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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 刺客



     第二章  成り上がり


 第七十七話   「刺客」




 刺客が来てる……

 

 刺客の成功条件。

 秘密裏に仕事を遂行する。 ……正直、コレだけだ。


 今回の場合は、数日行方不明だった俺が死体で発見される。

 検査の結果…… も何も、明らかに斬られている。

 フォルマップルからの刺客か? ……が正解。



 相手に姿を見せない、又は見せた相手を消す。

 それだけの実力者。 ……って事になるけど、今回の刺客は失格になる。


 俺達に逆に待ち伏せられる刺客って、アホだろ。


 だからと言って、実力が無いとも言い切れない。

 3人のうち、1人がアホなだけで残りの2人は実力のある鋭い奴かも知れない。

 油断はせずにいく……




 波止場は夜でも真っ暗という訳ではなく、普通に人が歩けるくらいの明るさはある。

 その波止場にリコを先頭に来たけど、リコに反応はない。


 そのまま、ラリィとクラルさんは船に乗り込む。


 「2人共、気をつけてね」

 

 クラルさんとラリィは心配そうな顔で船を出す……



 ラザノフは海側、俺は山側で待機。


 よくよく考えて見れば、俺が有名と言っても当然知らない人の方が多い。

 ましてや家まで知ってる人は少ないはず。

 

 飯食ってないんですけど…… 今日中には来てもらえますよね⁈

 

 

 3時間待ち…… これならゆっくり食事出来たじゃん、と思い始めた頃。

 ……話し声と共に、3人の男が現れた。


 「間違いねぇ、ここを登った左側の大きな家が奴の家だ」

 「ああ…… 若い女しか知らなかったが、5人が5人共あの家と言ってたんだ、間違いないだろう」

 「ああ、角張った家が多い中、丸みを帯びた家はあそこだけだ」


 正解……



 3人の容姿が特徴的なので少し……


 1人は袴を履いてる…… 背はゲイルと同じ170センチくらい。

 グレーの髪に赤の目、腕に無数の引っ掻き傷が治ってない。 ……強そうな雰囲気。


 細くて手足の長い男は不気味な雰囲気。

 肌は土気色でハリがない、そう、死人のようだ……

 腰に何本も短剣を挿している。


 最初に喋ってた奴は目が爬虫類っぽい。

 肌も黄緑色でこちらも不気味。

 

 上位亜人か?

 

 

 「明日の朝、奴等が出て来た時に俺が竜族の奴を引き離す。 ジョルジュ、マキネ、2人でいけるか?」

 「問題ねぇ、早くやってリバティ辺りで遊んで帰ろ…… 誰だ!」


 ラザノフが見つかった……

 俺は反対側の藪の中、自然と一体中。


 「ガハハハ〜、お前達がリュウに会うことはない。 ここは通さんでござる」

 

 ラザノフ、ナイスセリフ、これでここにはラザノフしか居ないことになる。

 でも、3人組は慌てない…… 竜族を恐れてない⁈


 「余裕だなぁ、1人で。 ジョルジュ、マキネ、今すぐ終わらす!」


 と言った黄緑色の奴が消えた……

 が、俺には見える…… 擬態⁈ 後ろの風景に溶け込もうとしているが、ラザノフの角度と俺の見てる角度では違う。

 俺の見てる角度では、見づらいが見えている。

 ゆっくりと大回りでラザノフの後ろを取ろうとしてる。

 

 もう1人の死人野郎はドロドロに皮膚が溶けた腕を伸ばす、その両手に短剣、異形の二刀流!

 手はどんどん伸びていく、5メートルくらいか。


 でも、弱点を見つけた。 ……それは後ほど。

 

 最後の赤目は堂々と無手でラザノフに近づく…… 自信のありそうな雰囲気。



 ラザノフが珍しく先に、ボッ、っと槍を突く。

 無手の赤目が腕で槍を滑らす…… が、それではダメージを受けるだろう。

 その隙に後ろから短剣を振る死人野郎…… でもラザノフは慌てず捌く…… 瞬間、赤いナイフみたいな物体がラザノフの腕を切り裂いた。

 

 後ろから近づく黄緑色が更に近づいたので、俺はクナイを投げた!

