フォルマップル国
第二章 成り上がり
第七十五話 「フォルマップル国」
大会最終日。
もう出番のない私は大会の最後の総合順位発表だけは出させてください、っと父に懇願して何とか了承を得た。
最も父が反対する理由も分かるし、私も最初は初日の勉強の順位発表しか出ないつもりでいた。
でも…… 諦めていた初恋の人が居たから……
もう一度、私はリュウ君に会える……
今はお昼を過ぎたばかり、もしリュウ君が…… いいえ、必ずリュウ君はフル代表戦の決勝に残っている。
サンカルムで大会を見た時は余りの強さに複雑な思いが巡った……
カッコよくて痺れる感覚の私と、リュウ君が強くなければ私だけのリュウ君なのに、と思う私がいた。
もちろん、私の中でだけのリュウ君だけど……
それでも最後は強くカッコいいリュウ君が見たい。
例えその後に自分が、1ファンとして埋もれても……
しかし、現実は違うものとなった。
リュウ君は午前中の試合中にギルドの大会でも一緒だった竜族の人の"突き"を誤って受けてしまい決勝戦は欠場。
怪我の程度は大したことがない、という話だけど、宿舎に戻り寝ているリュウ君のお見舞いもナラサージュの先生に断られた……
やっぱり私はただの1ファンだよね……
リュウ君の居ないナラサージュ代表。
でも、あの竜族の人が凄く強い。
3人に囲まれても全く慌てることなく、むしろ圧倒している……
そんな竜族の人の活躍で、フル代表戦の優勝はナラサージュ代表になった。
そして、大会最後の最終結果発表。
ここにもリュウ君は居ない……
1 リズーン国
2 リバティ国
3 ゴールタール国
4 ナラサージュ国
5 コーラン国
6 フォルマップル国
7 ホオヒューガ国
と、なった。
今大会はリズーン国が1強とも言える活躍で、2位から5位のコーラン国までが混戦だった。
もう一度だけ……
「あの、私……」
と、言って話しかけたのはナラサージュ代表のリュウ君のパートナーの竜族の人。
リュウ君に合わせて欲しいとお願いしたけど……
リュウ君は丁度体調を崩した妹さんと共に、先に船へ向かったとの事。
ただ、妹を連れて行けるくらいに回復しているので心配はしないで、っと言われた。
これで、もうリュウ君にこの先会えないことが確定してしまった。
お互いの身分の違いを知りながら惹かれ合った日々はあった……
それでも全てを捨てる覚悟が出来なかった私が、この恋を終わらせた原因。
きっと、リュウ君はもっと有名になる。
その噂を楽しみに、私も生きて行こう……
ーーーーー
1日目の夜。
ラリィを地上高くで影から出す。
光を俺の身体に当てて影を作ると、ニュ、っと出て来て羽ばたく。
ラリィの飛ぶ速度はまだMAXで40キロくらい。
でも、降下しながらだと驚くほど速い。
ラリィを連れて来た理由は、先ず影の中がやはり一番安全だという事。
帰りの船や、昼間などラリィには危険が沢山ある。
他には便利という事もある。
荷物は預け放題、回復薬も割れないから戦いだって出来る。
でも、デメリットもある。
食費が嵩むし休憩も多くなる。
ストレスが溜まるのでたまに外で飛ぶことも必要だ。
でも、飛ぶのが大好きなラリィはいつも楽しそうに飛んでいる。
それを見てる俺のストレスも軽減してくれる……
ふぅ、とんでもない事になってしまった。
何でゲイルなんかのために俺は動いているんだ……
決勝を不意にして、最後かも知れないリシファさんと会う機会も失ってしまった。
アイツにそれだけの価値があるかは分からない。
それでも俺と似た境遇に、何故か助けてやりたくなったのだ。
朝方、ずっと前の方に大きな街を見つけた。
俺の通っているルートはリバティ国とフォルマップル国の国境沿いを飛んでいる。
前に見える街はリバティ国のタペッタという街のはず。
もしタペッタなら約半分の距離を飛んだことになる。
そして、俺の魔力はもうすぐ無くなる……
降りて徒歩で街に入り、食料の買い出しをする。
その前にラリィに魔力を回復する回復薬を取ってもらい、飲む。
