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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 依頼



    第三章  フリーダム


 第九十九話  「依頼」





 10月。


 ノマノーラと言う星が最も近づくまであと1年、飛べる俺は思う。


 あの星まで飛べるんじゃねえ⁈


 ただ、帰って来れなかったら死しかなさそうなので冒険はしない。



 

 さぁ、本日もシータの特訓。


 集中して円を描きながら歩いて等間隔で3つの針を飛ばす。


 右手を上げれば1本目が、左手を上げれば2本目、そして両手をあげれば3本目と腕と連動するように動かす。


 連動させることで急な場面での対処にスピード差が出る。

 例えば、俺が出している盾に対してはかなりの確率で掻い潜れるようになっている。


 あれからひたすら針をコントロールすることだけに特化した練習をして来た。


 その成果が少しづつ出始めた証拠は、この前の討伐だ。


 Eランク依頼とあまり強い魔獣ではなかったが、後衛のシータの針が魔獣の目に刺さる! その隙を逃さず前衛のユリアがトドメを刺した。


 そう、魔獣討伐の時のシータの針は魔獣の目だけを狙う。




 そんなある日のこと、ギルドで気になった依頼を見つけた。


 ガラントゥーゾ討伐  5匹以上

 報酬  1匹、400トア

 ハピ町  カラハム商会  

 場所  ビジョンの森


 

 この依頼はラザノフと2人で受けた。


 ガラントゥーゾはポンタと俺とラザノフでの初討伐の魔獣。

 ラリィにソナーを使ってもらって探したのはいいが、大雨や地形での不利により大苦戦、結局は俺1人で討伐というラザノフとポンタにとっては屈辱の討伐となった魔獣だった。

 その魔獣にラザノフはリベンジしたいようだ。


 リーブルで3人しか居ないドリアード。

 その1人が居ると言うビジョンの森。

 レイモンから来た人が一緒に居るとレミアが言っていたが、是非その人と会って話がしたい。

 これが俺の理由。



 しかし……


 思いもよらない依頼が舞い込む。


 ユキナがルークと海の家に来た時、たまたま俺達のパーティーメンバーが揃っていた。


 「丁度いいわね。 リュウ君、貴方のパーティーに依頼が来たわよ」


 直接の依頼は初めて。


 「誰から?」

 「……国よ。 貴方は国から上位亜人レベルと認められた証拠よ、受ける?」



 その討伐の内容。


 ナラサージュの西の海にあるゴーライト島郡、その端にポツンとあるハタホマ島は貴重な素材の宝庫。

 そのハタホマ島に魔獣が3頭流れて来た。


 その魔獣の名はギガッデス。

 ギガッデスが来てからは島に上陸すら出来ないほど危険な状況。



 「……と言うことで、この依頼を素敵な変人達で受けてほしい、って指名が入っているよ」


 ギガッデスはダンジョンでラスボス前に戦った魔獣。

 俺も怪我をしたけど、ラザノフは大怪我だった。


 「その前にさ、これだけ人が集まったんだからパーティー名を変えない? 例えばステキなリュウと変人達とか、ステキなリュウと変態達とかってどうかな?」


 ブフッと吹いたのはスエメルさんとユキナ。


 「キャハハハ〜! どうかな?」


 ……と皆んなに聞くが皆んなは不満顔。


 「ステキな人達と変態リュウの方がいいでござるよ」

 「フハハハ〜、そりゃあいい。 大将、それにしよう」

 「それでどう思う、この依頼。 ラザノフとルークに聞く」

 「急に話題を変えたでござるな。 リュウと拙者のコンビで2人とも怪我。 それに3頭はかなり厄介でござるよ」


 本来ならラザノフとルークと俺で1頭を相手するレベルの魔獣。


 「俺はその魔獣を知らないからなんとも言えない。 リュウ、その魔獣は飛べるのか?」

 「飛べないよ」

 