 キンッ、っと持ってる剣でクナイを落とした黄緑色、ここでラザノフも黄緑色に気づく。


 本当は後ろ側になる赤目か死人にクナイを投げたかったけどピンチだったので仕方ない。


 俺も出て行く……


 

 俺を確認して寄ってくるのは赤目と死人。

 フォーメーションなのか赤目が前、死人が後ろ。


 構図としては俺対赤目、ラザノフ対黄緑色、死人が長く伸ばした腕で両対決を補佐する。



 ここで思う。

 俺は黄緑色と相性がいい、つまり楽勝出来る。

 でもラザノフは苦手だろう。


 早く赤目と死人を倒さなければ……



 ビュ、ビュ、ビュ、ビュ、っと赤いナイフが飛んでくる! どうやら赤目の血がナイフの形になり襲ってきている。

 ナイフを避けつつ上からの死人の短剣を交わし、その腕を斬り落とそうとするが、避けたナイフの軌道がおかしいのに気付き、横っ飛びで避ける!

 頬を掠めるナイフ、腕にも掠めた痛みが疾る!

 キンッ、っと前から詰めて来ていた赤目の剣(これも血で出来ている)を捌くと同時に前蹴りで赤目を離す!

 そして、ガッ、ガッ、ガッ、っと飛んでるナイフを破壊。


 一瞬の静寂……


 蹴られて吹っ飛ぶ赤目を後ろの死人がカバー。

 驚いた表情の2人……


 ラザノフは必死に気配を探り、黄緑色もうかつに近寄れない。



 マズい…… あの血の武器に当たると痺れる。


 ゲリールを自分にかける……

 レミアから教えてもらった(本当は勝手に再現した)ゲリール。

 ありがとう、レミア、感謝の気持ちを受け取ってくれ。


 

 君が僕にプレゼントしてくれた"ゲリール"

 あの日の海のように僕の心はネイキッドォ……



 ギュウ〜ンと振られる短剣を捌き、思う。

 まだ作詞中! と。



 作詞を中止させられて怒った俺は突っ込む!

 

 口から魔術でファイヤースネークを後ろの死人へ、前の赤目は剣技で押す。




 ラザノフは集中していた。


 気配を感じ隙を見つけて初撃を入れる練習は、リュウを相手に散々やってきた。

 今日の相手は見えないが、同じこと……


 目を瞑り、集中すると分かること……

 右斜め前に気配…… 今までの拙者なら直ぐに勝負をかけるだろう。 …… でも、リュウならどうやる?

 リュウなら気付いてないフリをして、ワザと隙を見せるはず。

 そして全てを罠の中に入れてから逃さずに叩く。

 拙者に出来るか……


 気配が近づいたその時、拙者は突きを放つ! 

 が、スカッとした手応え…… しまった。

 そして…… ズッ、っと脇腹に突き刺さる剣……


 コレを待っていた!

 グルっと回りながら思いっきり槍を振る!

 バッチィ〜ンと当たりメオン族の男が豪快に吹っ飛んだ。


 10メートルは吹っ飛んだメオン族の男を確認すると…… 口から血を流してピクリともしない……


 人族の命を絶った初めての瞬間。


 ゾワゾワっと足元から震えがくる……

 心の中で『済まん』と思っても、目の前の男はもう動かない……

 こんな事をリュウは遥か昔に体験している……


 悪リュウ…… 納得。


 ハッ、リュウは?



 リュウは蓮撃中だった……


 赤いナイフが飛びかい、長い腕の短剣が2本もリュウを追う。

 リュウが他のことに気を取られながらでも蓮撃を続けられるのは、リュウと赤目との実力差があること、追いかけるゲウレル族の腕が非力(弱点か)で軽くあしらえれることが大きい。


 でも、流石に厳しい…… と思い始めた頃、リュウが口から魔術を赤目に吐く。


 ガッツーン、っと氷の矢が赤目の額に当たり、その隙をリュウが逃す訳もなく赤目は無惨に蓮撃の餌食に……

 もう止めてくれ、っと仲間である拙者が敵に同情するほど、跡形もない……

 半泣きのゲウレル族がパニックになり、仲間を助けようと無策でリュウに突っ込む!


