36、エルフの女王に可愛がられる魔王
今回はおねショタ要素強めとなっております、苦手な方はお戻りください。
「女王ヘラ、丁度良かった。僕達は貴女に訪ねたい事があって此処に来たのだけど…お出かけで?」
ヘラが玉座から立ち上がり外へと出る所に会えたのは幸運かもしれない。用事でしばらく留守にするとかだったら次に話を聞くのが何時になるのか分からなかっただろうから、今のうちに此処で話を聞くべきと思いシュウはヘラに行き先を訪ねた。
シュウに対してヘラは視線を下へと落とす、それぐらいの身長差であり前回は玉座に座っていたので分からなかったが長身のカリアと同じぐらいヘラも身長が高い。
「出かけるという訳ではない、身を清めに向かおうとしていたのだ。そこに入口が騒がしいと思い来てみればお前達が居た」
「身を清める…ですか?」
「ああー、城から少し歩いた所に温泉が沸いていてね。一般の男、一般の女と女王専用で分けられ入浴出来る場所があるんだよ」
城から出て水浴びにでも行くのかとカリアが思っていたら横からテシが口を挟み村の奥に温泉がある事を教える。ヘラはこれからその場所へと入浴に向かう所だったのだ。
「それだったらまあ入浴の後でもいいか」
「どうせだったらカリアも魔王様もうちの温泉入って行ったらー?戦いの日々で忙しくても身体は清めておかないと」
シュウはヘラが入浴を終えるまで里をゆっくり回って待つつもりだったが、テシは二人も温泉入らないかと勧めてきた。確かにマード山脈に行ってきたカリアとシュウ、散々移動し更に戦闘にもなっていたので此処で人や魔の目に届かぬ森の奥の里にある温泉に入って身を清めるというのは魅力的な話だ。
「その間ディーはどうすれば…」
「ドラゴンだー」
「可愛いー♪」
「木の実食べるー?」
「が、ガウ?」
その時ディーはエルフの子供に囲まれていて食べ物差し出されたりしており、子供の人気者状態となっている。
「子供がディーを気に入ってくれたらしい、何時までもシュウだけについて歩くよりも他の者と交流を深めるのも良いかもしれないな?」
「確かにまあ場合によっては僕がディーの傍に居られない時もあるかもしれないしディーだけの時間も作って慣れさせた方が良いか……」
エルフの子供とディーが交流を深める姿が微笑ましい光景でありカリアはそれを見て笑みを浮かべつつシュウへと独り立ちの練習を少しさせてみようかと意見し、シュウも立場として常にディーの傍にいられるとは限らない。ディーがシュウの傍にいなくても大丈夫なように今回はエルフの子供にディーを任せようと判断した。
「話は纏まったか?」
「はい!ヘラ様、勇者と魔王の二人も温泉に入って大丈夫ですか?ついでにあたしも入りたいなぁって」
「構わん」
テシのカリアとシュウ、更に自分の温泉入浴許可を求めればヘラは一言だけ言って温泉のある方向へと歩き許可を貰った一行もそれに同行する。
「手短な話であれば歩きながらでも出来るが」
「いえ…あまり手短で終わる可能性は無さそうなので後で結構です、これから温泉という気分と合わない話だと思いますので」
「そうか、中々深刻そうな話のようだな」
ヘラは振り向かず自分へ話があるなら手短で良ければ今話せると伝えるとそれに対してカリアはそう簡単に終わる話ではないかもしれない、その上これから温泉という気分が壊れかねない。そういう話なので入浴後に話す、それを受けて深刻な話とヘラは察したのだった。
それから少し歩き続けると温泉のある場所まで辿り着き、そこは男湯と女湯。そして女王専用の湯に分かれていたのだ。
「じゃあ僕はこっちで」
「うむ、後でな」
シュウは男湯の方へと一人歩いて行った。後はカリアとテシは女湯、そして女王であるヘラは女王専用の湯に一人入る事になるだろうとこの時シュウはそう分かれるだろうと思っていた。
「おお…広いなぁ」
男湯の脱衣所で服を脱いでシュウは一人、屋外にある広いお湯を見回した。
別に広い大浴場は初めてではない、アムレートの城にある風呂を何度も利用している以前に他にも様々な城の豪華な風呂を使わせてもらっていた。しかしいずれも屋内であり天井がオープンな状態での風呂は新鮮に思える。
湯煙が立ち込める中、お湯へと浸かるシュウ。外という事で何時もの風呂よりも解放感があり壁によりかかって温泉を満喫していく。
「ホント広いな…何処まであるんだろ?」
辺りを見てみれば広い範囲でお湯は続いており、とりあえず最後の所まで行ってみようかと他の者の気配は特に無いのでシュウはゆっくりと浸かりながら温泉の中を移動。立ち込める湯煙で辺りは詳しくは見えない、一体何処まで続くのかとお湯の中を進み続ける。
「ん……何か狭い…?」
湯煙で見えないと思ったら急に何やら視界が狭まり辺りは暗い、それでも下にお湯はあって温泉から出た訳ではないはずなので温泉には入っているはずとシュウは思っていた。
そのまま進んで行くと視界は再びさっきの湯煙へと戻り、Uターンして戻って来たような感覚に陥る。
