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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 田中幸夫

 

    

    第二章  成り上がり


 第九十一話  「田中幸夫」




 この馬車はリズーン国の馬車で、驚くことに車輪が勝手に動くようになっている。


 もちろん馬二頭で引っ張って行くのは同じなので、簡単に言えば電動アシスト自転車みたいなものだ。

 馬への負担が減るため、馬も長く走れるようだ。


 キャビンは王子が乗るからか、凄く豪華な作りで後ろには寝るスペースまである。


 目的地までは4時間、さっき喧嘩したリズーンの貴族、四つ目君ことグリモス、女剣士ちゃんことミュラーが一緒で、密室だけに気まずくなると思っていたが……


 「リュウでいいよな、さっきは済まなかったな」


 いきなり謝ってくるとは、俺が密室で暴れるとでも思っているのか。

 

 「別にいいですよ。 痛い思いをしたのはそちらだけだし」

 「ああ…… 捻られた腕にまだ違和感があるよ」


 筋を痛めれば、完治するのに数ヶ月かかる時もある。


 「ねぇ、それよりさ、裏の世界のこと教えてよ」


 この人達、元々色々と知っていそうだな。


 「いいですよ……」


 そんな感じで裏の世界、レイモンのことを教えてあげた。

 ただ、俺もレイモンをあまり知らないので情報は少ない。


 「兄弟は?」

 「血の繋がった兄と血の繋がりはないけど妹と思ってた子が居たよ」

 「ふ〜ん、お兄さんもカッコよかった?」


 ……もか。


 「俺よりはね。 ああいう顔なら今日も喧嘩になってないんじゃないかな。 ……分かんないけど」

 「ガハハ、顔は関係ないだろ」

 「あるよ。 俺は孤児院で断トツの最年少だったのに人気がなかったけど、兄は年下でも一目置かれてたもん。 爽やかで汗も臭くなさそうだし」

 「ふふ、それでも女は貴方のような危ない雰囲気の男に惹かれるのよ…… 貴方の場合は本当に危ないけど」


 さっきと違って2人とも全く角がない。

 俺が危ないから⁈


 「ミュラーさんは亜人?」

 「そうよ、赤い目の人間なんて居ないでしょ。 それとね、胸の辺りに模様もあるのよ、見たい?」


 少年のような格好でも、美しい目鼻立ちは隠せない。


 「最高レベルの危なさになるかもよ。 そんでグリモスさんは上位亜人?」

 「キャハハハ、なって〜。 あ…… ごめんなさい、グリモス様」

 「フフ、いいぞ。 確かに変な魅力がある青年だ。 ……そうだな、俺は中位亜人、だけど親父は上位亜人だ」


 後から聞いた話では、リズーン国は上位亜人ハーフと獣人が多い国のようだ。

 逆に人間は少ない。

 

 それから馬車の中では、俺は昔の話をして、グリモスさんとミュラーさんはリズーンのことを話した。


 そして、あっという間にブエネゼッタに着く。


 


 馬車から降りた3人、でもグリモスさんは大きな荷物を抱えてる。


 「あの廃校よ。 勝てると思う?」

 「これがあれば負けない。 ところで何ソレ?」

 

 何ソレの正体はビデオだった。

 武闘大会で一度だけ見たが、それはライブ映像を写すやつだったと思う。


 「リズーンにはそんなのまであるんだ」

 「ほう…… 理解が早い。 説明しても中々分からない人も多いのに」

 

 流石に17年もこの世界に生きてれば、自分が転生者であることも忘れてくる。

 だけど前の記憶はある。

 ビデオは古いイメージさえあったのに、この世界では画期的だ。


 「貴方達の戦いを撮るよう言われているわ。 でも10分しか撮れないの…… 1,700魔力で10分よ……」


 30でも多いと言われてる魔力量、1,700貯めるには…… い、今は戦いのことを考えよう。



 少ない情報の中で気になってのが、ギルドの大会で戦ったムジナさんに俺が勝ったことで相手が警戒している、という件。

 リズーンは獣人の多い国というのもさっき聞いた。 ……ムジナさんは獣人なので、今回の相手も獣人かも。


 まぁ、それもこの建物の2階に行けば分かる。


 


