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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 大会初日



     第二章  成り上がり


 第七十三話  「大会初日」




 …… パセリの香りと息苦しさで俺は起きた。


 「おっ、ゲイル、やっと目を覚ましたか」


 パセリ…… 風呂に入って来い、と言いたい。


 「ああ…… って、何で俺は寝てたの?」


 記憶がポッカリない……

 

 え〜と、メガネっ子を見つけて話しかけて……


 「大問題になってるぞ。 あの後、何があったか話すよ」


 

 ーー ーー



 ゲイルの会心の右フックが綺麗にリュウとか言う男に入った。 ……と思った。

 だがリュウは何事もなかったように、素早く顔の位置を戻しながら同時にゲイルの側頭部に肘打ちを入れた。

 いきなり殴られてあの動きが出来る体術師を、俺は知らない。

 だが感心してる場合じゃない。


 膝から人形のように倒れるゲイルを見ながら、奴を追い込む!


 「平民が他国の貴族を殴るとはどういう事だ!」


 そう、コイツは平民と俺達は知っているのだ!


 「アホだろ、お前。 いきなり殴ってきやがって…… お前等も外に出ろ!」


 この平民が! っと思っているのは俺だけじゃなくルノパンもだろう。

 腕には自信がある。 ……でも、何となくヤバい気がするのだ。


 「へ、平民が貴族に口答えするとは、それだけでフォルマップルでは死罪だぞ!」

 「あっ? んなの知らね〜よ。 ナラサージュはそんなの自由だ、バカヤロ〜」


 バカヤロ〜だってぇ! クソ平民が!

 でも、ナラサージュとは何て貴族制度の緩い国。 


 「フォルマップルの怖さをお前は知らないのか? ナラサージュよりずっと上だぞ!」

 「お前はやっぱりマヌケ野郎だな。 ナラサージュはフォルマップルより上だっつうの。 ほんっとに、恥ずかしい国め……」


 クゥゥ! 今朝の勉強の順位を言っているのか⁈


 1 コーラン国

 2 ゴールタール国

 3 リズーン国

 4 リバティ国

 5 ホオヒューガ国

 6 ナラサージュ国 ←ここで威張るな!

 7 フォルマップル国   と言いたい。



 「こ、これは国際問題だ! フォルマップルから何らかのペナルティをナラサージュに要求する!」

 「勝手にしろ。 俺は関係ない」


 当事者!


 「お前は当事者だぞ!」

 「俺は平民だから関係ない。 要求するならビッチに要求しろ」

 「ビッチ? 誰だそれ」


 都合よく平民で逃げて、訳の分からない名前を出してけむに巻こうとしてるな。


 「ビ、ビッチかビッチョだ。 ナラサージュの王様の名前くらい覚えとけ、このアホが」


 こ、このクソ平民がぁ〜!

 お前だってうろ覚えな癖に!

 ナラサージュのルールが甘いから、こんな平民が出て来るのだ!

 でも、絶対にコイツを許さ……


 ドゴーンとお腹に衝撃が走り、俺は吹っ飛んだ。

 息の出来なく苦しんでる俺に奴は……

 

 「喧嘩も出来ないのに絡んでくるなよ、クソビッチ」


 それはお前の国の王様の名前! って、蹴りまで入れられて悔し〜い! 



 ーー ーー



 「って事があったんだ」

 「ちょっと待て、パセリは体術代表だろ? それにルノパンはどうしてた?」

 「俺? 俺も頭に1発、こずかれた」


 それでも大人しくしてたのか…… 剣がないとは言え情けない。


 「それで奴はどうした?」

 「メガネっ子と仲良く出掛けてたぜ、チクショー、あんな可愛い笑顔の彼女、俺も欲しいぜ……」


 チクショー!! お、俺の未来の嫁を……


 「アイツ、体術も相当強いらしいぜ。 後からアイツの事を知ってる奴に聞いたら、ギルドの大会で相当活躍したんだってさ。 それとナラサージュにはアイツのパートナーの竜族の男も居るらしい」


 竜族!! ……はマズい。

 ホオヒューガ国の領土自体をフォルマップルが奪わないのは、ホオヒューガ国に里がある、氷竜族が居るからだ。


 「竜族か…… 氷か?」

 「いや、土だ」


 土竜族もマズい…… リバティも隣の国だ。


 「それでもこの事件を上は重く見てる。 ヤスザキにガラガ、デスタロが特に怒ってる。 ……って言うか張り切ってる」


 人のトラブルで功績を上げるのは、フォルマップルの人族は得意だ。

 俺はマズいな…… 下手したら俺は昇級どころか平民にさせられるかも……

 もしそうなったらシャーラ…… 悲しむだろうな。

 


