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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
53/78

51、ロウガ王国

ロウガ王国の騎士団達は何が起こっているのか頭の中が追いついていかなかった。


突然自国の王女が現れて狂ったように魔王軍へと斬りかかり。


自国の王が戦場へ飛び出して行って娘の王女を庇ってヴァント騎士の狂刃をその身に受け、瀕死の重傷に陥ってしまう。


それに皆が一斉に飛びかかろうとした時だった。



勇者と呼ばれ行方不明となっていた女性が王に深手を負わせたヴァント騎士を一瞬にして切り伏せ、更に魔王軍の者と共に一緒に居るのが見えた。



何故魔族達と、そんな事を思う間もなく王に回復魔法を施して重傷の王を助けようとしてくれている。




これらの事が僅かな時間の間に起きていた。









「ひ、引け!退却!退却だー!」

いくら大国の騎士団といえど魔王軍の主力とターウォの騎士団の攻撃を前に多勢に無勢となり時間が経過すればするほどヴァント王国騎士団が追い込まれていく。

更に指揮官のタウロスがカリアによって倒され、士気は下がり孤立する騎士が続出。これでは大国の名門騎士だろうがどうする事も出来ない。

一人が退却する事を伝えるとそれに便乗する形で次々と退却者が現れヴァント騎士団は逃げるように自国のある方向へと馬を走らせて行った。


ターウォは魔王軍に寝返ったフリをしていたのが本当に裏切り、それどころかロウガの国王を亡き者にしようとした裏切り者の汚名までヴァントへと着せる。

今回の敗走は世界最強と言われる強国に計り知れないダメージを負わせたかもしれない。





「一体どうなってんだ……!?何があった……」

「わ、わかんねぇよ!」

ロウガ騎士団と共に傭兵団も物陰に潜んでいて隙あらば飛び出しヴァントと共闘して魔王軍を倒すという事だった。

しかし立て続けに起こった出来事で飛び出すタイミングを見失い結局このまま物陰に居る状況が続いてしまっている。これに経験豊富な傭兵ドルムも戸惑いカーロンも頭が整理出来ていなかった。

「何で……どうすれば…!?」

一番動揺していたのはヴァント騎士でもあるアーガス、自国の副団長が状況はどうあれロウガの国王を負傷させてしまってその後にターウォ国王レオンがヴァントを裏切り者と言い、その汚名を着せられ世界最強の騎士団は敗走へと追い込まれてしまった。

更にあの勇者カリアが生きていて魔王軍と行動し、共に負傷したライザンを助ける光景を目にしている。

これに彼は自分の取るべき行動が分からなくなっていたのだ。



ヴァント王国に雇われている身だが、今となってはその王国も居づらくなってくる。



傭兵団は密かにその場から離れキリアム大草原から去って行ったのだった。










「傷は塞がった、これで後はよく休ませておけば……」

「それは、ベッドに寝かせて休ませれば良いという事ですのね!?」

カリアの回復魔法をライザンへかけ続け、一通りの傷は塞がり峠は超えたはず。後はゆっくり休ませるという言葉を聞いてミーヤはカリアへと詰め寄り確認していた、するとそこに遠くから様子を見ていた自国の、ロウガ騎士団の一人にミーヤの視線が入った。

「あなた方何してますの!?大至急我が王をロウガ王国へと運びなさい!」

「!?は、はっ!」

王女ミーヤの命に反応しロウガ騎士団は一斉に駆け寄りライザンをなるべく負担かけさせず慎重に運び、王国へと連れて行く。


「あなた方も来てくださいませ。……父の命を助けてくれたお二人も」

ミーヤの目はカリアとシュウをそれぞれ見ていた。

「僕も?でも僕は……」

カリアが呼ばれるのは理解出来る、しかし何故自分までとシュウは思った。そして自分の身分を明かそうとすると。

「貴方が何者だろうが父を助けてくれた事に変わりはありませんわ」

「……分かりました」

ミーヤの目は真剣そのもので冗談でも何でも無い、シュウはこれに断る事は出来ないと思い招待を受ける事にした。



こうして二人はロウガ王国の王女直々の命でロウガ王国へと同行する事になったのだった。







「何だぁ?一体、ヴァントの奴らだけで結局ロウガとは協力せず意外とすんなり終わっちまった……ドラゴンライダーとか結局出て来ねぇし、どうなってんだ?」

空でドラゴンライダーに備えていたバルバだったがその姿は最後まで見る事はなくキリアム大草原での戦いは終わっていた。

「とりあえず、俺らも引き上げだ。行くぞ!」

空の軍団へ帰還の命を下してバルバはマードン王国の方へとUターンして戻る。









「まさか……そんな……!」

バルバが見つけられなかったドラゴンライダー、アードは愛竜と共に空を飛ばず草木にずっと隠れて潜んでいた。隙あらばロウガ騎士団と傭兵団と共に魔王軍へ奇襲を仕掛けるつもりだった。



しかし出て行く事が出来なかった、一人の女勇者の姿を見て彼女が魔王軍と共に居るのを見てから…。



















魔王軍には近くで待機し休むよう伝えてからシュウはカリアと共に再びアースドラゴンへと乗り込み、ロウガ騎士団に囲まれる形でロウガ王国へと向かう。

王女がどういうつもりで自分まで招待したのかは分からないが、他の王族と違って彼らなら話をするのも良いかもしれない。少なくともミーヤ、そしてライザンは自分が魔族でもちゃんと話を聞いてくれる、その可能性はあった。


