線を平然と受け流しつつアードはバルバと会話、こんな魔王軍のど真ん中で敵の長の首を絞めるとは物凄い度胸である。

「それで、貴女は色々とこうして教えてくれているけど確かヴァント王国に雇われた傭兵団だよね?向こうとの契約は終わったと思ってもいいのかな?」

元々アードはヴァント王国に傭兵団で雇われている、本来は魔王軍と戦わなくてはならない身だ。その事をシュウが尋ねる。

「王国があんな狂った事になったら契約もくそも無いだろ、仲間をも斬るような場所に居たらこっちの身まで危ない。それに……カリアと争うつもりは無いからさ」

「アード……」

「魔王軍に居るのをキリアム大草原で見かけた時は目を疑って出られなかったよ、噂じゃカリアは魔王軍討伐に向かい行方不明になったって。無事な姿を見て安心したのと魔王軍と共に戦うのを見て……正直戸惑ったんだ、ロウガの国王も一緒に助けたりしていたし。本当に討つべきなのかと」

同じ孤児院出身の友人同士、それがあのような戦場で会うとはお互い思っていなかった。それもアードの方は行方不明と聞いていたカリアが無事で魔王軍と手を組んでいた事に嬉しさと驚きが混じってそれが彼女の判断を鈍らせ、迷わせた。


だからアードはキリアム大草原では戦場に出向く事は出来ず姿を消していたのだった。

今となっては王国へ戻るという選択も無い、だから彼女はもう一つの選択を此処で選ぶ



「あの狂った騎士達を倒すの、その気なら俺にも手伝わせてくれるか?」

「一緒に戦ってくれる?ドラゴンライダーが力を貸してくれるならそれはもう心強いけど、いいの?」

「どっちにしろあいつらを放置したら遅かれ早かれ大陸中の人間どころか生き物を残らず斬り捨て続ける、だったら今なんとかした方が一番良いだろ」

アードはシュウ達に協力を自ら申し出た、ドラゴンライダーの実力は聞かされておりアードも例外ではなくドラゴンに乗って戦う戦力に機動力は頼りになるはずだ。

「私は賛成だ、アードが信じられる人物なのは私が保証する」

カリアはアードが共に戦う事を賛成、人柄については昔からよく知っており裏切るような人物ではないと。



「魔王軍はこれからドラゴンライダーと協力し向かって来る狂気の騎士団を倒し、ヴァント王国を制圧する」

シュウは魔王軍全体へと振り返りアードの加入を許可する、シュウとしても反対する理由など無い。強力な戦力は多い方が良いし今こうしている間にもヴァント騎士は迫って来ている、迷っている時間的余裕など残されているはずがない。

「正気を失い暴れ続ける騎士にせめてもの情けだ、僕達の手で葬り楽にしてやろう」



「おおーー!」

魔王シュウの言葉に魔王軍の兵士達は声を上げる。人間達の決戦前に送る言葉とは違う。

これが魔王軍流のやり方だ。







「魔王様!奴らがやって来ました!」

空を飛んでいた見張り役のバードマンが空から騎士団の姿を確認し、降り立つといち早くシュウへ報告。ついに騎士団はこの砦付近へとやってくる。






「グガァァァーーーーーーーー!」

「グゥオォォォーーーーーーー!」

「ゴアァァーーーーーーーーー!」



正気など全く持たず本能のままに叫び暴れ、殺し続ける。彼らのその様子に騎士どころか人間の心も捨ててその種族である事を放棄したかのようだ。


「あいつらか!なんという狂いっぷり………まるで獣そのものじゃないか」

戦斧を握るゼッドはバルバが動揺していたのが少し理解出来たかもしれない、あれが元々は人間である事が信じられなかった。

彼らは白目を剥き、涎を垂らしながら武器を振り回しており仲間同士で傷つけながらも前進を続ける。まだゾンビかスケルトンの方が可愛げがあるぐらいだ。



「ヴァント王国に裏切られた恨みはあるが……こうなっては流石にな、せめて我が剣で成仏させてやろう」

元々国に裏切られてヴァント王国を恨んでいたカリアだが、騎士達の狂う姿にそういった気持ちは湧かず救ってやりたいとさえ思えてくる。

ならば自分の剣で葬り狂った思考から解放させようとカリアは鞘から大剣を抜き、構えた。






「狂って容赦なく向かって来るのであれば、こっちも容赦はしない。…………向かって来る敵は一人残らず殺せ」

魔王シュウから命令が下され、その瞬間に魔王軍はヴァント騎士団へと向けて総攻撃を開始。慈悲も情けも欠片も無い。



非情なる魔王の命令でヴァント騎士団を滅して王国制圧を狙うギーガ大陸で繰り広げる王国と魔王軍の戦いはついに大詰めを迎えようとしていた……。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、傷つけないように何としても彼らを救う。と正義の方だとそんな感じになりそうですがこちらは一切ありません、元々滅ぼす予定の敵を体を張ってまで助ける程お人好しでもない魔王軍と勇者です。

むしろ傷つける通り越して消そうとまでする程ですからね。


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