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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 氷竜族


     第二章  成り上がり


 第八十七話   「氷竜族」




 氷竜族の里があるホオヒューガ国を目指す俺達の船。

 しかし、その前にリバティ国にある土竜族の里に寄って、ガルフさん夫婦とルカルスさんを乗せて氷竜族の里を目指す。


 「そろそろでござるな……」


 一応、里には連絡をしてある。

 船は時間通りに進んで来たので、ガルフさん達が波止場で待っていてもおかしくない。


 すると…… 土竜族が自分達のために作った、土竜族専用の波止場で待っている大きな3人が居た。


 

 乗り込んできた3人、ガルフさんとサラノフさんとはハグを、ルカルスさんとはガッチリ握手する。


 「よくぞ逃げ出した! 本当にあっぱれだ、君にしか出来ない!」


 あの状況でなら、そうかも。


 「ああ、リュウならもしかしたらとは思っていたが、見事にやったな」

 「心配かけました。 何とか生きて抜け出せました」

 「ああ、ああ。 今まで何してたか、聞かせてくれ」



 それから俺は、拷問からハッピーライフ、そしてお別れ、キャプトマン王子の動きまで話した。


 逆にガルフさんはリバティ国の国王に、フォルマップル国へリュウを解放させるよう進言していたと言う。


 「ナラサージュの王子が何かを仕掛けるのなら、土竜族初め、リバティ国も味方につくぞ」


 それは頼もしい。

 リバティ国は軍事レベルがフォルマップル国より高かった気がする。 ……うろ覚えです。


 「とにかく良かったわ。 貴方は私達の一番下の子と思っているのよ。 多分、ルカルスとラザノフも……」


 確かにルカルスさんは兄っぽい。

 ラザノフも…… 有りかも。


 「でも、ラザノフと違って、女の子に凄くモテるけどね」

 

 いや、ラザノフは結構モテる。

 強くて優しく、包容力までありやがる。

 だから、結構モテるのだ。


 それでも、ラザノフは勝手に恋も出来ない立場。

 土竜族の里には年齢の合う人は居ないって言ってたけど、氷竜族の里ではどうなんだろう。



 「氷竜族の里に、ラザノフに合う年齢の人は居ないんですか?」


 サラノフさんはニヤッと笑った。


 「それが1人、居るのよ。 幼馴染で昔は将来はその子と結婚するなんて言ってたのよ」


 幼馴染? ……氷竜族の女でラザノフと幼馴染とは、どういう意味だろう。


 「その子とはいつ以来、会うんですか?」

 「4年ぶりくらいね。 ラザノフももう18か……」


 ラザノフは俺の1つ上。

 俺も17歳か……


 

 聞くところによると氷竜族は今、一番槍術レベルが高い、つまり他の竜族より強い。


 その理由としては上位亜人、全体としてもトップクラスの"ゴルゾフ"と言う人が兵団長として居るから。

 

 ちなみにラザノフの見立てでは、俺とゴルゾフが戦った場合、俺の分が悪いらしい。


 ルカルスさんやラザノフでさえ、3番手争いレベルと言うので、かなりレベルの高い兵団なのだろう。



 まぁ、今はそれどころではない……



 レミアと遊んだ、あの砂浜が見える。


 レミア、もちろん居ないけど、貴方に会いたい。

 指輪が出来たら渡しに来る約束だったけど、もう少し会うのは遅れそうだ。

 それでも俺にとっての1年は、レミアにとって2、3ヶ月、もう少し待っててくれ。


 だが、この思い込みが後に間違っていることに気づく……




 リバティ国に入ってから数日、もう直ぐフォルマップル国へ入る。


 この世界の海域は、大きな船が少ないこともあって自由に航行は出来る。

 ただ、国ごとに漁業権のようなものは有り、迂闊に他国に入って漁業をすることは出来ない。

 

 そんな事をラザノフと話していると、サラノフさんが慌てて近づき、『この船は後ろから付けられているわ!』と言った……


 ちなみにこの船は免許という概念がないので、ラリィもクラルさんもサラノフさんだって運転が出来るようになっている。



 後ろを気にしながら運転をするガルフさん、もうここはフォルマップル国だ。

 


 「リュウ君! もしかしたら貴方が乗っているのを疑られてるのかも」

 「それじゃあ、ビンゴだね」

 「どうする! リュウ」


 慌てた感じでルカルスさんが言う。


 でも、ここは俺のフィールド。

 海に空の組み合わせは自由だ!