 建物に入ると2人は『ちょっと待って』と言って機材を準備した。


 前にミュラーさん、後ろにグリモスさんで長い機材を担いでいる。



 ここは廃校。

 昔の田舎の小学校って感じで木造の2階建て。

 階段は両端と真ん中にあって、戦いの主戦になりそうな廊下の幅は2メートルくらいか。


 「良し、いいわ。 カメラテストするからこっち見て」


 ん…… ミュラーさんが映す役で、グリモスさんが機材を支える役割なのか。


 「はい、そのまま『愛してる』って言って見て」

 「ブハハ、緊張感ね〜。 それも作戦?」

 「……違う、趣味。 いい男、愛してる集のビデオで一儲けしたいの」

 「アホか、勝手にやってくれ。 俺は勝負モードに移行する」

 「うう〜、痺れるわ。 後で見〜よお〜っと」


 だから緊張感がなくなるっつうの。




 2人の指示で右端の階段から上がると、奥の方の教室から男が出て来た。


 覆面をしてるからどの人族か分からない。

 

 背は175センチちょっとありそうで、人族的には獣人、亜人が多い。

 歩く姿は獣人。 ……とてもしなやかに歩いてる。

 武器は短めの木刀、これは魔力の高い亜人が多く選ぶ武器だ。

 

 修羅場を潜り抜けて来たかのような雰囲気……



 ツカツカとお互いに向かい歩く、俺は階段の踊り場の広いスペースで戦いたいので足早くする。


 しかし、奴はその思惑が分かったのか、走って向かって来た。


 そしていきなり打ち合う。


 しなやかな動きはやはりムジナさんに似ている。

 ただ…… ムジナさんより剣技のレベルは低い⁈


 そんなんじゃ、狭くて二刀流の良さが殺されてる場所でも俺は止められない!


 バシーン、バシーンと右下段から左の中段、奴は押されて下がるが流石にこのスペースでは蓮撃は出来ない。

 それでも付いて来れない覆面男の腕にバシッと当たる! ……がその瞬間、俺の中の魔力が変な感じで動いた。


 ビビッと覆面男の指からレーザービームのような光線が出た!

 至近距離! だけど魔力が動いたことで魔術が来ることは予想出来た!

 

 が、腕に掠るように…… っと更に指先を曲げて俺を襲う!

 身体を捻るように交わして距離を取る。



 ふ〜、何だあれ? 無詠唱? それともスキルか?

 見ると火傷のような跡と痛み……

 

 だが俺だって無詠唱持ち、今の魔術を再現…… な…… 出来ない。

 光属性を目一杯に使うが、発動しない。

 それならスキルか。


 まぁいい、剣技は俺が上。

 狭い廊下では二刀流の意味がないので左一本で行く。

 


 カララーンっと右の木刀が跳ねる音がするうちにジェットを使い急接近する。


 ビィ〜っと変な音と共にレーザーが飛んでくるが、飛んでくると分かっていれば当たりはしない!


 避けて打ち合う!

 左手に注意して隙をついて壊したいが、覆面男も分かっているのか、この距離では指を向けて来ない。


 それならっと、俺が右手から氷の矢で覆面男の腹を狙う。


 バシッと上手く捌いた覆面だが、それでは俺の上段の餌食だ!


 が…… スカッとした手応えで、奴は消えた……



 え〜と、何これ?

 奴が何処にも居ないんですけど……


 今一瞬、何か光った…… が、魔術ではないはず、俺の魔力は動いてない。


 あの光…… まさかチャイムの代わりか?

 それなら奴は授業を受けてる? まぁいい、教室を探してみよう。



 1番近い教室に奴は居ない。


 だけど窓際まで行って外を見るとなかなかの景観。

 ここは小高い丘にあるので、俺達が上って来たのを教室から見ていたに違いない。


 俺がこの学校に通うなら絶対に窓際の席を確保するな。

 そして授業中に外を眺めてれば、そのうち授業は終わ……


 「何やってんのよ〜」


 見るとリズーンの2人が俺を映してる。


 「奴は遠いところに旅立ったから、外を見て思い出を探してるんだ。 でも、思い出がちょっとしかなくてね」

 「ふっはは〜、変な子〜。 いいから探してあげなよ〜」

 「アンタらのお仲間さん、もしかして寂しがり屋さん?」

 「プフゥ〜、もう終わったら怒られるからね〜」


 何を怒られるんだか……



 廊下に出て、気配を探ると…… 横っ飛びで避ける!

 後ろからファイヤーボール系の大きな玉! ドゴーン、ドゴーンと後ろに流れて爆発した。


 パラパラと木屑が舞う、結構な魔術だったが遠いので俺の魔力は動いてない。

 埃と煙で前が見えないくらいだが、俺の眼は優秀なのでお前を捕捉してる!


