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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
18/78

17、休息と人助け

ガーランの襲撃から1日が経過


彼がアムレートに攻撃を仕掛けるもクレイ、マリアンの活躍によって被害は魔王軍や街、共に無し。退けはしたものの本当の魔王とガーランは言い残して去って行った。

今魔王として君臨しているはずのシュウが居るのに本当の魔王なる者がいるのか、ガーランのただの負け惜しみであり惑わせる為の作戦なのかもしれないが方法によってはその古来よりシュウ以前に存在していた魔王を蘇らせる事があるのかもしれない。

その可能性が考えられるならば調べるべきだとミナは判断し、調べ物を始める。魔王軍の参謀がその間に手が塞がり最近は連戦が続いていたので今日は各自に休暇をシュウは魔王軍へと言い渡したのだった。

「魔王軍にも人間と同じように休暇というものがあるんだな」

「倒れるまで戦え、ていうイメージだったかな?魔王軍全体がアンデッドや石人形みたいに無尽蔵、という訳にはいかない。その2つを操るクレイもね、どんな強靭な戦士だろうが休日というのは必要だよ」

アムレート城のバルコニーに立つカリアとシュウの二人。魔王軍は今日は進軍は無く休み、その間に人間達、またはガーラン達が攻め込んで来る事も当然考えており、最低限の石人形達に見張りはさせている。あまり数が多いとクレイが休めないので石人形は少なめだ。


この光景にカリアは魔族達にも人間と同じように休息があり、それが必要であるという事を学んだ。

振り返ってみれば過去にベン達ヴァント王国騎士団と共に魔王討伐の為に進軍した時は休みなど一切無かった、とはいえカリアの場合は多少休まずとも身体に支障は無く当時その事が不満とは思っていなかったのだが。

「カリアは休みとか何しているの?」

「興味あるのか?」

「そりゃあ勇者が普段どういう休日を過ごすのか、普通に興味あるでしょ」

「人のことが言える立場か、魔王よ」

シュウはカリアに普段の彼女がどういう休暇を過ごしているのか興味あって尋ねる、勇者の休日というものは確かに一般的に興味ある者は少なくはないだろう。それ以上に魔王の休暇の方が好奇心は大きくなるのかもしれないが。そもそも魔王が休暇を過ごすという姿自体がイメージしづらい、勇者と魔王の休日。世間からすればどちらも興味深いはずだ。


「休みはそもそも体力回復だろう?そういった事は食事の時間と眠る時間で充分に事足りる」

「それは……タフだね」

カリアは一日休むという事は無く、日々の中に必ずある食事と睡眠。それで体力は回復して充分だと当たり前のように言うのに対してシュウは苦笑する。分かってはいたのだが普段から重い鎧と剣を装備して戦うカリアは並外れた体力の持ち主であると。

「だったら今日は僕の休日の過ごし方に付き合ってみない?」

そう言うとシュウは移動魔法を唱え、次の瞬間にカリアの姿はシュウ共々アムレート城から消え去っていた…。









次にシュウとカリアが出現した場所は見覚えのある街、それは以前にカリアが初めて魔王軍側で出陣した時に攻め落とした国。プージ王国だ、その城は魔王軍の手によって制圧された後に城は修理されて元通り。元の王族は葬り去り今は信頼する部下達に王国を任せている。

その城が見守る街にシュウとカリアは入って行くと、街は普通の日常を送っている。そこには元々居る住民のみならず魔物や魔族達も混じっており、昼から酒場で酒を飲む人間の男と魔物。買い物を楽しむ人間の女と魔族の女。

そこに種族というものは最早関係無かった。そこには人間と魔が共に暮らしている光景があったのだ。

「とりあえずお腹すいたから店にでも行こうか?」

「そこは任せる」

カリアも最初この光景を見た時は驚かされたものだ、人と魔が共に暮らす。何処かで本当にそれは可能なのだろうかと思った事もあった、しかし今見えるのは間違いなく人と魔が日常を過ごす光景。魔王軍が進軍し勝ち取った事で実現した世界だ。

二人は街の食堂へと向かった、今や人間と魔族の共同経営となっており両種族が出入りして飲食する姿が見える。

「これは魔王様、いらっしゃいませ♪」

食堂に入る二人を出迎えたのはウェイトレス姿の女性、彼女は魔族だ。こうして見れば人間と大差無い、ウェイトレスの魔族はシュウが魔王であると気付き明るい表情で挨拶する。



ウェイトレスの案内で二人は窓際の席へと案内してもらいそれぞれ腰掛けると料理を注文。カリアもシュウも果実のジュースを飲む、砂糖に頼らない果実そのものの甘味が伝わり飲みやすい。子供も大人も問わず注文する人気の一つだ。

そして料理が運ばれてくるとカリアの方は肉を中心としたボリュームある料理、シュウは肉に米に野菜とバランス良い料理だった。

「なんだ、お前それしか食わんのか?だから小柄で細いのだろう」

「いや充分食べてる方のつもりなんだけどねこれ。カリアが結構…いや、凄い食べるからそう見えるだけだと思う」

「私は普通だぞ。鍛えている男達はこれぐらいペロリと平らげている」

カリアはこれが普通で屈強な者達はこの量が当たり前と思ってステーキ肉を切り分けて口へと運ぶ。シュウは炒めた米をスプーンで食しつつカリアの食事量に驚いている、シュウの方も少ないという訳ではないのだがカリアの前ではそれは霞むようだ。