 「リュウ、ソイツは殺すな!」


 大声でリュウに伝えると、リュウは刀の峰で一振り! そして、スッパーンと音がしてゲウレル族が吹っ飛んだ。

 

 完勝…… で、いいのか。




 気絶している死人野郎を見ながらラザノフに尋ねる。


 「何で死人を生かす…… ん⁈ 何で生きてる死人を死なさず、殺さず…… う〜、分からん! 何故、止めた!」

 「リュウ、ソイツはゲウレル族、上位亜人。 そして拙者の相手も上位亜人、メオン族。 そして赤い目の奴は多分、ブラルバッサ族のハーフでござる。 フォルマップル国からの刺客なら1人は生かして色々情報を吐かせた方がいい」

 「誰が? 俺は面倒くさい事とお勉強は嫌いだ!」

 「何故、おを付けた? ゲウレル族はお城に引き渡す。 そこで調べてもらえばいいござる」

 

 何故、でを付けない? 


 「とにかく拙者はソイツを城に連れて行く。 リュウはこの辺りを掃除して死体の処理でもしとけ!」

 「ん⁈ ああ」


 何でラザノフ偉そうなんだ?



 拙者は今日、初めて人族を殺め、リュウと同じメンタルを得た。

 確実にリュウとの差はなくなり…… いや、超えてる可能性だってある。


 ゲウレル族を抱えて歩き出す…… そう、お城へ……

 


 遠くからリュウの声が聞こえる……


 「ラザノフ〜! メオンが生きてるぞ〜!」


 な、何〜! それでは同じメンタルが無くなる!


 「そ、そのまま焼いてくれ〜! ござる〜!」


 ハッ、拙者は何を言っているんだ。


 

 しかし、リュウがメオン族を抱えてやって来た。


 「回復薬を飲ませたから途中で気付くかも、気をつけて」

 

 リュウと同じメンタル…… 失敗。



 ーーーーー



 それからひと月。


 フォルマップルから来た刺客は口を割ることはなく、刺客としての最後の意地を通していた。

 だけど、キャプトマン王子がフォルマップルについて話があるというので、ラザノフと学校帰りにお城へ行く予定。


 そんな中、学校でポルカ先生に聞いた羅刹種の話が面白かったので、少し……


 無詠唱を調べるうちに羅刹種を知ったポルカ先生。

 俺が現れてから嬉々として本を読みまくったらしい。


 そして分かったことは……


 昔の本は名前だけしか分からない物もあるが、それ以外の羅刹種は男しか居なかったようだ。

 その昔の本の羅刹種の名前も男によく付けられる名前なので、ポルカ先生は大胆な仮説を立てた。


 1 羅刹種はレイモンの固有種。

 2 女は飛べない、もしくは飛行距離が短い、もしくは元々産まれない。

 3 人間との交配で羅刹種が産まれる可能性。


 という仮説を立ててきた。


 何故フォルマップル国の羅刹種が人間との交配でハーフを増やそうとしてたかは、目的は無詠唱ではなく、もしかしたら羅刹種が産まれるのを待っていたのでは? と言っていた。

 鋭い指摘で、そうかも知れないと思ってしまう……


 でも面倒くさい国、フォルマップルとは関わり合いになりたくないッス。


 …… という事で、謎は謎でいいや。




 その後はユーリスの稽古を見る。 …… と言っても、演舞も完成したので熟成度を上げるだけ。


 一通りの演舞の練習も終わると少ない時間のお喋り、これを付き合ってると呼べるのか?