ロウガ王国へ着くとミーヤの指示で正面の街からは行かず後ろへと回り込むように移動し、王城の裏口へと来た。

正面から行ってロウガの住民に傷つき倒れた王の姿など見ては不安や混乱が起こる可能性がある、それを考慮しての事なのだろう。



アースドラゴンからカリアとシュウは降りてディーもそれに続く。裏口の扉を一人の騎士が開けると数人がかりでライザンを慎重に城内へと運び、ミーヤ、カリア、シュウも城の入口へと入りディーもついて行くとシュウは大丈夫なのかとミーヤの方を見れば構わない、とディーも城に行く事を許可した。

王女の許可があればとりあえず大丈夫のはずだ。








ロウガ王国の王の間、玉座は3つある。一つはライザンの座るもので間違い無い、もう一つは王女であるミーヤだろう。

残り一つは誰なのか分からないがおそらく妃の物かもしれない。

王の間へと通されたカリアとシュウは玉座へと腰掛けるミーヤの前に居た、先程まで操られ虚ろな表情だったのが嘘のようで幼さが残りつつも気品ある王女としての顔がそこにある。



「まずは勇者カリア、貴女の事は聞いてましたわ。相当な剣の使い手であり過去にヴァント王国で行われた武術大会にて圧倒的な強さで優勝し、勇者として魔王軍討伐に旅立った後に行方不明となったとか」

「ええ。実際はこの通り生きています」

ミーヤとカリアは互いの目を真っ直ぐ見つめながら会話する、ミーヤは直接あの武術大会へ足を運んではいないが噂でカリアの事を耳にしていて魔王軍との戦いで行方不明となりそれからはカリアについて一切聞く事が無かった。

代わりに魔王軍が各国へと侵攻を進め続けており、この状況にカリアは魔王軍討伐の時に命を落としたのかもしれない。そんな可能性を考えた事もあったミーヤだが無事に生きている。それどころか父ライザンの命を救ってくれたのだ。


そしてそのカリアと共にライザンを助けた魔族の少年、魔王を名乗るシュウにミーヤはカリアから視線をそちらへと向けた。



「一つ訪ねてもよろしいかしら?」

「どうぞ」

ミーヤは自分の顔の前に右手の人差し指を立ててシュウへと問いかける。



「あなた本当に……魔王軍の頂点に立つ魔王ですの?」

自分より小さな少年、このような人物があの世間から恐れられる存在である魔王軍。その頂点である魔王、それがシュウである事にミーヤは信じられない様子だ。実際はもっと恐ろしい異形のような怪物を想像していたのかもしれない。

「嘘偽りなく僕が魔王シュウだよ、ミーヤ王女」

明るく笑って自分が魔王である事を包み隠さずシュウはミーヤの前で言い切った。

「あなたのような子供が……」

改めてシュウの顔をミーヤはじぃっと見てみる、笑う顔は可愛らしい人間の子供と変わらない。黙っていれば魔族とは分からないぐらいだ。



「魔王でも私はあなたに感謝するわ、魔王君」

声がすると王の間の扉が開かれて入って来た人物、扉を開いた両端の兵は揃ってその人物へこうべを垂れた。

「お母様……」

ミーヤはその人物に対して母と呼ぶ。


入って来た人物は女性でありミーヤと同じ金髪でロングヘアー。薄着で桃色のスリット入りドレスを着ており身長はミーヤと同じぐらいかそれより高いといった所か。ミーヤの母であるが実に若々しい、姉だと言っても疑う事は無い。

頭にティアラを付けていて気品ある雰囲気が漂う、おそらく玉座が3つある内の残り一つの席。それは彼女の物なのだろう。

「初めまして、この国の后を務めるセティアです」

カリアとシュウに向けてロウガ王国の后でありミーヤの母親セティアは挨拶をし、その後に玉座へと向かってゆっくり歩き始める。



「お母様。お父様が……」

「話は聞いています。ミーヤ、あなたが戦いで危険な目に遭い危うく命を落とす所をライザンが庇って深手を負ったと」

「……はい」

ミーヤの座る玉座まで近づき、その間ミーヤとセティアは会話を交わす。ミーヤは自らのせいでライザンが命の危機に陥った事を後悔していて、それにセティアに怒られるのを覚悟した。



するとセティアは豊かなその胸にセティアの頭を抱き寄せた。

「よく……無事で戻って来てくれたわ、私はミーヤとライザンが無事に二人とも戻って来てくれた事が本当に嬉しい……!」

「お、お母様……!」

母に抱かれた娘は涙し、今は王女という立場を忘れ身を任せる。それに母は頭を優しく撫でてあげ、その目にうっすらと涙があった。1歩間違えればミーヤかライザン、またはどちらも失うという最悪の結末があったかもしれない。

二人が生きて帰って来てくれた、それが嬉しかったのだろう。



この光景を見ていたカリアとシュウはとても気持ちが暖かくなり、二人の事を助けられて本当に良かった。


改めてその実感が湧いてきたのだった…。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、美人母娘な回となりました。セティアはその年とは思えない程に若い美人のつもりで書いてます。


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