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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 チンデッカ



     第二章  成り上がり


 第八十一話   「チンデッカ」

 

 


 何度か服を脱がされては、また服を着せられた。

 強烈な寒気のあった体もその都度、楽になっていく。

 ルイースの献身的な介護はいいけど相変わらず距離が近い。

 唇が触れそうな距離で話し、自分の体で俺を温めるように絡めてくる。


 絶対、移るだろ!


 それでも随分と楽になった……



 「リュウ君がずっと病気でも良いかも」

 「嫌だよ。 それよりもう19時近い、送って行くよ」

 「……ここにずっと一緒に居ちゃダメ?」

 「明日から酪農の仕事を覚えるんでしょ。 朝に俺も行くから」


 朝の5時って言ってたな……

 その前に日課のトレーニングを終えよう。


 「リュウ君、リュウ君、君の目の中に赤い丸いのがあるよ」

 「今まで気づかなかった?」

 「うん…… あまり目が良くないんだ。 ……大丈夫なの?」

 「問題ない」


 この眼は命のピンチに発動すると思ってたが、拷問の街中引き回しの時には何もならなかった。

 発動条件が分からないと使えないよな…… 別にいいけど。


 「あ〜あ、久しぶりに会ったのに抱いてもらえなかったな〜、こっそりお風呂まで入ったのに」


 病気の人間置いといて、何故に風呂まで入ってる!


 「この家、鍵がないから危険だよ」

 「うん、さっきコナーナさんって人が来て、かまどに食事を置いていったよ。 その時、私はリュウ君を温め中だったから凄く恥ずかしかった」


 見られてるな……


 

 

 ルイースを送って行く。


 だんだん日も伸びて、この時間でもまだ明るさはある。

 寒さも夜中よりは全然マシだ。


 「この辺りで豪快にすっ転んでたよね」

 「うん…… 幻だったら消えちゃうと思ったんだもん。 ……リュウ君は羅刹種なんだね」


 ルイースの家からここまで千キロ。

 出発して2日でベンゼッタさんと会っているし、今朝は無詠唱回復魔術でルイースの怪我を治してる。

 羅刹種以外には出来ない。


 「羅刹種が親か祖父に居るらしい。 兄が言うには親は人間だから祖父濃厚だけどね」

 「リュウ君は両親を知らないの?」

 「……ああ、知らない」


 何となく自分は冷酷なところがあると思っていた、それは両親が居なかったことと関係があるのかも……


 「特性って、そこまで継承出来るものなんだね」


 そう言えば特性の遺伝の方が難しいと、ラザノフがラリィを見て言ってたな……

 でも、ルイースが言うように飛ぶ特性も受け継がれてたなら、俺はもう羅刹種でいいんじゃない⁈


 「飛びかたが違うから特性じゃないよ。 いつかルイースお嬢様も空に招待させてね」

 「……も、か。 いっぱいの女の子と飛んだのでしょうね」

 

 ヤバい…… アホな間違いをしてしまった。

 でもバカではない、今回の風邪で俺がバカではないことが証明されたのだ! ……16年かかったけど。


 「飛べることを知っているのはほんの数人、土竜族の子供達を除けば片手で収まるくらいしか一緒に飛んでないよ」


 何と言ってもシスターやローチェでさえ飛んでない。

 思い出すと…… リリカ、ラザノフ、ラリィ、アトラス、カミラさん、ユキナ、リョーキさん、リシファさんとはムフフのフだった。  最後がユーリス。 ……って、ユーリスを思い出したら胸が痛いのは何故?


 結構いるけど、男子供を抜かせば片手でギリ足りる。



 ヒュ〜っと風が吹く。

 何も遮るものがない此処は、結構風が強い。

 それでも何処を見ても美しい景観、特に下は俺が暮らす村のバックにとても大きく美しい湖があって映える。


 その後、ルイースを送ってベンゼッタさんに挨拶(人前ではルイースは俺をユーキと呼ぶ)する。


 「君に頼むことは1つだけ。 ルイースお嬢様を無事に送り出すこと。 これさえ守ってくれるなら私はある程度は目を瞑ろう」


 ……と、言われた。

 

