それぞれの先
第二章 成り上がり
第八十五話 「それぞれの先」
あれから2週間、ルイースの足の具合は良くなったけど、眼は……
眼は紫色に変色して本人によると痛みもあると言う。
ただ、お医者様によるとデレンキシアという薬を飲み続けることで、変色、痛み、共に少なくなっていくみたい……
ただ、この薬は非常に高く、何年も続けて飲むなら非常に苦しい。
それでもカラッチ様は、『私のためにそうなったんだ、喜んで出させてもらうよ』っと、言ってくれている。
またカラッチ様はルイースを、私の人生で最高の女性、っと惚れ込んでいる……
カウキとの一件で、ルイースはカウキに屈しない強さを見せた。
そして、あのセリフ『私は貴方のものじゃない』。
これは知っている人はチャーチル様のことを指してるって分かるけど、カラッチ様からすれば婚約者の自分を指してるって思っているのかも。
少し哀れな気がするな……
そんなカラッチ様の気も知らず、本人は毎日のように手紙を書き直しては涙を流している。
そして、その手紙が書き上がる……
ルイースが書いた手紙を、明日、私が届ける。
コートニー君の案内で行く予定だけど…… 今からドキドキが止まらない。
いくら妹の好きな人だって、それを知る前に私はチャーチル様に一目惚れしている……
いけないと思っても私も女、そんな当たり前のことさえあの兄弟のせいで失った。
この旅は私に何かを変えた。
良くも悪くも……
早速、次の日のお昼頃にコートニー君に案内されて、チャーチル様の家に着く。
そして、ドアを叩くと中からチャーチル様が……
やっぱりこの人は何かが違う!
オーラ? 吸い込まれそうな瞳?
「あっ、この前は助けていただきありがとうございました。 私、ルイースの双子の姉でシリーンと申します。 今日は妹から手紙を預かって来まして……」
と言うと、チャーチル様は部屋の中に入れてくれた。
ちなみに、コートニー君は気を利かせて外で待っててくれる。
早速、手紙を渡すと、チャーチル様は直ぐに目を通した。
手紙の内容は私も知っている。
本当にシンプルに、お礼と、お互いの幸福と、直ぐにナラサージュに戻ってほしいと書いただけ。
長い日にちをかけても、何度も書き直しても、ルイースが最後に書いたのはそれだけだった。
「婚約者はいい人なんだね?」
誰だって貴方と比べれば大きく見劣る。
でも、カラッチ様は本当に優しい人、それだけは自信を持って言える。
「それは私が保証します」
ふぅ、っとひと息つくチャーチル様。
やっぱりドキドキが止まらないほど素敵。
この部屋でルイースとチャーチル様はあんな事やこんな事、えっ、そんな事まで〜!
もし、少しだけルイースと入れ替えがバレなければ……
そ、そんなプレイはしたことがありません〜! でも……
チャーチル様が望むなら…… 頑張っ……
「分かった。 ルイースが俺の幸せを願うように、俺もルイースの幸せを願ってると、ルイースに伝えて」
ハッ、ちょっと(かなり)エッチな想像をしてしまった……
ルイースは可哀想、でも…… 羨ましい!
私だってこの人なら、準備不足になんてならないのに。
「は、はい…… あ、あの、最後に私と握手してください…… ダメですか?」
「ええ、貴方も幸せに……」
っと言って立ち上がり、手を出すチャーチル様。
私も立ち上がる時に奇跡が……
緊張して足がもつれてしまった私は、そのままチャーチル様の腕に包まれた……
ガシッと受け止めてくれたチャーチル様、筋肉に埋もれて窒息死ギリギリでもいい、もう少しこのままで…… と思った時。
髪の毛を優しく撫ぜるチャーチル様の手……
しかし、チャーチル様は、ハッ、っとして我に帰る。
「ご、ごめん、ルイースに似てたから」
身体が熱くなるのを感じる……
確かにチャーチル様くらいの背の高さがあれば、そこから見る私とルイースはそっくりかも知れない。
ちなみに私達は、背の高さ、髪の毛の色、輪郭が似ている。
「良いのですよ。 私で良ければルイースの変わりとして、どうぞ触ってください」
帰ったら内緒ね。
でも、私の初めてのまともな恋、少しくらい攻めてもバチは当たらないでしょ。
それでチャーチル様…… ど、ど、どこ触るですか?