 ルークはそうか…… っと言って黙り込んだ。


 「ちなみに依頼料はいくらでござるか?」


 ユキナが応える。


 「2頭がそれぞれ18,000トアでもう1頭が12,000トア。 1頭はまだ大きくないみたいだよ」


 子供か……

 全部で凄くいっぱいトアで、それを6等分すると1人辺りいっぱいトアだな。


 「リュウならどう戦う?」


 ルークが聞いてきた。


 「火を吐くから注意して空から攻撃したいね」

 「大将、囮に俺を使ってくれ」


 シータには悪いけど……


 「最優先はユリアの命。 だから俺はユリアを守る役をやりたい」

 「リュウ、それだと他は全滅になる。 その役は俺が引き受けよう、いいですか、ユリア様」

 

 ユリアは俺とルークを交互に見て頷いた。


 「じゃあポンタ、拙者と魔獣退治だ。 後で連携を高めるでござるよ」


 俺とシータとの連携の練度は高い。

 何度も討伐に行ってるし、動いてほしい動き方なども普段から言っている。


 「期限は2ヶ月以内。 リュウ君、受ける?」


 皆が一様に頷く……


 「それじゃあ、受けよう。 出発はひと月後くらい。 それまでそれぞれのパートナーとの連携を深めといて。 ……特にルークは必ずユリアを守ってくれ」

 「私は守られるだけの存在じゃない!」


 ユリア……


 「悪いけどあの魔獣と対峙してそのセリフを言えるのは、このメンバーの中でも数人だ。 マインさんやラースビーさんのことを思って先ずは生き残ることを考えてほしい」


 ユリアはよっぽど悔しかったのか、涙を浮かべた。


 「あの、ユキナさん、さっきからお兄さんと仲良さげにしてるけど、元々の知り合いだったんですか?」


 ポンタ…… 誰も教えてなかったのかよ。


 「あの…… 今、お付き合いさせて頂いています。 ふふ、ポンタ君は気に入っている子は居るの?」


 結構な無神経発言だな、ユキナ。


 「あっ、う、うん」


 チラッとユリアを見た。

 結局、コイツは誰でもいいんだな。


 ポンタの視線を感じたユリアは、『絶対にいや』と小さく呟いた……


 



 それから数日、それぞれのパートナーとの練度も上がってきた頃、俺はキャプトマン王子から食事の誘いを受けた。


 夜、約束の時間にラリィとクラルさんを連れてキャプトマン王子の離宮まで行く。


 

 いつもの執事の人に連れられて玄関に入ると、王子夫妻が勢揃いしてた。


 「リュウ、最後の嫁を紹介しよう。 ミントラークだ」


 最後の嫁と紹介されたのは、少し小柄な可愛らしい女の人だった。

 でも、少しお腹が膨らんでいるので妊娠中なのか?


 「お初にお目にかかります、リュウ様。 ミントラークと申します。 私はゴールタール出身なので昔のリュウ様のお噂も少しですけどお聞きしているのですよ」

 「初めましてリュウです」


 噂のたつことはしてないよな⁈


 「噂とは何ですか?」

 「ふふ、学校の大会での活躍、吸血族を含めての貴族とのトラブル。 優しさと残虐性、冷たいアイドルと呼ばれていることはご存知ですか?」

 「え〜と、きっと人違いです。 自分は優しさだけで構成されてるって人には言われるので。 な、ラリィ」

 「お兄ちゃんね〜、優しいけどちょっとね〜、計算高いところがあるの」


 ……ぶつぞ。


 「ウフフ、あの時は泣かされたな〜。 近くに寄ってくると怖くて変な汗が出たもん。 血だらけの顔に目だけがギロッて感じで…… きっとあの時は皆んな泣かされたよ」


 クラルさんは味方枠だったけど、そんなの本人は知らないからな。

 でも、ラザノフは泣いてないしちょっぴり喜んでたぞ。


 「そ、その話を詳しく聞きたいです!」


 この人は第二夫人のヤモモさん。


 「面白くも何ともない話ですよ。 スモモ抱っこしていいですか?」


 ヤモモさんは抱っこしているスモモを俺に渡した。


 この親子はいい。

 何と言っても名前が簡単なのが1番いい。


 「さあ中に入ってお食事にしましょう。 リュウ君、貴方には私もキャプトマンからもお話があるからね」


 何の話だろう? っと思いながらスモモを抱っこして移動した。




 まだ夕食には早い時間だとは思ったが、食卓に並んでいたのはちょっとずつ切り分けられたケーキや軽食、お菓子がある。


 ターミナさんによると、紅茶が出回ってから王族を中心にこの時間にお茶をするのが流行っているらしい。

 

