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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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45、揺れる心

作戦の方は大体決まりつつあった。


ゼッド率いるドラゴン達が最前線で戦うのは何時も通り、だが何時も違うのは今回の相手には空に強力な戦力があるという事。世界でも少ないとされるドラゴンに乗る戦士、ドラゴンライダーだ。

そこはバルバの空の軍団が集中砲火で撃ち落とすという選択で行く。

更にクレイの不死身の軍団も出て大部隊で来るであろうロウガとヴァントの連合騎士団の数に対抗する。


そしてカリアとシュウの勇者と魔王の出陣。


今回は総力戦となる事が予測され、この戦が今後を左右しかねない重要な戦であるので騎士団達も出し惜しみは無いだろう。

裏を返せばこれで完全勝利を収めれば向こうに打つ手はほぼ無くなる可能性がある。そうなれば魔王軍が一気にロウガ、そしてヴァント王国まで一気に侵攻し制圧してしまう事も夢物語ではない。


「皆様ー、夕食の準備が整いましたよー♪」

そこに場違いと思われる明るい少女の声が作戦会議室に響き渡る。魔王軍の料理長メリルは皆の料理の準備をしており、それが完了して呼びに来た。

「腹が減っては戦が出来ない…と聞くからね。しっかり英気は養っておこう」

シュウがそう言うと先に席を立ち、ディーと共に食堂の方へと向かう。


「メリル、良い酒も用意したか?」

「えー?またですかぁ?バルバさん飲み過ぎですよ!」

「良いだろ!勝利の前祝いだ!」

さっきワインを1杯飲んだ所だったのだがバルバにとっては足りず、むしろ呼び水となったようでメリルに更に酒を求める姿があった。そして彼はもう勝利を信じて疑っていない。

若干気が早すぎるのではとクレイはバルバを見て口に出して言葉にしそうだったがそれで突っかかられて面倒になりたくないと思って何も言わず彼も席を立ってミニゴーレムと共に歩く。

「じゃ、こっちでとっといてあるワインでも開けるわ。ゼッドも良ければいかが?」

「うむ……いただくとするか」

「そうこなくっちゃ。お酒飲めるの私達ぐらいだからねぇ」

酒が飲めるマリアン、ゼッド、バルバの3人はマリアンの用意しているワインを開けて3人でいただこうと決めてからそれぞれ席を立つ。






基本的に魔王軍の食事を用意するのはコック達であり、その中でメリルは魔王や長達といった実力者達の食事を担当する料理長。その他が兵士達の食事担当だ。なのでメリルがシュウ達の食事を作り終えている頃には厨房は大勢の兵士達の食事を作ろうと皆が忙しく動いていてキッチンは戦場となっていた。


食堂でカリアにシュウ、ミナや長達が集まり各自食事をとる。皿にはミディアムに焼かれたステーキが乗っておりジャガイモやニンジンを添えて、それに合うソースがかかり味付けされていた。

その傍の別にある皿にはライスが盛られていて更にティーカップにスープが入っている。

これが本日のメリル特製のメニューだ。


ちなみにディーには何時も通りハンバーグが用意されており早速ディーはがっつき食べていた。



「おっ、こいつは行けんな。正直どうなんだって思ってたけどよ」

バルバはマリアンから勧められた赤ワインを飲むとまろやかな味わいでそれがステーキとよく合い、食もワインも進む。

「失礼ねぇ。飲まないなら私が全部飲むわよ」

「行けるって言ってんだろ。全部は飲ませねぇぞ!」

最初に不満が飛んできてマリアンは本気かどうか分からないが全部自分で飲むと言いつつワインを口にしていた。

その隣でゼッドはワインを飲みつつ料理をほぼ平らげていく、ゼッドの場合は酒と料理のマリアージュとか特に関係無しで食べているようだった。

「…酒臭くならない程度にね」

酒の匂いが得意ではないクレイ、いざという時は魔法で結界張ってでも匂いを回避しようかと考えている。



「街のレストランで食べるよりメリル、彼女の作る料理の方が美味いな」

「同感。まあメリルの腕を超える料理人は早々いないと思うから」

カリアよりも長くメリルの料理を食しているシュウ、そのせいかメリルの作る料理を超えるような物には中々会う事は無い。カリアも魔王軍で彼女の作る食事を口にしてから一番美味いと思っている。

そしてカリアの食べる量は大柄な体格を誇るゼッドにも負けておらず、シュウはもう慣れたのかそういったのは気にせずステーキを食べ進めていた。








食事を丁度終えた頃に一人の兵士が食堂へと入って来た。

「魔王様、面会を希望する者が訪れています」

「誰かな……いや。行った方が早いね」

食後の果実ジュースを飲みつつシュウはやって来た兵士へと誰が来たのか尋ねようとするが自分で行く方が早いと思って立ち上がり面会を希望する者の元へと向かって歩く、それを見てカリアもその後に続いて歩きディーもシュウの足元に寄り添いしっかりとついて行った。