 ダッと走って覆面に向かうが、途中で教室側の壁が光る!


 ブァっと俺の眼の魔法陣が広がり、壁に仕掛けてあった魔法陣が爆発したのが分かった。


 土の盾! ババっと少し破片が飛んでくるが何とか間に合った。

 そのまま走り続けて…… って、奴も走って来る!


 ブッと口から魔術の氷の矢! しかし潜り込むように避けた覆面がそのまま勢いよく中段に振る。

 

 カッと受けながら奴の木刀を踏みつける。

 そして下に居る覆面に左上段を打つ!


 ブッっと口から何かを出した覆面! が俺の上段打ちは避けれない!


 バチーンっと右目の下に流れながら当たったのはファイヤーボール? そしてまたしても俺の上段はスカッた。


 何ともよく分からない相手、凄く出鱈目な戦いをする奴!

 って言うか、めちゃ痛いんですけど……


 レミアが優しく教えてくれた(本当は勝手に再現した)ゲリールをかける……



 ふぅ…… そのまま奴が潜んで居たと思われる教室に入ると、大きな魔法陣が光っていた。


 これは…… なるほど。


 懐かしくて涙が出そうになった。

 この魔法陣は俺がソマルさん家へ向かう途中にあった転移魔法陣。

 どういう仕組みか知らないが、こんなことをする奴は1人だけだ。


 

 なるべく小さな虎鉄改を投げて、転移魔法陣を破壊する。


 ドゴーンと大きな爆風が後ろから、前からは氷系の知らない魔術が飛んでくる。


 奴はもう後ろには回れない、つまり前に詰めて行けば逃げられない。


 なるべく氷の盾と土の盾を駆使して魔術を受ける。 

 だって後ろのミュラーさん達が巻き込まれるから…… 全く、俺はアンタらの味方じゃないんだぞ。


 

 真ん中の階段の踊り場にまで来た時、また魔法陣が所々で光った!

 これはマズい!

 ジェットで後ろに下がってリズーンの2人の前で大きな土の盾を出す!

 ドカーン、ドカーンと数発爆発して辺りは煙だらけ……


 殺しはなしのはずだが奴の攻撃の一部は殺傷能力の高いものだった、今のもそう……

 同僚を巻き込んでもいいのかよ。


 「あ、ありがとう」


 グリモスさんのお礼も聞こえないほど俺は集中していた。


 奴はどこ? 今の間で階段を下がってどこにでも行けた…… が、きっと奴は煙の向こうで変わってない。

 その理由は、もう1つの転移魔法陣が向こうにあるから。


 そして奴なら俺がそれを壊すことを察知するはず。



 バッと走り出し煙の中へ。

 この眼でも見えない先に、きっと奴は待ち構えて……

 

 突然、眼の魔法陣がブァっと広がった。

 奴が待ち構えていたのは煙の中だった。


 低めの球をフルスイングするように木刀を振ってきた覆面男。

 つまり上に逃げれば魔術の餌食になると言うこと!


 リンボーダンサーのように反り身で滑るように木刀を掻い潜る。

 木刀が顔の上を通る最中に、手と足のジェットで急ブレーキ!

 スピード勝負なのでバランスを崩しながらも覆面男の腹に虎峰!


 スッパーンといつもの音がしたので、何とか当たったことを知った。



 煙の向こう(俺が居た方向)に吹っ飛んだ覆面男。

 歩いて向かうと……


 覆面を取ってミュラーさん達に介抱されてた。

 回復薬を飲んでるが大丈夫だろう。


 俺も近づき手を伸ばす。

 ガッと掴んだのでググっと引っ張り起こしてあげる、そしてそのまま抱きしめた。


 「よく来たなにい……」


 もう、にいちゃんって歳じゃないか……


 「よく来たな、田中幸男。 ……ハッ、違う、よく来たなルーク」


 自分で言っちゃったけど、何で田中幸夫って呼んだんだ?