チャーチル様は何も言わず、少し痛いくらいに強く抱きしめてくれた……
やっぱりこの人…… ステキ。
「ありがとう、シリーンさ……」
「シリーンと呼んで!」
「あ、ありがとう、シリーン。 ルイースをよろしくお願いします」
「……はい」
人と人には匂いの相性があると本で読んだことがある。
チャーチル様の匂いは自然と鼻の穴が広がるくらい良い匂い。 ……私にとって。
ちょっぴり少なかったけど、これで私の恋は終わった。
もう会えないだろうけど、私の一目惚れが貴方で良かったと思う。
少しだけど、優しさに触れさせてくれてありがとう。
帰り道、これで2年はルイースとチャーチル様の話で盛り上がれる、っと思う、ニヤけた私がいた。
ーーーーー
ルイースの手紙
リュウ、今まで本当にありがとう。
私にとって全てだった貴方と暮らした日々は、これまでの不幸、全てを掻き消すのに充分だったよ。
貴方の幸せを心より願っております。
17日の朝早くに出発するので、このまま貴方に会わずに行きます。
リュウ、直ぐにナラサージュに帰って自由を勝ち取ってください。
私の気持ちの全てで、その事を願ってるよ。
私は幸せになれると確信してるよ。
貴方の幸せも……
最後の貴方の幸せも、に、ルイースらしさを感じた。
俺の幸せを確信してるし、俺の幸せは私の幸せ、って意味だろう。
人の愛情なんて、測ることなど出来ない。
でも、ルイースの俺への愛情は信じられないくらい大きかったと思う。
だからルイースと居るときは、俺も凄く楽しかった。
……でも、完璧にフラれた。
失恋の気持ちだからか、誓いたい。
貴族女とは二度と恋はしね〜!
ハァ、その次の日にでも、俺もナラサージュへ帰ろう。
それでも……
ラザノフ、ラリィ…… アイツ達と会えると思うと失恋の傷を軽減してくれる。
「ガハハ〜、失恋したでござるなぁ〜」
「サルは彼女が居なくて、ラザ兄も居ない、プフフ、お兄ちゃんも居ないだの〜、ボケェ!」
……クッ、やっぱり全く軽減なんてしねぇ、ただムカつくだけ、特にラリィ。
ーーーーー
いよいよ明日、リバティ国へ向け出発する。
会わない、っと強く思っていても、近くに住んでいるから会いたくて気が狂いそうだった。
私はその度に鏡の前の自分を見た。
眼帯歯抜け女…… 食事も喉を通らないのでやつれた頬でストレスで肌が荒れている。
これでリュウに会うの? そう言って自分に問い、毎日諦めてきたのだ。
思えばリュウと暮らした日々の私は、私の人生で最も綺麗だったと自分で思う。
毎日が楽しくて、好きが溢れて仕方なかった。
それだけに、この数週間は辛かった……
それも明日の朝5時まで。
その時のリュウは湖の上、仕事中だ……
「ルイースお姉様、今、宜しいでしょうか」
コンコンとドアが叩かれ、ハミルの声が聞こえた。
ドアを開けて、ハミルとコートニーを部屋に入れる。
「さっきまで私達はユーキお兄様のところに行っていました。 それで…… ユーキお兄様も明後日にカラミージャを経つそうです」
とても寂しそうな2人……
でも、そうか…… 明後日にナラサージュに戻るんだ……
「うん…… 知らせてくれて、ありがとう……」
私が望んだことでも…… 寂しい……
「ユーキは元気だった?」
「うん! ……でも、ちょっとやつれてた」
やつれてる? ……また、病気だったのかな。
また……
思い出すのは前回のリュウの風邪。
辛い思いをしてるリュウが愛おしくて、私はリュウの熱を私に移してほしいと思ったのだ。
移らなかったけど、リュウをいっぱい感じた時だったな……
思い出すたび涙が溢れる。
それも今日で終わり……
夜は早めの就寝。
ただ、気になるのは降り出した雨と、強くなってきた風。
それでも…… 私にはもう関係ないか……
そう思い布団に入った……
気になる…… 布団に入ったのはいいけど、今日のリュウの仕事は多分中止。
それならリュウは家に居る。
会いたいとかじゃない……
とにかくリュウを近くに感じたいのだ。
そう思った時にはもう…… 私はベンゼッタ様の家を裸足で飛び出していた。
会えないよ、会えないんだよ、っと自分に言い聞かせても、急ぐ足は止めれない。
そして…… 私はあの時と同じように転ぶ。
ゴロン、ゴロンと転がって仰向けで止まった。
雨が私に降り注ぐ……
「うわああぁぁ〜!」
もう、あの時のようにリュウの胸に飛び込むことは出来ない現状に、私は大声で泣いてしまった……
ビチョビチョの泥だらけ、でも、どうせ会えないのなら関係ない、っと思ってトボトボと歩き出す。