 ようは駆け落ちはするなってことだろう。

 駆け落ちしたならベンゼッタ家に迷惑がかかる。 ……でも最後はルイースの気持ち次第。



 再び山に登ってジャゴムを探しながらの夕方のトレーニング、熱は40度下がりの38度ってところなので随分と楽になった。


 上へ上へと走って来ると空気が澄んでいるのが分かる、辺りは真っ暗で普通なら一歩も歩けないほどの危険地帯だけど俺の眼は夜目も効く。

 

 切り立つ崖が立ち並ぶ山岳地帯、一歩足を踏み間違えれば真っ逆さまに落っこちるけど俺はジェット持ちなので余裕がある。

 絶対に降りれないって場所をジェットを使わないつもりでチャレンジしよう!



 風が下から突き上げる崖の上。

 ベンゼッタさんが言うには丘をひたすら来ると着くと言う断崖絶壁。

 下には暗くて全く見えないけど、入ったら出て来られないという樹海が広がっている。

 しばらく見てルートを決めておく、断崖絶壁と言っても足のかけれそうなところや止まって休憩出来そうなところだってある。


 意を決して飛び降りる!

 階段下りと違ってスピードも恐怖も格段にアップしている。

 次の次までの足の置き場を決めながら進むけど、一番大切なのは絶対にバランスを崩さないことだ。

 そのためには理想的に足を踏み場に置かなくてはいけない。


 数段で眼の魔法陣が、ブワァ〜っと広がるのが分かる。  

 ……だから発動条件は何?


 俺はまるでスパイダーマンのように壁に引っ付いては離れ、また下の方で張り付いている。

 しかし…… 足元に違和感があり止まってみると、買って間も無い靴がボロボロになっていた。


 衝撃がハンパないな…… 危険なのでここまでか。



 ジェットを使って降りてみる。

 途中、大きなヤギみたいな魔獣が崖を飛ぶように移動していたので追いかけてみる。


 う、美しい…… しなやかな動きに力強く蹴り出す脚、俺のスパイダーマンスタイルが恥ずかしくなる。

 その時、思ってしまってのだ……

 

 に、肉食いて〜!


 ギュン、っとアイス何とかをヤギに撃つが、空中でもヤギは体を捻り避ける。

 凄え〜、っと思いながらもアイス何とかを打ち続けると背中にヒット!

 そのまま脚を滑らせて崖から堕ちた……


 ギョエ〜! ヤギィ〜! ミンパク〜! モエ〜! 最後の断末魔の叫びは上手く表現出来ないけど、堕ちたヤギを呆然と見送った俺……

 

 人間相手に無慈悲に手足をぶった斬っても何とも思わない俺が、動物相手だと心を痛めてしまう……

 何て、心優しい好青年なんだ……



 ジェットで追いかけるように下がって行くと、崖の窪みにスポッと入り込むようにヤギは絶命していた。


 脚を掴んでジェットで高く上がる。

 血がボタボタと流れているけど重さはラザノフくらいか。

 ヤギにしては大きい気がするけどこのくらいならジェットで運べる。


 皆んなに分けてもしばらくは肉を食えそう。


 やっぱり俺は肉が大好きだ〜!



 ーーーーー



 母のミパシャが自らの命を絶った。

 

 元々、精神的な問題を抱えていた母だったけど私とルイースを置いて逝ってしまうとは考えていなかった。

 

