40、奮闘する傭兵団
「血の匂いがしてきたな」
ヴァント王国から馬を飛ばし、傭兵団は各自の馬で魔物の襲撃に遭っているという砦を目指す。その時先頭を走るドルムの鼻に伝わって来る匂い、それは長きに渡って戦場に立ち続け戦い続けてきた経験から伝わった。
「いよいよ戦いか!こっちは兵舎に待機させられっぱなしで腕が鈍りそうだったんだ、存分にぶっ潰してやるぜ魔物ども!」
兵舎での共同生活に飽き飽きしていたザックがこの中で一番張り切っているようでこれから戦場に行くにも関わらず魔物相手に思いっきり暴れられて身体を動かせる事に喜びを感じていた。
「つかウィザの親父が移動魔法とか唱えてくれりゃわざわざ馬を使わずともひとっ飛びだったのによ、覚えてねぇの?」
「移動魔法はそんな気軽に覚えられる物じゃないんだよ。自分一人が空間移動するだけでも苦労するというのに複数を一度に運ぶなど、古の賢者や魔王のような常識外れの魔力ぐらいのものだ」
馬で移動するのがあまり好みではない様子のカーロン、魔法使いなら移動魔法が出来るだろうとウィザを見るが移動魔法の習得は容易ではない。一人の移動すら習得があまりにも難関とされており、魔王であるシュウが当たり前のように複数を運んでの移動魔法を使いまくっている事など当然知るはずが無かった。
「見えた!もう仲間が戦っている…俺は先に行くぞ!」
砦が見えるとそこにはヴァント王国騎士団の騎士達が必死で魔物達と戦う姿、同じ騎士のアーガスは仲間の危機に馬を飛ばし先頭のドルムを追い越して真っ先に砦へと突っ込んで行った。
「おい!無理するな!」
そのドルムの言葉が聞こえたのか聞こえていないのか、どちらにしてもアーガスの突撃は止まらず彼は馬に乗ったまま剣を抜き取る。
武術大会では白兵戦で剣による戦いだったがアーガスは本来こういった馬術による剣での戦いを得意としている、今の彼は武術大会のベスト8の時よりも力が発揮出来る状態だ。
「ぬおおお!!」
ドシュゥッ
「ガァァーッ!」
同僚の騎士が斧を持ったオークに襲われている、オークは斧を高々と振り上げており騎士へと重い一撃を振り下ろそうとしていた。
だがその前にアーガスはオークの胴体を剣で横薙ぎ、オークの腹は切り裂かれてその場で絶命する。
「大丈夫か!?」
「お、おお!アーガス助かったぞ!」
同僚である騎士の無事を確認したアーガスはそのまま前を見据えた。その先に赤く大きな鳥、ブラッドバードがアーガスに前足の爪を立てようとしていた。
ドスッ
「ゲェッ!」
グシャッ
「あんま突っ走るんじゃねぇっての」
「天に召され己の魂を清めよ」
その前にブラッドバードの身体で矢が突き刺さりブラッドバードは地面へと落下、素早く弓矢を放ったのは弓使いのカーロンだ。そこに鋼鉄の棒を叩きつけ、赤い鳥にとどめを刺した後に天へと祈るガンスター。
急造の連携だが中々息が合っていた。
「オラオラオラーーー!!」
ズドドドドッ
ドカァッ
ザックはオークの腹へと何度も拳による突きを左右素早く打ち込み、最後にオークの顎めがけて拳を突き上げる。ザックのアッパーが決まりオークの巨体は宙を舞って倒れ、そのまま起き上がる事は無かった。
共同生活で溜まってた鬱憤を晴らすかのようにオークを殴り蹴り、暴れまくる。
「風の加護を彼へ与えよ!」
ウィザは攻撃魔法を得意とするが今のこの状況では大勢の仲間達が戦っているので此処は広範囲の攻撃魔法は使わない、なのでローレへと補助魔法をかける。それは機敏さが一時的に上昇する魔法であり元々素早いローレは文字通り目にも止まらぬ速さで敵へと迫る。
「ふっ!」
ズバッ ズバッ
剣を持ったオークがそれに気づく間も無く横薙ぎからの振り下ろし、2段斬撃を見切られず身体を切り裂かれ多くの血を流しながら倒れていった。
「グオォォォーーー!」
オーク達はそれぞれ闇の黒い弾を作り出す、彼らの魔法であるダークボムが発動されようとしている。その前には重戦士のモーザ、彼らはターゲットを決めたようだ。
ドンッ ドォォーーーンッ
それぞれの黒い弾がモーザへと放たれた、それを避ける暇も無くダークボムは着弾。それを確認したオークは仕留めたと確信したのかニヤリと笑った。
「………その程度か、効かないな」
「ウオ!?」
爆風から姿を見せたモーザ、その姿は喰らう前と何ら変わっていない。つまり無傷だ、これにオークは驚きと戸惑い動揺が生まれていた。
その隙を見逃す程モーザは優しくはない。斧を振り回しオーク達を吹き飛ばしていく。
「どうしたどうしたぁ!」
ドルムは大柄な体格に似合わぬ身のこなしを見せ、軽やかに大剣を振るってオーク達を切り伏せていった。
「カァァーーー!」
そこにブラッドバードが空から強襲を仕掛けて来る。
「おっとぉ!」
ズバシュッ
「ゲゥっ!」
自分を掴みに来たブラッドバード、その瞬間を狙ったのかドルムはブラッドバードの身体を真っ二つに切り裂く。
「俺らが来たからには大丈夫だぜ騎士さん達よ!後は落ち着いて戦えばオーク程度どうって事は無ぇ、空から来るブラッドバードも孤立してる奴を狙って来てんだ!なるべく最低でも2人ぐらいで固まって戦え!」
ドルムは魔物達の対策を騎士達へと伝える。それによって戦況は好転していき、最初は押されていた騎士団も落ち着きを取り戻し本来の大国の騎士団としての力を発揮。
「けっ…活きのいい野郎が出やがったか、むさ苦しい男より女が良かったんだがなぁ」
勢いの出て来た傭兵団、それを支えているのが指示をしているドルムだと戦況を今まで黙って見ていたオークキング、バガスは判断。彼さえ倒せば総崩れになってこっちがまた優勢になる、狙いを定めるとバガスはドルムの前に立ち塞がる。
「フン、むさ苦しい野郎で悪かったけどな。こっちだって好きで暑苦しい豚野郎なんざ相手にしたくねぇ、まあ焼いて豚肉にでもすれば美味くて食糧にはなるかもしれねぇか」
「てめえ…ぶっ殺してやる!」
ドルムの挑発するような言葉にバガスは怒れる表情へと変わる、ドルムの方もバガスの雰囲気を見てこいつが軍勢を率いる親玉だと見ておりバガスさえ倒せば一気に戦いは終わりへと近づく。
それぞれが大剣を構え、戦いは終盤へと突入する…。
まずは此処まで見ていただきありがとうございます、今回は傭兵達の活躍の回でした。彼らの力はどれぐらいなのか、とりあえずこれぐらい戦えるというのを表現しようと書きましたね。
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