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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 嫁探し



     第二章  成り上がり


 第七十二話   「嫁探し」




 旅行2日目。


 今日はお昼頃から出掛けて、川下りのボートに乗って下流にある大きな温泉街まで行く。

 その後、夜にお祭りがあるので見に行く。


 お祭りはボッチャという牛のような動物に追いかけられるのを楽しむ祭り。

 前世で何処かの国の牛追い祭りと同じと思うけど、参加したことはないので面白いかどうかは分からない。


 今回はラースビーさんとマインさんも一緒に行く。



 お昼頃になり出発。

 馬車で昨日も歩いた道のりを、少し登った先に船乗り場はあった。


 渓谷を見ながらゆっくり進む船、たまにスピードが上がって船がふらつくけど怖くはない。


 「ふふ、リュウも余裕そうね」


 ユーリスが話しかける。


 「私も余裕。 ……昨日は怖かったけど」


 ジェットのことか…… でも、飛び込んでの降りながらのジェットはスピードが乗るから怖いはず、しかもユーリスは初ジェットだ。


 「リュウ君、その飛ぶのも魔術なんでしょう?」

 「そう。 小さな頃にふざけてやったら出来た」

 「ふふ、そんな人が魔術代表なら、当然優勝ね」

 「なんか箱を破壊するって聞いたけど?」


 結構休んでるからか、詳しくルールを聞いてない。


 「うん、私達の時と同じなら、各国ランダムで1人づつ選ばれて20メートル先の頑丈な箱を破壊すればいいみたい」

 「え〜と、各国1人づつって競争でもするの?」

 「私達の時代は3つの箱があって、先に箱を壊した人から合格で、残った人は失格になってたよ」


 つまり、4人が失格になるってことか……


 「何か、アドバイスある?」

 「ふふ、リュウ君なら大丈夫。 でも、強いて言うなら下級魔術じゃ箱は壊れないわよ」


 確かに20メートルも離れた頑丈な箱は、ファイヤーボールくらいじゃ壊れなそう。


 ルールが同じなら、魔術の威力と詠唱のスピード、それに正確性も必要か。

 まぁ俺の虎鉄改は驚くほどの威力なので、正確に当てなくても吹っ飛び破壊するだろう。


 その間にも船はどんどんと下り、賑やかな温泉街に入った。


 ここからは少し温泉に入り、昼食を食べて夕方までゆっくりする予定。

 当然、しっかりした温泉宿の大きな部屋を取ってある。


 先に部屋での食事を楽しんだ後に、温泉に入る。


 「どうしようか? 私達が先に入っていい?」


 ラースビーさんが俺に聞く。


 「お風呂だよね、男と女が別じゃないの?」

 「一応、家族風呂の1番大きな湯船を取ったけど……」


 家族風呂か……


 「だったらさぁ、リュ、リュウも一緒に入らない?」

 「入る!」


 ハッ、心の声が…… 聞こえてないよな……

 それにしても俺の心の声…… 即答だったな。


 「ダメです! 私達が居る以上、それは許しません!」


 は、恥ずかしい…… 心に留めて置けなかったようだ。


 「そ、それじゃ…… 私だけリュウを待ってようかなぁ」


 ユーリス…… 172センチの長身の小顔。

 隣国でも噂になるくらいの美しい18歳。

 剣術で鍛えてるだけあって、メリハリのある細身の身体にボリュームのあるデカい胸。


 「ゴキュリ…… うん、待っ……」

 「リュウ君も何言おうとしているの! ダメに決まっているでしょう」


 ハッ、また心の声が漏れてしまった……

 

 ふぅ〜、珍しくなかなか抜けないスケベモードを切り替えよう。


 「俺は一般の男風呂に入って来るよ」

 「うん、それがいいと思うわよ。 男風呂は凄く大きいみたいだし」


 という事で、残念ながらお風呂は一緒に入れなかった。

 ん…… まだモードを抜けてない⁈



 前世の日本を思い出すような温泉、だけど温泉があるのは何も日本だけではない。

 と言っても、俺は日本しか知らないから日本を思い出すだけかも。

 