 「ゲホッ、ゲホッ、ふぅ…… 変な技を使う…… あ、ああ、約束だからな。 それよりトゥルフ王子に失礼はしてないよな?」


 第一声がそれかよ、離れて顔を見て話す。



 ルーク(田中幸夫)

 昔から王子様っぽいと思っていたけど戦争を経験して爽やかさが少し抜けた。

 それでも未だに白馬に乗って後ろにはお姫様まで乗せてそうな感じはする。



 「他にあるでしょ、話すことが」

 「あ、ああ。 背が高くなったな、前と逆になってるぞ」


 確か最後はソマルさん家に行く前だったな……

 俺の背はリリカと同じくらいだったから165センチくらいか。

 今は俺の方が5、6センチは高い。


 「シスターとローチェのことを教えてよ」

 「あっ、ごめん、そうだよな、うん」


 っと言ってルークは話し始めた。



 俺のチームが最悪の激戦区、チャリルに派遣が決まった頃、ローチェは月に一回の受診でいいくらいに回復していた。

 また、俺が戦争で亡くなったとしても、病院にそのまま通える手筈はして来た。


 その頃のシスターは変わらず新しく入って来た子供達の世話をしていた。

 相変わらずリチャードやケビンが良く院に行ってたのはあの頃から変わらない。


 そして俺は激戦区、チャリルへ。


 チャリルでは人間国が劣勢で徐々に敗走に追い込まれる。

 そのシンガリを任されたのが俺のチーム、そして最後は俺一人がシンガリを勤めて、最後は急流に堕ちる……


 そのピンチを救ったのが、リュウが発明したジェット、俺はジェットに命を救われた。


 俺はそのまま川を下って亜人国へ入る。

 そしてトマスという港町でヤーモンと言う入れ墨職人と出会い、お世話になる。

 

 その後、俺のジェットで海の滝を越える方法、補助具を作って海の滝を渡った。



 リーブルに着いてトゥルフ王子に出会った俺は、弟のリュウを探していることを告げる、リュウの能力は隠さなければ自然と有名になるくらい強いと……


 しかし情報を探ると、どうやら今はフォルマップル国とトラブルになり捕まっているとの情報が…… だけど直ぐに逃げたことを知る。


 トゥルフ王子に相談してリュウの後ろ盾になってほしいと進言したが条件を出される。

 1  リュウを貴族にする(リュウを貴族にすることで、その後の後ろ盾になりやすい)。

 その場合の出身はリズーンとして、ルークと同じ苗字にする。

 2  6月の貴族の武闘大会でリュウか俺が優勝する。



 

 「まぁこんな感じだけど、今回は俺が勝てば後ろ盾になってくれることになっていたんだ……」


 ん? トゥルフ王子は俺が勝てばと言ってた気がする。

 まぁいいか……


 「もしかして転移魔法陣の入れ墨を身体に彫ったの?」

 「ああ。 入れ墨は最近亜人国で流行っているんだ。 ヤーモンさんは入れ墨職人の第一人者だったからな」


 その発想が凄えな……


 「補助具って、翼か何かを背負うとか?」

 「ああ…… 鋭いな。 正にその通りだけど致命的な欠点があった。 それはブレーキがないこと。 補助具を背負うとブレーキ体勢になれないんだ…… だからリーブルに着いた時も海にダイブして止まるしかない。 でも怖くて怖くて何回もグルグル回ってたよ」


 それでもきっとそれを背負えば魔力の消費が少なくて済むはず。


 「その補助具は?」

 「ダイブした時に壊れちゃったよ。 また作らなきゃ」

 「俺のも作って、2人乗り出来るやつ」

 「ああ、任せとけ」


 やった〜、これでラザノフを背負っても負担が少なくて済む。


 「あの〜、いいかしら、ルーク君」

 「あ、すいません。 いいです」

 「一応報告があるから帰りの馬車で話さない? 久しぶりで悪いんだけどさ」


 

 っと言うことで馬車へ。



 それから馬車に乗って俺もルークも色々と情報交換した。


 その1つの転移魔法陣について。

 自分の血液で魔法陣を描き(簡単なものから複雑なものまであり、ルークは全てを網羅しているわけではないらしい)、そこに魔力を注ぐ。

 魔力量は俺が破壊した直径1メートルの魔法陣で100魔力くらい使う。

 3日くらいは使えるけど、雨が降ったり風が強い場所では直ぐに使えなくなる。

 あの大きさ、比較的に簡単な魔法陣で300メートルしか転移出来ない。



 レーザービームと虎峰。

 俺がレーザービームを再現出来なかった理由は分からない。

 ただ、魔力量が不足してた可能性を指摘された。

 じゃあ、逆に風の魔力(俺の魔力量はMAX)を目一杯使う虎峰をルークが再現出来るか試したが、やはり再現出来なかった。


 そう言えば、ポンタも虎鉄改の再現は出来なかったと言ってたので魔力量不足の可能性は高い。


 注  もし虎峰をルークに一瞬でコピられたら、俺はブチギレてレイモンまで泣きながら飛んだだろう。

 それほど虎峰の開発に費やした時間は長い!