 「別に…… 空に待機してあの船を撃沈するもよし、海に潜ってあの船の腹に穴を開けるもよし……」



 ラザノフは思う。

 リュウはフォルマップル国を憎んでいる。

 確かにやり方が汚いし、リュウは拷問も受けている。

 頭ではフォルマップルにもいい奴は居ると分かっていても、今のリュウはそれを考慮しない。

 直ぐにでも悪リュウになりそうだ。



 『前の船、止まりなさい。 前の船、止まりなさい。 ナラサージュの船がこの海域で漁獲するのは国際法違反です。 速やかに止まりなさい』


 サンカルムに居る使者から連絡を受け、待っていたな……


 上位亜人が2種居ても、俺達は舐められている。


 「決めておこう。 魚を取ってないかを調べる名目で、アイツ等はこの船をしらみ潰しに調べるだろう。 そこで魚を仕込まれた場合、どうする?」


 通常は釣った魚程度では全く問題ないが……


 「つまり、俺達が漁をしていたってことで、フォルマップルに捕まるって訳か?」

  

 ルカルスさんが口を挟む。


 「そうです」

 「リュウ、その時は拙者達もあがなうが、船を沈没させるのはマズい。 国と上位亜人の戦争になってしまうでござる」

 「いいじゃん。 フォルマップルなんて、一度解体した方がいい」

 「そう言うな…… リュウ。 拙者達はいいが、他の上位亜人にとっては大迷惑だ。 それにフォルマップルにだって上位亜人は居る」


 なるほど…… 他の上位亜人は犠牲になるし、フォルマップルの上位亜人は板挟みになるか……


 「分かった。 俺は海に潜ったのち空へ行く、そんでこの船から離れた奴等の船に脅しをかける」

 「ど、どういう脅しでござるか?」

 「奴等の船の周りに強風とカミナリで攻撃するが、当てるつもりはない」


 俺も隠れながらなので、遠い位置からしか風やカミナリを操れない。 ……当たっちゃったらごめんなさい。


 「わ、分かった。 拙者達は知らん顔で進めばいいでござるな」

 「ああ、それでいい」


 途中からルカルスさんやサラノフさんが会話に入ってこられないように、ラザノフと俺の会話のテンポは早い。

 それは、こういう場面を多く経験しているのと、ラザノフも俺も反対意見で対立しないから。

 多少それは違うと思っても、ある程度はお互いに譲るので話が早い。



 「ラザノフ、クラルさんとラリィを頼む」

 「いや、ラリィはリュウが連れてった方が安全でござる」


 確かに……


 船内に行き、ラリィに影に入ってもらう。

 そして、フォルマップルの船から見えない位置でジェットを使い、ゆっくり海の中へ……


 「だ、大丈夫なのか、リュウは?」

 「リュウの驚くことに息継ぎしないで20分も海の中で動けるでござるよ」

 「なっ…… もう変態だな」


 確かに拙者もそう思う。

 でも、もし拙者もリュウと会うのがもっと早ければ、拙者も海を自由に動けたかも……

 変態でもいいから海を感じたかった……



 スピードを緩めて徐々に止まる拙者とリュウの船、その船に長板をかけて乗り込んで来るフォルマップルの兵士が8名。


 「上位亜人とはいえ国際法違反は大問題、その疑いがある以上、この船を調べさせてもらう」


 兄者が対応する。


 「調べるのはいいが監視をさせてもらう。 其方等が魚を持って来てる可能性があるからな」

 「クッ、魚ごときを探しているんじゃないわ」


 やはり、狙いはリュウ……



 その後、しらみ潰しに船内を調べるフォルマップルの兵士、当然、リュウは居ない。


 空が黒い雲を帯びる…… リュウの仕業か。


 