 「リュウ、もう直ぐだね、旅行」

 「うん。 そう言えば今日はマインさんが居なかったね」


 こんな事、初めてです。


 「ふふ、旅行先の屋敷のお掃除に行ってるよ。 楽しみだなぁ〜」

 「え〜と、前回行ったところだよね?」

 「違うよ、だって私達付き合ってるじゃん」


 意味が分からん、まぁいい……


 「初めて2人で旅行なんて、緊張しちゃうよ……」

 「え? 2人だけなの?」

 「そうだよ。 許可も取ったしぃ…… あのさ、リュウも初めてでしょ?」

 「異性と2人で旅行? 当たり前でしょ」


 …… 良く許可取れたな、バレたらラースビーさんもマインさんもどんな罰が与えられるか分からないぞ。


 「違うよ…… その、アレだよ…… 初めて?」

 「アレって、すんごくやらしい行為のこと? ユーリス初めてなの?」

 「当たり前に初恋! ……もしかして経験者じゃないよね⁈」

 「リリカと付き合ってたから……」


 リリカのことは知っているけど、カミラさんのことは知らないので伏せておく。


 「ウソ、信じられない…… 2人きりで居ても全くやらしいことをして来ないから、リュウも初めてなんだ〜って思ってた……」


 アホか……


 「ここは道場、いやらしいことをする場所じゃない」

 「え…… キスしたよね⁈」

 「あ、あれは挨拶。 犬とかと同じ」


 リコもラリィの顔をしつこく舐めている。


 「ふ〜ん、じゃあ、あの日以来私達はずっと挨拶してないね!」


 ユーリスはこっちを見て目を伏せた……



 美しい人だ……

 エロモードにスイッチを切り替えれば、キスだけでは収まらないに決まってる。


 「もう直ぐ2人きりで旅行でしょ。 今、ラースビーさんが入って来て見られたら中止になるかもよ」

 「あ…… じゃあ、お風呂で私の髪の毛を洗ってくれる?」


 腰辺りまで伸びた黒髪…… いつもラースビーさんかマインさんに洗ってもらってるのかも。

 それにしても…… 役得!


 「得意だ。 なんなら体を洗うのも得意で有名だ」

 「そう? そんな噂聞いたことないけど。 体は恥ずかしいから家でラザノフ様にしてあげて」


 テンション駄々下がりでござるます。


 「それでマインさんはいつ帰って来るの?」

 「明後日には帰って来るよ…… 演舞のお披露目?」

 「そう。 お披露目して旅行から帰って来たら、ユーリスとの稽古も残り5、6回? もう1つ演舞作れるかなと思って……」

 「うん…… そうだね……」


 ガク〜ンとテンションが下がった、何で?


 「そうだね、次の稽古でお披露目しよう……」


 最後を思ってテンションが下がったのか?

 ……でも、まだひと月以上はあるし旅行だってまだ行ってない。


 「練習はバッチリだ、2人を驚かそうぜ」

 「…… うん」


 結局この日はテンション戻らずだった。



 

 学校の校門にラザノフと待ち合わせて貴族門まで歩く。

 貴族門で手続きした後は、迎えの馬車に揺られる。


 「何の話でござるかな?」

 「想像もつかないね」

  

 想像してないけど。


 「嫌な予感がするでござるよ」


 俺はしない…… どちらが合ってるか。



 お城に着くより早く降ろされた先にあったのは、キャプトマン王子が持つ離宮だった。

 どうやら今日はここで食事が出来るらしい。


 ラザノフの予感…… 大はずれ。


 とりあえず部屋に通され少し待った後に小さな食堂に通された。

 そこにはキャプトマン王子の奥さんと2人の子供に、壁に張り付いてる4人の護衛。


 奥さんの名前はターミナ、可愛らしい顔の人だ。

 子供は双子で男の子がサートゥラン、将来はお父さん似のいい男になりそう、女の子がミュランと言う名でこちらはお母さん似か。 

 歳は6歳なのでラリィと同じ。



 普通に招待され、普通に食事をとり、普通に質問攻めに合う。


 「リュウ君でよろしいでしょうか。 最近貴方の噂ばかり集めてる人が居るのですよ」


 一瞬、キャプトマン王子が渋い顔をした。


 「自分のですか? 変わった人ですね」

 「プフ、キャプトマンの2人目のお嫁さんですよ」


 この2人は幼馴染って言ってたな……

 それにしても何人お嫁さんが居るのか?


 「そうですか。 でも噂は噂、本当に合ったことか分かりません」

 「ふふ、そうね。 じゃあ、吸血族相手に妹さんを助けた話は?」


 その話を知ってるのはラザノフだけ!