 ヤスザキ  今回の引率の先生の中で一番立場が上で、しかも好戦的でスケベな人間。

 何でも有り、がモットーで、先生の癖に戦い方が汚い。

 何人もの女生徒がヤスザキの毒牙にかかってる。


 ガラガ  3年の体術のフル代表。

 187センチの恵まれた身体に、一部を硬化出来るスキルを持つ中位亜人。


 デスタロ  3年、剣術代表の人間。

 下町で剣術道場を営む"カラス流"の創始者ナッツの息子。

 今大会の活躍次第では準貴族から下級貴族になれると言われており、気合が入ってる。


 

 「とにかくゲイルが起きたら来いってさ」

 「マジか…… 話をするの?」

 「いや、話は俺達がした。 3階に乗り込むって言ってたぞ」


 ここで活躍をしないと、マズいな……



 ヤスザキ先生達と合流して、ナラサージュへ文句を言いに行く。

 剣術代表の2人は木刀を持っている。

 もうほぼ殴り込みと同じだ。


 文句と共に要求することも見つけた、とヤスザキはニヤついていた。



 階段を登った先に居た女に『リュウを呼んで来い』と言った……


 しかし、リュウはまだ帰って来てないらしい……


 クソ、もう11時を過ぎたぞ、俺の嫁と…… 何してるんだ〜!


 「すいません、フォルマップル国の方ですよね。 何か用ですか?」


 小さくて童顔だが生徒じゃない。

 責任者って奴だ。


 「リュウと言う男にウチの生徒が殴られた。 聞けばその生徒は平民と言うではないか。 貴方は先生だよなぁ、どう責任を取る?」

 「その話なら見ていた生徒から聞きました。 そちらの生徒がいきなり殴って来たとのこと。 こちらに非があるとは思いませんわ」


 この女…… 小さいけど太い。


 「ふざけるなぁ!! 貴族が平民に殴られてるんだぞお!」


 3階どころかこの建物全部に響く声、恫喝ってやつだ。


 「……ふぅ、学校内では平民、貴族の隔たりはなく平等です。 つまり悪いのはあなた方の生徒……」


 ドカーンっと、ヤスザキの蹴り。

 向こうの正論を聞かないためのヤスザキの蹴り。

 相変わらず女にも容赦ない。


 「ガハッ、ガァァ……」


 腹を押さえて吐血する小柄な先生……

 女のお腹を蹴るとは、味方とはいえヤスザキのやり方は反吐が出る。


 「ポルカ先生!」


 な…… 何と現れたのは、この世界で最も美しい人。

 これが…… ナラサージュの姫。

 確かに1番って言いたくなるのは分かる、俺の嫁にしたい!


 ザッ、ザッ、っと取り巻き達が姫を囲む。


 「これはどういう事ですか!」


 お姫様の一喝、美しい。


 「どうも何もない、ウチの生徒が其方の平民の生徒に殴られてる。 ……フォルマップルからナラサージュに要求する。 姫の花嫁修行はフォルマップルに決めろ」


 さっき聞いた……

 フォルマップルがナラサージュに姫の花嫁修行に来てくれと要求していたことを。

 

 お、俺がもらいたい!

 この人のためなら俺は死ねる! ……もちろんメガネっ子とルイ先輩のためにも死ねる。


 「何を勝手なことを言っている? 学校内でのことは当事者同士で話し合ってくれ、ユーリス姫は関係ない」


 護衛の1人が言った。

 ここは俺が反論する!


 「そのリュウが居ない。 それにアイツが王様に文句を言えと言っていた。 ユーリス姫か、アンタはビッチ王の娘なんだろう? だったらアンタが話を聞くのが当たり前だ」

 「失礼な…… それこそ国際問題だ。 我が王はビッシュ。 断じてビッチではない!」


 えっ? っと思ってパセリを見ると、パセリも、えっ、って顔だった。


 ヒュッ、と剣を振ったデスタロ。

 バチーンっと護衛の男の手に当たり、男が『あつっ』っと言った。


 デスタロのポイント、+1

 俺のポイント、−1



 ザッ、ザッ、っとユーリス姫に近づくヤスザキ、それを見て動こうとする護衛を俺達が制止する。


 「姫…… これはお願いじゃない、命令ですよ。 何だったら今からにしますか?」


 ヤスザキが今にもキスしようとするくらい姫の顔に近づいてる。

 だけど、ハッキリ思う、お前にその人はもったいない!


 きっとここに居る全員が思っているだろう、理由だってある。

 デスタロの妹の友達はヤスザキに無理矢理乱暴なことをされた。

 ガラガの姉ちゃんもセクハラを受けてたと聞いたことがある。

 背の低いお前にその人はもったいない!

 その点、俺は姫と同じくらい背が高いし、どちらかというと美男美女カップルになれる。


 ペロンっとヤスザキが姫の首元を舐め、お姫様の大きな胸を乱暴に揉んだ!

 止まらないヤスザキが自分のズボンを下げかけた時、『イヤア〜!』っと言う悲鳴と共に階段から現れたやつ…… アイツだ!



