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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
57/78

55、堕ちた大国に狂犬は笑う

「何故だくそぉぉーーーー!!」


ガシャンッ


床にグラスが叩きつけられてガラス片が散り散りとなる、宙を舞う時に一瞬煌くも地面へと落ちれば無残な姿だった。



ヴァント王国の王の間で国王ベーザはこの度のキリアム大草原で繰り広げられた戦についての報告を先程受けた所だった。

勝利を確信して魔王軍が倒されるというのを聞けるのかと思えばベーザの期待を大きく裏切る報告を聞く事となってしまう。自軍の騎士団は副団長が倒れ、更に大半の騎士が倒れ負傷し被害は甚大。

それだけならまだしもターウォの者達が裏切りそのまま魔王軍へ奇襲どころかヴァント騎士団の方へと刃を向けて魔王軍と共に騎士団を倒していったのだ。

更にロウガ王国のライザンが倒れ、魔王軍の制圧は時間の問題と。だがこの部分はカリアとシュウがライザンを助けた所を見ておらず倒れた所しか見ていなかったので此処は事実とやや異なっていた。


「あの小僧どういうつもりだ!あんな事を言っておきながら我らを本当に裏切るとは!」

ベーザはグラスに怒りをぶつけた後も静まる気配が無い、各国が集う場でレオンは作戦を語っていた。自分が魔王軍の懐に入り仲間と思わせて裏切り全員で魔王軍を袋叩きにすると。

だが実際にそれをされたのはヴァント王国の方だった、裏切るフリのはずが本当に裏切られてしまう。そういう作戦だと信用し、放置していた事が裏目に出てしまったのかもしれない。

「正直状況はよろしくありません…あの傭兵団の者達も戻らず各地で我々の同胞が魔王軍の手に落ち続け我らヴァント王国も騎士団長のベンを始め、副団長のタウロスに他の優秀な騎士達も失ってしまいましたからな」

「分かっておるわ!いちいち言わんでもいい!」

「はっ、も…申し訳ありません!」

大臣が改めて今の状況を確認するように言うのに対してベーザは怒鳴りつけていた、これに大臣は慌てて頭を下げて謝罪した。


「そ、それともう一つ気になる事が…」

「なんだ!まだあるのか!?」

騎士からの報告を大体聞いてきてベーザの機嫌は過去一番悪いかもしれない、そんな状態で騎士は恐る恐る続きの報告をする。

「魔王軍の中に、人間の騎士らしき女性がいました。その者がタウロス副団長を斬っていまして……外見が勇者カリアにとてもよく似ていたと」

「勇者カリアだと!?死んだはずではないのか!」

その名を聞いたベーザの表情が怒りから驚きへと変わる、カリアは確かに自分がベンに魔王共々カリアを仕留めるように命令した。だがベンは戻らずカリアも行方不明、魔王軍は今も侵攻中という状況を思えば作戦は失敗し心半ばで倒れたのかと思っていたがベンが戻らないままカリアが魔王軍と共にに居て副団長を斬ったというのは想定外にも程がある。


「まさか勇者であるにも関わらず魔王軍に…!?それも我が騎士団の副団長を斬るとはなんという裏切りを!」

「おのれ!世界中に指名手配でも作って勇者カリアを魔王軍共々世界の敵とせよ!」

「そ、そんな暇も人材もありませぬ!魔王軍がロウガ王国を超えてくれば我が国はすぐそこですぞ!?」

「ぐ、ぐぐぐ…!!」

自分達が先に裏切っておいて勇者に汚名を着せようとしているが、今のヴァント王国にそのような余裕すらもはや無い。

明らかにベーザは焦っていた、魔王軍に勇者が味方する。洗脳されたのかそれとも自分の意思でそこに居るのか、いずれにしても魔王と勇者。二人が手を組んで侵攻してくるとなると非常に不味い自体だった。

戦力としても同盟国や要塞と、魔王軍に多くの戦力を削り取られてしまっている。それが此処に来て大きな痛手となって自分達へと襲いかかっていた。






「はっ、世界最強の大国も落ちるところまで落ちたもんだよなぁおい?」

「!?な、何者だ!」

突然姿が無く声のみがその場の者達の耳に届く、誰の声でもない。誰かがこの王の間に居ると騎士は剣を抜き取り国王の前に立ち、辺りを見回す。

ベーザも同じように王の間の周辺を見るが何処にも誰の姿も無い。


「何処探してんだよ、此処だ此処」

何時の間にか背中から壁によりかかり国王達がうろたえる様子をニヤニヤと高みの見物で見ている者が居た。

狼と人のハーフであるワーウルフの魔物が。

「!?ま、魔物!何時の間に貴様そこに!?」

ベーザは恐怖で身体を震わせつつも強国の国王としてのプライドで声を張り上げる。

「一応俺にはガーランって名があるんだけどよ、まあてめぇら人間なんぞに名乗る必要も無ぇか」



「ひぃっ!?」

何時の間にかガーランは素早く大臣へと詰め寄っていて胸ぐらを掴み上げ、右手1本で持ち上げていた。大臣は情けない悲鳴を上げつつ逃れんと手足をジタバタさせて暴れるが何の効果も無い。

「いざって時はこの通り何も出来ねぇ、人間の王族なんざ所詮こんなもんだろう……ぜっ!」


グサァッ



「ぐがぁっ……!」

大臣の腹部にガーランは左手に持っていた剣を突き刺し、剣は体内を貫通し背中から切っ先が出て来た。

パッとガーランが大臣を離し、大臣の腹部から剣を抜くと大量の出血と共に自らの血で作られた血の池へとその身を沈めてピクリとも動かなくなった。



「お、おのれぇぇ!!」

そこに騎士が剣をガーランへと振り下ろしていった。


カァンッ


しかし素早く反応していたガーランに振り下ろしていた騎士の剣を血に染まった剣であっさり受け止められる。

「うらぁ!」


ドッ


「がはっ!」

ガーランはがら空きになっていた騎士の腹へと膝蹴り、騎士は痛みで顔を歪ませた。そこに更にガーランは騎士が怯んだ所に剣を振り上げ……



ズバァッ


「ぐあ……」


剣をまともに浴びて騎士は大臣とほぼ同じ形で自らの血の池に沈んで命を落とした。護衛の騎士の中でも彼はかなりの腕を誇る、だがそんなものはガーランにとって何も変わらず、ただ何時も通り人間を好きに痛めつけて斬っただけだ。



「あ、ああ……ああ……!」

尻餅をペタンとついてしまって最初の威勢は何処へと消え失せたのか、ベーザはガーランに恐怖して逃げる事もままならず動けなくなっていた。




「とりあえずよ、何時でもぶっ殺せるけどそれじゃあ面白く無ぇよなぁ?ありがたく思いな、てめぇみてぇな裏で色々やり過ぎて嫌われまくったカス野郎にも利用価値があるんだぜ。せいぜい泣いて俺に感謝しろよ」

怯えるベーザの髪を乱暴に掴んで引き寄せ、その時に彼の頭から王冠が転げ落ちる。まるでもう王の資格など無いかのように。


「ハハハ!ハハハハ!!!!」

王の間で殺戮を行い、ベーザを恐怖させる。それが楽しいのかガーランは盛大に高笑いし、それは王の間に響き渡っていた……。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、前回の甘い話からまた一変しガーランが残酷な目に遭わせているという回でした。上がり下がりがジェットコースターみたいに激しくなりつつあるかも……。


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