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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
22/78

21、ターウォの用心棒

「ターウォから知らせが入りました!」

「うむ、聞かせてみよ」

ヴァント王国の王の間、その玉座に腰掛けている国王ベーザの前に一人の兵が知らせを持ってやって来た。ベーザは兵からの報告を待ち耳を傾ける。

「現在城塞都市アムレートを占領中の魔王軍へと接触し、同盟を持ちかけた結果…成功し作戦通りに彼らと同盟を結べたという事です!」

「そうか。よし、ならば来る時まで我々は兵力を増強させる事に専念すれば良いのだな、他の国にも伝えておけ!此処ぞという時に足並みが崩れて台無しになってはわが国の名折れだ!」

「はっ!」

ターウォが魔王軍と同盟を結ぶ、普通ならば人間達を裏切って魔物達の方へと味方したと深刻な事態ではあるがベーザは、そして各国の王は事前に聞いていた。レオンからそれは作戦であり懐へ入り込んで油断させた所に総力を決して魔王軍を追い詰めると、なので作戦通りにむしろ事が運んでいるのにベーザはよしとしと頷いた。ベヴァント王国の兵力はこれからの決戦に向けて兵力を整える事だけに専念、他の国もおそらく同じように兵力増強に集中するだろう。


「ようやくこれで魔王軍も終わり、再び我々の世界に平和が戻る。ははは!前祝いで秘蔵のワインでも開けようではないか、用意せよ!無論食事も最高級ステーキだ!」

「承知しました」

これで勝てると見たベーザは前祝いの用意を命じ、今宵はとっておきの肉とワインで一足早い平和を祝おうと個人で前夜祭を開く。

普段も贅沢な物を当たり前のように食べているが今回は更に高価であり城では贅沢三昧が続いていく。


そして彼らはそのレオンが魔王軍どころか各国も纏めて消すつもりという恐ろしい思考に未だ気付いていなかった…。











ターウォと同盟を結んで翌日、シュウの元にある一報が届く。

「…ゴート王国に強い吹雪が発生?」

それはゴート王国を制圧して以降に国を任せていた者からの報告だった。アムレート王国、王の間の玉座に座るシュウに対して魔王軍の兵士が今のゴート王国の現状を説明する。

「深刻な程の吹雪という訳ではありませんが日々吹雪は強まり、まだそのような季節ではないはずなのに奇妙な事だとこうして魔王様にご報告をいたしました」

「冬でもないのに吹雪……か」

兵士からの報告にシュウは考える、今の所大きな被害は無いようだが吹雪は日々強まっているという話だった。ならば大きな被害となってゴート王国に住む人々を襲う前に原因について調べる必要が出て来る、何かあってからでは遅いのだから。

兵士が一通りの報告を終えるとシュウは兵士を下がらせ、王の間にはシュウ、そして傍らに立つカリアの二人だけとなる。

「行くのか?」

二人となったタイミングでカリアが口を開く。シュウがこれから行う行動が分かっているかのよう。

「とりあえず散歩がてら、て所かな」

「随分と行動する魔王だ。なら私も護衛として同行するぞ」

やはりと言うべきかシュウはゴート王国に調査へ向かおうとしていた、本来ならそれぐらいの事は魔王軍の兵士達がやるような仕事で魔王のする事ではない。しかしシュウとしてはずっと玉座に座りっぱなしよりは外に出る方が良いようで城にこのまま待機という選択は無かった、そして強いとはいえ魔王軍の頂点に立つ者を外に一人にする訳に行かないのでカリアも同行する。今のゴート王国は吹雪が発生しているという事なので前もって愛用の鎧は装備しておく。

そして特に他の者には告げずにシュウは移動魔法を唱えてカリアと共にその場からフッと消え去った。








「これは…思ったより吹雪いているな」

ゴート王国の近辺へと降り立ったカリアとシュウ、その瞬間二人に対して猛吹雪が二人へと襲いかかる。各国を旅した経験を持つカリアにとってはこの程度の吹雪は問題ではなく寒さに負けるような事はなかった。

「しかしお前、その格好で寒くないのか?」

全身を鎧で包んでいるおかげで寒さは和らげているカリアに対してシュウは特に厚着もなく何時も通り上下黒の半袖シャツと短パンに黒いマントを身に付けていた、普通なら寒さで震える事確実な格好のはずだがシュウは特にそんな様子は無い。

