43、止まらぬ魔王軍の侵攻
今回は結構血のシーンだとか多い方です、苦手な方はUターンして戻るのをお勧めします。
「うおお!」
巨大な戦斧が一人、また一人と人間の騎士を屠っていく。その度に斧が鮮血を浴びた。
軍を率いる長であるゼッドは戦場に出て自ら真っ先に最前線で戦い続ける。
ゼッド率いるドラゴン軍団は一つの王国へと攻め込んでいた、その国はマードン王国。小国ではないが大国でもない、騎士達のレベルは大国ヴァントと比べれば落ちる。だが魔法においては他の騎士団よりも得意としており騎士であり魔法の使い手揃いだ。
「凍てつく風よ、吹き荒れろ!ブリザード!!」
騎士の一人が魔法を詠唱しドラゴン達へと向かって身を凍えさせる吹雪が吹き荒れる。
「カァァーーーーー!」
ゴォォーーーーーーーッ
「うわああああ!」
吹雪に対して1匹の赤いドラゴンが炎のブレスを吐き出した、凍てつく風を飲み込み燃え盛る炎が騎士達へと迫り竜の炎を喰らい地面に転がりのたうち回る。
「ぐうう、冷気で駄目ならば雷か…!」
一人の騎士はブリザードの魔法を炎のブレスでかき消す、氷魔法の効果は期待出来ないと判断。炎の魔法は元々ドラゴンという種族は炎に対して高い耐性を持つ。一部例外はあるが、目の前の竜達は大半が例外という事は無いだろう、先程から主に炎のブレスが多いからだ。
なら残る選択は雷のみと騎士は声を張り上げる。
「全員魔法は雷の方を使用せよ!」
その指示通り騎士達は雷魔法の詠唱へと入る。
「させんわ!魔法を唱える騎士から真っ先に潰せ!」
しかし指示はゼッドの耳にも聞こえ、竜達へとすぐさま指示を送る。するとドラゴン達は剣を振るう騎士よりも魔法を多用する騎士へと狙いを定めて爪を振るい、ブレスを吐く。
「ぐああああーーー!」
戦場に断末魔が響き渡る。
情け容赦無しに戦いは続き、どちらかが倒れ全滅するまでこの戦が終わる事は無い……。
「久々の戦だ!お前ら暴れちまえ!」
ターウォで負傷し戦線離脱していた空の長バルバ、傷はようやく癒えて彼はゼッド達が正面から騎士団と戦っている間に空からマードン王国の王城を強襲し乗り込んでいた。
近くの騎士が血を流し倒れているのはバルバが強襲して挨拶がわりに剣の一撃を浴びせたせいだ。
バルバの声と共に城へ乗り込んで来た魔物達は各自暴れ始め、突然の魔物達による襲撃に兵士達は迎撃へ向かうも充分な対応が出来ておらず次々と倒れ伏し城内は戦場と化して、あっという間に血で染められていった。
「そんなもんかよ!」
ズバッ ズバッ
バルバの剣は兵士達を無残に切り裂き、命を断たせていく。その中で頭にバルバはちらついていた、過去に負けた時の場面。ホルクの顔、それが兵士と重なる時があって必要以上に兵を斬りまくったりする時もあった。
完全なる八つ当たりだ。
烈火の如き怒りを見せるバルバを中心とした軍に不意打ちを受けたマードン王国に残った兵では歯が立たずバルバは王の間まで乗り込んで来た。
「ひい!?ま、魔物!」
玉座から転がり落ちて腰を抜かす国の王、そこにバルバは近寄る。
「今俺ぁ虫の居所が悪くてよぉ、とりあえず目障りだから死ねや」
全くの理不尽な理由で王はこの言葉を聞いた直後にバルバの剣で体を貫かれ、動かぬ血溜まりの肉片と化したのだった。
「こいつはまた…派手にやったもんだね」
マードン王国を制圧したと報告を受け、シュウとカリアはマードン城内へとやって来た。城の中へと入った時、二人の鼻に伝わって来る血の匂い。
魔物達が城を掃除している姿が見える、これから魔王が来るという事なので汚したままの城では迎え入れられないとなってだろうが今回はバルバが必要以上に暴れ過ぎて何時もの制圧以上に人間達の遺体が無残な状態とされていた。
なので掃除は何時も以上に大変でありシュウが来ても掃除が終わらない状況だ、それでも王の間は真っ先に綺麗にしたようで此処に来ると襲撃など起こらなかったと思わせる程に綺麗なものだった。
主を失った玉座へとシュウは近づき、腰掛けた。珍しくディーの姿が無いが連れてこなくて正解だ、あまりこういった血の匂いを生まれて間も無い竜に匂わせるのは良くない。今頃メリルと一緒で彼女自慢の料理を味わっている頃だろう。