 つまり今日は夕食ではなくお茶に呼ばれたって感じか⁈



 美味しいケーキやお菓子、しかしラリィの必殺技が出ないのは、自分が恥ずかしいと思ったからか? ……そうです、貴方のお兄ちゃんも恥ずかしかったのです。



 「出産の時は私を呼ぶといいでしょう」


 クラルさんがミントラークさんに言っている。

 そう、クラルさんの血は産後の妊婦にとても良いらしいのだ。


 そして、実は俺もこの前にクラルさんの血を飲ませてもらった……

 もちろん、静香チンが治ると思ったからだ。


 結果…… 体調が良くなったけど静香チンは変わらずだった。



 「リュウ君、先ずは私の話からね。 リュウ君は付き合ってる人は居るの?」


 バラバラで話していた場が、シーンとなってしまった。


 「居ませんよ」


 ピクッとしたのはクラルさん、サーラやミナリと付き合っているとでも思っていたのか?


 「本当? それなら遠慮なく話すわね。 貴方に結婚の申し込みがいくつも届いています。 主に学校の貴方と被った世代、つまり1つか2つ上の卒業生ね。 他には地方の領土持ちの貴族の娘さんなんかからも申し込みが来てるわよ」


 そう言えば、貴族も上位亜人もこの世界は結婚が早い気がする。

 クラルさんなんて、17、8歳でラリィを産んでるしな。


 「もちろん学校を卒業してからだからね。 そうね…… だいたいが上級と中級、下級貴族の娘は今のところは居ないかな」


 俺が中級なら下級貴族の娘も居たかもしれないな……


 「すいません。 全くその気がなくて自分でも困ってます」

 「ふふ、そう言うと思った。 だけどね、リュウ君…… 君はいつかは望まない結婚もしなくてはいけないと思うわよ。 その魔力量は学校を中心にジワジワと有名になってるし、貴族になったことが知れ渡れば他国からだって申し込みが殺到すると思うわよ」


 魔力は生活と密着してるので、確かに俺は楽に生活出来ている。

 

 「リュ、リュウ先生は申し込みを煩わしいと思っているのですか?」


 突然、話に加わってきたミュラン。

 チラッと他の人を見ると、ラリィとサートゥラン以外は俺とターミナさんの話を聞いている。


 「ありがたいと思うけど、今は煩わしいな」

 「そ、それなら私と婚約をすれば解決出来ると思います。 王族の私より身分の上の方は居ないですし、私が成人するまでは煩わしさから解放されるはずです」


 確かに第一夫人候補の王族の娘より先に結婚してくれって言う貴族は居ないだろう。


 「それはダメだミュラン、其方では年齢が低すぎる。 それに親の前で何を言っているのだ」


 確かに親はビックリするよ。


 「お父様、私はこの国の手駒の1つです。 でも、その使い方が1番良いのはリュウ先生の子を産むことです」


 前もそんなこと言ってたな。

 女の子はませてる……


 俺があの頃は、正にパンツ一丁マンとして動き出したくらい。

 100パー強くなることしか頭になかった。


 「ミュラン〜、お兄ちゃんが好きだの?」

 「ふふ、今更?」


 マ、マジですかいな、まだ7歳なのに恋をするものなの?


 「お兄ちゃんね〜、女たらしだよ」


 もうずっと言われてるから、最近はそうなのかもと思ってしまってる。


 「ラリィ、ちゃんと男の人を見る目を養いなさい。 じゃないと、ロクでもない男に引っかかってしまうわよ」


 ミュランは真っ直ぐサートゥランを見て言った。 ……キツイよな、この子。


 しかし、当の本人は気付いていても全く知らん顔……

 俺はなかなかの男と思うけどな。


 「ミュラン。 リュウ君が誰かを好きになったらどうするの? リュウ君は婚約者の貴方が居るから結ばれることも出来ないのよ」


 ターミナさんなら説得してくれるだろう。


 「そ、その時に婚約解消をすれば宜しいのでは? リュウ先生が望めば私は……」


 話を遮りターミナさんが話す。


 「それだと手駒としての価値が下がるわ。 他国に対しても売り出せないじゃない。 そうよね、ミントラーク」


 ミントラークさんも王族だったのかな?