そして、ジェットをスケートのように使い街に近づいた
街の入り口には審査官? みたいな人が居る。
でも、これは初めから知っていたので普通に身分証を見せて通る。
俺の身分証はリバティにある土竜族のガルフさんが保証人だし、一応出身もリバティ国になっている。
ちなみに、サンカルムもプユスタールも街に入る時に審査はない。
ここら辺は治安が悪いからか、審査がある。
フォルマップルの首都ジーンライネも審査があるので、その時は忍び込むつもりだ。
タペッタ
少し古い感じの街並みで閑散としている。
過疎化が進む田舎の街って感じ。
噴水前のベンチに腰を下ろして休憩。
もう少ししたら食事処も開くので、何か食べて買い出しして出発だ。
ポカポカと気持ちいい陽気になってきた……
昨日は夜通し飛んで来たし、その前の日はゲイルを送って、そのまま朝の稽古に合流したから寝てないし、その前はリシファさんのことでモヤモヤして余り寝てないので眠くなってきた……
「リュウ、じゃないか?」
いつか何処かで聞いたような声……
見ると、ギルドの大会で戦ったムジナさんと少女が居た。
「ムジナさん? ……この街で暮らしてるの?」
「やっぱりリュウか。 いや、嫁の両親がこの街に居るのさ。 あっ、この子はウチの3番目の女の子」
10歳くらいの女の子、可愛らしい女の子だ。
「パパァ、この人がお姉ちゃんがファンになっちゃった人でしょ」
この世界でパパって呼ぶのはリリカだけと思ってた……
「ハハハ、そうなんだよ、2番目の子がギルドの大会に来ててね、僕じゃなく君を応援してたんだ」
と言って、少し悔しそうな顔をした。
「だけど、次の個人戦では負けないぞ。 ……出るんだよな?」
「え…… 代表に選ばれたら、そうですね」
考えてなかった……
「今度は勝って、ミコトを取り戻すぞ」
……取ってません。
「ところで何でこんなところにいるの?」
ムジナさんには、『依頼の途中』と話したら、『こんなところまで大変だなぁ』と言われ、その後に昼食を奢ってもらった。
昼食後に買い出しを済ませて出発。
まだ明るいけど今回は時間との勝負でもある。
早々にタペッタの街を後にした。
フォルマップル国入りしてからは、いつもより高く飛ぶ。
この国に居るはずの羅刹種。
情報をまとめると……
寿命は約300年。
500年前に絶滅したと言われている。
人間との交配でハーフ以降を増やした(目的は無詠唱⁈)。
訳が分からないけど分かるのは1つ。
羅刹種はもう寿命に近いはず。
理由は孫世代まで下がってきて、直子のハーフが親世代からも抜けている事。
ゲイルがほぼ孫世代で最後の方だったとのこと。
目的が全く分からないけど、何かを起こそうとしているのは間違いない。
タペッタの街から飛び続けること17時間、前方に大きな街が見えて来た。
大きさやお城があることからしてフォルマップル首都、ジーンライネだろう。
お城がある街は各国それぞれで、ナラサージュは7の都市でお城が建てられているとユーリスに聞いたことがある。
フォルマップルがいくつの都市でお城があるか知らないけど、距離も方角も間違えてなければ、ここがジーンライネ。
まだ7時なので街の全体と、シャーラが住む辺りを高く上がってゲイルが描いた地図と照らし合わせる。
すると……
シャーラは貴族街の西の端っこの、下級貴族が住むエリアに住んでいる。
まぁ、こんだけ高く上がってると分からないけど……
少し高度を下げて確認……
貴族とは言え下級、家も大きくないし庭も狭い。
それでも道だけは広々としている。
ちょっとシャーラが帰って来てるか確認…… いや、それなら帰って来てたらそのまま攫おう。
地図を見ながら更に高度を下げる、地図はシンプル過ぎて分かりづらい。
10分で描け、って急かしたので仕方ないけど。
グルグル回って探していると、空からの気配でハッとする!
ヤバい、人族! っと思って、スピードマックスで逃げる。 ……が、俺より速い⁈
距離は約200メートルはあると思うけど、時間にすれば数秒だ!