「魔法で寒さは凌げるからね、どうという事は無いさ」

見た感じは分からないが今のシュウは寒さを回避するバリアーのような魔法を張り巡らされているようでそうする事によって自分へ吹雪による寒さを逃がし、結果厚着をしなくても普段着で活動が可能らしい。

「そういう事まで出来るのか…」

「これはむしろ移動魔法よりも全然軽いものだよ」

シュウからすればそうらしく、確かに移動魔法は習得する難易度が魔法の中でもトップクラスに高い。それに比べ今発動しているものはそれよりも難易度は下がる。それでも一般の魔法使いからすれば簡単ではないが。


改めて周囲を見ればこの吹雪によって普段は平原なゴート王国の周囲も今は雪原へと変わっている。地面は雪で数センチ程は積もっていた、季節による物ではない何か別の原因で発生した猛吹雪に関して見た所何処もただ吹雪があって見ただけでは分からなかった。

「…む?」

「カリア、どうかした?」

「しっ…何か足音が聞こえる、敵かもしれない。気をつけろ」

その時カリアが足音に気付きシュウが尋ねればカリアは自分の右人差し指を口に当てて静かにするようシュウへと伝えて耳を澄ます、普段の地面とは違うザッザッと雪の中を歩く音。敵かもしれない可能性もあるのでカリアは用心してその音の方へと見据える。

すると音と共に歩いて来た人物は姿を見せた。




「お前達は……思ったよりも早い再会だ」

「貴方は、確かターウォの用心棒ホルクか」

見覚えのある銀色の鎧を纏う長身の男、カリアもシュウも覚えている。先日レオンやターウォの騎士団達と共に居た用心棒のホルクだ。

「察するにお前達もこの異常な気象を調べる為に現れたという事か」

「も、という事は貴方の方もその為に?レオン王の命令で?」

ホルクの言葉を聞いてシュウは同じ目的で来てそれは主の命令で来たのかと問う。

「いや、命令されて来たんじゃない。この気象の原因を放置してターウォにも被害が及ぶ前、と判断した。取り返しのつかない事になってからでは遅いからな」

今回はレオンの命を受けてではなかった、命令を受けてからでは遅いと考えて彼は単独で此処に調査へやってきたのだ。

「丁度良い、何があるか分からないし此処は3人で調査に行かないか?」

シュウはホルクの顔を見上げ、共に行動し猛吹雪の原因についって調べに行くのを提案した。ホルクは中々腕の立つ実力者でバルバに勝つ程の男であり単独行動でも心配はさほど無いだろうがこの吹雪を一人で調べるのは通常では危険だ。それに話で聞いただけでありホルク自身がどのような者なのかの興味もシュウはあった。

「……この魔王はこう言ってるようだがボディガードの意見は?」

そう言うとホルクは視線をシュウからカリアへと向けて意見を求める。

「私も同意見だ、この先更にこの吹雪が酷くなれば流石に慣れている者でも単独行動は危険極まりない。協力して進む方が安全、と判断する」

「うむ…俺は特に反対する理由など無い。よかろう、此処からは俺も同行させてもらう」

カリアも反対は無い、ホルクの方もそんな理由は無い。結論は出た、ホルクも共に今回の吹雪についての調査に参加する事になった。




「まずはこの吹雪に向かって進む、俺が先行しよう」

先頭にホルクが立ち、その後ろにシュウ。更に後ろにカリアと続き、シュウをカリアとホルクで囲む形で吹雪に逆らいながら進む。前に居るホルクに吹雪が容赦なく襲いかかるが鎧を着る彼は受けても何の問題も無く進んでいる。

カリアとシュウには吹雪がホルクと比べたらそこまで来ていないのでこちらもまた問題なく歩みを止めずに進み続けられていた。

しかし歩けど歩けど景色はたいして変わらず猛吹雪が襲いかかるばかりだ、普段ならこの広い地は馬で移動したい所だがこの吹雪では馬は持ちそうにはなく機動力もあまり望めないだろう。時間はかかるが地道に歩いた方が確実に前に進める、3人はとにかく雪の中を歩き続けた。



「グルルル……」

吹雪の雪原を移動していく3人の前に唸り声を上げる獣のような声がした、それも一つだけでなくいくつも聞こえる。

「今の声……スノーウルフか、この辺りでは生息していない魔物のはず。吹雪へと変わったこの環境でこちらへと移動して来たのか?」

ホルクは唸り声だけでその正体が分かった、雪の中での狩りを得意とし吹雪で迷い弱った獲物を仕留める狼の魔物がスノーウルフと呼ばれる。

そしてホルクの読み通りスノーウルフは姿を見せる、四足歩行で前傾姿勢の所を見ればこちらを見て襲いかかって来そうだ。魔王であるシュウに対してもその態度という事はスノーウルフは魔王軍の者ではないというのが分かる。