 まぁ、違くても結構いい血筋の人なのだろう。


 「はい…… それでもそのお歳でしっかりと前を見るチカラ…… ゴールタールでは欲しいと思います」

 「それだとダメね。 色々な国で欲しがられるユーリス姫のようにならなくてはね」


 ユーリス…… 名前を聞くと胸が痛むのにユリアって聞くと全く痛まないのは何故?


 「そのユーリスの話だ、リュウ。 どうだ、嫁に?」


 えっ!!


 「今は付き人の実家に行ってるが、この前の事件で僕は確信してたんだ。 ユーリスはリュウに惚れてると」


 ザワッとした……

 皆んなユーリスを知ってるし、あの事件(ユーリスが自殺を図る)も知っている。


 ユーリスとなら結婚したい。

 俺を思ってくれて美しくてスタイル抜群…… 何で俺は静香チンに取り憑かれてるんだ……


 「それって可能なんですか?」


 静香チンを打ち明けたらユーリスはどういう反応をするのか?

 それでもいいって言ってくれるかな……


 「分からない。 決めるのは父のビッシュ王だからな。 ただ上手く誘導することは可能だ。 ……上手くいくとは言えないがな」


 悩む…… こだわりがないとは言え、ユーリスは今結婚するなら1番手で選びたい相手だ。

 いや、やっぱり静香チンの俺じゃ、役不足だ……


 「すいません。 今は本当に女の人に興味が失せてる最中で…… もし、興味が戻ったら王子夫妻に頼むこともあるかも知れません、その時によろしくお願いします」

 「そうか…… ユーリスとリュウは合うと思ったんだがな……」


 合うよ。

 付き合ってたし、あの頃は凄く楽しかったもん……


 「それとこれは全く別の話だが、国からの討伐を受けたらしいな」

 「ええ、ターミナさんには言ったんですが、明後日からしばらくは子供達の稽古は見れないと思います」

 「それは構わんが、その討伐を推薦したのはカージナル兄さんだ。 チチッパーがあれからやる気を出したのが嬉しかったらしいが、リュウの評価を高めるのは討伐が成功した場合のみ。 逆に失敗すれば何を言われるか分からないので必ず成功させてくれ」


 子供の指南役には向かない、とでも言われちゃうのか?

 それでも簡単な討伐ではない。


 「ええ、必ず成功させます……」


 

 その後は俺が疑問に思ったことをターミナさん達に聞いた。


 それは何で俺は嫁が1人ではダメなのか? の答えだ。



 ルークもそうだけど魔力量が異常に多い、俺達兄弟。


 魔力が多い子供を産むのは母親にかなりの負担がかかる。

 事実、俺達の母親は俺を産んで亡くなっている。


 その負担を軽減するのが母親の魔力量。

 俺の魔力量−母親の魔力量、これで母親の魔力量が余るのが理想だそう。

 つまり俺や兄は平民の魔力の少ない子だと、出産の時にその母親の命が危なくなる。 

 だから理想は魔力たっぷりの女の人。

 上級貴族や王族の女の人、亜人が当てはまるが…… それでも俺とルークは異常過ぎるので、その女の人が子を産む時は命懸けになる。


 そこで数人の嫁が居れば1人にかかる負担が減ると言うことだ。


 1人なら…… つまりルークだけなら俺達の母さんも死んでなかった。

 そう思うと納得するけど、女の人は納得するのだろうか?



