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ブレイブ&ルシファー  作者: イーグル
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16、怒れる美女

「おう、お前ら。全員集まったか?」

「へい!ガーラン様!」

上空を飛ぶワイバーンの背に乗るガーラン、同じように飛んでいるワイバーン。そしてそれぞれにガーランと同じワーウルフが乗っていた。

ガーランと同じように彼らは元々魔王軍に居た。しかしガーランと共に魔王軍を脱退、そして今に至り現在も彼について行っている、共に居るワイバーンは人間の肉を食わせて飼い慣らし自分達の手と足、翼となって役立ってもらう。

ガーラン率いる元魔王軍の獣達は魔王軍が制圧している城塞都市アムレート、その城の真上を飛んでいる状態だ。

「奴らはアムレートを制圧して間も無い、更にあのゼッドの野郎が居るドラゴン軍団も今は別の人間共の拠点へと攻め込んでいて不在と聞く!その上バルバの野郎は無様な事に人間達に負けて負傷、その傷はまだ癒えてないのか最近は戦いに出向いていねぇ!今が最大のチャンスだと思わねぇか?」

バルバの負傷にゼッドの不在、アムレート攻略で更に疲労していると踏んでいたガーランは今の魔王軍はかなり消耗しており潰すなら今だと睨んでいた。これに手下のワーウルフ達も賛同の声を上げている。

「あの憎たらしいクソガキ魔王をぶち殺して魔王軍を皆殺し!わざわざ待つまでもねぇ!一気にやってやろうぜ野郎ども!」

ガーランの声に一同の士気が上がり、皆が一斉にアムレートの城。シュウが居るであろう場所を見下ろしていた。

シュウが魔王に君臨しているという事。それをガーランは気に食わない様子であり、それが彼の中に流れる獣の血が、本能が戦いへと導かれる。



「俺に続けぇ!!」

先陣を切ってガーランは翼竜ワイバーンに突撃を命令し、アムレートの城へと向かって急降下。既に剣を抜き取り戦の準備はもう完了していた。後は何時も通り存分に敵を痛ぶり殺し、全員葬るのみである。それは力あるものも無いものも関係は無かった。

彼が降り立てば敵とみなされた者は容赦なく消されて行く事になるだろう。

ワイバーンの急降下スピードは高く城へとぐんぐん迫って行く、まもなく到着する。そう思ってガーランは雷の魔法を構え、右手の剣を持ちつつ左手に雷のエネルギーを溜め込んでいた。剣と魔法の両方を使いこなす魔法戦士のワーウルフ、それがガーランだ。



その時、城から何やら一筋の光が発生。

「!?」

それを見たガーランは反射的に不味いと察知したのか、右へと避けるようにワイバーンへ指示。急降下を止めてワイバーンは右へと避ける、すると…。



ボガァァーーーーンッ


「ギャァーーーーーッ!」

「~~~~~!!!」

ワーウルフの悲鳴とワイバーンの声が重なり、ガーランの後ろを飛んでいた部下のワーウルフとそのワイバーンが爆発に巻き込まれる。爆発によってワーウルフとワイバーンは黒焦げとなってそのまま墜落していった。

何事だと周囲は戸惑いを見せる中でガーランは城を観察、すると城に装着されている大砲が真っ直ぐガーラン達へと向けられている事が分かった。そして更に観察すると城の屋上に巨大な石人形ゴーレムが複数体こちらを見上げている姿が確認出来る。

「石人形…まさか、クレイのガキか!?」

ガーランは石人形を見て今のが誰の仕業なのか分かった、あれを扱えるのは魔王軍で不死身の軍団を束ねる彼しかいない。




「あー…反逆者の犬を狙ったつもりだったのに後ろの犬に当たって外れちゃったよ…」

同じ頃、城の内部の大砲前に居るクレイ。彼はいち早くガーランがこの城の上空に居るのに備えて迎撃準備をしていたのだった。その一つが大砲による砲撃、シュウ達が攻め込んだ時は活躍の場が無かったが魔王軍の手によって今こうして大砲が役立っていたのだ。

「今度はしっかり狙って、撃てー!って自分で撃つんだけどね…」

大砲に魔力を凝縮させて作り出した魔法の弾を作り、それを大砲の弾として込めて放つ。魔力の大砲としてクレイは活用している。先程1発放ったようにもう一発が今撃たれた。



ドガァンッ



「!?」

またしても大砲の砲弾、それが上空のガーランへとコントロール良く真っ直ぐ突き進んで来ていた。だがガーランもまともに砲弾に当たる気など全く無い、命中でもすれば先程の手下と同じ道を辿る事はまず免れはしないだろう。