完全に俺を捕捉している鳥人族? か、飛べる亜人。
街の外の森に紛れ込んで隠れ、気配を消す……
ほんの数十秒で、バサー、バサーっと音がして、話し声が途切れ途切れ聞こえた。
「人族…… 光が見え……この辺り……」
俺の飛び方はこの世界で俺1人。
俺をハッキリと人族と認識してなくても不思議じゃない。
「クソ…… ソナー……………ザギイなら良かったのに」
ザギイは人の名だろう。
ソナーを持ってて、飛べる…… まさか吸血族⁈
だけど顔を出して見るのは危険だ。
気配を消すのは自然と一体になるイメージ。
敏感な奴なら見つかってしまう……
時間にして数分見回った2人の男、またバサー、バサーっと音がしたので飛び立ったか。
その後も気配を消し続ける…… 虫の声と風の音、時折上からバサー、バサーっと音が聞こえる。
上を見ると、上空から探している2人の男。
この眼で分かったのは、2人の男はガリガリに痩せてることくらい、鳥人族なのか亜人なのかも分からなかった……
まぁいい、ついでにこのまま気配を消す練習でもしてよう。
何時間、気配を消し続けれるか…… 貴方はどう思う?
グガァ〜、スッピィ〜、グガァ〜、スッピィ〜……
「……ちゃん、お兄ちゃん」
ん…… 目を覚ますとラリィが居た。
「お腹空いたよ!」
ハッ、気配を消し過ぎて寝てしまった……
今は! 11時…… 丁度いいじゃん。
「影に飯があるだろ」
「冷たいのヤダの!」
でも、此処では火を使えない。
「今日だけ我慢して、明日の昼飯は焼き魚を食わしてやるから」
「朝は?」
「きょ、今日と明日の朝だけ我慢しよ、ね、可愛いラリィちゃん」
「ムウウ、ラリィにはお兄ちゃんの女たらしスキルは通用しないだのぉ〜!」
と言って、影に戻ったラリィ。
何とか納得してくれたけど、明日の昼に焼き魚と言う名の餌を食わせないとマズいな……
って言うか、俺にそんなスキルはねぇ!
今回は飛ばずに行く。
森を抜けて貴族街の壁の近くまで来ると……
右に守衛所がある……
しばらく様子を見ると、警備員が2人出て来て右と左に別れて歩き出した。
そして俺が潜む場所の前を通り過ぎて、ずっと左の方から来た人と電灯を向け合って確認、そして守衛所へ戻った。
次は何時間後か知らないけど穴は見つけた。
次の機会を待つ。
1時間も待っただろうか、守衛所から見回りが出て来て、さっきと同じように左側から来た人と合流、そして直ぐに戻って行く。
俺は左へ戻って行く人から見えない場所に立ち、守衛所に戻る人だけに注意して、一瞬だけジェットを起動、壁を飛び越えた。
成功? かは分からないけどシャーラの家まではあと少し、何せ下級貴族の住むエリアは西の端っこだ。
ただ道が広く家は小さいので、道を歩くと目立つ。
見回りに見つかったら今の時間だ、確実に不審者と思われる。
ジェットも青白い炎が漏れるし、少しだけど乾いた音もする。
いや…… それでも堂々と道を歩くのが正解だ。
俺の目は暗闇では性能が落ちる……
「ラリィ」
ニュ、っと出て来たラリィに状況を説明する。
「やっぱりラリィが活躍しちゃうだの〜」
っと、ノリノリで引き受けてくれた。
ラリィの目
夜目が効く、吸血族からの遺伝。
俺の目より暗ければ暗いほど性能が良い。
俺は後ろを、ラリィは前に注意して進む。
少し肌寒く感じるようになったこの季節、だけどラリィも俺も寒さにめっぽう強い。
元々、飛べる種は寒さに強く、特に吸血族は夜に行動するので(冬の方が夜が長い)寒さに強い。
俺も飛べる種の子孫なので強いのかも……
そう言えばさっきの奴等、羅刹種の可能性もあるな……
「お兄ちゃん、雨が降ってきたけど楽しいね」
知らない都市の、こんなだだっ広い道を夜中に2人で手を繋いで歩いてる、それだけで子供にとっては記憶に残る思い出なのかも知れない。
ラリィは役に立っているのを凄く喜ぶ。 ……ダンジョンでもそうだった。
そんな事を思いながら進む……
今は1時をとっくに過ぎた…… それでも稀に電気の付いてる家もある。
そんな家の1つがシャーラの住む家だった。
ラリィを影に戻して家の中の気配を探る……
人の気配はある。 ……だけどシャーラという確証はない。
このゲイルの描いた地図では、同じような配置の家が複数あった場合、確実に間違える。
それでもシャーラの顔を知らない俺は、仕掛けるしかない。
コンコンっと小さく、リズムよくドアを叩いた。
シーンとしてるが、気配は近くまで来てる……
仕掛ける。
「俺だ、シャーラ」
気配が大きく動揺してるのが、扉越しに分かる。
「だ、誰?」
女! シャーラの可能性が高くなった。
「俺だ、シャーラ」
「…………… 貴方はゲイルじゃない」
引っかかった! これでほぼシャーラ確定!
