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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
26/78

25、親になる魔王

「ガウ、ガウ」

「それは食べ物じゃないから、ちゃんとしたの用意するから口離そうか、ね?」


城塞都市アムレートへと帰還したシュウとカリア、問題は解決してそれで終わりかと思えば大きなタマゴからおそらくドラゴンの赤子だろう。あの青いドラゴンが可愛い小さなサイズになったような感じで、その赤子のドラゴンはシュウの足元ぐらいの大きさであり空腹なのかシュウの着てるマントをカジカジと噛んでいた。


「多分あの青いドラゴンの子供だろうが…返しに行った方が良いのでは?」

「そうは言っても既に何処かに飛び去ったものだから探すのが大分困難だね。そして彼…いや、彼女?どっちだろ…何か僕から離れる気配が全く無いのだけど…」

赤子のドラゴンは生まれてからシュウにくっついてばかりで離れようとはしない、その様子が微笑ましいと思わず自然と笑みが出て来ながらカリアはあの青いドラゴンの子なら親に返しに行った方が良いと意見を言うが既に飛び去った青いドラゴンが何処に行ったのかは皆目見当がつかない。寒い地方の可能性は高そうではあるが、遠い違う大陸の方かもしれない、そうなれば今回みたいにすぐに帰還は難しい。

何より赤子のドラゴンの方がシュウから離れないのであの青いドラゴンと再会出来たとしてもこの調子ではシュウから離れない事が予測される。

「シュウ、すりこみというのを知っているか?」

「ああ。鳥類とかであるやつだね?元々その親鳥が産んだタマゴだけどその親鳥がいなくて代わりに別の鳥がいて、タマゴから産まれた雛鳥は姿形が全然違うけど最初に見たその鳥を親だと思って……」

カリアにすりこみについて聞かれ、それについて知っている事を語るとシュウはそこでハッと気づく。

「まさか最初に僕がこの子を見たせいで僕を親と思うようになった…?」

「だと思うぞ。そうだったらそのドラゴンの子がお前にベッタリなのに説明もつく」



赤子のドラゴンはシュウのマントをカジカジと噛んだままだ、シュウを最初に見て親と思っている。本当はあの青いドラゴンが親のはずだがそう説明しても産まれたばかりでこの世界に降り立った者に伝わる可能性は低いだろう。

「とりあえず、何時までも名前無しは不便ではないか?呼ぶ時に困るぞ」

「名前………僕が付けるの?」

「当然だ。お前が親、つまりお父さんなのだからな」

「お父さん……僕この子の父親なっちゃったんだ?」

まだこのドラゴンの子供には名前が無い、なので親となったシュウが付けるべきだとカリアが意見する。その様子は何処か楽しげのようにも見えた。

急に名前をつけるとなってシュウは足元に居るドラゴンの子供に対してしゃがみ、目線を合わせる。こうして見れば中々可愛げがあるのかもしれない。

「何かガブガブと噛んでるからガブ…とかそういう感じでつけたら駄目か」

先程から自分のマントを噛んでいるのでシュウはそんな名前が浮かんだが流石にそういう感じで付けたら駄目だなと首を横に振って自ら却下する。

「ディー…」

「ガウ」

「ん?」

シュウが呟いた名に赤子のドラゴンは反応して鳴いた。

「ディー」

「ガウ」

試しにもう一度シュウがその名前を呼んでみれば先程と同じ反応を見せる。



「うん、よし。お前の名前はディーだ」

「ガウー」

赤子のドラゴンとしてはこれが気に入ったのだと判断し、シュウは名前を名づけディーの頭を撫でてあげた。撫でられてるディーの機嫌は良さそうだ。

「では名前が決まった所でディーには食事でもさせた方が良いか。先程からお前のマントをかじっている辺り腹が空いているのかもしれん」

「産まれたばかりのドラゴンに食べさせるのか…いや、そもそも人間で言えば赤ちゃんだからミルクとかになるのかな?」

ディーはマントを噛んでいた、つまり空腹なのだろうとカリアは推測するが何を食べさせればいいのかは分からない。そもそも産まれたばかりの赤子なら人間であればミルク、少し成長して離乳食という流れではあるがドラゴンもそうなのかは不明。シュウもカリアより魔物についての知識はあるだろうが産まれたばかりのドラゴンの世話などした事が無い。自分に懐いている以上は部下に丸投げなどは無理であって自らが世話をするしかない。


「少し待ってて」

そう言うとシュウはディーと共にその場からフッと消えた、移動魔法で何処かへと行ったようなので少し待つよう言われたカリアはその場で腕を組んで待つ。






「これは魔王様……その赤子のドラゴンは?」

シュウが移動魔法でたどり着いたのは今はドラゴン軍団が制圧したギガント要塞、現在ゼッドに此処の守りを任せている所でこちらから駆けつけて来たという訳だ。ゼッドは突然やって来たシュウに驚き、更に彼が小さいドラゴンと共に居るのでやはり気になり視線はそちらへと向けられていた。

「色々訳あって僕がこの子を世話する事になった、それでゼッド。ドラゴンに関してキミに訪ねたい事があって此処に来たんだ」

「はっ、なんでしょうか」



「産まれたばかりのドラゴンの食事はどうすればいいんだ」









アムレート城の王の間ではカリアが一人腕を組んだままその場に立つ、何時戻って来るのかは聞いていない。とりあえず彼が留守の間はこのアムレートを守るつもりで腰に剣が収まった状態の鞘を装備しており何時でも剣を抜き取る構えは出来る。