 「上位亜人が里を抜け出し何処へ行く」

 「其方等には関係ない。 それより魚は見つかったのか?」


 釣りで取れるくらいの魚なら、通常は問題ない。


 「フォルマップルを舐めるなよ、竜族が1番強い種族って訳じゃないんだぞ!」

 「何を言っている? 魚は見つかったのかと聞いている!」

 「ふん! 何処に行くか知らないが、隠しごとなど出来ないさ……」


 付いて来る気だな……



 ヒュ〜っと、冷たい冷気が上空へ流れ出し、海が荒れ出す。

 鋭い人なら魔術と分かる…… が、それにしても恐ろしい魔力量。



 「監視から逃れたいなら、あの男の居場所を言うんだな」

 「さっきからおかしな事を言うな…… 亜人の癖に上位亜人を舐めているのか?」

 「ふん! 数はこっちが上。 ……海が荒れて命拾いしたな」


 

 ラザノフは思う。

 命拾いしたのはどちらなのか?

 そもそも、お前達は命拾いするのか?

 結構、リュウは適当でござるぞ……



 

 フォルマップルの兵士が自国の船へと戻ったので、拙者達は步を進める。

 

 フォルマップルの船の方が足が速いのか、目視が出来る程度の距離を置き付いてくるフォルマップルの船。


 それにしても…… やたら波が荒い。

 リュウは魔術をあまり使わないから大丈夫なのか? っと疑ってしまう。


 「ラ、ラザノフ! アレは……」


 慌てた様子で兄者が言う。



 フォルマップルの船の近くに渦巻きが発生!

 こんな事も出来るのか…… っと思っていると、渦巻きが船を巻き込み始めた。


 グルングルンと回りながら渦の中心に引き込まれる船。

 しかし…… 渦が消滅。

 

 

 一瞬、立ち止まったフォルマップルの船。

 しかし、拙者達の船を見つけたのか、急いで追ってくる。



 ラザノフは思う。

 完全な悪手…… だけど拙者達がリュウの仕業だと知っているからか⁈

 確かにあれほどの魔術をこの船から仕掛けるのは無理、それなら自然現象と思うのが普通か。 


 ……って、今度はハリケーンが発生!


 

 学校でリュウが1人で発動させてから、拙者にリュウを紹介してくれと言う女人が後を絶たなくなった。

 亜人、獣人、人間、関係なしに毎日のように言われた。

 中には、子種だけでも取って来て! っと言う女人も居たが、それを拙者がどうやって取るのだろう? っと思ったこともある。


 もしかして…… 拙者でも、イケるのか? 


 だが、拙者は……



 リュウの相手は嫌じゃあ〜!!



  

 ふぅ…… などと考えているとリュウのハリケーンランは船を急襲、船は巻き込まれてフワッと持ち上がってから海面に叩きつけられた。


 沈みつつあるフォルマップル船……



 だから悪手と言ったんだ。

 あの時点で魔術であることを疑い、一旦、様子を見るべきだった。

 そして、明らかに自分達の周りだけ違う空模様が戻ったなら、魔術だったと確信してギリギリ目視出来る距離で付いて来れば良かったと思う。

 ただ、それだとまたリュウに攻撃されるので、逃げる用意をしながらの追跡になるが……


 まぁ、どちらにせよこのフィールドで奴に勝てる人族は居ない……

 

 小さなゴムボートに移っているフォルマップルの兵士、沈没はさせたがベストの結果か。



 ーーーーー



 その後の俺達は無事ホオヒューガ国に入る。


 そして、ランズグリという小さな港町で船を預けて、馬車を手配して移動、そして小さな村で昼間は休憩。

 そこから歩くこと9時間、ラリィを拾ったような渓谷を歩いていると……


 「リュウ、ここを降りて行くぞ」


 えっ? っと思い下を覗くと、かなり深く下には川が流れている。 ……しかし、崖の途中に2メートル感覚で大きな猿轡のような足場が、ポツリポツリとくっついている。


 そこを降って行くガルフさん親子、俺はクラルさんを先導してサラノフさんを抱えてジェットで降りて行く。

 