「俺はゲイルじゃないよ。 だけどゲイルからアンタに手紙を預かった者だ。 扉の隙間から入れようか?」
探るような気配から、『……ええ』と返事が聞こえた。
手紙を扉の隙間から滑らす。
……中の様子は分からない、だけどシャーラが話しかける。
「ゲイルは…… 何処の国に亡命したの?」
「それは教えられない。 もし俺と一緒にゲイルの元に行くなら、旅の途中で教えよう」
「そ、それじゃあ、原因を教えて。 あの子が急に亡命するなんて信じられないの!」
「手紙はゲイルの字じゃなかった? まぁいい…… ゲイルは大会で失態を晒しまくったと言っておこう。 これも内容は旅の途中で教える。 ……それで行くか行かないか直ぐに決めてくれ」
「い、行きたいけど、私を連れてじゃ直ぐに捕まるわ」
「んな事は心配しなくていい。 捕まるかも知れないけどゲイルに会いたいって言うなら付いて来い、そんな価値があの男に無いなら止めて、直ぐに不審者が居ると通報すればいい。 ……まぁ俺は捕まらないけど」
前にも言ったがシスターなら来ない。
シャーラはどうする?
「行くわ。 あの子に会えるなら…… 何でもする!」
シスター 産まれた時から一緒で、オッパイまで飲まそうとした、と言っていた。
産みの母の妹で、俺と血も繋がっている。
14年の月日を共にする。
シャーラとゲイル 8歳からシャーラと暮らしたとゲイルは言っていた。
現在16歳のゲイル、8年の月日を共にしてる。
シャーラとゲイルに血の繋がりはない。
「あの子に会えるなら、何でもする」 らしい。
ふ〜ん。
そんなに可愛い奴には見えなかったぞ……
「それじゃあ、扉を開けてくれ」
この後にラリィを呼び、シャーラとゲイルの荷物を影に入れた。
シャーラの情報を少し……
シャーラ
羅刹種クォーターの38歳で痩せ型。
スキルは継承してない。
教師をしている。
ー以上、ジロー系美青年リュウ調べー
今はもう3時近い、急がないと……
小雨が降っているのが幸いしたか、さっきと同じ方法で壁まで戻って来た。
更に近くに潜んで壁の向こう側の気配を探る……
また1時間近く待って、壁の向こう側で警備員の足音が聞こえた…… そして戻る足音も確認。
これで警備員は1時間近くは守衛所からは出て来ない。
次の問題は平民街をどう飛ぶか……
高く飛ぶと貴族街からまたさっきの飛べる種が出て来て、シャーラをおぶる俺は逃げられないだろう。
低く飛ぶと平民から丸見え…… いや、この時間だ、そこまでの人には見られないはず。
俺はシャーラをおぶり、ジーンライネの平民街を低く飛んで突っ切った。
その後、しばらくは後ろに気を付けて飛んだけど追っ手は来なかった……
ーーーーー
帰りは海沿いをひたすら帰って来た。
お金はシャーラさんが持っていたけど、主に海の海産物を捕って食べて進んだ。
俺の心が大きく動いたのは、レミアと遊んだ砂浜……
帰る途中に通り過ぎただけだけど、一目でいいからレミアを見たい衝動を抑えるのに必死だった……
やはり俺にとってレミアは唯一無二の"アイドル"、俺だけの"アイドル"なのだ。
ちなみに、一緒に取った鉱石はまだ加工途中。
鉱石の種類が珍しかったことや、その鉱石の加工が簡単ではないことでまだ時間がかかるようだけど、指輪が出来上がったらまたレミアに会いに、指輪を渡しに行きたいと思ってる。
帰って来れたのはシャーラさんを乗せてから8日かかった夜だった。
家に帰ると、ラリィを直ぐに抱きしめるクラルさん…… でも、ラリィはこの旅を結構楽しんでいたのは間違いない。
そして別のところでも抱きしめあってる奴が……
ゲイルとシャーラさんだ。
ゲイルも昨日の朝に着いたと言っていた。
2人共、涙を流してる…… 絆は深そうだ。
取り残された俺はラザノフをチラッと見る……
目を逸らされたので抱きしめ合う気はなさそうだ。
「リサナーラパーティーとジルベッタさんは帰ったの?」
「ああ、一昨日な…… それより見事に攫って来たでござるな」
「雨が降ってくれたり運が良かった。 ラリィも活躍したよ」