 母を思い出す時、いつもあの時を思い出す。

 父が帰って来た時のこと、ニコニコで化粧をする母、子供の私から見ても父が大好きなのが分かった。

 その反動か、父が居ない時の母は抜け殻のように無表情で無気力な人だった。

 そう…… 今なら分かる、母は躁鬱病だったのだ。


 その状態は父の4人目の妻のゴシューが子を授かった頃から酷くなっていった。

 帰って来ない父、もうこの頃から母を疎ましく思っていたのかも知れない。

 母は次第に鬱の状態が多くなっていったが、本当に怖いのは躁の状態後だった。

 母が自殺を試みるのは必ず躁状態を抜けた鬱状態の時だからだ。

 それでも何度かの自殺は軽度の怪我ということもあり、誰も本気で自殺をするなんて思ってなかった。



 母が亡くなってから私達は第二夫人のヨウカ様宅で暮らすことになる。

 母が躁鬱だったため、他の夫人と仲良くなかったのもあるけど、第二夫人のヨウカ様はとても意地悪な人だった。

 私達に意地悪をするように、2人の息子ヨウキとカウキを焚きつける、そんな人だったのだ。


 それでも最初の半年は言葉での暴力が主で、ルイースも私も耐えていけると思ったのだが……


 しかし、繰り返す意地悪が次第に軽い暴力になり、女の身体に変化しつつあった部分を触られるようになった。

 私は妹のルイースをなるべく庇うようにしたけど、ルイースより成長の早かった私は、長男のヨウキに目をつけられていたのだ……

 

 私達は二卵性の双子で似ているようで似ていない。

 どちらかと言うとルイースはスレンダーな体格だけど私は肉付きが良い方だ。

 顔もルイースはあっさりというか、派手さのない顔をしているけど私は派手目の目鼻立ちをしている。

 私から見ればルイースの方が断然可愛いと思うけど、ヨウキが必要に狙って来たのは私の方だった。


 夜な夜な私を強引に自分の部屋まで運び、私を弄んだ。

 この家でそれを知らない人など居ない、妹のルイースは声を殺して泣くだけ、ヨウカ様は私を汚らわしい物扱いし、ヨウキの弟のカウキは毎日のように隠れて覗いた。


 私も死のう…… その日、私は手首にナイフをあてた。


 

 ザーッ、っと雨の音と啜り泣く声。

 ルイースの嫌だ〜っと言う声でハッとする。

 ズキっと手首に痛みが疾る…… 私は死なずに治療をされてベッドに寝かされていたのだ。

 その横のベッドで嫌がる妹に覆い被さるのは、多分ヨウキだろう……


 寝たふりを止めれない…… 起きて大丈夫と分かればまた私が狙われる……


 次第に状況を理解した私は愕然とする。

 ルイースは…… ヨウキとカウキ、2人に弄ばれているのだ……

 ルイース…… 私と違い運動も勉強も出来る明るい子、いつも私のそばで私を笑わせようとするもう1人の私……

 


 その日から私達の地獄の毎日が始まった。

 夜にギシッと物音がするたびに、私とルイースは体をこわばらせ震えた。

 いつしかヨウキのお気に入りがルイースに変わった頃、ルイースは死を口にするようになっていた……



 それでも耐えたルイースに学校への推薦状が届いた。

 フォルマップル国では、平民、貴族関係なく推薦状がなければ学校へ通えない。

 この家では兄のヨウキは学校へ通っているが弟のカウキは学校へは通ってない。

 そして私も学校へは通えないことが決定してしまった……


 私は焦っている……

 昼間ルイースが学校へ行って居ない時に、学校を卒業したヨウキ、学校には通ってないカウキとこの家で過ごすことになる。


 今年はまだルイースも居るけど来年は3人……


 見て見ないふりのヨウカ様に助けを求めた時は、3日間の食事抜きとお風呂へ入ることを禁じられた、だからヨウカ様には助けは求められない。


 お父様……

 私は思い切ってお父様に全てを話すことを決意した。


 お父様は主に第一夫人宅か第四夫人宅に居ることが多かった。 

 特に第四夫人のゴシュー様は性格も良く、お父様に1番気に入られた人だった。


 その日、第四夫人、ゴシュー様宅にお父様は居なかったけど、ゴシュー様に全てを話した私はゴシュー様の出身地のリバティ国の殿方を紹介してもらえることになった……



 この辺りから運命は動き出す。

 この国の兵役制度は男は全員参加で15歳から20歳までに通知書が送られて来る。

 兄のヨウキが学校を卒業すると同時に兵役されることが決まったのだ。

 

 ヨウキが去り、カウキの天下となる。

 ヨウキより暴力的なカウキ、それでも大人しくしていれば軽く殴られるだけで痣になることは少ない。

 しかし、ルイースはいつでも抵抗するので殴られた痣がいつも残っていた。

 それでも明るく飄々としているルイースが余程気に入っているのか、カウキはしつこくルイースを狙った。



 何もない時でも無表情で涙だけ流すルイースをよく見るようになった頃、ゴシュー様が私に1人の殿方を紹介してくれた。

 リバティ国に住む亜人で中級貴族のコウシャナス様(46歳)というお方。

 私がお願いしたのは年齢差のある優しい殿方、であったので問題ないけど、亜人?