「ガァァーーーー!」

数体の内の1体が牙をむき出しにして飛びかかって来る、この悪天候にも関わらず驚異的な跳躍力だ。その爪と牙を武器にして獲物を狩り取らんとしていた。



ズバッ


飛びかかったスノーウルフに対してホルクは何時の間にか剣を抜き横に薙ぎ払うように剣を振るい一刀でスノーウルフを葬り去る。

「(速い!そして…鋭い)」

カリアはその一撃を見てホルクの剣が速く重い、そして鋭い一刀だと感じた。

「(強い、魔王軍でも中々このレベルの剣の使い手は見かけない…)」

シュウも同じような感想を持ち、数多く居る魔王軍の兵士の中にも今のような剣の腕の持ち主は見ない。バルバが倒される訳だと改めて納得した。



「まだ来るか…」

仲間がやられてもスノーウルフ達は敵意を失わずホルクを見据えて唸り声を上げる、それに対しホルクは剣を構えていた。

「手伝おう」

「そうだね、一気に感電にでもさせようか」

カリアも剣を抜こうとしておりシュウも右手に雷のエネルギーを宿し、雷がパチパチと火花を散らせながら発生している。

このスノーウルフは本来雪の降る地方に生息し縄張りとしている。この異常気象で流れて来て此処を縄張りにされゴート王国の方まで襲って来たら民に被害が及ぶかもしれない、それが無いようにスノーウルフは此処で倒しておく必要があった。

「いや、助力はありがたいがここは俺一人で充分だ。まだ先が長い可能性があるので二人の力は温存して損は無い」

二人の助けにホルクは断り自分一人だけでスノーウルフ達を片付けるつもりだ。そう言ってる間に魔物達は纏めて飛びかかって来た。






ズバッ ザシュッ ザンッ



雪の中の狩りを得意とするはずのスノーウルフをホルクは難なく切り伏せていき、1体、また1体と仕留め続けて最後の1体もその剣で斬って終わらせた。

「もういないようだな、先を急ぐとしよう」

潜んでいる敵の姿も無い事を確認したホルクは剣を収めてカリアとシュウへと振り向けばそう伝えてから再び先頭を歩き始める。


「(この男、仮に敵に回ったとしたら厄介な相手になっていたかもしれない)」

カリアも自分の剣には自信がある、それでもホルクを仮に相手にした時。もし同盟の申し出が無かったらターウォとは敵として戦いホルクとも剣を交える可能性があったかもしれない。その時あのような腕の持ち主を相手に戦う事になったら苦戦は免れそうには無い、同盟を組んだからこそ争う事は避けられたのだ。

あったかもしれない未来を考えつつカリアも歩き始めシュウも続く。


吹雪は進むにつれ勢いは増すばかり、一般の市民は勿論の事並の兵士とかならば耐え切れず引き返す程の猛吹雪だがシュウ、カリア、ホルクの3人は引き返す気配は一切無い。常識離れの実力者だからこそ吹雪の中を耐え進み続けられる、シュウだけは魔法で寒さを凌いではいるが。

「見ろ!二人とも、あそこに洞窟らしき物がある!」

先頭を歩いていたホルクが岩場の方にぽっかりと空いた穴の存在にいち早く気付き、吹雪によって声が聞こえづらくなってきているので最初の時より声量を上げてカリアとシュウに伝える。

「丁度良いね!此処は少し休憩しようか!」

「ああ、何処まで続くか分からん!可能な時に休憩はした方が良い!」

この吹雪が時間が経過すれば更に酷くなり流石の3人でも歩き進むのが難しくなる恐れが出て来るかもしれない、無理して進むよりかは洞窟に避難し体力回復を兼ねて吹雪の様子を見るのが確実にして賢明と言える。


一行は洞窟の方へと向かって進む。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、雪の表現が何か他に無くて猛吹雪とかそういうのばかりになってしまってます。


この話が良いなと思ったらブクマと評価よろしくお願いします。評価方法はページ下にある☆☆☆☆☆をタップです、こういう評価が執筆のモチベに繋がったりします!

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