「ラリィねぇ、荷物持ったりぃ、遠く見てお兄ちゃんに教える役だったの」
心配そうにラリィを見るクラルさん……
ダンジョンの話は出来ないな。
「リュウ…… 本当にありがとう……」
「気にするな、ただお前と俺の小さな頃の境遇が似てたから、の気まぐれだ」
「リュウ君の小さな頃と無詠唱、聞かせてもらってもいい?」
長い旅だったので、ある程度はフォルマップル国のことをシャーラさんに聞いた。
でも、自分のことは話してない。
「じゃあ、簡単に。 俺は裏の世界のレイモンで産まれた孤児なんだ。 ゲイルと同じく孤児院で育った、14歳までか…… ゲイルと違うのは俺には兄がいること。 何でも出来る頭の良い兄だったよ。 その兄に裏の世界、リーブルに行けって言われて来たんだ。 無詠唱の真相は俺は知らない…… 兄に聞いた話では両親は人間で先祖に羅刹種が入ってるって話だった。 こっちに来て分かったのは俺の魔力の多さから、ほぼ俺は羅刹種の孫って言われてる、ここもゲイルと同じ。 でも、俺の魔力量は90以上だったと思う、どうしてゲイルと違うの?」
最後はシャーラさんに聞いた。
「きゅ、90以上? フ、フォルマップルでも聞いたことない数字…… 考えられるのは、祖母や母親の魔力量が多かった、元になる祖父の羅刹種が豊富な魔力量だった、奇跡的に最高レベルの遺伝を続けた、くらいしか思い浮かばないわ」
なるほど……
シスターの魔力量はショボかった記憶がある。
だから、お姉さんの俺の母もそんなに魔力量はないはず。
俺の爺さんが豊富な魔力量だったのは考えれる。
ん…… 違和感……
「えっと、何で祖父の羅刹種なの? 祖母の羅刹種の可能性だってあるでしょ⁈」
「フォルマップルでもそれは闇に覆われてるの…… でも、一般では女の羅刹種はとっくに絶滅したって言われているし、男の羅刹種だって見た人は居ないの」
「でも、ハーフは居るんでしょ」
「居るけど…… もう結構な高齢よ」
女が生まれにくい種族⁈
女が生まれなかったらそりゃあ絶滅する。
「ハーフの人は男だけ?」
「もちろん女も居るわよ。 ただ女の場合、産める子供の人数が決まっているでしょ」
女からのクォーターは少ないって事か⁈
「羅刹種からの交配は人間だけ?」
「もちろん。 上位亜人のスキルは亜人とでは遺伝されないからね」
確かに…… でも、魔力量は増えるって聞いたことがある。
……って言うか、羅刹種って最低の種族だと思う。
種族が絶滅の危機だからって悪あがきで人間の女を子を産む道具のように扱って……
俺も羅刹種の血が…… い、嫌だぁ〜!
「お兄ちゃん、おばちゃんとゲイルもここに住むだの?」
「ガハハ〜、ラリィは可愛い顔して失礼な子でござるな〜、リュウの影響か? それともリュウの影響か?」
俺、確定じゃん!
「ラリィね、本当によく可愛いって言われるの。 ね、ゲイル」
ダメだこりゃ。
「ゲイルにシャーラさん。 しばらくはこの家に居ていいけど、ひと月くらいで出て行った方がいい。 理由は分かるな、ゲイル?」
「ああ、フォルマップルがリュウを狙って来るかも知れない…… その時、俺達が見つかるかも知れないんだろ」
「そう。 だから、お金が貯まったら出ていった方がいいと思う。 まぁ、そのうち保証人になってくれる人を探すよ」
保証人は貴族の高位の人か平民でも良家の出の人しか出来ない。
「そう言えばラザノフはダメなの?」
「流石に学生じゃあ無理でござるぞ、ガッハハ〜」
何が面白いの? ……まぁ竜族を巻き込むのは申し訳ないな。
「お、お金は持って来たわよ」
「そうだったね。 でもしばらくは安心だから、ゆっくり自分に出来そうなことでも考えるといいよ」
この後、ゲイルは俺の依頼を俺の代わりにこなす仕事をする。
俺はAランクなのでしっかり仕事をすれば、お金は直ぐ貯まる。
ただ、そんな事ばかりは出来ないので、早く保証人になってくれる人を探してあげないと……
そしてその価値がゲイルにある事を、ゲイル自身が示さないといけない……