リュウの家の近くまで来た……
未だに近くにリュウが居ると思うだけでドキドキが止まらない。
一目惚れからもどんどん好きになったら、私の心臓が持たないよ…… っと思いながら、リュウの家の壁の近くまで来た。
リュウ…… 中に居るよね。
私は絶対に幸せになるから貴方も……
ガラッと扉が開いてリュウが出て来た。
えっ……
「ルイース、お前の気配がしたよ……」
っと、優しく言った……
その優しい声を聞いた瞬間、私の我慢が切れた。
「うわああぁ〜!」
近所迷惑かも…… っと、思っても止まらない。
私はリュウに飛びつき、そしてリュウは私を強く、抱きしめた……
リュウにこの顔を見られてしまった……
でも、この力強い腕から一生、抜け出したくない。
ーーーーー
部屋に入った私は、当たり前のように用意してくれたお風呂にリュウと入る。
いつものように寄り添うように……
相変わらずドキッとするほど素敵…… でも、やつれた?
「リュウ、病気だったの?」
「ふっ、俺に感情はないとでも?」
鼻で笑われてしまった。
でも…… リュウも私と会えなくて、寂しかった……?
リュウの本当の気持ち…… 知りたい。
お風呂から出たあとも一緒。
お互いの身体を拭いて、リュウに魔術で髪の毛を乾かしてもらう。
優しく手で髪の毛を解きながら乾かしてくれる、リュウ……
私はこの時間が大好きだった。
「私はリュウにくっつきたがってばかりで、ウザかったでしょ」
「全然…… 俺、そんな態度とってた?」
ううん、一度だってそんな態度はなかったよ。
そう言いたいけど、涙で声が出ない……
私は、凄く大切にされていた……
私の意思とは裏腹に、私の髪の毛は直ぐに乾いてしまった。
今の私達に身体を重ねる時間も気分もない。
それでも……
また、リュウは私に幸せな気持ちをくれた。
それでも残酷に私達の時間は進んでいく……
本当に大好きだったこの人との時間が終わる……
「リュウ、覚えてる? リュウが空へ招待してくれるって言ったこと」
「ああ、忘れてないよ」
私はリュウの側に居れるなら、別に空じゃなくても良かった。
だから、今まで連れてってとは言わなかった。
「じゃあ、最後に連れてってくれる?」
最後…… 自分で言ってて胸を締め付けられる言葉。
それでもリュウが私の手を取って、『行こう』と言って外へ出た。
私達の最後のイベントを邪魔しないように、雨は上がっていた。
軽く紐で結ばれ、相向きになって空高くへ。
湖に月が移ってとても綺麗だけど、ゴンちゃんやチョーと散歩の時に見た景色には気持ち的に及ばない。 ……あの時に戻して。
前を見るとリュウが居る。
この顔は見られたくないけど、リュウに触れられていると幸せを感じてしまう。
だからドキドキ…… 止まって。
私はリュウに好きとか愛してるとかを言ってない。
だからか、リュウも言ってくれない……
私だけが好き、そう思っていたけど、最後にちゃんと聞きたい。
例え、身体の相性だけと言われても……
「リュウ、私はリュウを大好きだったよ。 ……リュウは?」
「分からなかった? 俺もルイースが大好きだったよ」
「!!!」
そう、私はリュウからの愛情を、本当はいっぱい感じていた。
だから毎日が楽しくて楽しくて、仕方なかったのだ。
な、涙でリュウを見れない。
今の私は私史上、最もブスなはず……
リュウ…… 絶対に私を見ないで……
それでも全く視線を感じなかった私は、チラッとリュウを見てしまった。
リュウは…… いえ、リュウの瞳も涙が溢れていた……
……私の全身全霊の愛を受け止めてくれて、ありがとう。
「ふふ、リュウの…… 泣き虫〜」
「こ、心の汗だ」
何それ? って言うか、リュウは見ないで。
……だけど、会話をすればお互いを見る。
「わ、私…… ブスでしょ」
「うん…… いつもと変わらずね」
「ふふふ」
リュウの優しさが痛い。
涙が…… 止まらない……
「つ、辛いよ〜、辛いよ〜、リュウ……」
我慢しきれずに、一番言ってはいけない言葉を言ってしまった。
貴方に相応しい女になりたかったのに……
リュウは何も言わずに頭を撫ぜた。
優しく、そして、想いを乗せて……
時間が止まらない……
もうシリーンが起きるころ……
「……もう、帰らなきゃ……」
「ああ、窓から見えない北側に回るよ」
っと言って北側の少し離れたところで降ろしてくれたリュウ。
これが最後。
「リュウ、私は絶対に幸せになります。 だから貴方も絶対に幸せになって」
「ああ、約束したからな」
私だけの幸せを言ってる?