 足場の下の方にポッカリ空いた空洞、どうやら道になっている……



 薄明るい道を進むと、明るくなっている向こう側から歩いてくる4人の男女、氷竜族だ。


 族長? 同士で会話。


 「久しぶりだな、ガルフ、それにサラノフはもっと久しぶりだな」


 サラノフさんが答える。


 「そうね、私は30年ぶりくらいかしら」


 感覚が…… 竜族!


 「そうか、そんなになるのか。 それに…… 吸血族のクラルとその娘、後は其方が人間のリュウか……いつ来るかと待っていたんだぞ」


 ガルフさんから空からここに来る、おおよそのルートは聞いていた。


 「ご迷惑をかけました。 用事があったので来れなかったけど、今回は楽しみにしてました。 竜族最強の人が居るとか……」

 

 4人のうちの1人、やたら背が高く、めちゃ強そうなオーラが出ている人。

 ……この人がゴルゾフさんだろう。


 「ああ、そこのゴルゾフは強いぞ。 しかし他にも強い戦士は沢山いる。 ……ガルフ、リュウの強さはルカルス以上というのは本当か?」

 「強いのは間違いない。 今やラザノフとて、ルカルスと同等に戦う。 そのラザノフが一度も勝ってない、というリュウの剣技がどれほどなのか、ワシには測れん」


 ピクッと反応したゴルゾフさんが話す。


 「ほお…… それは面白い。 それにラザノフ、精進したな」

 

 ラザノフは照れながらお礼を言う…… こんなラザノフ、初めて見た。



 「ラザノフ、紹介してもらっていい?」


 ゴルゾフさん以外は名前も知らない。


 ああ、済まん、からラザノフが教えてくれたのは……


 最初に話したのはやっぱり族長で、名前はゾフさん。

 その隣の女の人が族長の奥さんで、名前はウィルナさん。

 ゴルゾフさんの隣に居た、綺麗な若い人が、ゴルゾフさんの妹のスエメルさん、と教えてくれた。



 ここで氷竜族の特徴を……


 土竜族は上半身発達型の体型だけど、氷竜族は下半身発達型の体型をしている。


 あの崖の足場も土竜族の人では登るのに苦労しそうだけど、きっと氷竜族の人はジャンプしながら登って行くのだろう。


 背の高さは土竜族と変わらないと聞いていたが、ゴルゾフさんは2メートルをゆうに超えている。


 女の人は土竜族も氷竜族もその特徴が薄まっている。

 


 「まあ、しばらく滞在出来ると聞いている。 ここには温泉なんかもあるからな、ゆっくりと休まれよ」


 と言った挨拶の後、俺達はゾフさんの家に行ってお世話になる。


 

 ーーーーー



 氷竜族の里は四方を崖に囲まれている真ん中にあり、広さは土竜族の里より大きいという。

 空からはガラ空き状態なのは土竜族の里と同じだけど、通常ルートからの侵入は難しい。

 そもそも、侵入しようとする奴は居ないだろう。



 ゾフさんの家の前まで来る。 

 今日はどんよりと今にも雨でも降りそうな天気なので、ラリィもクラルさんも昼間でも平気だ。


 家は竜族に多い、古民家のような造り。

 部屋も廊下も広い作りになっている。


 居間に入り、早速、お酒や氷竜族料理が運ばれる。

 メンツは俺達にゾフさん夫婦と、俺とラザノフと同じくらいの歳の男、息子だろう。



 その息子がラザノフに話しかける。


 「ラザノフ、久しぶりだな。 俺は今年、兵団順位を7位に上げたぞ」

 「ほお、それは凄いでござるな。 氷の兵団で7位とは…… 後でやるでござるか?」

 「その前に、お前が勝てないというその人間と戦う。 人間に勝てないなんて…… ラザノフ、竜族として情けないぞ」


 そんな俺の関与する話をラザノフと息子さんはしてたが、俺は玄関に尋ねて来たムジカを見つけた。


 駆け寄ると、笑顔でジャンプしてるムジカを抱き上げる。


 「こっちに来たんだね。 大きくなった?」

 「うん! お兄ちゃんも!」


 皆んなと比べるとここではチビです。


 「ラリィも中に居るけど、この里を案内してよ」

 