 

 「いつ海の滝を渡って来たの?」

 「春だったよ。 渡って直ぐに魔獣に襲われてる馬車を助けたら、それがトゥルフ王子が乗った馬車だった」


 運がいいな…… 全く苦労知らず、流石王子顔。


 「何で俺と戦いたかったの?」

 「随分と前に小さな弟に負けたんだ、それがコンプレックスにもなる。 だけどリュウから離れると俺より強いやつは殆ど居なかった。 戦争を経験して俺は強くなった、今度は必ず勝てる。 ……っと思ったんだが余裕で負けた」

 「キャハハハ〜、戦いの最中に教室で黄昏てたよ、外見てさ〜」

 「本当に信じられん、ルークは貴族チャンピオンだぞ……」


 余裕ではないけど、この前のゴルゾフさんと比べると楽ではあった。


 「そんで何で貴族になったの、階級は?」

 「登用されれば従うさ。 それに俺のやりたいことをするには貴族の方がいい。 階級は中級だ」


 なるほど、兄っぽい考え方だ。


 「やりたいこととは?」

 「転移魔法陣を研究していつかシスターやローチェをこっちの世界に連れて来たい。 自由に研究をするなら高い地位が必要だ」


 俺が兄を尊敬するのはこういうところだ。

 俺だったら背負って飛んで連れて来る発想しか生まれない。



 「それで、フォルマップル国に何をしたんだ」


 俺は学校の大会で何があったかを話した。


 「ふぅ。 全く変わってなくてびっくりだ。 トゥルフ王子には失礼してないよな?」

 「うん、大丈夫」


 王子にはしてない。


 「え?」

 「した…… よな」


 リズーンの2人が驚いた顔で言った。


 「やっぱりしたのかよ〜! 何が『うん、大丈夫』だよ〜! お前があっさり返事する時は昔から、あーだこーだでそーだひーだ」


 久しぶりに発動したなぁ、俺の必殺説教流し。


 「まあ待てルーク、トゥルフ王子はワザとリュウを怒らせるよう俺達に指示した。 だから多少の失礼は織り込み済みだ」


 そうなんだ…… 確かに馬車に入ってから全く態度が違うから違和感があった。


 「そうなんですか…… 危険なことをする…… 皆さまには失礼はしてないよな、リュウ?」

 「うん、してない」


 織り込み済みなら失礼に当たらない。


 「み、皆んなぶっ飛ばされたぞ、王子達の前で」

 「お、お前は〜!」


 ……てな感じで帰りはだいたい説教となった。




 カルムナージュ城の一室。



 王子達がビデオを確認する間を待つ。


 

 朝と同じように王子達を待つ俺達。

 だけど違うのは向こうのテーブルの後ろにリズーンの人達も立っている、そこに当然、俺の兄もいる。


 狭い部屋なので会話も聞こえる……


 「ルーク、勝ったよな、勝ったよな?」


 首長族のおっさん……


 「勝敗はビデオで確認するまで口外しないよう言われてますので」


 そう言えば丸太が居ない、それに兄も気づく。


 「チッパルタッパーさんは?」


 丸太の本名はチッパルタッパーなのか…… 丸太でいいと思うけど……


 「クッ、アバラをやられて全治2ヶ月の重症だ」

 「す、すいません。 リュウですよね?」


 首長族は頷いた。

 

 ギロッと俺を睨む兄、話を逸らすか。


 「3人は勝敗に興味がないんですか?」


 ザッカーさん達に聞いた。


 「ええ。 私達はフォルマップル国で何があったのか、学校の大会で何があったのかを知っておりますので」


 答えになってる?