 まぁでも、今のままなら俺は結婚は出来ない。

 来年の卒業までに静香チンが治らなければ、皆んなに発表しよう。


 そうすれば結婚の申し込みはなくなる。



 ーーーーー



 ギガッデス討伐に出掛けて2日。


 そろそろ着く頃なので先行してルークが島を探してる。



 ルークの補助具。

 

 肩から股を通して腰で固定するタイプ。

 鳥の羽と言うより飛行機の羽根部分みたいなのが固定されている。

 俺のジェットより水平時のスピードは速いが、上り下りのスピードは俺のジェットの方が速い。



 「リュウ、ルークさん遅くない?」


 確かに遅い……

 俺が飛んでいて危険だと思ったことは一度だけ。

 それも実はとても大人しい魔獣だったので、事なきを得たが……

 

 「ちょっと見て来るよ」


 っと言って高く上がったら、遠くに島々が見えた。 ……アレの何処かに俺達が目指す島がある⁈


 ……などと思っていると、遠くからルークが近づいて来るのが見えた。

 俺も船まで戻る。



 

 船に戻ったルークの報告。


 ハタホマ島は船の進路を南西に向けて、約1時間くらいで着く。


 ギガッデスも確認。

 島の中心付近の広い平原にそれぞれ1キロくらい離れて昼寝中だった。



 「ここまで調べて来るとは思わなかったけど、それにしても遅かったね」

 「ああ、済まん。 実は近くまで寄って大きな木に魔法陣を描いて来たんだ」


 隙がない男だ。


 「魔力は?」

 「ああ、回復薬を2本飲んだから問題ない。 それより作戦は?」


 皆んなが俺を見た。

 

 「現状ならやっぱり各個撃破がいいと思う。 ルークはどの魔獣と戦う気だったの?」


 魔法陣を描いたなら、側にギガッデスが居たはずだ。


 「多分、2番目に大きいギガッデスだと思う。 その近くに魔法陣を描いてきた」

 「分かった。 それならルークチームはそのギガッデスの足止め。 絶対に足止めしてとは言わないから、自分達の命を優先して。 ラザノフチームは1番小さなギガッデスを。 小さいって言っても間違いなく強いから気をつけて。 俺とシータはデカい奴を倒して、俺はルークチームに合流、シータはラザノフチームに合流して戦う」

 「拙者達が早く倒したら?」

 「臨機応変に動いて。 それより今の戦い方は現状でだから。 島に着いたらもう一度ギガッデスの位置を確認してくるよ」

 「アタッカーは俺達のチームだな、大将」


 シータは足腰を鍛え直したら結構足が速かった。

 特に逃げ足は俺の並んで最速。


 「ああ、シータ、死ぬなよ」

 「もちろんだぜ」


 シータはこの討伐後に一旦、里に戻る。

 そしてサーファとのことにケジメをつけて来るらしい。


 緊張気味にルークと話すユリア。

 俺が静香チンじゃなかったら、俺の嫁になってたかも知れない人。

 ただ、最近は名前が違うからか、別の人みたいに感じてしまう。



 

 無人島のハタホマ島。


 偵察の結果、ギガッデスはそのままの状態だった。



 先ずはラザノフを背負ってポンタの首に紐を結ぶ。


 「お〜、それでポンタを引っ張るでござるな」

 「そう。 引っ張る役目はラザノフに任せよう」

 「コラ、ポンタ! 何で腰に結び直してるでござるか」

 「普通に首絞められてご臨終だから! ヤスザキじゃないんだから勘弁してくれよ〜」


 プフッと吹いたのはユリア。

 あの時を知ってるのはこの4人。



 ラザノフを背負って空へ、ポンタも空高く上がる。

 そして紐で引っ張って行く。


 ある程度まで魔獣に近づいたら、降りてラザノフとポンタは徒歩で魔獣に近づく。


 約束の時間は1時間後。

 


 次も同じようにルークとユリアを連れて行くが、今回はシータも連れて行く。


 ルークの場合は魔獣の上まで連れて来て待機。

 俺も戦う魔獣の上で待機する。


 何故、ラザノフチームだけ徒歩かと言うと、ポンタではラザノフを背負って空で待機出来ないから。




 ここはハタホマ島の西に位置する平地、草原が広がっている。

 