「ふふ、貴方も幸せになるんだよ」
リュウは少し寂しそうな眼をするだけで、何も応えなかった。
私はこの時のことを、後から良く思い出すことになる。
リュウの寂しそうな眼は、"お前が居れば俺は幸せなんだよ"って言っているように思えて……
ただ、この時の私は涙を堪えるので、いっぱいいっぱいだった。
「じゃあな、ルイース。 楽しかった時間をありがとう」
「うん! 私も楽しかった、ありがとう」
ダッと走って帰る。
何とか最後はリュウの前で泣かずに“さよなら”、を言えた。
リュウ…… 本当にありがとう。
ーーーーー
ベンゼッタのその後。
あの後、ルイースお嬢様が去ってひと月、私に『カウキに対する狼藉を働いたのか?』と聞きに来た軍の人間が居た。
しかし、『そのような事実はありません』っと答えると、それ以上は追及されなかった。
どちらにせよ、廃人と生産者ではこの国では比べることすら出来ない。
ユーキオー君の思惑通りだった。
その後、2年に一度の酪農家、農家の人達の寄り合いで、ミュールという亜人のお嬢様と話をする機会があった。
話題はルイースお嬢様。
ミュールお嬢様とルイースお嬢様は同じ学校の同学年で、最終学年の時には、ルイースお嬢様は槍部門、ミュールお嬢様は魔術部門の代表になっていたという。
そこで興味深い話があった。
ルイースお嬢様は何と、ナラサージュの平民に一目惚れしたと言う。
しかも、その場でフラれている。
私は笑顔で相槌を打っていたが、そのナラサージュの平民の名を聞いた時に違和感を覚えた。
リュウ。
その平民の名前だ。
その大会の中心人物はリュウだったようで、リュウのことをミュールお嬢様は得意げに話した。
信じられないエピソードの連続で、私の違和感が興味に変わったころ、リュウが2本の木刀を使って戦っていたと聞く。
まさか…… また違和感が増え、あの時を思い出した。
「リュウが死ぬなら一緒に死にたい!」
恐竜型魔獣の蹴りで、ユーキオー君が吹っ飛ばされた時のルイースお嬢様のセリフを思い出した。
剣を2本持って戦うスタイルは、私は彼以外、見たことも聞いたこともない。
ユーキオーはリュウ⁈
そして、決定的だったのが、フォルマップル国教師、ヤスザキの話だ。
ヤスザキはナラサージュ国のお姫様に狼藉を働き、リュウが激怒。
正式な試合で、ヤスザキは両目を破壊され、男のシンボルも破壊された。
これはカウキとほぼ同じ。 ……カウキは、まともに歩けない、奇形した手、が追加されてるが。
『カウキ様は、木刀を左右に一本づつ持った、この国を恨む平民にやられたと証言しております』
確か軍関係の方に、病院の先生が伝えた言葉。
もし、ユーキオー君がリュウの場合、わざわざ自分の足跡を残すようなことをしたってことだ。
やっぱり彼は面白い。
ミュールお嬢様が知るリュウは、その後フォルマップル国に捕まり、一時は脱走、再び捕まったという話だが……
それがルイースお嬢様が私の家に来る、ひと月前にあったことだ。
ユーキオーはリュウ。
私の中では確定。
脱走中、名を変えてカラミージャに来たか。
ウソはつかれていたが……
それでも彼は私の家族の命の恩人。
そして、とても魅力のある青年だった。
いつかもう一度会いたい…… もちろん彼を慕ってる子供達も一緒に。
ーーーーー
ルイースとシリーンとカウキのその後。
あれから10年の月日が経つ。
私が最も輝いた季節に、私とカラッチ様の子が産まれる。
「こら、チャーチル。 ルイース姉さんにばっかり抱っこしてもらわないの。 もう直ぐチャーチルはお姉さんになるのよ」
シリーンはあれから6年後に女の子を産む。
名はチャーチル。
ーー ーー