 コウシャナス様は4人の亜人の正妻が居て、他にも2人の妾が居てそのうちの1人は人間らしい。

 つまり私は妾としてリバティ国に行くことになる。

 でも、そうなるとルイースは……


 最近のルイースは自殺する前の母と似ている。

 無表情で無気力、それでも思い出したように私に明るく接してくれる。

 私がリバティ国へ行くことはゴシュー様から聞いたようで、凄く喜んでくれた……

 そんな妹を置いて、私はリバティ国へは行けない。

 


 それでも最終的にリバティ国へ行くことを決めたのは、カウキに兵役するよう通知書が届いたことと、コウシャナス様が直接、私に会いにフォルマップル国まで来てくれたからだ。

 初めて見たコウシャナス様は、亜人にしては小柄で優しそうな雰囲気のある人だった。


 『事情はある程度は聞いている。 悪いようにはしない、15歳になったら直ぐに私の元に来なさい』


 っと言ってくれたコウシャナス様、その頃はカウキも兵役しているはず。

 それでもカウキが5年、ヨウキは4年でこの家に戻って来る。

 姉の私がルイースが学校を卒業するまでに、必ずこの家から抜け出せるようにしなければならない!

 そう思い、私はリバティ国へ来たのだ……



 思った通り優しいコウシャナス様、未だに子を宿さないのは行為自体が少ないからか。

 どうしても嫌悪感が捨てきれず、コウシャナス様に迷惑をかけているのは分かるが、それでも抱かれるのは恐ろしいのだ。

 きっとルイースも同じはず!

 それならルイースが学校を卒業したらカラッチ様はどうだろう?

 コウシャナス様の従兄弟で10歳上の59歳、その分性欲も少ないとミリナ様(6番目の妻、人間)は言っていたし、そうならルイースの負担が少なくてすむ。

 いつか手紙で書いてあったルイースの好みの男性像でもあるし、私とも近所でよく会える。

 

 カラッチ様は知的で素敵な方だ、きっとルイースも気にいるはず。

 そう思って話を進めたけど、何故かルイースは直ぐにリバティ国に来る選択をしなかった。

 酪農を習うために1年間の研修をするそうだ。

 もしかして学校の同級生でいい人が居た? 

 

 そうだ…… まだカラミージャに行く前に届くはず、手紙を書こう……



 ーーーーー



 少し前。


 リュウ君が先にカラミージャに向かってから数日。

 もうすでにリュウ君に会いたくて気が狂いそうな私に、シリーンからの手紙が届いた。



 【ルイース、久しぶりの手紙だね。 前回の手紙で書いた、ルイースもリバティ国に来るって話、喜んでくれたけど、もしかしてあの時から事情が変わった? もし変わったのならどうしたら良いのかしら? 聞かせて下さい】



 妾として行くと言っていたけど、しっかり嫁として向かい入れられたシリーン。 

 そんなシリーンから山のように手紙が届いていた。


 シリーンはほんの少し先に産まれただけなのに、いつも私を心配して、そして庇おうとしてくれる。

 私より臆病で怖がりのくせに、何度あの悪魔のような兄弟から庇ってくれたのか……



 私は何気に昔に届いたシリーンの手紙を読み返してみた。



 【リバティ国へ来てから1年、ルイースが居ない生活には未だに慣れません。 それでも夫のコウシャナスは思った通り優しく、私は幸せさえ感じています。 ……ただあの行為だけは上手くいかないことが多いです。 私の準備が出来ない。 ……少し恥ずかしいけどコウシャナス様を受け入れる状態にならないのです。 あの兄弟のように無理矢理なことをしないコウシャナス様。 でも、嫁としてのお勤めの出来ない私はいつかコウシャナス様に捨てられてしまうかもね……】



 この手紙を見た時に、私は感じたことがあった。

 そう、姉のシリーンは不感症なのだと……


 