 ーーーーー



 凄くムカムカくる……

 

 自分自身、何故リシファさんの誘いを断ったのか理由が分かるからだ。

 あの時の涙を流したユーリスが頭を離れない、それともう1つ。

 俺の気持ちの問題だ。


 2人のことは好きだ。 ……でも、リリカのレベルじゃない。

 カミラさんも同じだけど、カミラさんは大人でその後リョーキが現れたけど、全く後悔がないしあの日に戻りたい…… いや、待て。

 それならリリカと愛し合った日がいいんじゃない?

 ……でも、あの日は最高の幸せと最高の苦しみが同日だ、やっぱりカミラさんの日にする。


 何だかよく分からなくなってしまったが、今の俺はリシファさんに対する申し訳なさと勿体なさとやるせなさで爆発しそうだ。

 

 暗い夜道に、ヒュ〜っと空っ風が吹き抜ける…… 寂しい。

 もし、俺がオーケーしてたら今頃は一緒に風呂に入って…… 止めよう、寂しさが増す。


 唯一の救いは明日が俺の競技だったので、リシファさんが納得してくれたこと。

 自分の家に帰ると言うリシファさんを飛んで家の近くまで送ったこと。

 その時、リシファさんからキスされた…… リシファさんは涙を流してたけど……


 もう会えない気しかしない。

 もしあの旅行に行ってなかったら、もし前回会いに来た時にリシファさんに会えていたら、今日は変わってただろう……


 歩きながら思う…… 誰かにこのやるせない気持ちを八つ当たりしたい、と。



 宿舎に戻って階段を上がって行くと女の悲鳴が聞こえた。

 もう11時をとっくに過ぎている。 ……この時間でも起きてる奴が居るのか、と思う。


 俺達は朝が早いから用がない時は寝ている。

 特にラザノフは寝付きがいい。

 ラリィは昼間も寝るため、寝ては起きてオモチャをいじりまた寝る、というパターン。



 などと軽く考えて階段を登るけど、階段に人が溢れてそれが3階に近づくに連れ多くなっている。

 この時間に3階では何が起こっているんだ?


 そう、3階は修羅場になっていた。


 玄関前から見ている生徒は俺を見つけて嬉しそう…… 俺に何かを期待してる⁈


 修羅場に足を踏み入れるとユーリスが男に覆い被されるような格好、その下にはポルカ先生が脂汗をかきながら蹲っている。


 男の手はユーリスの胸辺りにあり、男のズボンは少し下がっている……

 そしてユーリスが俺を見る目が悲し過ぎる……


 「やっと来たかリュウ、お前のせいでユーリス姫がフォルマップルに嫁入りすることが決まったぞ」

 「オルキン、何やってんの?」


 昼間のクソガキは無視しする。


 「お前が貴族に手を出すから……」


 ふ〜ん。

 お前は護衛失格だ、と言いたい。


 「おい! それ貸せ」


 昼間の3人のうちの1人は木刀を持っている。


 「バ、バカ言うな、貸すかバカ!」

 「……俺は機嫌がもの凄く悪い、貸せ!」


 バッ、っと上段に構えようとする木刀を掴み捻る。

 俺の指力はラザノフ以上、あっさり奪い取ると同時にミゾオチに膝蹴りを喰らわす。

 そのまま下がりながら頭部へ二撃!

 そして回転しながら下から突き上げるように、動きかけた隣の男の股間を破壊した。 ……と言っても金の玉は破壊してないのでまだ使えるよ、良かったね。

 流れるような動作、2秒くらい⁈


 股間を破壊した奴の悲鳴がウザい。

 木刀を取られた奴は夢の中。



 「お、お前、フォルマップルに楯突いてどうなるか分かるのか?」

 「んなのいいからユーリスから離れろ。 他の国のお姫様を堂々と辱めているんだ、お前の未来は笑えるぞ」

 「先生に対してのその態度、ナラサージュが如何に低レベルか分かるな」

 「アホかお前、フォルマップルより上だったろ。 先生気取るなら覚えとけよ」

 「クッ、この平民…… この女はもうフォルマップル、俺のもの! 早くその木刀を……」


 と、喋ってる途中の男の体は宙に浮いた。

 

 そう、お前は俺とラザノフの部屋の前でユーリスを辱めようとしていたのだ。


 ノソ〜っと現れたラザノフ、男の首元を片手で軽く持っている。

 小っちゃい男とはいえ、何という怪力、そして存在感!


 「ラリィがうるさいから起きてみれば、何の騒ぎでござるか、リュウ!」

 「俺も今来たとこ。 ソイツ……」


 っと言いかけたところで、やっぱり苦しそうなポルカ先生が気になる。


 「サルー! ラリィに回復薬をもらってポルカ先生に飲ませてくれ」


 扉から顔だけ出してるサルーに頼む。



 コイツらは残り4人。

 ラザノフに捕まっている奴に昼間いきなり殴りかかって来た奴、そして木刀を持ってる奴にガタイのいい奴。


 不思議とラザノフに持ち上げられてる男を助けようとはしない。



 ソロ〜っと近づいて来たのはラノーン教頭⁈。

 だけど修羅場の中には入れない、遠くから声をかける。


 「も、もう止めるんだ」


 それと同時に、修羅場の外に居た2人の先生も同じようなことを言った。

 この人達の顔は知らないからフォルマップルの先生?