 前回、土竜族の里もムジカや里の子供達に案内してもらった。


 「うん! こっちがね、川があって、畑もあるの」

 「うん、ムジカ。 ぐるっと周ろうか」

 「あのね、後で空もいい?」

 「ああ、いいよ」


 何て会話をしていると、部屋の中にいた人も近くまで来てた。

 ラリィとムジカが再会を喜ぶ。



 「リュウは小さな子にまでモテるでござるな〜」


 ラザノフが言った。


 だが……モテる? 懐くの間違いだろ。

 ……っと思っていると、サラノフさんが口をだす。


 「当たり前でしょ。 貴方達がさっさと崖を降りた時、この子は当たり前のように私を抱えてクラルさんを先導して降りたわ。 ラザノフ、この子は強いだけじゃないでしょ。 見習うところは見習いなさい」


 全然、意識してなかった。

 シスターとローチェと俺で暮らしたのが長かったから、女の人に優しくするのが当たり前になった⁈


 それにしてもラザノフ初め、ガルフさん親子…… バツが悪そうだ。


 「ムジカが懐くか…… 驚いたわね……」


 族長の奥さんのウィルナさんが呟いたように、ムジカは6歳で両親や兄と別れてこの里に来てからは、しばらくは誰にも心を開かなかった。

 それでも最近は子供同士で遊んでいる時などは、随分と子供らしく明るくなってきた、とウィルナさんは言う。



 そんなムジカを肩車して、ラリィとは手を繋いで里を周る。


 主に北側は川が結構な速さで流れて、東には畑や広場、学舎などがあり、南と西は主に家が立ち並ぶ、また、北以外には里へ入れる入口がある。


 とてものどかな雰囲気の里だけど、兵士の練習場では鬼気迫る感じで稽古をしていた。


 また、人間が珍しいのか、ムジカが懐いているからかは知らないが、小さな子供達も付いてきた。


 ……っと言うことで、土竜族の子達とも遊んだ、“缶蹴り”をする。

 

 前世の住んでいた地域は、海が近くにある、そこそこ田舎だったので、昭和の香る遊びも結構やった。

 

 最初は俺が鬼で子供達は思い思いの場所に隠れる。


 流石にチョーやゴンバリメタスのような小さな子は居ないとは思うけど、竜族の子は人間の子より大きいので分からない。



 『リュウとの子が欲しい……って言ったらどうする?』



 ふと、あの時のルイースの言葉を思い出した。

 俺はあの時、答えに詰まった……


 お先真っ暗な状況で、何が何でもルイースと幸せになりたい! とは思わなかったのが事実。

 どんな状況でもそう思える人が、この先に現れるとも思えないけど……



 そんな事を考えている時、ゴルゾフさんがやって来て、『明日は兵団の連中を紹介するので空けといてくれ』と言われた。


 

 ーーーーー



 氷竜族の料理は土竜族料理より美味しい。

 そう思っているのは俺だけではなく、きっとリスのように貪り食ってるラリィもそう思っているはず。


 「随分と子供達が懐いているな」


 食事中、族長のゾフさんが俺に言う。


 「この子は土竜族の里でも同じだったわよ」


 サラノフさんが、もう2年前になった時のことを言った。


 「自分が子供だからかな? でも、子供は笑顔が可愛い。 な、ラリィ」


 っと言うと、歯の抜け変え時期のすきっ歯のラリィがニカッと笑顔を見せる。

 この子がいつか誰か変な恋人ヤローを連れて来たら…… 虎徹を頭に打ってやる!