 ザーッ、っと音を立てて降り続く雨。

 リュウ君の居た時から降っていたのに今はリュウ君は居ない……

 リュウ君が無事にこの街から出られたなら、私は何でもする、命だって奪われてもいい。

 そして…… カラミージャで会えたら……



 当時、姉のシリーンの不感症を悟ったのは自分自身に思い当たるところがあったから。

 学校に通っていれば色々とあるし、友達との情報交換だって頻繁だ。

 皆んなとの感覚が違ってたので、試しにクラスで1番モテたルガーと付き合ったこともある。

 結果は手を握られただけで身体がこわばり、ルガーに対する嫌悪感で蕁麻疹が出てきたのだ。

 その時はそれなりにルガーを好きだと思っていたので、もう私は誰とも付き合えないし結婚出来ないと思ったものだ……


 そんな事を知らないシリーンに好みのタイプを手紙で聞かれたことがある。

 私は凄く歳上で優しそうな人、出来れば性欲が減退してれば最高。 ……と答えたのだ。


 まさか、そんな人を見つけてくるとは!



 ふふ、でもその後にリュウ君が現れたんだよな〜。

 初めて見た時から全身が痺れる感覚。

 怪我をしてお風呂で洗ってあげた時はヤバいくらい興奮しちゃったし誘惑しちゃったな〜。

 

 リュウ君を思い出したらまた変な気持ちになってきた……


 誰が不感症?



 ーーーーー



 ルイースからの返信が届いた。



 【あの兄弟が帰って来る前に家を出たい、そう思って勉強も運動も頑張って来たけど、就職先はこの街にしか無かった…… それならリバティ国へ嫁ぐのも有りかもと思っていたけど、どうしても知らない人に抱かれるのは怖くて、想像するだけで吐き気がするほどだった…… そんな時に会った人、この星で1番カッコよくて1番強い人。 その人と1年だけど付き合えることになっているの。 私の地獄の数年がその人と再会してからの数日で塗り替えられていく。 毎日、何度も抱いて欲しいし、抱かれてない時でもあの人の声が聞こえる距離に居たい、結局私はあの人に触れる距離にいつも居るけどあの人は嫌な顔1つしない…… それでも私1人が惚れているのは分かっているの…… 優しいから…… あの人は…… これからカラミージャに向かうけど早くあの人に会いたい、会いたくて狂いそうだよ、シリーン。 それでも約束は1年、でも1年あれば私は全てを克服してリバティ国に向かう自信があるの。 ふふ、シリーンにもあの人を見て欲しいな〜、絶対、好きになっちゃうよ】



 な、なんなのコレ?

 すっかり母が生きていた頃の明るいルイースに戻っている気がする。

 ルイースはベタ惚れしているけど、このままじゃ私のルイースが奪われる。

 ルイースはもう1人の私、もう絶対不幸にはさせない!


 そうだ、ここからならカラミージャはそう遠くない、夏にでもルイースの様子を見に行こう。

 


 ーーーーー



 ヤギは解体して魔術で冷凍、半分をバットさん家にあげて、後はベンゼッタ家にも分けて、その日は就寝。

 3時ごろに起きようと思って寝たけど、丁度その時間くらいに扉の開く音が……


 こっそりと見るとルイースが忍び足で近づいてきて、服を脱いで布団の中に潜り込んで俺にしがみついた。

 そして、一言。


 「あれ、熱くない……」

 「ルイース…… 何やってんの?」

 「まだ熱があると思って、肉布団のサービス…… リュウ君は肉布団が好きだから……」

 「そんなサービス初めてだから。 好きも嫌いも無いっつうの」

 「昨日したもん、その時は肉布団の色んなところを触ってたよ。 肉布団は悶々とした夜を過ごしたとさ」


 昨日はそんな意識なんて無かった。


 「下品過ぎるっつうの。 それよりルイースのケツ冷たいぞ」

 「ふふ、だって寒かったんだもん。 温めてよ……」


 この真っ暗な寒空の下、護衛も無しに来るとは……

 仕方ない…… 俺は一生懸命にルイースのケツを揉みしだいた。


 「リュ、リュウ君…… 唇も同時に……」

 「分かった」


 冷えてないけど…… 俺は一生懸命にルイースの唇を吸った。



 ーーーーー



 パチパチと鳴る火の音と肉の焼ける匂い。

 朝飯に昨日狩ったヤギを焼いている。


 「ふふ、リュウ君は若いから元気だね、まさか朝から2回もするとは…… しかもまた性欲を付けるために朝から肉とは気合い入りすぎ。 ふふ、でも私はもっと頑張れる子だよ〜」