「やあ、魔王。こんな早くロウガ王国間近まで来てヴァント王国の首を取るかもしれない所まで来るとは…驚かされるね、魔王軍の力には」

マードン王城の入口、そこに部下を連れてターウォの少年王レオンが立っている姿が駆けつけたシュウとカリアの目に映った。アムレート以来の彼の訪問だ。近くにはホルクの姿も控えており小さくカリアとシュウに姿を見れば会釈した。

「わざわざ勝利の祝いに来てくれたのかな?」

「まあついでに、て所だ。ちゃんと目的をもって我々ターウォは此処に居る」

それでわざわざ来ないだろうと分かりきってはいるが、シュウはあえて冗談混じりに同じ目線のレオンを見て言うとレオンはフッと笑い一旦部下達の方へと目を向ければ再びシュウの方へと視線を戻す。


「ターウォは此処から魔王軍と共にロウガ、ヴァント王国と戦う」

それは表立って王国騎士団と戦うという表明だった、レオンは自軍を引き連れてマードン王国へと魔王軍の助っ人にやってきたのだ。

「…良いのかな?同じ人間を敵に回す事になるけど」

「連中は間違っている、そんな奴らが作る世界などろくでもないし実際そうだ。魔王も見ただろ?」

「…………」

レオンの言うように魔王軍が制圧するまでは王国は何処も好き勝手に暮らす王族や貴族が民を貧困に追いやっている。それはシュウも、そしてカリアも今まで散々見てきた、連中に手を貸して人間としての尊厳を守るぐらいなら連中を滅ぼす道を選ぶ方がずっとマシだ。

レオンはそう考えていた。

「かと言って魔族も全員が良いやつ、とは限らない。自分勝手な人間と同じぐらい最低なのが魔の方にも居るのは事実だ」

人間は自分勝手な悪人、だが全部の人間がそうではない。それはカリアを見れば分かる、そして同じ魔も善人がいれば悪人もいる。結局姿は違えど人間も魔も根本的な所は同じなのかもしれない。

「…………お前、本当変わった魔族だな」

「そうかな?」

「私もそう思うぞ」

喋るシュウに対してじっと見ていたレオンは自分と同じ魔も悪いと言うシュウが変わり者と思っていてカリアもそれに同意していた、シュウとしては別に変わった発言をしたつもりなど無いが。

「レオン国王も変わってるけど良い人だと思うよ」

「何を、俺は善人という訳じゃないぞ」

「だって国王の身でこんな自ら行動して戦いが起こる間近で助っ人として現れるし。他の人間の国の王じゃ真似出来なさそうだよ」

レオンは使いに伝言を頼まず何かあれば自ら行動し、訪問してくる。事実シュウの元へ来たのはこれで2度目だ。更に戦いで助っ人としても参加してくれる。他の王じゃ中々出来ない事だとシュウは素直にレオンの事を褒めた。

「別に他の兵士とかもやっている当たり前の事をしているだけで…」

「それを国王の身で出来るのは凄い事じゃないかな?」

「……長旅で疲れた、俺はちょっと休ませてもらう」

そう言うと逃れるようにレオンは部下を連れて城を後にして去って行った。それにホルクも続いて歩く。







「……(何なんだ、あの魔王。くそっ!何か調子狂う……あいつを裏切ってヴァント共々魔王軍を滅ぼす、それで終わりのはずだ!何を迷う必要がある!?)」

宿へと急ぐ道中、レオンは心の中で迷いが生まれていた。当初は人間側と魔王側、両方を利用し共倒れさせる予定だった。

しかしシュウがレオンを素直に認め褒める、今まで褒められた事は無い訳ではない。だがそれは上辺での事だ、本心からは言われた事は皆無だった。そういう経験が乏しいせいかレオンはそれに心を揺さぶられる。

「(あいつを……魔王シュウを倒さなきゃいけないのに、倒さなきゃ……………倒さなきゃ、駄目なのか…?)」



「…王の思うがままに行動すればそれで良いと思います」

「!ホルク……」

そこにレオンの苦悩を見透かしたかのようにホルクは傍でレオンを見ないまま言った。

「臨機応変に作戦は変化していく、それは戦場では当たり前。こちらはそれに合わせて動きます」

「……………」

レオンはそれに黙ったまま歩き、ホルクは少しその姿を見た後に歩き始める。若き王はどういう選択を取るのか……

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、当初は裏切るつもりで魔王軍と協力関係にあったレオン。彼はどんな選択をするのか、この先で明らかとなる事でしょう。


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