「ふふふ、リュウ。 何でサラーラさんとバットさんはチャーチルって言うの?」
「知らね」
「ターナカ・ユーキオーが1つも入ってないよぉ」
「何で? 棒が入ってるじゃん」
「キャハハハ。 それでオーケーなんだ⁈」
ーー ーー
なんて笑い合った、チャーチルと言う名前。
今は私の姪っ子の名前になったよ。
「ルイース、聞きたくないかも知れないけど、カウキの情報を聞いたよ」
カウキは病院を退院したのち自分の家に帰るが、母のヨウカ様に嫌われて平民街のボランティア施設に預けられる。
カウキの性格と平民、一生完治しない怪我と痛みと身分差。
初めからムリかあったのかも知れない。
カウキは施設に預けられてから僅か4年、若年28歳の若さで他界したと言う。
「そう…… 随分、情報が遅いのね、リュウの情報と違って」
「当たり前でしょ、リュウ様とカウキだよ」
シリーンは頑なにリュウをチャーチルと言っていた。
その理由は、私はチャーチルって紹介されたから、だって……
それでもチャーチルが産まれてからはリュウ様と言っている。
「ふ〜ん、私にはもう関係なかったよ。 リュウの怖さは大会中に皆んな知ってるもん」
「ルイース…… 私だって大会のことは何度も聞いて知ってるよ。 ……ルイースが何度も振られたことも」
キィ〜ッ!!
「でも、リュウは私を大好きって言ってくれたもん。 それに涙だって、素敵な人なんだよ〜。 ……カラッチ様やコウシャナス様と違って」
「ちょっとルイース! カラッチ様は良いけど…… コウシャナス様も良い」
「キャハハ、良いんじゃん」
「正直、良いです」
誰だってリュウと比べてはいけない。
それはリュウだけではなく、人同士は比べるべきではないのだ。
比べる暇があるなら、その人の良いところを探してあげよう。
by ルイース
「それではお待ちかね、リュウ様の話題で〜す。 なんと、また、リュウ様は武闘大会に出場しました〜」
「わ〜、ぱちぱちぱち〜、 ……って、昨日も聞いたよ」
「ふふ、第2戦の相手との裏情報、聞きたくない?」
何でそんなことまで知ってるの!
「でも、それはまた今度にしようか。 ルイースのお腹の子が興奮しちゃうといけないから」
私は子を産むつもりは全くなかった。
でも、チャーチルを見て考えを変えた。
子供を強く望んでいたカラッチ様、私が子を産む条件は、名前を私が付けて良いなら、だった。
もちろん、私が子に付ける名は……
「大丈夫、私のリュウは興奮しても素敵だから。 早く話しなさい、シリーン」
「どっちのことを言っているのよ。 お腹の子?」
「どっちも素敵なの。 ……特に興奮中は」
リュウ……
私はささやかだけど幸せだよ。
大会…… 頑張ったね、貴方の噂はこの田舎に居ても届いて来るよ。
やっぱり私の最初の予感は本物だった。
もし、あの時、貴方に何人かのお嫁さんが居たら、私は貴方に付いて行ったかも知れない。
でも、貴方は私が独占するには勿体ない人。
この10年が証明してるよね。
「私を何番目でも良いので貴方のお嫁さんにさせてください」
ふふ、今でもあの時のリュウの驚いた顔を覚えてるよ。
貴方は…… いつの私を覚えてる……?
ーー ーー
わがまま言って見に行った、いつかの大会。
私はあの別れから、初めてリュウを見つけた。
リュウ、あの時の私は、貴方に声をかけようか凄く迷った。
でも、私はもう、1人のギャラリー。
声をかけれなかったよ……
それでも確かに貴方と向き合った時はあった。
それは確かにあった、貴方と私の、私が18歳の夏。
それは確かに永遠と呼べるもの……
そして、私が最も輝いたその季節に、私のリュウが産まれる。