 「頑張らなくていいから頼むから下着くらいつけてよ。 鍵がないから人が入って来るよ」

 「チッ、このままほっとけばそのうちリュウ君は私をチラチラ見てそのうちムラムラきて襲って来るのに」

 「お〜い、心の声がダダ漏れしてるぞ〜」

 「あら嫌だ、私としたことが。 オホホホホ」

 「もう遅い。 舌打ちまでしっかり聞こえたっつうの」

 「いいの、リュウ君。 もう本当に服を着ちゃうよ」


 チラッとルイースを見る……

 見られていることを確認したルイースがスッと立ち上がり、手を後ろに回して俺の視線を恥ずかしそうに受け入れた。

 特別なものはない、でも何年も飽きの来ない顔と体だと思う。

 

 「チッ、時間さえあればもう一回ルイースを抱くのに」

 「プフッ、嬉しい心の声、頂きました。 でも本当に時間ないね」


 もう4時、走って30分かかる道のり。


 「まぁ、肉食ったら行こうぜ。 稽古がてらにルイースをおんぶして走るよ、70キロくらいだっけ?」

 「ムカッ! よく変なところを刺して私を持ち上げてるくせに!」


 めちゃくちゃ下ネタ好きだな、この子は。

 でも、凄く明るい子だったんだな……


 っつうか、早く服を着ろ!



 

 ーーーーー




 ルイースの仕事は羊のような動物ラスターの小屋を掃除したり餌を与えたりする。

 他にも毛や乳を取ったり、放牧させたり、場合によっては解体して食用の肉にして加工などもするらしい。


 お嬢様なのでこんな仕事はどうなのか? っと思ったけどジルベッタさん家の子達と笑いながらキビキビと働いている、動物好きって言ってたのでルイースに合ってる仕事なのだろう。


 俺? 俺は護衛なので近くで見てるだけ。

 たまにルイースが走って俺に近づくけど、ニコっと笑ってまた直ぐに走って行ってしまう。

 そして、ベンゼッタさんの息子のコートニーと娘のハミルとこっちを見て笑っている。

 3人を見てると会ったばかりとは思えない、本当の姉妹のように見える。


 

 ここでベンゼッタさんが近寄り話しかけてきた。


 「ユーキオー君、珍しい肉の差し入れ、ありがとう」


 この辺りは肉が珍しいようで、バットさんも感動してた。


 「この辺りはあまり肉を食べないのですか?」

 「いや、あの肉が珍しいんだ。 ヤゴットは崖に逃げてしまうからなかなか狩れない魔獣でな、どうやって狩って来たんだ?」

 「たまたまヤゴットは脚を滑らせただけですよ。 ところでジャゴムはどうなんですか?」


 探しても気配すらない。


 「近くではないが放牧中のラスターが狙われたって情報がある。 奴等は餌を求めて移動するし数が多いので狙われたら被害は甚大だ」

 「人も襲うんですか?」

 「雑食だが肉が好きなようだ。 当然、餌が無ければ人も襲う」


 それなら絶対、ルイースの朝の行動は危険だった。

 

 「君も1人では上には行かない方がいい。 もしもの事があったらルイースお嬢様が悲しむ…… いや本当にどれだけ悲しむか分からんぞ」


 確かに俺でも気づくほどルイースの俺を見る目はハート型になってる。


 「いえ、そのお嬢様に何かあったらマズいので。 むしろジャゴム退治をするべきだし、自分はジャゴムにはやられない」


 だって飛んで逃げることも出来るから。


 「す、凄い自信だな。 だがジャゴムは30以上のハーレムを作っている、狩りも得意な魔獣だ。 お嬢様のためにも無理はしないでくれ」

 「……ええ、分かりました」


 まぁ、近くには居なさそうだからしばらくは大丈夫だろう。



 その日、11時頃まで仕事をして、そこから16時頃まで長い昼休み、16時からはラスターを近くに放牧させ終えたら1日が終わる。


 俺の仕事はここまで。

 