 それにしても落ち着いた頃を見計らって言うとは情けない。

 ラースビーさんとマインさんに言えば確実にポルカ先生以外はクビだろう。


 「ダメだ。 他の国のお姫様を公開で辱めようとしたコイツらの罪はデカい、そうだろう? フォルマップルの先生」


 ウグっと口ごもるフォルマップルの先生、階段にはゴールタールの先生が他の生徒が巻き込まれないよう近づけないようにしてる。


 「違う、ソイツは平民だ! 平民の言うことなんて信じるな! ええ〜い、何をやってるゲイル、ガラガ、デスタロ、早く俺を助けろ!」


 しかし、誰も動かず……



 ここでまた違う動きがある……


 「すいません、私はこの国で教員をしているラムザクールと申します。 先程から聞いた話が本当なら、許せないのは最もなこと。 しかし、今は我が国での大会中、どうにか落とし所を模索してはもらえないでしょうか?」


 それは願ったり叶ったりってやつ。

 公開処刑して、二度とナラサージュに手を出させなくしてやる。


 「いいよ、コイツらと真剣勝負で。 見届け人は先生達全員でいいんじゃない。 なっ、ラザノフ、面白そうだろ」

 「ウヒョヒョ〜、だからトラブルメーカーのリュウの側は楽しいでござるよぉ〜」


 寝てた癖に……


 「お前等は俺かラザノフを選べ。 ……まぁ、斬り刻まれるか、殴り殺されるかの違いだ。 だけどラザノフ、ソイツは俺がやる」


 と、ラザノフが捕まえている男を見る。

 ……しかし、さっきの先生が口を挟む。


 「ちょ、ちょっと待って。 し、真剣勝負は不味いな〜、それ許したらゴールタールの大会中に"殺傷事件"って有名になっちゃうよ〜。 木刀で殺しは無し、これで行こうよ〜、ね」


 物腰が柔らかい先生だなぁ……

 ちょっと調子が狂う。


 「分かった。 フォルマップルの後から来た先生、それに後ろで見てるフォルマップルの生徒。 ……当然、お前等も参加するんだろ」

 「い、いや、参加はしない。 だいたい知らなかったんだ…… み、皆んなもそうだよな」

 「知らなかったで済む問題じゃない。 ……だけど俺は女には優しい。 ここに居るフォルマップルの男は全員俺と試合をしてもらう」


 ここで見てるのは何等かの代表。

 きっと腕に自信はあるだろう。



 ゲイルは思う。

 確かにさっきの剣術の腕は凄かった。 

 でも、どんだけ自信があれば、この人数相手に勝てる気でいれるのだろう?



 「そ、そんな! ほ、本当に知らなかったんだ!」


 フォルマップル先生…… 本当か?


 「それでも止めなかった罪はある。 少しだけ手加減してやるから安心しろ」


 後ろにいる生徒は誰もピクリとも動かない。

 ゴールタールの生徒やナラサージュの生徒も居るけど、このフロアは緊張に包まれている。


 「これは正式な試合だ。 後からフォルマップルに楯突いたとか難癖はつけるなよ。 まぁ、言えない状態にはするけど……」



 ラザノフは思う。

 こうなった時のリュウは怖い。

 悪リュウの一歩手前だ。


 「拙者がおススメでござるぞ〜、その弱そうな男、どうだ、拙者とやるか?」

 「よ、弱そうだとぉ、クソッ、俺は個人的にリュウに恨みがある。 とにかくモテるコイツが許せねぇ」


 コイツ…… 友達2人がやられてるのに、ヤキモチが優先になるとは…… 最低だな。


 「俺もリュウにする」

 「俺もだ……」


 まぁ、ラザノフは強そうだからな。

 2メートルの身長に圧倒的な体格、側に居ると大型肉食動物に喰われそうな感覚。

 そりゃあ、俺を選ぶだろ。


 「ダメだ、リュウはもう2人決まってる。 お前等の相手は拙者でござる」


 ご、強引に持ってった〜!


 「決まりだな。 ……じゃあ、チャチャっとやって寝ようぜ」

 「ちょっと待って〜、出来れば大会最後の日にして欲しいな〜。 ほら、皆んな参加する競技があるし」

 「その理屈だと競技のない、あのクソ野郎とフォルマップルの先生達は今でいいんだな」

 「し、仕方ない……」



 という事で外に出る。


 誰も彼もがこの夜遅くに、先生の静止を振り切って俺とクソ野郎との試合を見ようとしている。



 それにしてもさっきのユーリス……

 可愛かった……


 外へ向かう俺の手を取り、俺は停められた。

 振り向くと瞳いっぱいに涙を溜めたユーリス。

 軽く微笑むと、我慢をしていたユーリスの瞳から涙が溢れ出た。

 それでも声を出さないようにするユーリスの頭を軽く撫ぜて踵を返した。

 見てる人が多いので、抱きしめることなど出来ない。



 外。


 宿舎の横の広いスペースを使う。

 