「強い戦士は食が大事だ、それで強靭な身体を作る。無論訓練も大事だが」

「だろうね…それで実際ゼッドに真っ向から力で勝ってる。かと言って僕には真似は出来ないよ」

その言葉が偽りではなく証明している事をシュウは知っている、カリアとゼッドの決闘。魔王軍随一のパワーを持つゼッド相手に力で競り勝つというのをやってのけたのだ。こうしてよく食べるのもカリアの力の源の一つと言える。

肉に追加で頼んだ米とかなりの量を食べており、それで苦しい顔は全くしておらず何時もの事だとばかりに平気で骨付き肉にかぶりつく。

「む、シュウが頼んでいるケーキは美味そうだな。甘いものを摂るのもまた大事なので食べるとするか」

「まだ食べるんだ…」

「甘いものは別腹とよく言うだろう」

シュウがデザートとして食べているショートケーキ。それが美味しそうに見えてカリアはデザートも追加で注文、そして1つじゃ足りず更に2つ追加で頼み食べたという。








「ふー、人と魔が共同で作る飯というのは美味いものだな。まだ入ったが腹八分目に止めておいた」

「あれだけ食べてまだ行けた事に驚いてるよ」

街を出て王国から少し離れた草原を歩くカリアは先程の食堂をかなり気に入ったようで機会があればまた行きたいと思っており、シュウは段々カリアの強さだけでなく胃袋まで人間離れしていそうだとまだお腹が余裕そうな彼女に驚かされる。

これで本気を出したらゼッドよりも食べるのではないか、それはそれで見たいという興味は出て来るがそれは口に出して言う事は無くシュウの胸の中にしまっておく事にした。

この辺りの草原には騎士団の姿は特に無く、こちらへ向かって来る敵の気配も特に無い。なのでこうして羽を伸ばした散歩が出来るというものだ。美味い食事の後に快晴の外を歩き、心地良い風に当たる。今進軍を続けている身でこうした事は中々出来ないのでこんな何でも無い事がちょっとした贅沢のように思えた。

普段戦う勇者と魔王にとって良い休日の一時となっている。





しかしその一時は終わりだとばかりに…。






「ギシャーーー!」

「!」

カリア、シュウの両者の耳にはっきり聞こえた物。それは何かの声だった、人間による声ではないというのはまず間違いない。かといって魔族という訳でもない、今のはどちらかと言えば魔物の雄叫びに近い。

殺気などでこちらへ向かって来るか分かりはするが自分達に対する殺気は感じられない。だとしたら別の所で魔物に関して何かあったのかもしれない。

二人は互いの顔を見れば小さく頷き、声のした方向へと駆け出していた。





「な、何だこの大きなモンスターは!?」

「お下がりください!ここは危険です!」

カリアとシュウの二人が声のした方向へと駆けつけてみればそこに居たのは鎧の騎士二人、それに守られる身なりの良い青年。それに立ち塞がるのは大型の翼竜ワイバーン、魔王軍では珍しくなくてよく見るがこのワイバーンは通常の個体よりも大きい。

「ギャー!ギャー!」

雄叫びを上げるワイバーン、それに対して剣を構える騎士達。青年を下がらせて騎士二人が纏めて剣を持って突撃する。



ビシッ


「ぐわあ!」

突撃してきた騎士達に対してワイバーンの尻尾が鞭のように振り回され、一撃で二人とも後方へと吹っ飛ばされて倒れる。

「グル……」

「う…」

青年を見据えるワイバーン、それに思わず1歩後ずさりする青年。



「あのワイバーン、襲う気か?助けに行くか」

カリアは腰に差している愛用の剣を抜き取る。カリアならば相手が大型のワイバーンだろうが倒す事は可能だろう、しかしシュウはワイバーンの様子が気になっていた。

「…カリア、ちょっと」






「カァァーーー!」

「っ!?」

ワイバーンが雄叫びを上げる、それに青年は自らを守るように身をかがめる。このまま喰われるかもしれない、こんな行動した所で気休め程度かもしれない。それでも反射的にこういう体勢となって防御してしまう、噛み付いて来るのかそれとも騎士達のように尻尾でなぎ倒しに来るのか。

どちらにしても激痛は免れず覚悟しなければならないだろう。



しかし何時まで経っても青年の身体に痛みは走らない、今目を閉じている状態だから何がどうなっているのか把握が出来ていない。青年は恐る恐ると目を開けてみる。


青年の前には剣を構えて守るように立つカリアの姿、そしてワイバーンの近くにまで来ているシュウの姿があった。

「え…?」

一体これはどういう事なのか、青年はこの状況をすぐには把握出来ずにいる。



「うん、腹が減って見境無い状態だった訳か。それならこれを食べるといい」

ワイバーンの状態を見ていたシュウは恐る様子もなく至近距離で大型の魔物、その様子を観察。仮に襲いかかって来たとしても魔王である彼ならば難なく対応はするだろうが人から見れば子供が魔物に近づくという危険極まりない状況だ。

原因が分かるとシュウは懐から干し肉を取り出し、ワイバーンの口へと放り入れる。



ガブガブ



ワイバーンは口に入れた干し肉を食べると一気に大人しくなり、先程まで雄叫びをあげて暴れまわっていたのが嘘のようだった。



「魔物が一気に大人しく…!?何者なんだあの子供は、魔物使いか…?」

「まあ、そのような者だな。ちなみに私はそのボディガードの者だ」

驚く青年に対してカリアはシュウが魔王という事、そして自らも勇者であるという事を伏せてこの場は魔物使いとそのボディガードの戦士と素性を隠した。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、書いてたら普通にケーキ食いたくなってきた…ちなみに作者は甘党です(誰も興味無い)

そしてカリアは結構な大食いでした、普段から大剣や鎧を装備したりしてるからカロリー消費が凄まじいせいかな?


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