 「ラザノフ君、君の口は軽いでござるます、オーホホホ」

 「ガッハハハ、リュウの中で流行ってるでござるな。 まぁ拙者は聞かれたら正直に話す、口は堅い方だ」


 正直だろうと無かろうと、ペラペラ喋ってたら軽いっつうの。


 「ねぇ、お兄ちゃんって強いんでしょ。 僕達に剣術を教えてくれるのってお兄ちゃんだよね、パパ」


 サートゥランだっけ……


 「いや、先生は他の人だ。 王族専用の腕のたつ、ガッチョって人だ。 お父さんも教わった人だぞ」


 王族専用とかあるのか…… ユーリスは言ってなかったけどな……


 「ねぇ、お父様。 ミュランはリュウお兄様がいいです。 サートゥランはガッチョ様で私はリュウお兄様、いいですわよね、お父様」


 うっ、って感じのお父様。


 「ミュランは女の子だから剣術の練習は無いぞ。 その代わり魔術の勉強があるから頑張りなさい」

 「お父様は嫌い。 お母様、リュウお兄様が剣術の先生になったらよろしいと思いません?」

 「ふふふ、確かにいいわね…… あっ、ダメよ、ミュラン。 そうなれば良いならしっかり外堀を固めてキャプトマンが断れないようにしなきゃいけないの。 今度やり方を教えてあげるね」


 怖い奥さんと娘さんだ……

 王子の血の気が引いてるぞ……


 

 食事もデザートまで終わり、ターミナさんと子供達が抜けた。

 そろそろ本題に入るのか?


 「コホン…… 話と言うのはフォルマップル国のことだ。 先日、2人が捕まえた捕虜達は何も喋らないが、フォルマップル国が引き続きリュウの引き渡しを求めている。 そこでラザノフ君、君のお父さんからリバティ国の王様、エガレット王に進言してもらうことは可能か?」

 「つまりリュウの引き渡しを求めるなと、リバティ国の王様に言ってもらうでござるか? それはちょっと情け無いでござるな、無視することも出来ないでござるのか?」

 「国境沿いの村が襲われて村人が人質になってるんだ…… その村人とリュウを交換しろと言っている……」


 何の罪のない村人を……


 難しい問題と言えば難しい問題なのかも知れない。

 でも、簡単と言えば簡単な問題だ。


 「俺と村人の交換に応じればいい」

 「リュウ! そんな事は認めない! ラリィはどうする? それにリュウが居ないとパーティーだって解散だ」

 

 ラリィは俺と影の契約をしちゃったから可哀想な事をした…… やっぱりラザノフが適任だった。


 「僕もそれには反対だ。 隣の国のリバティ国は軍事的にもフォルマップル国より上の国、僕も独自のルートで直接エガレット王に頼むつもりではいる。 でも、やはり竜族の存在はリバティ国にとって大きなはずなんだ……」


 ダブルで頼めば何とかなるのか?


 「分かったでござる、父者に頼んでみよう」



 ゲイルの話では、フォルマップル国の制裁は想像を絶すると言っていた。

 ゲイルが見た制裁を受けた親子は、父親が目をくり抜かれるほどの体罰で死亡、母親は両耳を切られて口も裂かれて重体、子供は足を切断されてショック死してたという。


 そして村人という家族の集まりは、俺を引き渡せるための犠牲者でしかない。


 「ラザノフ、頼むのは俺を渡した後の村人全員の解放、その後どうなろうとナラサージュ国へはいっさいの手出しはしない約束。 しっかり書面で約束させて欲しいとガルフさんに頼んでくれ」

 「リュウ…… 最悪と最高を教えてくれ」


 相変わらず理解力が高い。 


 「最悪は俺は死ぬ、食えなきゃ死ぬでしょ。 最高はまた戻って来るけど…… 間は空けたほうがいいかな」


 正直、餓死する前に拷問で死ぬ可能性の方が高い。

 それと、俺が上手く逃げても奴等はナラサージュを疑うはずなのでしばらくは帰って来れない。


 「リュウ、それなら僕の私兵を忍ばせておこう。 貴族街には無理なので平民街になると思うが……」


 あそこは貴族街には飛べる種が見張ってるので、ここぞという時にしか飛べない。

 逃げるだけで俺の手の内を見せたくないのだ。

 