 さっきのゴールタールの先生が大きな円を描き、生徒達に入らないよう注意する。



 まず最初は、俺対フォルマップルのエロ教師、ヤスザキ。


 お互い中央に寄り、ゴールタールの先生が話す。


 「殺しはお互いなしだからね。 フー、それでは、始め!」



 ラザノフは思う、リュウの背が高くなっていると。

 出会った時は、土竜族の女と同じくらいしかなかったけど、今は180はある。

 ナチュラルな筋肉は柔軟性を感じさせる。


 今もそう、「始め」と同時に掴んでいた砂をリュウに投げる相手。

 それを流れるように柔らかく、横っ飛びで避ける、リュウ。

 そして、もう一方の手から放たれた砂を、木刀の鎬の部分を使い風圧で砂を消し飛ばす。

 相変わらず美しく鋭い剣筋。

 そのままの流れでクルリと回り相手に近づいて、ビュッと見えないひと振り。

 ビッィシィ! という音と、一瞬だけ奴の目元が二重にブレてピピッと宿舎の壁に血が付いた。

 両目を奪われた悲鳴をあげる間もなく、リュウの二刀目!

 切先でピンポイントに金の玉を潰す一刀。


 

 見惚れるほどの美しい動きと、真逆の恐ろしい残虐さ。

 僅か二撃で勝負あり!



 自業自得とは言え酷い代償を払ったな……

 この男のこの先の人生は、視界を奪われ男としての喜びも奪われた。

 拙者なら死にたくなる……



 ラザノフが、ガッと高回復薬をクソ野郎の口に突っ込む。

 仰向けで、目から大量の血を流して下半身が痙攣しているクソ野郎。

 だけど高回復薬が効いてきたのか、やがて痙攣が止まり、そして目からの血も止まった、しかし気絶からは覚めない。


 いくら高回復薬を飲んでも、完全に破壊した部位の再生は出来ないだろう。



 「リュウ、放っておいたら死んでたぞ」

 「いや、1時間は生きれたはずだ。 それより次! フォルマップルの先生2人、同時でいいぞ」


 え、え〜と、殺し無しのルールだけど、1時間生きれたら有りなの? ……ござ〜る。



 ザッ、っと前に出て正座をするフォルマップルの先生2人。

 だけど、リュウからは遠く、しかもゴールタールの先生の近くを配置している。


 「た、頼む、許してくれ! 俺達までやられたら引率が居なくなる、それに明日の競技の審判も居なくなる、頼む…… 止めるべきだったけど怖かったんだ……」


 ラザノフは思う。

 いい配置だ。

 もしダメとリュウに言われても、物腰が柔らかいゴールタールの先生が助け舟を出すだろう。


 「どうする、オルキン? お前が決めろ」



 ゲイルは思う。

 姫の護衛という事は上級貴族、しかも3年。

 対するリュウは平民の1年……

 ナラサージュの貴族制度は崩壊してる。



 「止めなかっただけだ、もう追い込むのは得策じゃない」

 「ポルカ先生が蹴られてるんだぞ」

 「……蹴った男は、お前が"笑える未来"にしただろう」


 あと被害者は……


 「ユーリス姫〜、どうする?」


 ポ〜っと見てるユーリス、大丈夫か?


 「す、好き」


 ハ、ハァ?


 「い、いや違う、好き…… にして下さい。 あっ、オ、オルキンの意見がいいと思います」


 こんな時までお花畑かよ……

 聞いた俺が間違いだな。



 「ふぅ、だったら俺はアンタ等には何もしない」


 倒れてる同僚を見ながらホッとする2人の先生。

 そして、ハッとして話しだす。


 「あと、見てた生徒も助けてくれ…… いや、助けてください。 アイツ等も怖かっただけなんだ……」


 まぁ、流れ的にはそうなるよな……

 ぶっちゃけ、野次馬ってだけだし……


 「ああ、分かった。 けど俺は魔術のフル代表だ…… 最後のパーティー戦、もしフォルマップルと当たったら……」


 ゆっくり歩いて倒れてるクソ野郎の前に来る。

 そして木刀でコンコンとクソ野郎の額を叩きながら……


 「容赦はしない……」



 ラザノフは思う。

 リュウは追い込む時はとことん追い込む。

 だけど、後ろから刺されても知らんぞ……


 しかし、この追い込みが羅刹種の秘密を少しだけ解いてくれる事になる……

 

 

 ーーーーー



 ドヨ〜ンと淀んだ空気の部屋。


 回復薬を飲んで横になっているパセリとルノパンも起きている。

 そしてガラガ先輩とデスタロ先輩、それに槍術代表のジャンカ先輩も加わって作戦会議をする。



 「ヤ、ヤスザキは大丈夫なのか?」


 あと1時間で御臨終だった男…… 元気な姿が懐かしい。


 「知らね、明日病院に連れてくって言ってたぜ」


 知ってるじゃん!