「優秀な魔法の使い手が多いと聞く国ではあったが、相手が悪かったようだな」
マードン王国は剣と魔法、両方を得意とする騎士が多く魔法騎士団として名を馳せていたが今回彼らが相手をしたのは白兵戦において無敵の強さを誇るゼッド率いる竜の軍団と空からの強襲が得意なバルバ率いる空の軍団。
いくら優秀な魔法騎士団とはいえ魔王軍が誇る2つの軍団に襲われてはひとたまりも無いだろうとカリアは玉座に座るシュウの顔を正面から見ながらそう思っていた。
「最近僕やカリアが戦場に出る事が多かったし、バルバも久々の戦いというのもあった…。ミナ、上手い采配だったね」
シュウの視線は王の間の出入りする扉、そこに何時の間にかミナの姿があった。
「バルバとゼッドの性格も考えての作戦です、上手く使えばそれが立派な矛にもなる」
今回の侵攻についての作戦を考えたのはミナであり正面からゼッドが魔法騎士団の相手をして引き付け、手薄になった城をバルバが強襲する。それぞれの戦士としての長所を生かした策だった。
結果としてシュウやカリア、そして他の長の力を使うまでもなくマードン王国を制圧出来たのだ。
「この調子で行けばヴァント王国に攻め込めるのは時間の問題か」
玉座の背にシュウは背中を預けた、それぞれの魔王軍の長が自分達がデーモンロードについて調べている間に侵攻を進めていく。当面は注意するべき相手はヴァント王国よりもガーランやアスの蘇らせようとしているデーモンロード、その存在を無視は出来ない。
更にアスに関して言えば彼はクレイの軍団や青いドラゴンを凶暴化させて暴れさせる魔法を持つ、それについても警戒や対策が必要になってくる。
人間の国へ侵攻するのに最大の障害となるのが同じ魔族なのはなんとも皮肉な話ではあるが。
「ヴァント王国と戦う時は、私は必ず戦いへ出るからな」
「勿論邪魔をするつもりは無いよ。存分に戦うといい」
カリアはヴァント王国と戦う時が来たらその時は間違いなく自分は戦場へと出ている、シュウはそれを止める気は無く笑って背中を後押しする。ヴァント王国を潰す事は人類の最大の抵抗する術を失わせるのに繋がり利害一致というのもあるせいか。
「次のロウガ王国を落とせばヴァント王国はいよいよ近いですが、その分彼らが援軍を送りやすくなるので相手の総力は今までより高まると思われます」
今まではヴァント王国から場所は離れ、短期間で決着をつけていたので本国の援軍などが来る前に国を制圧してきた魔王軍だが此処からはヴァント王国は近い。それだけ戦場での距離は近くなり向こうの送る兵が到着する確率はより高まる、ミナはその為敵戦力は今までより高くなると予測していた。
更にロウガ王国もヴァント、アムレートと同じく大国だ。
「敵はこのまま大人しく城に籠城戦、とは考え難い。騎馬部隊が自慢のロウガ王国です、うってつけの草原がロウガ王国へ向かう途中通らなければならない…向こうがヴァント王国と組み、大軍で待ち伏せているとすれば草原が最も可能性は高いかと」
「大軍か……ヴァント王国も近いだろうし勿体ぶって温存とかしてる余裕はそろそろ無いはず、こっちを叩くなら最大のチャンスと見るかもしれないよね」
「ああ、そして大軍を全部倒せばいくら大国といえど早々に同じ戦力の補給は出来はしない。お互い正念場という事か」
それぞれが話し合い、次の戦いがおそらく一番重要な戦いになると考えていた。それぞれの国の位置に地形関係を思えば相手が力が発揮しやすい場は草原。馬が自由に動きやすく広い場所が騎士団に有利だ。
相手としてはこれ以上の侵攻を許したくはない、なんとしても此処で仕留める事を考えるであろう。
勿論彼らだけでは決めず、この後に長の者達と合流し改めて会議を行うつもりだ。
侵攻が始まってからの最大の戦いの時は近い。
まずは此処まで見ていただきありがとうございます、ゼッドとバルバ達がひたすら戦うという回でした。
流血は何時もより多かったので今回は注意書き必要かなと判断し前書きの方に書きました。
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