 船の位置から見て、手前にラザノフ達が戦う小型のギガッデス、そこから700メートル離れた左側にルーク達の相手のギガッデス、更に右奥1キロ離れて俺達の相手のギガッデス、それぞれが木陰で昼寝中。


 そろそろ1時間、ラザノフ達は見えないけどルーク達とアイコンタクト、なるべく音を立てないように降りて行く…… が、速攻で気づかれた。


 ルーク、しっかり頼むぞ、っと思いながら1番大きいギガッデスと対峙する。


 

 俺が前、15メートル離れて後ろからシータが針を飛ばす。


 ムクッと起き上がった恐竜型のギガッデス。


 本当に懐かしさを感じるのは同じ恐竜型だったラプトル(仮名)を思い出すからだ。



 あれからもう1年以上が経つ。

 今頃ルイースは何をしているのか?

 俺の知る女の中ではトップクラスに不幸な過去を待つルイース。

 俺を選べば必ず幸せにしてやったのにと思うけど、選ばれなかったものは仕方ない。


 目の前のギガッデスに選ばれなかった悔しさをぶつけるのみ!



 恐竜型特有の人族を見て、『ハイハイ餌でござりますね〜』っと舐めた感じでケツを振りながら近づくギガッデス。


 あの時のラプトル(仮名)のようにいきなりガブッと喰いつこうとする。


 バックステップで下がりながら左を一閃!


 ズバッとギガッデスの鼻面を切り裂く、そしてバスッ、バスッとシータの針もギガッデスの顔に当たった!


 『モンキー! チキータ! モエモエ〜! フルサトノウゼイ〜!』


 ギガッデスの叫びは上手く表現出来ないが、とにかくギガッデスは何か叫んだ!


 

 大きく息をするギガッデス、そして…… ゴォォォっと炎を出した!


 土の盾に氷の盾を添えて防ぐ。


 今回は炎が来ることは知ってたので対策済み。 ……しかし、ダンジョンのギガッデスより炎の出力が弱い気がする。


 炎を出したままで盾を破壊するギガッデス、だけどそこに俺はもう居ない。

 

 背中に ー斬ー と一閃の太刀!


 イデェェェ! っと叫んだ気がしたギガッデスが、ギロッと振り返った。


 す、凄い迫力!


 ビビった俺は下がるが…… 追いかけて来た!

 そこにドス、ドス、っとシータの針がギガッデスの首に刺さる!


 首を回転させてシータを睨みつけるギガッデス……

 さっきより首の曲がりがいい……


  は、針治療!



 見事にギガッデスの首のこりをほぐしてしまったシータ。

 今はギガッデスから全力で逃げております。



 上空、下には逃げるシータに追いかけるギガッデス。

 

 もう数秒でシータはギガッデスの餌だが、もう直ぐ俺が射程距離に入る……



 チラッとルーク達を見ると……

 ルークは盾を2本出して操りながら戦っている。

 その隙にユリアが必死で剣を振っているのが見える。

 横並びの2人、ルークの腕の血は返り血か⁈


 ラザノフ達は……

 ラザノフは正面きってギガッデスと対峙しているが、それを可能にしているのがポンタの防御魔術と攻撃魔術。

 俺より魔術の腕は上と言うポンタがいい仕事をしている。

 本当に2人はいい戦い方をしてると思う。




「た、大将〜!!」


 あ……


 忘れかけてた……



 ギガッデスの後方上空から勢いよく近づいてジェットを解除。

 俺自身が手足を丸め、そのまま弾丸のようにギガッデスの後頭部にぶつかる!


 ドカッ!! っとぶつかり、2、3歩だけギガッデスがゆっくり歩き、そのまま前のめりに倒れた。

 ギガッデスが倒れる途中、後頭部に突き刺した2本の刀を引き抜きシータの上空へ。


 「大将!」


 シータとは普通に会話が出来る程度の距離に居る。


 「ああ、いい仕事だった、シータ。 ラザノフ達の助っ人を頼む」


 倒れてるギガッデスはピクリともしない……


 シータは何も言わず親指をグッと挙げて走り出す、俺もルーク達の助っ人に急ぐ。

 



