47、同盟の陰で
キリアム大草原
古の時代に魔物達の大軍がこの草原を抜け、国へと侵略しようとしていた。
だが魔物達が草原を抜ける事は無かった、その前に一人の騎士が少数精鋭の騎士団を率いて大軍の魔物達を全員討ち滅ぼし侵略を防いだのだ。
率いた勇気ある騎士の名がキリアムであり、それ以来この草原は騎士から名を取ってキリアム大草原と名付けられる。
「よし、此処で待ち伏せしよう」
地の利もあって一足先にキリアム大草原に到着していた国王ライザン率いるロウガ王国騎士団、そこに傭兵団達も同行している。
「アードは…多分、近くに潜んでいるか。大きなドラゴンが空を飛んでは目立って目印になってしまうだろうからな」
「ちっ、一声かけもしないで勝手に行動しやがる」
ドルムは何時の間にかアードの姿が見えない事に気づくが、おそらくそういう企みだろうと見ておりザックは勝手に行動しているアードに舌打ちして不満そうだ。
「おお、これはライザン国王自ら出陣とは」
ライザンへと声をかける者が現れ、ライザンだけでなく一同が声のした方向へと向く。
そこに居たのはヴァント王国騎士団の鎧兜と剣一式の装備を身に付け赤いマントを付けた騎士の男。その後ろには大勢の騎士達が控えている。
彼らはヴァント王国騎士団、その大軍を率いる隊長がこの赤いマントの騎士だろう。
「お主は確かヴァント王国騎士団の副団長…名をタウロスだったか」
「一国の王に名前を覚えていただけるとは光栄ですね」
タウロスという騎士はライザンに対して優雅に改めて挨拶した。
「今回はヴァント王国との共闘となる、共に魔王軍を打ち倒してみせようではないか」
「ええ。しかし……」
ライザンは共に魔王軍を倒し世を清めようと意気込むとタウロスは視線をライザンからロウガ騎士団の方へと向ける。
「噂通りの少数過ぎて心配になるぐらいですね、いくら強者とはいえ」
タウロスは見下すような発言をして、それにロウガ騎士団の一部はムッとした表情になる。しかし下手に突っかかるような事は無い、今は共闘する事が優先であり味方同士でいがみ合っている場合ではない。
「まあ無理せず戦いは我々ヴァント王国の大騎士団にお任せを。我々はこの通り数が多く一人一人も強いのでね」
「…頼もしい事だな」
「勿論、我々が世界最強の騎士団である事を改めてこの戦いで証明してみせますよ」
魔王軍を倒す事に平和を取り戻すというよりもタウロスはヴァント王国騎士団が世界最強であると証明する為の手段として利用する、そんな企みが見えている。
「ヴァント王国騎士団ってぇのは大抵あんなんかぁ?上があれで大丈夫かよ」
「おい…!タウロス副団長に聞こえるぞ…!そういった人ばかりではない、と思いたいが…」
カーロンは呆れ気味にやり取りを聞いていてヴァント王国騎士団は大抵ああなのかと呟き、アーガスはそれを注意。最後にはそのような者ばかりではない、自分に言い聞かせるようでもあった。
国王のベーザに騎士団長のベン、その性格は彼らの元で働くアーガスは知っている。いずれも決して褒められたような人格者ではない、最初は上辺は良くてもその根元にあるのは自らの利益と欲。それは上に立つ者が大抵そうだ、このタウロスも例外ではない。
そう考える中アーガスはベーザの子であるヴァント王国の王子リオンの顔を思い浮かべる、彼とは年代が近いというのがあって言葉を交わした経験を持つが父親と違い国や民の事をちゃんと考えてくれる優しき人物。
そして他国ではあるが王として立派な器を持つライザン、上の立場でありながら心から民を思い守る数少ないであろう王族達。
他の王族にも見習ってもらいたいと思うが騎士の端くれの自分が言う事ではないとアーガスは口を閉ざしていた。
「おう、アーガス。お前は今回我が騎士団ではなく傭兵団としてか、まあ前回お前の居る傭兵団のおかげで砦は守りきれた。騎士より傭兵の方が向いてそうかな?」
「はっ……傭兵団と共に居ますが自分は誇りあるヴァント騎士のつもりで戦っております」
同じ国の騎士であるアーガスの姿にタウロスは見つけ、近づくと軽くアーガスの肩を叩きながら挨拶。傭兵団ではあるが副団長であるタウロスはアーガスにとって上に立つ騎士だ。
「それであっさりぶっ倒されてヴァント騎士の顔に泥を塗るような無様な真似だけは勘弁してくれよ?あの程度って思われたら困るのは俺だ、そうなったら騎士団長に就任するのが遠くなっちまうからさ」
それだけ言うとタウロスは自軍の騎士団の元へと戻って行った。
「あの副団長のお方、未だ行方不明のベン殿の心配などしておらず戻らないまま空席の騎士団長を狙っているという感じですな」
黙って様子を観察していたガンスター、副団長として心配などしてなくて騎士団長となり上へ行くとタウロスがそういう性格だというのが充分分かったようだ。
「地位や権力、上に立つ者はそれに執着する傾向があるな。一部例外はあるとして」
「分かってはいたけど…いい加減うんざりしてくる」
同じく一部始終の会話を聞いて見ていたローレとウィザ、彼らとて色々渡り歩いており権力争いというのも見てきた。
ただそれでも慣れるものではない、人の裏側にある欲望というのは。
「(奴らは俺が上にのし上がる為の踏み台だ…せいぜい利用させてもらうとするか。騎士団長になれば世界最強の騎士はこの俺、ベンの老いぼれは一生戻って来ない方が都合が良い…!)」
自陣の方へとタウロスは戻った後に作戦の確認をするロウガ王国騎士団を見て利用し、自分がのし上がる事を考えており騎士団長となった自身を想像すると口元がにやけてくる。
そして彼はベンの無事を願うどころか死を願っていて奥底に強い欲望がそこにあった…。
まずは此処まで見ていただきありがとうございます、表面上は協力していてもその中身は利用しかないという信頼無しな敵でした。
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