 忍ばせてくれるなら、何かの役に立つかも知れないのでありがたい。


 「ありがとうございます、後で紹介して下さい」



 後に紹介してもらったのは3人。

 貴族だが王家に長く勤めて忠誠もある家系らしい。


 まぁ、忠誠が無ければ他の国の平民街で暮らすのは無理でしょ。


 「ああ、紹介するが、今からフォルマップルへ行き拠点を作ったり色々するだろうから少し時間がかかる。 それとさっきも言ったが僕のルートで解決出来るならそれがベストだ、リュウは最悪の場合の交換要員だからな」


 この人は行動力と先を見る力がある。

 次の王様にいいんじゃね? どうでもいいけど。


 「リュウ、拙者もゲイルから話は聞いてるから村人を救うことを止めろとは言わん。 でも、必ず無事で戻って来ると約束してくれ」

 「ああ、素敵な変人達は解散しないさ」


 と言っても、俺はナラサージュに住むことは出来るのだろうか?

 戻って来たことがフォルマップル国に知られて、また村が襲われて村人が人質になる、そして俺と交換……

 堂々巡りで同じことなら帰って来ない方がいいのでは。

 

 まぁ、今は罪もなく拉致された村人を救うことだけ考えよう。



 帰り道、ラザノフが話しかけてくる。


 「リュウ、ラリィを連れてけ」


 ずっと、ござる無し…… ン⁈ ラリィ?