 ルーク達の正面、つまりギガッデスの後ろに待機した俺。


 あの魔術を試したいが…… 少し時間はかかる。



 あの魔術とはハリケーンランに炎を纏わす新魔術。

 結構な練習時間がかかってるので試したいのだ……



 少し耐えてくれ、と思いながらハリケーンラン改を作る……



 さっき気になったルークの腕に付いた血は、ルークの腕から出ている血だと分かる。

 ユリアに目立った外傷はなさそうだけど、今にも危ない場面が続いてる。

 

 ルーク達と俺は正面、俺が魔術を発動中というのはルークも分かるはず。

 あと数分だけ粘ってくれ……



 大きく息を吸って炎を出すギガッデス。

 2本の盾で遮るルークだが、かなりの高温にユリアを従えて下がる……


 そこにギガッデスが盾を破壊して突っ込んで来た!

 もう一度、盾を出すルークに、何を思ったか剣を突き出してギガッデスに突っ込んだユリア……


 そこにタイミングよくギガッデスが鉤爪を振り下ろす!

 ……ルークが盾を挟んで間に入ったのはいいが、その盾ごと吹っ飛ばされるルークとユリア。

 途中、ルークの腕が光ってルークとユリア、そして盾まで消えた。



 ……と思ったら、後ろの方の木から勢いよく吹っ飛んで出て来たルークとユリア、ついでに盾!


 吹っ飛び中に転移すると吹っ飛んで出て来るのか…… と感心したけど、あの吹っ飛び方は豪快すぎる。

 きっと2人とも回復薬が必要なくらいは怪我してるはず。


 

 ハリケーンが徐々に大きくなる途中、少しだけ入れてきた火の魔力を一気に魔力限界まで吹き込む!


 するとハリケーンに、ボッと蒼白い炎が纏う。


 キョロキョロとルークを探してるギガッデスの後ろから、俺のハリケーンラン改が勢いよく近づいてギガッデスを飲み込む!


 『グギャアア!』っと絶叫するギガッデス……


 それでも後は風の魔力を調節してギガッデスを飛ばさないようにするだけ……


 やがて絶叫は止んで風の魔力が軽く感じたので、ハリケーンラン改を解く。



 丸焦げで倒れてるギガッデス。

 

 少し可哀想な感じはするけど人族様の都合が優先されるのは、どの星でもどの時代でも同じだ……


 ゲンパチやルシフェルのように言葉が通じればと思うが、そうじゃなければやはり俺達だってギガッデスにとって餌でしかない。


 ……いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。



 そう言えばゲンパチやルシフェルのように言葉が通じる魔獣は居るのだろうか?


 ああ…… そう言う意味ではレミア達、ドリアードも人族認定されてないから魔獣なのか? それにサルーのような猿人の中には人族認定してない種族も居るとサルーが言ってた気がする。



 「ルークさ〜ん!」


 あ…… 今はそれどころじゃないんだった。


 

 ジェットで近づくが…… ほぼ魔力がないことに気づく。


 気絶してるルークに覆い被るようにして声をかけるユリア。

 しかし、ユリアの頭からも血が流れてる。


 ラリィを呼ぶ。


 「ラリィ、怪我を治す回復薬2つと魔力を回復する回復薬を取って」


 ニュ、っと影から顔を出したラリィ。

 ルークが倒れてるのに気づくと慌てて回復薬を取ってくれた。



 ユリアを下がらせてルークに高回復薬を飲ませる。

 別に首の骨が折れてる訳じゃないので大丈夫だろう。


 やはり直ぐに目を覚ましたルーク。


 「ハッ、ユリアさん! ……え、リュウ」

 「ユリアは無事。 魔獣も倒したよ」

 

 ユリアも近づいて涙ながらにルークにお礼を言う。


 「ありがとう、ルークさん…… 貴方は私の命の恩人だよ……」


 え〜と、俺は?


 「いや、結局怪我までさせてしまった。 やっぱり俺じゃ役不足だった……」


 パッと倒れてるルークの肩を掴んだユリア。


 「そんなことない……」


 至近距離で流れるユリアの涙がルークの顔に堕ちる……


 見つめ合う2人……



 な、何、この世界観!