 でも、この時間じゃ仕方ないな……

 

 「今日が山場だな、やな先生だったけど…… それでも、生徒思いだった?」


 何で質問系で終わる!


 「いや、全く。 やな先生だったよ」


 相当、皆んなに嫌われてたな……



 「代表戦、奴等と当たるのか?」


 ガラガ先輩が俺達を現実に戻す。

 

 「前回優勝のリズーンがシードで2回戦から。 そして2位だった我が国は、ビリだった国と戦う」

 

 ビリ…… 多分、ホオヒューガかナラサージュ。


 「ビ、ビリは何処の国だ?」

 「さっき先生に聞いたら…… ナラサージュだった」


 な、何をやってるんだ先輩達!

 せめて3位なら当たらなかったのに……


 「しょ、初戦……」


 初戦以外なら奴等とのパーティー戦を回避することが出来た。

 不本意だけど俺達がワザと1回戦か2回戦、奴等とあたる前に負ければいいだけの話だったのだ。

 しかし現実は初戦、更に重い空気になった部屋で、少し部外者のジャンカ先輩が聞く。


 「デスタロに聞く、リュウとかいう奴の剣術の腕はどの程度だ?」


 だけど俺は思う、アイツは魔術のフル代表だ。


 「分からん、全く見えなかった……」


 確かに剣を振る瞬間までは見えていた。

 だけど何故かもう、剣はフォロースルーになっているのだ……


 「し、仕方ない。 俺だってパセリとルノパンがやられた時に動こうとした…… だけど剣を持ったアイツに隙はなかったんだ」


 ガラガ先輩…… でも先輩の相手は竜族の男。


 「竜族の男はどう思います?」

 「片手で子猫を持つようにヤスザキを持っていた。 上位亜人でも竜族は…… 特別なんだ……」


 確かに体格がヤバい。

 2メートルの体長に破裂しそうな上半身、やたら太くて長い腕……


 「こ、殺す気でやろう! こっちもやられるかも知れないけど、1対1じゃなければ何とかなる」


 デスタロ先輩が言った……


 「そ、それじゃ、ジャンカ先輩は俺とリュウの相手をして下さい」

 「それはダメだ、ジャンカは俺達と竜族の相手をする!」

 「そ、そうだ、俺達が竜族を倒したら助っ人に行く。 それまで頑張れ」


 ひ、他人事……


 

 それでも1年坊主の俺は何も言えなかった……

 シャーラ……



 ーーーーー



 コンコンっとドアを叩く音がしたので開ける……

 立っているユーリスの目が赤い。


 「大丈夫? 寝れた?」

 「ふふ、余り寝れなかった、リュウは?」


 サルーはまだ寝てる。


 「寝れたよ、行こうか」


 今日も朝の稽古。

 スープが好評だったので、昨日と同じスケジュールをこなす。



 今日はいよいよ大会初日、大会前に色々ありすぎて大変だったけど、俺は結果を出さないと学校をクビになる。


 大会初日はそれぞれ皆んな出番がある。

 寝不足のユーリスの試合やラザノフの試合も見たいけど、同時刻に魔術の試合もあるから見れない。


 「リュウ、私は勝つよ。 ……あの〜、もし寝不足なのに今日勝てたら、卒業旅行も一緒に行って下さい。 あ、でも寝不足だから負けちゃうかも……」


 寝不足押ししてるな……


 「別にいいけどいつ?」

 「まだ先、2月頃」


 寒い時期の温泉か、勝てなくても行きたい。

 

 「まぁ、寝不足でも1日目、負けるなよ、ユーリス」

 「はい、師匠。 私は勝ってリュウに必ずリセットしてもらうの!」


 リセット? 良く分からないけど凄い決意だ。


 てな感じで軽く約束した。




 魔術競技


 グランドで各国1年から3年まで男女全員集まってルール説明から聞く。


 ポルカ先生が説明する。


 「今から呼ばれた人は前に出て、スタートの合図が聞こえたらこのラインを越えないように詠唱して、あそこにある箱、3つのうちどれでもいいから破壊して下さい。 ルールが分からない人、居る?  ……それでは名前を呼びます、ナラサージュのリュウ君、リズーンのポンパさん……」


 い、いきなり1発目で呼ばれた……


 それにしてもフォルマップルの昨日の奴……

 魔術のフル代表だったのか。

 思いっきり俺を意識してるな……



 ーゲイル視点ー


 よし、俺より先にリュウが出る。

 剣術が強いのは分かった…… た、体術も強かったな。

 だけど魔術なら絶対負けない、しかも余裕で。

 でもどの程度出来るかはアイツの後ろで見てればいい。

 詠唱スピードや威力など、分かることも多い……



 それにしてもリバティの1年生の女の子…… 可愛いな、名前はスミレスカ、きっと貴族だろう。

 あとで声かけよ〜と。



 7人が横並びでリュウは端っこ。

 この並びは3人目と5人目がポイントになる。 ……と言っても詠唱スピードがそれぞれ違うので、それほどの有利不利はない。

 やっぱり有利は詠唱スピード。



 スタートの合図と共にリュウが何か詠唱を始めるが、俺の中の魔力は動かない。

 しかし次の瞬間、グッと変な動きを見せた俺の中の魔力。

 複雑で高出力の魔力、こんな魔術を俺は知らない!