 コンコンっとドアをノックする音がして執事の人と王子2人が入って来た。


 王子2人と対面するように兄と俺が座る。


 「ビデオは見た。 あれだけの仕掛け、またリーブルにはない技術を駆使した戦い方、見事だ、ルーク」


 おお〜! っと首長族の声が聞こえた。


 「フハハハ、それでも足りない、どれだけの化け物なんだ、其方の弟は?」

 「思った以上に強くなっていました。 完敗です」

 「……最後、ルークが煙の中から吹っ飛んで来たが、その技はチッパルタッパーがやられた技と同じか」


 トゥルフ王子が俺を見て言った。


 「そうですよ」

 「だがルークは元気そうだ」


 丸太は病院のベッドだったな……


 「鍛え方の違い、それだけですね」


 骨の周りの筋肉や虎峰を吸収する柔軟性など丸太と兄とでは比べられない。

 兄はきっとあれからずっと俺が教えた柔軟や体幹トレをしてたに違いない。


 「いえ、実は歩くのも辛いくらい、私の場合は背中が痛いです」


 そう考えると、ラザノフは回復薬も飲まずに笑いながら歩いてたよな…… 流石にタフな竜族。


 「フッ、約束通り貴族になるならリズーン国王子の私が後ろ盾になってやろう」


 う〜ん、イマイチ良く分からない……

 そう思いキャプトマン王子を見ると、キャプトマン王子は話し出した。



 「トゥルフ王子からリュウという男のことを知りたいと連絡が合ったのは、リュウがフォルマップルに囚われてから直ぐのことだった。 つまり、トゥルフ王子は私がリュウの救出をリズーン国に頼んでいたことさえ知らなかったのだ。 その後、トゥルフ王子にリュウのことを相談、そしてトゥルフ王子のアドバイス通りに平民、リュウとの関係をナラサージュは絶った。 トゥルフ王子、つまりリズーン国がリュウの後ろ盾になる条件は1つだけ、リュウを貴族にして貴族の武闘大会に出場させ、大会でリュウが優勝すること、だったのだ。 しかし、リュウは…… 見つけたけど帰って来なかった…… それでも、新たな後ろ盾になる条件を下さったと言う訳だ」

 「それがルークに勝つこと。 だけど貴族の大会では同条件下で戦えたのに其方は帰って来なかった。 だから今回はルークが勝ったら君の後ろ盾になるとルークには伝えた。 ルークも君の強さを充分認識しているので、色々と仕掛けてたろ? ハハ、それでルークが負けるなんて、私は夢にも思わなかったよ」


 ルークが話す


 「トゥルフ王子も人が悪い。 それならどちらにせよリュウの後ろ盾になってくれてたのですね」

 「ああ、ルークが貴族の大会前に、『リュウが居なければ自信があります』と言う言葉を聞いて、助ける価値あり、っと思ったのだ」


 なるほど…… これで全てが繋がった。


 「キャプトマン王子、ザッカーさん達、そしてトゥルフ王子も色々と動いてくださりありがとうございました。 ただ貴族になることはお世話になっている竜族の人達と相談して決めたいと思います」


 何よりラリィの立場がどうなるか、気になる。


 「り、竜族の人にお世話って…… 本当か、リュウ」

 「海の滝を超えて初めて会った人族が竜族だったんだ。 親友のラザノフは族長の息子でね、両親とも俺に目をかけてくれてるんだ」

 

 キャプトマン王子が口を出す。


 「その話は初耳だったな……」

 「フハハハ、リュウ、もし貴族になるなら兄と同じリズーン国が自然だ。 フォルマップル国も文句は言えないだろうし言わせない、どうだ?」


 本当はラザノフの前にレミアと会っている。

 レミア…… 何でレミアを考えると胸が締め付けられるように会いたくなるんだ…… んで、ああ、リズーンか。


 「色々と考えたいと思います。 でも俺は兄と違って頭がわる…… 頭の中身がよろしくないので役立たずの貴族になる可能性大ですよ。 自慢じゃないけど」

 「ブハハハ〜、だが恐ろしく強い!」


 貴族でも強さは必要なのだろうか?

 確かに貴族の武闘大会はあるけど、兄がチャンピオンなら弟の俺はリズーンにそれほど必要とは思えない。



 話が途切れたのでタムリーンさんが俺に話す。


 「リュウ様〜。 今日の夕方にラザノフ様が見えましたよ〜」


 帰って来たのか。

 それならガルフさん達も含めて相談しよう。



 トゥルフ王子一行のサンカルム滞在は3日を予定してるらしい。

 出来ればそれまでに決めてほしいと言うので、明日の朝にラザノフ一家と隠れ家で話し合いをすることになった。


 夜のうちにザッカーさんがラザノフに連絡をしてくれる……



 就寝前。


 ふぅ、何か疲れた1日だった。

 兄とは3年ぶりか…… あの後から急激に背が伸びたから驚いてたな……

 

 貴族か…… 俺なんかがなっても意味がないと思うけどな……

 いや、俺だってこれから色々と勉…強……を……


 グガァ〜、スピ〜、グガァ〜、スピ〜……

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