ただその剣の出番は無い、何故ならシュウがディーを連れて本当にすぐに戻り王の間へと再び姿を見せたからだ。

「結果はどうだった?」

「うん、牙が生えてるから柔らかめの肉を食わせると良いらしい」

カリアにディーの食べる物は何だと聞かれるとシュウはゼッドから聞いた成果を話す、他の赤子と違いドラゴンはタマゴから産まれた時から牙が生えている。なので肉を食うという事だ、ただいきなり固めの肉より柔らかい肉の方が良く牙が更に頑丈になるまではそれが良いらしい。

「となるとひき肉……ハンバーグか」

肉が柔らかく食べやすい、となればカリアはひき肉、そしてハンバーグという考えに辿り着く。

「じゃあそうと決まれば」

それを聞いたシュウは魔王軍の食事係、コックを呼ぶよう部下へ伝える。







「はい、お呼びでしょうか魔王様ー!」

慌て気味に王の間へと駆けつけて来たのは童顔で青い髪のツインテールの少女。身長は155cmぐらいでコック帽を被っており服もコックの制服であり、いかにも料理人という感じの格好だ。

見た感じは人間の少女だが彼女は魔族。

「メリル。一つ聞く、キミは柔らかいハンバーグを作るのは得意かな?」

コックの魔族少女であるメリル、その彼女にシュウはその料理を作る事は可能かと問う。

「はいはい作れますよー!魔王軍の方々は何かとステーキの方を好んでそっちばっかり焼いたりしてましたけど何を隠そう、あたしはハンバーグ作りの方が得意なのです!」

料理なら任せろとばかりにメリルは胸を張って作れると断言、数多く居る魔王軍の兵士の料理を作ってきており自信はあった。

「流石魔王軍の料理長、頼もしいね。このディーという赤子のドラゴンにそのハンバーグを夕飯に是非作ってほしいんだ」

「まあー!可愛いドラゴンの子供ですね!このメリル、一生懸命作っちゃいますよー!」

ディーの事を見てメリルはひと目でお気に入りとなりディーの食べるハンバーグを気合入れて作ると決めて駆け足で王の間を飛び出し厨房へと向かって行った。





シュウとカリアはディーを連れて食堂へやって来た。ディーはテーブルの上に座りシュウも近くの席に座り、カリアはその隣の席だ。

「お待たせしましたー、これが魔王軍の料理長メリルが作る渾身のスペシャルハンバーグとなりまーす!」

調理を終えたメリルが食堂へとやって来て出来立ての料理をディーの前に置く、それは赤いソースのかかった大きなハンバーグであり食欲を唆る匂いが伝わって来る。

「ガウー!」

これにディーはハンバーグをかじる、一口が大きく出来立てのハンバーグを味わうと…。


「ガウ!ガウー!」

かなり喜んでいる様子であり夢中でハンバーグをガツガツと食べている。どうやらディーの口に合った物が作れたようだ。

「凄いがっつきだね…余程美味しいんだ」

「ハンバーグを柔らかく作っただけでなくドラゴン族の好む甘辛いソースも組み合わせてみましたから!魔王様と勇者様の分もありますよー!」

そう言うとメリルはいそいそと厨房へと戻ると皿を2つ持って戻って来ると2人前のハンバーグをシュウ、カリアの前にそれぞれ置いた。ディーとは違って彼らはフォークとナイフ付き、フォークで押さえナイフで切り分けてみればハンバーグの中身から肉汁が溢れ出る。これだけでもう既に美味そうだ。

「はむ………美味い、これいくらでも食べられそう」

「今まで食べたハンバーグで一番美味い…!是非ライスと合わせて食べてみたいものだ」

口に運べばハンバーグの肉汁たっぷりであり、美味しさのあまりディーと共に二人も食事の手が止まらない。

「まあドラゴンと言ってもこれだけじゃ栄養バランス偏りますから緑系の野菜とかジャガイモも付け合せてそちらもドラゴンの味覚に合わせて調理していきますよー」

ディーがこのハンバーグを好んで食べるという事は分かった、かと言ってそればかり食べさせるのもよろしくないのでメリルはそこも考え、野菜もバランス良く自然に食べてもらうよう調理メニューは組み立てていた。

「やっぱりメリルが魔王軍に居てくれてありがたいね、美味しい食事が食べられるし」

「きゃー♪魔王様にそう言っていただけるの嬉しいですー!貴方の為なら何時でもお作りしますからー♪」

シュウに褒められてメリルは分かり易い程に喜んでいた、カリアもこの魔王軍に来てから何度もメリルの食事を食べているがレストランで食べる飯より彼女が作る方が美味い。


ある意味魔王軍の中で陰の実力者がメリルなのかもしれない。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、このブレイブ&ルシファーにおいて多分マスコット的なキャラになるかもしれないディーの登場回でした。20話以上書いてやっとマスコットまで行けた…!


この話が良いなと思ったらブクマと評価よろしくお願いします。評価方法はページ下にある☆☆☆☆☆をタップです、こういう評価が執筆のモチベに繋がったりします!

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