 でけど俺は無詠唱、コビーしてやる!

 やがて魔力は動かなくなったけど…… やたら早い。

 

 リュウが何かを箱に向かい投げた。

 ドッカ〜ンと爆発が起きて、爆風が皆んなを襲った。

 俺も耐えきれずに吹っ飛ばされる時、フとスミレスカを助けたいと思った。

 俺って優しいな〜っと、スミレスカにアピールしたい気持ちのまま、俺は吹っ飛んだ。


 もう大会どころじゃない。

 誰もが数メートルは吹っ飛ばされてる。


 ハッ、俺のスミレスカは⁈

 スミレスカは吹っ飛ばされていなかった……


 リュウが蹲るスミレスカを支えてる⁈


 そう、とっさにリュウがスミレスカを支えたのだ。

 スミレスカのリュウを見る目が思いっきりハートだ。

 全員が吹っ飛ばされる中で、もっと言えば可愛い子よりブスが多い中で、何で1番可愛い子をチョイスする!


 やっぱりコイツは…… 大っ嫌いだ〜!



 

 ふぅ、マズったな……

 考えて見れば50メートル先の岩場を消し飛ぶ威力だ。

 こうなってもおかしくなかった……

 

 「大丈夫?」


 誰かを助けなきゃ、っと思った時に、1番華奢なこの子が危ないと思った。


 「は、はい。 あ、いいえ、もう少し……」


 頭が1番危ないので、俺の胸と腕でカバーしてある。

 その腕にがっしりしがみついている華奢な女の子。


 しばらく待つと、『痛え、何なんだよ〜』とか言いながら皆んな起きてきた。


 「もう大丈夫?」

 「はい…… でも、立たせて下さい……」


 立たせてあげると、真っ赤な顔で女の子がお礼を言う。

 

 「リュウ様、ありがとうございます。 わ、私はリバティ国1年生のスミレスカです。 お、お礼にデートして下さい」


 俺の名前を知ってる……

 ン? ……お礼にデートしろ?


 「あっ、ち、違います、違います。 お礼に夕食を奢らせて下さい。 ……今日、ダメ?」

 「ちょっとリュウ君、どういう事! しかも皆んながパニックになってるのにナンパまでして! ちょっとこっちに来なさい!」


 ナンパはしてません、どちらかと言うとされてたのです。

 でも、ちょっと助かった。



 俺も含めた先生達による協議の結果。


 1回戦の合格者は全ての箱を破壊した俺1人。

 ただし、虎鉄改は使用禁止となった。




 ーゲイル視点ー


 あの野郎…… 俺が先に目を付けてたメガネっ子にスミレスカまで持っていきやがって!

 ゆ、許せん!


 だけど俺は一度、皆んなの前で気絶させられてるし恐ろしいクソ男のヤスザキが圧倒されてるのを見てる。

 剣術、槍術、体術と勝てる気はしない。

 ただ、魔術は別だ。 

 確かに奴の魔術は凄かった、が、もし俺がコピったらどうだ? 奴は驚き自信を失くすことだろう。


 

 俺のプラン


 コピーした魔術を発動(スミレスカの位置は確認済み)。

 投げると同時にスミレスカに抱きつく。

(確認作業)どさくさに紛れて色々と触る。

 スミレスカを立たせる時に見つめ合い、長めの本格的なキスをする。

 悔しがるリュウの方を見て、軽くニヤける。


 ふぅ〜、完璧だぜ〜、俺の勝ちだ!


 

 「……ませんか? 失格になりますよ、ゲイル君。 ゲイル君居ませんか? 失格にな……」

 「居ます、居ま〜す」

 「聞こえなかったの? 早く並んで」


 危ねえ〜。

 プランを考えてたら失格になるところだった。

 1回戦なんかで失格じゃ、完全に平民へ降格処分になっちゃうよ。

 何と言っても俺は、フォルマップルの魔術フル代表。


 スタートと共に適当に詠唱する。


 「メガネっ子が良かったのにバカヤロ〜、スミレスカもいいけど断然姫がいい、出来れば4人でグフフのフ……」


 ダ、ダメだ、集中出来ない!


 口だけパクパクして体内に集中する。

 すると…… 手に小さな球体が……

 だけど、さっきのリュウのやつより色が透けている。

 まぁいい、再現は成功してる。 っと思ったところでドーンと端っこの箱が破壊された。


 早い! っと見ると、あの子はリズーンのフル代表!

 カエル似の、まあまあ可愛いに分類してた子だ。


 まぁ俺も投げるだけ。


 ブンっと投げてダッシュ!