 俺は昨日、バットさん家に肉を届けているので夕食に招待されている。

 当然、ルイースは招待されてない。


 「じゃあルイース、さっきも言ったけど俺はバットさん家に行くから。 明日の朝にまた」


 ルイースは不満顔。


 「私も行ったらダメ?」

 「やっぱり貴族のお嬢様がいきなり行くと気を使うと思うよ」

 「そうだよね…… じゃあ、明日の朝にまた行くね」

 「朝に来るのは禁止。 どうせ朝早くに会えるんだ、待っててよ」


 ジャゴムの件もあるし危険過ぎる。


 「どうして? 私は少しでも早くリュウ君に会いたい」

 「危険な魔獣が出るかもってジルベッタさんが言ってた。 危険があるなら絶対に禁止」

 「嫌だ! 私に1年くれるって言ったじゃない!」

 

 ルイースの瞳に涙が浮かぶ。

 まさかこんな話でいい争うとは思わなかった。


 「まだ1年は始まったばかりだ。 魔獣に襲われて1年が不意になってもいいの?」

 「だって離れるの嫌なんだもん! どうせ私だけだよ、会いたくて仕方ないのは……」


 気持ちに差があるのは仕方ないこと。

 どんなカップルでも多かれ少なかれあるものだ。


 「分かった、それならきっちり3時に向かいに行く。 その代わりベンゼッタさんにしっかり伝えること、1人では絶対に動かないことをやく……」


 話の途中にワンワン泣きながらルイースに抱きつかれた。 

 俺に回す腕が強い。

 こんなんで1年後に俺から離れられるのか?


 「朝飯はいつも俺と食おう、それもベンゼッタさん家には伝えといて」


 バットさんが魚をくれるので、外の樽の中で凍ってる。


 「ごめんなさい、リュウ君…… 我慢しなきゃ、我慢しなきゃって思ってても、リュウ君の側に居たい気持ちが抑えられない…… もう少し我慢しなきゃ…… 嫌われちゃう……」


 最後の方は消えいるような声だった。


 まぁ…… 別にそんな事では嫌うはずがない。

 それにしても俺みたいな未来のない男を良くこんなに好きになれるものだ。

 フォルマップル国に狙われている以上、ナラサージュには帰れないし冒険者の仕事も出来ない。


 やはりレミアを守りながら自給自足の生活をするしかない。

 ただ…… 今のスケベな俺が女神様の近くに居ていいのだろうか?

 いや、拷問を受けたばかりだから一時的にスケベになってるだけだ。


 前世でこんな人が居た、と言うだけでピーンときた人も居るだろう、そう、マイケル・ダーウィンだ。


 

 マイケル ダーウィン。


 彼は有名なシンガーであり、建築家でもあった。

 しかし、有名過ぎたのか誘拐にあう。

 家族が直ぐに身代金を払えば良かったのだが、彼の家族はドケチだった。

 なかなか払われない身代金(最終的には大学卒の初任給と同じくらい)に犯人達はダーウィンに拷問を施す。


 その後…… ディスカウントされた身代金を払ってもらい開放されたダーウィンは止まらない下半身の疼きにこんな一言を漏らす。


 『拷問イコールチンデッカね』


 これが後の大ヒット曲、“拷問とチンデッカと私” に繋がるのはあまりに有名だ。


 『ムラムラフィーバーは終わった…… もう一度、もう一度拷問、キャマ〜ン』


 と言って、家族に看取られながら静かに息を引き取ったダーウィンは幸せだったろう。 

 ただ、家族は最後の言葉が恥ずかしいので公表しないでほしい、とマスコミにお願いしてたらしい。

 


 長くなったが、俺がレミアの元に行く障害は消えた。

 

 

 だが、その前に……


 ルイースと来年別れたら、俺はジーンライネに戻り気が狂った狂人のように暴れよう、そしてレミアの元へ行くのだ。


 その事を、今、決めておく。

 

 


  

 

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