 「空はいい…… 感動するでござるよ」


 空を知る、ラザノフが言った。


 「ふん。 子供達が懐いてるからって、明日は手加減しないぞ」


 

 ……どうやら俺は子供が好きなようだ。

 思えば、フロムにカイ、ハミルにコートニー、チョーとゴンバリメタス、土竜族の子に氷竜族の子、皆んな凄く可愛い。


 「まぁ、リュウの強さを直に感じるがいいでござるよ。 拙者の今回のターゲットはミルトラインでござる」

 「ハハ、ラザノフ。 ミルトラインは俺の標的だ」


 

 後から聞いた話では、ミルトラインはルカルスさんと同じ歳でライバル関係にあるらしい。

 氷竜族ランク3位の強者。


 「ミルトラインさんがラザノフなんかにやられる訳ないだろ。 俺は4年前よりグンと強くなった、人間退治の後はラザノフ、お前だ!」



 ちなみに好き放題言ってる息子さんは、ドムフと言う名前で俺の1歳下、背は現在2メートルのラザノフより5センチくらい低く、彫の深い顔でなかなかのイケメン息子さんだ。


 「ああ、ドムフ、前回は拙者の3勝1敗、今回は1敗もせんでござるよ」


 上位亜人は1回の勝負で判断しない。

 特に回復力の高い竜族は、何回も同じ相手と戦う。


 「ラリィは誰が強いと思う?」


 初めて会話に参加の僕。


 「グフフ…… ラリィの予想はね、ラリィの元婚約者のお兄ちゃんが1番強いだの」


 元婚約者発表…… いる?


 「ガハハハ〜、ラリィ、拙者は?」

 「ラザ兄は2番だの」

 

 流石に身内枠は有利だな。


 「ラザノフ、ラリィの予想通りにするぞ」

 「ガハハ〜、それは違う。 リュウと拙者の順番がな!」


 まぁ、ラザノフが氷竜族の3位の人が狙いなら、当然、俺は2位以上の人達となる。


 ラザノフも俺も沢山の死線をくぐり、2年前とは比べられないほど強くなっている。

 レベルの高い氷竜族とだって、互角以上に戦える自信だってある!



 ーーーーー



 次の日、迎えに来てくれたゴルゾフさんと息子さんと出掛ける。

 しかし…… ラザノフが朝から見かけない。


 「リュウは上位亜人と戦ったのは土竜族だけか?」


 途中、ゴルゾフさんが話しかけてくる。


 「裏でライミット族って言う上位亜人とやりましたよ。 ……こっちにもいますよね」


 学校の大会でライミットのハーフがいた。


 「ああ、いる。 女が多いので安泰の上位亜人だな。 結果はどうだった?」


 レイモンは深刻な女不足だった、何とかしてあげたくなるが、海の滝の荒れた海ではどうしようもないか?


 「普通にケンカだったので、ライミットの女の人に止められました」

 「そうか。 ガルフさんの話ではなかなかの修羅場をくぐってきていると聞く。 それにユニークな練習方法でラザノフが伸びたとか」

 「どうですかね…… ラザノフは成長曲線が上向きの時に、たまたま俺と稽古をしてただけかも知れないし……」

 「ゴ、ゴルゾフさん、先ず俺がこの人間とやりたいっす」


 息子さんが口を挟む。


 「ドムフか…… ルカルスと同等以上ならミルトライン辺りと思っていたが……」

 「いいですよ、息子さんで」

 「俺の名はドムフだ!」

 「いいですよ、息子ドムフで」

 「クッ、この人間め……」

 「俺の名はリュウ。 俺が勝ったら“さん”付けで呼べ」

 「クソ! 氷竜族のレベルの高さ、思い知らせてやる!」



 こんな会話をしながら進み、兵舎がある練習場に来る。


 そして皆の前で紹介してもらい、とりあえずトップファイブまでを紹介してもらった。


 5位 ヤーゼイノフ  短評 強そう

 4位 シラカ     短評 強そう

 3位 ミルトライン  短評 痩せてる

 2位 ゼブン     短評 寝坊中

 1位 ゴルゾフ    短評 めちゃ強そう


 