 「確かに食料や刀、回復薬等を隠せるのは大きい。 ……でもラリィの危険も大きい」


 特に今はクラルさんが居る貴重な時間、クラルさんだって嫌だろう。


 「クッ、もう少しラリィが大きければ……」


 俺も思った。

 後3年後なら、ラリィを連れて行ったかも。


 「ラリィには何も言わずに行こう」

 「済まん…… リュウ」


 この事を知るのはごく少数だ。

 貴族は知らないけど、俺の知り合いではポルカ先生に校長先生、つまりラースビーさんのお父さん。

 だからラースビーさんとマインさんも知るだろう……


  ユーリスには心配かけたくなかったな……



 と言った心配をしてたが、ラースビーさんとマインさんはユーリスに言うのを迷っていた。 

 そして俺に確認をとって来たので俺は『ユーリスには言って欲しくない』と言い、ユーリスがこの事を知ることはなく花嫁修行へ行くことになる。



 それから数週間、リバティ国の王の言葉もフォルマップル国には届かず、やはり俺が交換要員になるしかなくなった。

 それでも何とかユーリスとの旅行は行けそう、という時にポルカ先生の呼び出し。


 「うぅぅ…… リュウ君ばかりが犠牲なんて嫌よ……」

 「先生さ、授業中にも俺をチラチラ見て悲しい顔するのは止めてくれる」


 涙は堪えてたけど、その代わりに鼻水が出てたぞ。


 「だって悲しいんだもん…… リュウ君、私に何かあったら相談しろって言ったわよね、今していい?」

 「時間がないけど、俺に解決出来るんだったら動いてみるよ」

 「ふふ、今は相談するだけ、必ず帰って来て解決して欲しいの」


 と言ってポルカ先生は語りだす……



 ポルカ先生は学生時代にコルツクレンと言う中級貴族の先輩と付き合っていた。

 コルツクレンから猛烈にアタックされて付き合ったのだが、コルツクレンはとても優しく、そしてとても優柔不断な男だった。


 それでも長く続き、ポルカも学校を卒業、先生の見習いとして3年間の研修(貴族街にある、学校前に通うことが出来る学舎)をすることになる。

 その時にコルツクレンからプロポーズされる。


 「ポルカ、研修が終わったら僕と結婚する方がいい? やっぱりヤダ? でも僕はしたい」


 ポルカは幸せの絶頂にいた……


 が、コルツクレンの両親が猛反対、コルツクレンには同じ中級貴族が相応しい! っと、知り合いの中級貴族の38歳の女をコルツクレンと結婚させた。


 やっぱり身分差は難しい…… 中級貴族はプライドが高く上級貴族になることばかりを考える……

 上級貴族と中級貴族の結婚は多いが、中級貴族と下級貴族の結婚は極端に少ないのだ……


 「ポルカ、それでも僕は君の方を好きな気がする。 この結婚でも2人目の嫁ならきっと両親も納得してくれる、ちょっとだけ待っててくれ」


 と言ったコルツクレンの言葉を鵜呑みにした訳ではないが、まだ研修中だったのでショックのまま過ごす。


 それでも日が経ち、割り切ってコルツクレンと研修が終わったら結婚しよう、と思えるようになり、ポルカは研修を頑張る毎日を過ごした。


 そして研修が終わるひと月前、コルツクレンが同じ中級貴族の42歳の女とお見合い結婚したことを伝えられた……


 「ポルカ、どうしても断ることが出来なかったんだ、今ならハッキリと分かる、僕はやっぱり君が1番好きかも知れない、多分」


 多分……


 「結婚しよう、経った2年の辛抱だ(結婚してから2年以内の結婚は出来ない法律)」


 ポルカは思う。 ……もう付き合って5年、結婚は3年待った、そして私はもうこの人を好きじゃない。


 「もう結構です。 違う人生を歩みましょう。 奥様を大切にして下さいませ……」


 こうして別れたのだが……


 コルツクレンはその後ショックで奥様に興味をなくした。

 なので未だに跡取りが出来ていない。


 それは全て…… ポルカ、お前のせいだ!  ……って感じで、コルツクレンの弟の双子に暴力を振るわれることがあるらしい。


 特に俺が学校に通うようになって、無詠唱についてもどんどん謎が解かれたのでポルカが明るくなった。

 よく笑うポルカに対して、コルツ一家は恨みすら抱いている。


 「え〜と、コルツが苗字でクレンが名前だったんだね」

 「そうよ。 ……区切るとリュウ君は覚えないでしょ」


 確かにクラスメイトの名前すら、覚えてないけど!


 「分かった、意外と難しい問題だから宿題だね」

 「ふふ、ダメよ、宿題だとリュウ君はやらないのが当たり前でしょ。 だから私のお願いね、必ず帰って来てお願いを聞いてね」

 「分かったよ、それにしても貴族って性欲モンスターだね、3人の嫁を欲しいって凄いよ」

 「貴方がその気なら三桁だって行けるわよ、女の子達だって喜ぶし」


 いりません!


 「それでね、相談料を払うわ…… 体育館で貴方の身体に……」


 ポルカ先生も…… 貴族! ヒィ〜!



 ポルカ先生が相談料としたのは、"ウインドカッター"という魔術だった。

 そして"ウインドカッター"に水の魔力を混ぜる"ウォーターカッター"を覚える頃には、すっかり夜も更けていた。




 ウインドカッター


 刀を振った時に出る衝撃派は数センチ先まで届いて肌を切り裂く。


 このウインドカッターは胸の前に50センチくらいの横幅の衝撃派を出して飛ばす。

 ポルカ先生の"ウインドカッター"は2メートルほどで衝撃派が見えなくなったが、俺は10メートルは飛び、更に横幅も伸びていたのは魔力量の違いだろう。


 威力は近いほど高く、巻き付くように敵の肌を切り裂く。

 遠くなると威力が落ちるが横幅が伸びるので、多くの敵の足止めには使えそう。



 ウォーターカッター


 ポルカ先生に水の魔力を混ぜることを勧められて出来たオリジナル魔術。


 威力はウインドカッターに比べて切り裂く感じは薄れたが、吹っ飛ばしながらダメージを与える。

 


 その日、平民街でポルカ先生と食事をした時にデジャヴのような感覚を覚えた。

 あの日、シスターと王都でピザを食べた日と、シチュエーションがそっくりだったからだ。

 でも、シスターは泣かなかったけど、ポルカ先生は途中から号泣してた。


 その反応だと俺…… 殺されるでしょ。

 



 


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