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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
28/78

27、人形達の反乱

「報告します魔王様、クレイ様率いる軍がナジャス王国の制圧に成功したとの事です」

アムレート城、王の間の玉座に座る魔王シュウ。部下の魔族はその姿に緊張が走る、何時もならばだが。


「ガウー」

カジカジ


だがディーが新たに魔王軍の一員として加わってからはずっとこうでありシュウにくっつき、彼のマントをカジカジと噛んでいる。

「あの…魔王様?」

「何も気にしなくて良い、報告ご苦労。クレイには休むように伝えておいてほしい」

「はっ」

どうしてもディーの方が気になり部下の視線は度々そちらの方へと見てしまう。それにシュウは気にしないようにと伝えて部下を下がらせる。

「せめて部下の報告の時ぐらいはマントをかじるのを控えてくれればありがたいんだけどね…」

「マントなら何でも良いという訳でもなさそうだな、他には噛む気配が無い」

シュウの傍に控えていたカリアもディーの事はシュウと共に此処最近ずっと観察して見てきた。シュウのマントが特別に味がついて美味しさでもあるのか、それとも別の理由でもあるのか。どちらにしてもディーはシュウの着ているマントに噛み付いている。


とりあえず部下の前でもこれでは威厳や示しが無い、噛むのを控えるように言うかマントの代わりに噛んで良い物をあげるかを考えておくべきかもしれない。




「で、クレイがナジャス王国を落としたと…あそことは持久戦に持ち込んでいたのを聞いてたけど向こうさんは思ったよりも粘っていたみたいだね」

先程の部下のクレイ率いる軍団が一つの王国を制圧したというのをシュウは思い返していた、そこは篭城戦となっていて徹底してナジャス側はその戦略を貫き通す。持ちこたえて本国からの援軍待ちという狙いだったのだろうがそれを相手にするクレイの軍団は疲れ知らずに石人形とアンデッドによる不死身の軍団、持久戦になった時点でクレイ達の勝利は確定したも同然だった。

圧倒的なパワーと火力を持つ竜の軍団と違って底の無い体力を持って相手を徐々に疲れさせ、追い詰めていくのが不死の軍団。長であるクレイの魔力が断ち切られない限り彼らが倒れる事は決して無いのだ。




ナジャス王国


ギーガ大陸の南西にある海沿いの王国でヴァントやアムレート程ではないが大きな国であり港から船も出ており他の大陸への行き来に利用する者が多い国で知られる。

此処の騎士団は小国のゴートやプージよりは腕の立つ者が居たがそれもクレイの石人形達の前に倒され、王国は魔王軍によって占領される。





「おおー…やっぱり貯め込んでるなぁ…」

クレイは小さな石人形ミニゴーレムと共に制圧した後の城を見て回っており宝物庫を発見し、その扉を開けて部屋へと入った所だった。彼の歩きに合わせて石人形も歩く。この石人形のサイズとしてはディーと同じぐらいだ。


宝物庫の中身は金塊や紙幣といった多くの金や金目の物がひたすら溜め込まれていた、事前に聞いた所によればこの国も税金によって住民から搾り取ったようで此処の物はその成果といった所か。

「とりあえず皆、これは取られた住民の人に返して来てね」

ミニゴーレムとは別の石人形へとクレイは指示し、力のある石人形が重い金塊を軽々と運び紙幣も持って住民へと返しに行った。魔王軍がこのまま持っていても持ち腐れであり本来の持ち主の元へと返して行った方が余程有益というものだろう。



「後は隣の食料庫……やっぱり此処も貯めてる貯めてる、自分達だけで食べ放題するつもりだったのかな。どうせ食いきれないくせに何考えてんだろ人間って…」

隣の食料庫へとやって来たクレイとミニゴーレム、宝物庫と同じように食糧も貯めてあり王族達が贅沢する為の食べ物だというのが分かる。

とりあえずこれも住民達に配ろうと石人形へと再び指示。金と同じように多くの食糧を運び城の外へ出て街へと向かう、城の門番には全身が骨でその上に鎧を着たスケルトンが立っていて街の方でもスケルトン、そして石人形達が街の守りと見張りを勤めている。

ナジャス王国はクレイ率いる不死身の軍団が制圧したという証だ。




「あああ、我が富が…財産がぁぁ!よくも、よくもぉぉぉ!」

王の間には石人形によって囚われているナジャス王国の王、更に大臣に騎士団長といずれも敗れて囚われの身となっている。主である王は自分が贅沢する為の金や食糧を持ってかれて怒り狂っていた。