 スミレスカは目の前、爆発しろ! っと思っても爆発しない。

 スミレスカの前で待ち構える、スミレスカの唇、お尻、お胸様をチェック、グヘヘ鼻血が出そう。

 でも…… なかなか爆発しないな〜。


 「な、何ですか貴方は? いやらしい目で…… 気持ち悪い」


 何ぃ! 未来の嫁の癖に生意気な。

 でも、リバティ国はウチより上……


 でも、何で不発かな〜? っとスタートラインに戻る途中、ドーンと2個目の箱が破壊された。

 これも結構早い! 見るとナラサージュの昨日居た小っちゃいサルだった。


 でも俺は無詠唱、直ぐに魔術は作れる!


 ……集中して球体を作って投げる!

 今回はスミレスカの方には行けない。

 負けれないのだ!


 だけど…… 不発。

 何故? 分からないけど箱はもう1つしかない。

 リュウにこだわって……


 ドン、ドドーン、ドンっと一気に皆んなの魔術が発動して箱に当たる。

 

 「ランザマイノール!」

 俺も直ぐに魔術を発動、そしてドーンと箱に当たる。


 「止め〜! 勝負あり。 コーラン国2年、スラッジさんの魔術が箱を破壊しました」


 え…… 平民…… シャーラ……


 「ちょっと待て! 今のは最後に破壊したんだ、それは俺だ〜!」


 シ〜ンと静まる競技場。

 でも誰もが俺に軽蔑の眼差し……


 「さぁ2回戦に行くわよ。 次は4人で2つの箱を破壊してもらいます。 ナラサージュ国、リュウ君。 リズーン国、ハルメルさん……」


 ガ、ガン無視された……

 考えろ! 平民にならない方法はまだあるはずだ。


 あった……

 フォルマップルでこそ通用する方法。


 それは…… 敵討ち!



 2回戦が始まり、一斉に詠唱が始まる。

 俺はとりあえずリュウの後ろに忍び、今度こそあの魔術をコピーする。

 そしてリュウがあの魔術を投げて爆発する瞬間、リュウに近づき暗殺する。

 その後、誰もがさっきのようにパニックになり、なるべくリュウから離れた俺が最後まで知らん顔をすればいい。


 しかし……

 リュウが作ってる魔術はアイスアロー、2回戦で下級魔術とはあり得ない。

 それでも流石のスピードでアイスアローを作ったリュウが箱を狙う。

 ガンッ、っと当たったけどノー破壊判定。

 だけど下級でも凄い威力! コイツは何者?


 ドカーンっとリュウが狙ってた箱をリズーンのカエルちゃんが壊した!

 壊れ方からして、リュウの魔術でヒビが入っていたか。

 ざんまぁ〜みろ、ハハハ〜、おリュウ。


 喜ぶのも束の間、リュウのアイスアロー!

 さっきより詠唱が早い! 

 どんだけ早口なんだ! ……そう言えばアイツは口喧嘩も強かったな。

 ドカーンっと当たったけどノー破壊判定!

 しかし、その後、バンっと威力なく当たった魔術でストップがかかる。


 「勝負あり。 準決勝進出はリズーン国、ハルメルさん。 コーラン国、ラソーダ君」


 ヨシ!

 暗殺は出来なかったけど、奴にとっては最高に悔しい負け。

 ……でも、何故あの魔術を使わなかったのか⁈


 ちなみに俺の平民回避作戦は、もう1つだけある。


 それまでは、大人しくしているさ……




 負けた……


 そんな悔しさなど感じさせないのは、ゾロゾロ付いてくる女の子達……

 もう貴族も平民もない、誰もがリュウ様は、リュウ様は…… と質問してくる。


 「リュウ様はどんな女の子が好みですか?」


 ほら、ユーリスと同じお花畑……


 「あのさ、何で俺に付いてくるの?」

 「わ、私、昨日見てました…… リシファさんの居ない今、私だってチャンスを掴みたいのです!」


 え〜と、質問に答えて欲しいんですけど……


 でも、この子はゴールタールの子。

 あの宿舎に泊まっている人の間では、リシファさんと俺との仲は恋人と思われている。

 まぁ、昨日は恋人だったけど。


 「私も見てました。 もう凄くて寝れませんでしたよ…… あの…… 亡命してリュウ様を求める女の子って、どう思いますか?」


 この子はフォルマップルの、最初に会った時に嫁にしろって言ってた子。

 地味目な顔立ちも飽きのこなそうな美人だ。


 「昨日見てたって言うけど、やられたのは君の恩師でしょ。 それなのに亡命して俺を求めるの?」

 「あの先生を恩師と思う生徒は居ないと思います。 初めから最後まで、私は私のリュウ様を応援してました、キャ」


 してました、キャじゃなくて、いつ俺は君のものになった⁈


 ハァ、どうせ負けたから学校はクビだけど。


 それに、流石にフォルマップルがこのままの訳がない。

 

 亡命を考えるのは、むしろ俺。

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