再びワイバーンへ左へと避けるよう指示を出して砲弾を回避、


ドガァーーーンッ


「ぐうっ!」

爆発による爆風の影響を受けてガーラン達の乗るワイバーンは思うように城へと攻め込めず、クレイの砲撃の前に足止めを食らってしまっている。

「くそっ!あんな根暗なガキにコケにされてたまるか…!」

魔王軍時代、クレイは前線に出ないで全部アンデッドやゴーレムに戦いを任せていて安全な世界に居るだけの奴。ガーランからすればそんな認識ではあったが彼の魔力があってこそ不死身の軍団は成り立つ。魔力の源である彼の魔力が切れたらその軍団は機能しない、だから最も安全な場所から常に軍団を動かす。当然のやり方である。

だからこそガーランは忌々しく思った、自分の間合いに来ない相手のやりづらさに。



そこに再び砲弾が飛んで来る、クレイの魔力が込められた魔力弾だ。



「調子乗ってんじゃねぇぞコラァ!」

ガーランもこのまま黙ってるという事はなく雷のエネルギーを溜め込んだ左手から雷の弾を作り出していた。

「サンダーボール!」

雷の弾を放つ雷魔法、これを砲弾の方へと向けてガーランは撃ちだし雷の弾と砲弾が激突する。



ドォォーーーーーンッ


「うっ!?」

直前で爆発が起きてクレイの方から見てガーラン達の姿が見えなくなっていた、これでは砲弾で狙うのが難しくなってしまった。



「ハッ!所詮は前線に出て来ねぇ腑抜けだ!俺様の敵じゃねぇんだよ!今だお前ら、爆風に紛れて一気に急降下だ!」

ガーランはこの爆風をチャンスと見て手下達へと命令し総攻撃を仕掛ける、ワイバーン達は爆風の中を突っ切り次々と急降下して城へと目指した。

これでクレイの石人形を蹴散らして城へと侵入しシュウを倒す、という展開が既にガーランの頭の中で思い描かれていった。




だが、そうはさせないとばかりに彼に立ち塞がる障害はまだ居た。



「ギャアアーーーーーー!!」

「!?」

突撃していたところにガーランの傍に居たワーウルフに雷が落ちてきて、想像を絶する苦痛と苦しみがワーウルフに。そしてワイバーンへと襲いかかり、先程の砲弾のように黒焦げとなって共に落下していった。

明らかに大砲ではない何者かの仕業。魔法の使い手であるガーランには分かった、今のは雷の魔法による物だと。

そして一撃で大型の魔物である翼竜ワイバーンを撃ち落とす程の威力を込められていた。



「この石人形ちゃんが良い壁になってくれて好都合だったわぁ、久しぶり乱暴な獣ちゃん♪」

石人形の影からこっそり姿を見せる桃色髪の妖艶な美女。マリアンが楽しげに笑っていて空に居るガーランを見上げていた。

「マリアン!てめぇまでいやがったのか!」

元々魔王軍で同じ長の者同士、互いの顔は覚えている。マリアンを忌々しそうにガーランは射殺すように睨みつけていった。獰猛な獣の血の方が全面に出て来た状態だ。

「わざわざ魔王軍を脱退するどころか刃を向けるなんて、何でそんな完全な裏切り行為をやっちゃうんだか」

「ケッ!あの小僧に魔王の資格が無ぇからだよ。あんな甘い奴が魔王なんて反吐が出る!人間共を皆殺しにはせず力の無い者を生かすなんて魔族のする事じゃねぇだろ!」

マリアンに対してガーランはこれまで思っていた不満を言い放つ、シュウは魔王に相応しくないと。

「あらぁ?魔王が必ずしもそうでなければならない、とは限らないんじゃないのぉ?彼は彼で魔族や魔物の事を考えてくれてるし」

「うるせぇ!マリアン、てめぇもあいつ寄りかよ!?」

「というかぁ…人間全員を根絶やし?それは困るのよねぇー、だってそれは人間の可愛い子までそうやっていなくなっちゃうって事じゃない。潤いも癒しも何も無くなって世界がただの地獄になっちゃうし、可愛い子だけ残して可愛くないのだけ殺すなら別にいくらでもやっていいわよ?」

ガーランの人間を根絶やしにするという方針にマリアンは反対。シュウの為というよりもそれはサキュバスとしての餌が無くなる、または自分の癒しを消される事が駄目であり自分の趣味じゃない者ならば止める気は無いらしい。