「あーあ、カリアもヘラ様も羨ましいなぁー」
そこにテシの明るい声が聞こえて来た、シュウの場所から意外と近い。彼女は女湯のはずだ、多分壁を通じて声がしたんだろうとあまり深くは考えなかった。
「スタイル良くてでっかいし」
「お前も良い方じゃないのか?大きさも」
「二人と比べたらあたしちっさい方になっちゃうからー、何をどうすりゃそんなでっかくなっちゃうんだって話よー!」
カリアの声も聞こえ、彼女がテシと一緒なのは別に不思議ではない。共に女湯へと行ってそこで温泉入って話でもしているだろうから。ただ話の内容が何か過激な感じがしてきて聞こえてしまうシュウの方が恥ずかしくなってくる、顔が赤くなってくるのは温泉のせいだけではないだろう。
「(何かこっち進んでたら女湯の声がよく聞こえてしまうみたいだから…戻った方がいいかな)」
あまり男である自分が女性同士の話を聞かない方が良さそうと判断したシュウは来た方向から戻って最初に居た位置へと戻ろうとしていた。相変わらず立ち込める湯煙で周りは見えづらい。
すると急に前に何か立ち塞がった。
「むぅっ……?」
「っと?」
シュウはその顔に柔らかい感触が伝わり、何か声がした。小柄なその身体がぶつかり倒れるのを背中に腕を回して受け止めてくれた。
何があったのかシュウは一瞬理解が出来なかった。少なくとも硬い壁ではない、それどころか凄く柔らかく心地良い感覚だった。
感触に包まれながらなんとか視線を上へと向けてみると…。
「どうした?魔王でも一人で入浴しているのが寂しくなったか?」
「~~~~!!!???」
そこでシュウが見た顔は忘れない、それは一人で女王専用の湯へ行っていたと思われたヘラだった。
ぶつかったのはつまりヘラの身体でありシュウは顔にその豊かな胸が埋まっているという事に気付き胸の鼓動が一気に高鳴り顔が熱くなっていった。
何を間違ってどう此処に来たのか分からず、立ち込める湯煙を移動していたら何時の間にかこうなってヘラは怒るものかと思えばシュウを何処かからかうように言うと彼の頭を優しく撫でてあげた。
「あ……………あの…っ」
ヘラに対して何か言葉を発しようとしても上手く出てこず言葉に詰まる、シュウの動揺は相当激しいようだ。頭を撫でられたまま彼は動けなかった。
「世間から恐れられているであろう存在も随分と可愛い所がある、フフ。面白いな」
「あれー?魔王様じゃない?ヘラ様と一緒…」
「何?」
そこにテシ、カリアの声もしてお湯の中を移動するジャバジャバという音と共にやって来た。二人も女湯に居てヘラとは別のはず、という思考の余裕はもはや今のシュウには無いに等しかった…。
「あの敷居は大人では狭くてとても入れず超えては来れないのだが、このように小さく細い体格の子ならば通り抜けられたか」
シュウは今お湯から上がりヘラに背中を洗ってもらっている。何故こんな状況にとシュウの頭は理解が追いついていない、お叱りの一つでも受けるものかと思っていたらそのまま背中を流してもらうという事になって女王自らが魔王の背中を流す。魔の歴史でもエルフの歴史でもおそらく無い、史上初の出来事だろう。
男湯と女湯と女王の湯は敷居があり、それぞれ入って来れないような構造にしてあるのだが男湯と女王の湯の方の敷居がシュウのような細く小柄な少年なら通り抜けられるというのはヘラも今初めて知った。それからは敷居をより強固にする予定だが、カリアとテシも通り抜けて女王の湯に来たかと言えばそうではない。
ヘラが女性同士一緒に入らないかと二人を誘い女王の湯への入浴を許可したので女性3人が共に同じ温泉に入っていた。
そしてカリアとテシも気にする事なくシュウがヘラに背中を洗われているのをお湯に入って眺めていたのだ。
「もうー、寂しかったのなら一緒に入ろうって言えば良いのに素直じゃないねー」
「シュウはそういう奴だ」
シュウが聞いていればそんな事無いと一言は言うであろうカリアとテシの会話にもシュウは今は入る余裕は無い、ドキドキという音をずっと聞きっぱなしだった。
「こういう感じなのだろうな、おそらく母が息子と共に入浴するというのは」
「っ!?そ、そこはいい……やんなくても…」
「こら、動くな。大人しくしていろ」
「あたし達も魔王様洗いましょうかー?」
「断る、これは私だけでやらせてもらう」
先程からずっと色々な意味でシュウはヘラに流されっぱなしだった、魅力的な女性がすぐ後ろの至近距離に居て洗ってもらってる。それもエルフの里の女王直々にだ、あまりにも贅沢過ぎる。
一時は同盟の関係などが危ぶまれるものかと思ったがこの付き合いで距離はむしろより近くなったのかもしれない…。
まずは此処まで見ていただきありがとうございます、女王ヘラも……色々でっかいです。
緊迫した話に突入かと思えば此処でおねショタな回でした!はい、書きたかっただけです(正直)
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