「魔王軍が攻めて来る前に逃げるべきだった!それなのに騎士団長のお前が最後まで戦うのだと言い出すせいでこうなったではないか!」

「な!?自分達が逃げるまでの時間を稼げと言い出したのは貴方達の方でしょう!それをこっちが全部悪いみたいに言うとは!」

「ええい!貴様ら全員がだらしなく情けないから我がナジャスは無様に敗れ去ったのだ!」

「そうは申しましてもあんな死なない敵相手にどうしろと言うのですか!?」

囚われの身であるはずが酷い言い争い、お前が悪いだの責任を擦り付け合い聞いていて見苦しいことこの上ない。



「分かったからさ、おっさん達…………耳障りだからそろそろ死んでおいてくれない?」


ガシャッ


聞いていられなくなったクレイは片手で持てる黒い銃を取り出すと銃口を王達へと向けた。

「!ま、待て!私を助けたら望む物を何でもくれてやる!」

「根こそぎ持ってかれて無一文で出来る事ない奴が何言ってるの…?頭沸いてんの?」

自分だけ助かろうとしているナジャスの国王を冷ややかな目で見ているクレイ、この王から奪える物は奪った。もう何も持たない王に用事は無い。大臣や騎士団長も同じだ。


幼い外見をしていてもクレイはれっきとした魔王軍。そして長を務める実力者、彼もまた冷酷な事はやれる。



ドンッ



ゴォォォーーーーーーーーーーッ



「ウギャァァァーーーーーーーーーー!!!」


クレイがトリガーを引くと銃口から弾丸が発射される、それは炎の魔力が込められた弾丸であり肉眼では見えない高速スピードで飛んで行き王の身体に当たると王を中心に激しく炎が燃え広がり傍の大臣と騎士団長をも飲み込み彼らの身体を容赦も慈悲も無く焼き尽くす。彼らがどんなに泣き叫び助けを求めてもその運命から逃れる術などもう無い。



そして彼らは骨も残らずこの世を去ったのだった…。




「…権力者がこういうのばかりって嫌になる…皆魔王様みたいだったら良いのに」

銃を収めた後にクレイは小声で呟いた後に王の間を出て行った。











「ナジャス王国は魔王軍の不死の軍団によって制圧されたみたいですぜ」

「フン…それはそうでしょう、籠城して助けを待っての持久戦を取った時点であの人形どもに白旗振ってるようなものなのですから」

洞穴でワーウルフが目の前に居る男へ報告をしている姿が見える、石を削って作られた玉座に男は足を組んで優雅に座っておりグラスを傾けていた。グラスの中身は赤い液体で満たされている。

「まあ別に魔王軍が王国の攻略に成功しようが失敗しようがこちらとしてはどうでもよろしい事、どちらも美しさに欠ける醜き存在。そのような彼らがせいぜい泣いて喜ぶでしょうね…この私が利用してやる、その価値が生まれたのですから」

そう言うと男はグラスの赤い液体を飲み干し、グラスの中を空にする。



「せいぜい踊り狂ってもらいましょうか、その方が美しさが無い連中からも少しは美しくなれるはず。まあそれは華々しく散る時…かもしれませんが。クックック………」

怪しく笑う男、そして彼がこの後に災いをもたらす事になるのを人々はまだ知らない。










城の屋上から制圧した街をクレイは座って足をプラプラさせながら包み紙に包まれた包装を解いている、そこから出て来たのはキャベツやウインナーを挟んだパン、ケチャップがかかっており彼はこれを昼食にする。

クレイは手軽に食べられる食事を好み、こういった食べ物を食べる事が多くなってきていた。パンをひとかじりすれば新鮮なキャベツとウインナーの肉の味が柔らかなパンと合わさってクレイの舌が美味いと感じ取る、仕事した後の食事というのはまた格別に美味く食は進んでいく。彼の隣に居るミニゴーレムは一緒に座って屋上からの景色を見ていた。



何時も通りだ。


自分では前線にまでは出ずに安全な場所から石人形やアンデッドを操り戦況を見る、それが前線には不向きな魔法使い等の常套手段。彼らは戦士のような屈強な肉体や体力を持ち合わせてはいない、前線に引きづり出されて狙い撃ちにされたらそれで終わりだ。

そして術者の魔力が断たれれば操っている物も意地出来なくなり崩れ去り軍団はあっという間に機能を失う事になる。だからクレイは自らの身を全力で守る、それが自分のためと同時に魔王軍のために繋がっていくのだから。

「ごちそうさまっと…」

クレイは食事を食べ終え、水筒の水を飲むと昼食を終えてその場から立ち上がる。

この後にやる事と言えば制圧は終えて残党達も倒し終えているので後は指示があるまで待機ぐらいだろう。それが何時もの彼、不死身の軍団のやる事だ。




だが、その日常は今回に限って崩れ去る事になる。




ドガァンッ



「え…!?」

屋上からクレイはその動きが見えた、見えてしまった。それが信じられず彼は目を見開いている、何故なら自分の操っているはずの石人形が勝手に城の壁を破壊しようと大きな拳で壁にパンチを当てているからだ。

「止まれ…!そんな指示を僕は出していない…!」

クレイは魔力で念じて石人形を止めようとするが止まる気配は無い。



ギィンッ ギィンッ


「!?」

それだけに留まらず外で見張りをしていたはずのスケルトン達が剣を振り回し互いに争って鍔迫り合いとなっていた。これもクレイの指示外だ、見張りをするよう言っても同士討ちをするような指示など出した覚えは無い。



そしてそこにクレイに迫る石人形達、近くに居るミニゴーレムはクレイの前に立ち守ろうとしている。しかし石人形のパワーと比べるとその差は歴然だ。

「どうして…!?」

信じられない光景がクレイの前に広がっている、何が起こったのか彼の頭は追いついていなかった…。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、今回は新たに怪しい人物の登場とクレイの危機の回となりました。

優勢かと思われた魔王軍に一転し危機が迫る…続きは次回に。


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