魔族や魔物の為ではない、自分の為だった。

「ガキが趣味なのかよ!?てめぇの年を考えろやこの年増がぁ!」

「………はあ?」

マリアンの耳に聞き捨てならない言葉が聞こえ、笑みは消えて怒りの表情へと変わる。



「薄汚い獣は最早しつけようが無くて手遅れみたいねぇ!この手で消し去ってあげる!」

右手、左手からそれぞれ火球を作り出してマリアンはガーランへと撃ちだす。まるで弾丸のようなスピードボールであり大砲の弾よりもそれは速い。

「うおお!?」

「ガアーーー!」

「ギエーーーー!」

ガーランはかろうじて避けるも回りのワーウルフ達が被害に遭っており火球に当たると全身が燃え広がりワイバーンから落ちて地上へと落下。



「怒らせちゃった……とりあえず、今がチャンス」

そこにクレイはチャンスと見たのか改めて魔法の弾を大砲へと込めて空のガーラン達へと砲撃を再開。爆風はもう収まり狙う事は可能となっていた。

マリアンの魔法、クレイの砲撃によってガーランの部隊は確実に数を減らされていく。

「が、ガーラン様!これじゃ城に近づけない上に我々は全滅です!」

「くっ……!ガキの下僕どもが…消耗していてこいつらを軽視していたのが不味かったか…!仕方ねぇ、引き上げる!」

クレイとマリアンに一矢報いるという気持ちはあったが意外にも冷静にガーランは戦況を見て撤退を選択し、アムレートから離れて行く。血の気が多いとはいえ元々軍団を率いていた魔王軍の長の一人、そこまで無茶をするような事はしなかった。

「覚えとけ!本当の魔王が目覚め次第てめぇらなんぞ踏み潰して纏めて地獄送りだ!」

最後にそれだけガーランは言い放ち、飛び去って行ったのだった…。



「逃げてったね…」

城の屋上にクレイも来てガーランが先程まで居たであろう空を見上げる、今はもうガーランや他のワーウルフにワイバーンの姿はもう何処にも無い。クレイとマリアン達の力でガーランの襲撃を見事跳ね返したのだ。

「それじゃあ魔王様に報告しましょっか。あー獣臭い…相変わらず品のない犬で嫌になるわぁ、という訳でっちょっと癒し♪」

そう言うとマリアンはシュウと手をつないで歩き出し、シュウの元へと向かう。

「何でわざわざ……」

「だから癒し癒し♪クレイの坊やの可愛さでお姉さんの傷ついたハートを回復させてねー」

とりあえず手を離す様子が無いマリアンにクレイはこのまま歩くしかないと見て彼女と共に手をつないだ状態は続く。














「襲撃してくるだろうとは思ってたけど、二人でガーランを追い払ったのは見事だった」

アムレート城の王の間、クレイとマリアンは玉座に座るシュウの元にガーラン襲撃を報告。そして二人で撃退した事に成功という報告も忘れない。

「まあ楽では無かったです…あまり言いたくないけど流石魔王軍の切り込み隊長だっただけあります…」

クレイとマリアン、二人の長で戦ってガーランの相手は楽という訳では無かった。剣も魔法も使いこなす魔法剣士で魔王軍では戦い方は問題視されていたがかつては真っ先に先陣を切って突っ込む切り込み隊長として活躍をしていた。

白兵戦においては竜の軍団やゼッドに匹敵する程だったかもしれない。

「でも気になる事言ってたわねぇ~、本当の魔王が目覚め次第とか」

「本当の魔王?」

マリアンの言葉にシュウ、そして傍らに居たカリアが同時に反応した。

「どういう事だ、今の世界に存在する魔王はシュウ一人だけではないのか?」

「そのはずなんだけどね…古の魔王を蘇らせるのか呼び出すのかにしても、そんな事がガーランの力で可能なのか疑問だ」

魔族についてはカリアはまだ把握不足で分からないが、シュウでも本当の魔王については今ひとつ分からないといった感じだった。

「……気になりますね、伝説のアイテムとかそういった物の助力でその本当の魔王という者を降臨させるのかもしれません。詳しく調べる事にします」

ミナも現時点では情報不足、なので詳しく調査してガーランの言葉の意味を読み解く必要が出て来た。万が一それが存在してガーランがその魔王を味方につけたら王国の騎士団などよりも余程厄介な存在になってくる。


本当の魔王、ガーランの襲撃はその謎を残して終わった。

まずは此処まで見ていただきありがとうございます、綺麗なお姉さんも怒らせると怖い。怒る前に自分が悪かったというのが一番かなと思ってます。


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