 「コラ、ルーク! ユキナに言っちゃうぞ」

 「え…… あ、いや、ハハ、うん……」


 どこまで魅了されちゃってるの?



 パッとユリアが離れる。


 「ユリアも回復薬を飲みな」

 「わ、私は大丈夫」

 

 ふぅ、確かに直ぐに甘い雰囲気になるくらいだから大丈夫だろう。


 「よくやったルーク。 これは俺からのお礼だ。 ……ゲリール」


 ユリアの小さな傷が消えてく……


 「なっ、何だこの魔術は? それにさっきのまじゅ……」


 説明の時間はない、ジェットで急いでラザノフ達の元へ。

 



 最後のギガッデスの上空。


 直ぐに仕留めることが出来るけど、3人でも勝てそうなので手は出さない。



 草むらに隠れて針を操るシータ。

 ギガッデスの左目に針が刺さってるので、シータの役割は大きかったことだろう。


 ギガッデスの右から得意魔術のランザ何とかを操るポンタ。

 ラザノフとの連携は良さそうだ。


 見えない位置から槍を刺すラザノフ。

 ギガッデスもラザノフも血だらけだけど、ラザノフの血は返り血だろう。



 やがて力尽きたギガッデスが倒れる……


 討伐成功!



 

 帰り。


 ダンジョンで散々食ったギガッデスの肉。

 特に美味しい部位をラザノフが覚えていたのでクナイで解体して持ってきた。


 なので……



 船上焼き肉パーティー、お酒もあるよ、を開催。


 それぞれの戦いを興奮気味に語るメンバー達。

 特に興奮してるのはユリアだ。


 「だからね、リュウ。 あそこでもうやられた〜って思ったでしょ。 そしたら変な場所から出てきてゴロンゴロンってさ。 あっ、と思ったらルークさんは倒れてるしギガッデスも丸焦げで倒れてるし」


 何言ってるかよく分からないけど、楽しそうなユリアは美しい。


 「結局はリュウ1人で倒したか……」

 「仕方ないですよ。 ルークさんは私を守ってたんだし」


 それに尽きると俺も思います。


 「それにしてもあの魔術、俺には再現出来なそうだな……」


 アレは無理だろう。

 ハリケーンラン自体が風の魔力、20以上と聞いた気がする。

 それに火の魔力も俺の限界まで使うからな……


 「ただプレゼントのゲリール? は行けると思う。 ヒールより効き目がありそうだけど、使ってる人を知らないんだよなぁ」

 「アレは俺とポンタしか使えない。 俺のとても大切な人から教わったんだ(本当は勝手に再現した)。 ちなみに解毒作用もあるからね」

 「なっ! それって詠唱は?」

 「えっ、そんなの知らないに決まってんじゃん」

 「そ、そうだよな〜。 でも、もし詠唱があれば皆んなが使えるいい回復魔術になるのにな……」


 でも、闇の魔力持ちは少ないから皆んなとは言えない。


 「ちなみに誰かとか知られたくない感じ?」

 

 ユリア以外は聞いてないか……


 「女神に近い存在。 誰も会ったことはない」

 「ふふ、リュウは大袈裟ね。 確かに昔は女神様が居たって言われてるけど」


 この世界は不思議だらけ。

 だからスケベな豚属性まである⁈


 「それよりルークはどこまで行くの?」


 ここからならリズーンは遠くない。


 「ユキナさんが待ってるから一度サンカルムに戻ってから帰るよ」

 「ふふ、仲が良いですよね」


 ユリアが俺を見て寂しそうに言った。

 その時俺は何となくユーリスと登った山を思い出した。


 「リュウ達も行くんだろ」


 次の依頼のことだ。


 「うん。 魔力が回復したら行くよ」


 ラザノフを背負うのでなるべく陸が近いところから飛びたい。





 俺達が目指すビジョンの森。


 そこで起こる事件で、それぞれの運命が狂い出す。


 ただ……


 俺にとって狂った運命は歓迎だ。


 それは一縷の望み。


 クラルさんの血でも治らなかった……

 静香チンをどうにかして〜!


 

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