 とりあえずは息子、ドムフとの対戦。

 氷竜族の戦士達も俺の噂は聞いていたみたいだが、本当に強いのかは分からないってところか。

 

 息子ドムフと対峙する。


 氷竜族のスキルは土竜族と同じ。

 ただ、鉤爪は手の甲ではなく、膝から太いのが出てくるらしい。

 対する俺のスキルは無詠唱、相手の氷竜族もそれは知っている。

 

 

 ふぅ〜、っとゆっくり細く息を吐く……

 周囲に利用出来るものがあるかを確認、これはダンジョンの時から癖になりつつある。


 薄く眼を開けて息子の全体のシルエットを見る…… 分かることもある。


 

 試合開始と同時にノーステップからの膝蹴りが飛んでくる!

 ……が、あの崖の足場や体型を見れば予想範囲内!


 ジェットを使い、1メートルの間合いのまま息子と同じスピードで飛び下がる。

 そして、息子の着地寸前で膝を掠める左一閃。


 カッと当たり、息子は少しつまずくように着地した。

 息子はバッと体勢を戻すが、その前に詰めた俺はお前の懐に入っている!


 至近距離で目が合う俺と息子ドムフ!

 ……が、それも一瞬、右木刀の柄頭で息子のみぞおちをカチ上げる!


 グガッと小さな呻き声をあげた息子の揃った足を払ってすっ転ばす!

 そして、ムギュと左木刀を息子の喉に押し当てる……


 まぁ、どうなったかは汚いので割愛する。

 息子ドムフが鼻から汚い物を出したかどうかは君の想像次第だ。


 勝利! ……7秒くらい?



 

 蹲って咳き込む息子、ドムフ。

 ラザノフを秤にかけるなら順当勝利か。



 「ドムフを瞬殺とは…… 噂は本当だったってことか。 想像以上に動きがトリッキーで読めん。 まだ、いけるよな」


 スッと前に出るゴルゾフさん、こちらとしても多く戦って俺の引き出しを見せたくない。


 しかし……


 「俺にやらせてくれにゃ」


 にゃ? ……若い奴かと思い見てみると、結構なおっさんだった。


 「ゼブンか……」



 ゼブンは寝坊中のランク2位の人、背丈はほんの少しだけ俺より高い? でも、余り変わらない。

 少し猫背だけど、本物の猫のように身体能力の高さがひと目で分かる。

 年齢は、見た目は35歳(竜族はこの辺りから見た目が変わらなくなるらしいので、50歳くらいなのかも知れない)くらい。



 「ほおゼブンか…… 確かに面白い戦いになりそうだ。 俺もぜひ見てみたい。 ……いいか? リュウ」


 俺のターゲットは2位以内のアンタ等だ!


 「もちろん。 お願いします」



 ゼブンと対峙する。


 ドムフと違い、脱力感があると言えば聞こえは悪いが、力みのない構えでどう動くか予想を立てづらい。

 そう言う意味では俺の構えも同じ部類。


 ジリっと近づくゼブン、そしてボッ、ボッ、っと突いてくる!

 右で流して左上段! ……が、構わず右を振るゼブン!

 ガスッ! っと左上段をやめて受ける。



 ……今のは完全に俺の左上段が先に当たっていたはず。

 が、きっと耐えられて俺もゼブンの攻撃を受けただろう。

 タフな竜族との相打ちは、俺が損をすると判断した。



 また軽い突きからどんどん攻めてくる。

 この人は完全な攻撃型の戦い方!

 素早い連続技で攻めるゼブン、竜族の中では背が低いが低い位置から潜り込むように力強く打ち込んでくる!

 凄い推進力! 下がりながらでしか捌けない。


 ガッ、っと足を踏まれてゼブンに潜り込むように踏み込まれる!

 そのままゼブンはジャンプするように頭突きを仕掛ける! ……が、仰け反りながら回転して投げるように右の木刀を押しながら振り、お互いの距離が離れた……


 

 ……近距離だったので、今の右の木刀は攻撃にすらならない。

 ただ距離を離したかっただけ。


 それにしてもゼブン…… 強いし面白い。

 足を踏むという行為やその後の槍での攻撃ではなく頭突きを選んだところなど、しっかりと流れとスピードに乗った攻撃だった。 

 センスを感じるし、あんなの喰らったら一瞬で意識を消されるだろうって頭突きだった。

 とにかく、身体能力が高い。



 今度は俺から仕掛ける!

 つかつかと無防備でゼブンに向かうが、思った通り眼の魔法陣が広がる!

 魔法陣の発動方法は相変わらず分からないけど、俺の集中力にも関連してるはず。 

 それが証拠に今の俺はかなり集中力を高めて歩いている。



 ボッ、ボッ、ボボッ、っと連続の突きも捌きながら更に近づき、ブッ、っと口から魔術の氷の矢をゼブンの顔へ飛ばす!

 これは予想してなかったのか、避けるのが遅れて耳の上辺りにヒット!

 ガスッと、更に胴打ちが当たる!

 しかし…… 氷竜族、特有の脚力を活かして素早く後方に下がったゼブン。


 「シャ〜ッ!」


 っと、猫のような怒り声をあげて突っ込んでくるゼブン。 ……だけどここからが予想と違った。


 何と、槍を俺に投げて来たのだ……

 スローモーションのように感じるが、槍を避けきれずに肩あたりに被弾、更に飛び込んで来たゼブンの飛び蹴りも、カチ上げたのが先か、それとも蹴られた後にカチあげたのか、とにかく俺は吹っ飛ばされた。

 

 ゴロンゴロンと回りながらゼブンを確認すると、全力で槍を取りに行っている……

 コレって、チャンス⁈


 転がる最後の回転で右の木刀をゼブンに向けて投げる!


 ヒュルルルっと音を立ててカッ、っと肩あたりに当たった木刀だが、ダメージにはならない当たり方だ。

 しかし…… 詰める俺に振り向くゼブン!


 勢いよくドカッとぶつかり俺は投げた木刀の近くへ、ゼブンの槍はまだ遠くだ。



 蹲ったままのゼブン…… 鈎突きは当たったけど、会心のあたりじゃなかったし竜族という事を考えればまだ戦うはず。


 「ふぅ、強いにゃ〜。 今回は俺の負けにゃ」


 あっさりと負けを認めた……

 確かに槍は持ってないし、二刀流で構える俺は近くにいるしで勝ち目はないか。


 「ありがとうございました、楽しかったです」

 「フハハ、俺もにゃ。 ……またやろう」

 「…………」


 俺はこの時、竜もニャーニャー泣くのかと考えていたので返事が出来なかった。


 とにかく、勝利!



 ホッとすると呼吸がしづらいことに気づく。

 触るとあの蹴りを受けた胸辺りがズキンと痛む……


 「見事だリュウ。 今日はゆっくり休んで明日俺とやろう」

 

 っと言ったゴルゾフさんの言葉に甘え、今日は身体を休めることにする。


 「それにしてもその歳でその眼を開眼させるとは…… 恐ろしいな」

 「えっ、この眼を知ってるんですか?」


 思わぬところでこの眼の情報、きっと魔法陣の眼の秘密だろう。


 「ああ、知ってる。 俺の親父の親父、つまり俺の爺さんはその眼を開眼させたラノーンという魔獣と戦っているし、俺も65年前にカラキダ族という中位亜人のベッダと戦ってる。 そのベッダがその眼について詳しく教えてくれた」

 「そのベッダって人もこの眼だったんですか?」

 「ああ、そうだ」


 流石、竜族、寿命が長いので色々と情報を持っている。


 「リュウが良ければ今日ウチに夕食を食べに来るといい。 スエメルの料理は美味いし、その時のことを話そう」


 この眼を持つ中位亜人とも戦ったと言ってたな……


 ゴルゾフさんvs魔法陣付き中位亜人か……


 何方が勝ったか興味ある。


 

 

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