 ゆっくり温泉に入ったつもりでも、まだ15分しか経ってなかった……



 

 「……ウ、リュウ」


 ユーリスの声で起きた。

 どうやら寝てしまったようだ。


 「そろそろ夕方だよ。 ……散歩がてら街を見てみない?」


 もう夕方。

 たっぷり寝てたな……


 「うん、行ってみよう」


 

 温泉街。

 とても大きな温泉街とラースビーさんには聞いている。

 夜遅くにボッチャが放たれ、祭りのクライマックスとなる。


 「もう始まっているの?」

 「うん、出店とかは東側に多いけど、歌を歌ったり踊ったりは南側みたいだよ」


 そしてボッチャは北と西で放たれるらしい。



 ユーリスと2人での祭りの参加。

 出店を見たり歌や踊る人を見たりと、いつかリリカと参加した祭りを思い出しながらも寂しい気持ちにならないのは、横に居る笑顔のユーリスのおかげか。


 夜になると、よりノスタルジックになった街並みは何となく昔歩いたような気にさせる。

 なんだか良く分からない甘そうなスィーツを食べているユーリス、幸せそうな笑顔は美しすぎる。


 走り去る子供達の姿を見なくなった頃、この祭りのメイン、ボッチャが放たれる。

 だけど、区画整理されているのでそちらに入らなければ大丈夫。

 一応、護衛の2人からは入らないよう言われてる。


 区画整理された危険ゾーンでボッチャから逃げる人…… その様子を安全ゾーンで見る人々……


 「ふふ、リュウだったらあの吹っ飛ぶ技でボッチャなんか吹っ飛ばしちゃうね」

 

 ボッチャは見た目、牛と猪の中間くらい。

 とても美味しい肉らしい。


 「あのレベルになると、吹っ飛ばしても死なないよ」


 会心のあたりで吹っ飛んだ先が硬い壁だった場合、気絶はするだろう。


 「じゃあ、リュウが持ってるそのナイフを使えば?」


 普段、刀は持ち歩いてないけど(ラリィが居る時は影の中に置いてあり、足でトントンっと叩くと、ニュっと刀が顔を出すようになってる)クナイは持っている。

 もちろん、学校には持っていってない。


 「これはクナイと言って自分で作ったんだよ」

 「ウソ…… リュウは何でも出来るんだね」


 勉強はからっきしダメだけど!


 「ふふ、それがあれば何でも出来そうだね」


 これで何するの?


 この時の物騒なユーリスの発言を、俺は直ぐに忘れてしまう。

 


 昨日とは違い、手を繋ぐわけでも踊りを一緒に踊るわけでもなく時間は過ぎていった。

 でも、確実に俺の中のユーリスは膨らみ、ユーリスの中の俺も膨らんでしまった2日間となった。



 そして次の日、朝明るくなる前に帰路についたユーリス達。

 俺も暗いうちにサンカルムには帰れないだろうけど、帰路についた……

 

 


 時は少しだけ流れ、大会へ向かう船の中。

 

 船は3階建てで1階は機械室、2階は船員室の他に個室がある。

 3階は大部屋になっていて、その部屋で生徒と引率の先生達は雑魚寝する。

 個室はラノーンという先生の中の偉いっぽい人だけ(教頭先生?)使っている。


 男女の仕切りだけあって、仕切り内なら自由に自分の寝るスペースを選べる、もちろん早い者勝ちで。


 昼間は強制的に一般教養の授業、夜は個別で大会へ向けての作戦など先生が教えてくれる。

 今日は俺がポルカ先生から話を聞く順番。

 2階にある小部屋で話す。


 「あら、ラリィちゃんも来たの」

 「ラリィね、お兄ちゃんから離れちゃいけないの」


 それが約束。


 「ふふ、そう、お兄ちゃん優しい?」

 「うん! ……でも、ラザ兄が1番優しいだの」


 ラザノフの甘さはチョコレート以上。


 「ふふ、そうなんだ。 ラリィちゃんはどっちが好きなの?」

 「2人共いっぱい好きだの」


 ラリィは俺達を比べない、とても頭の良い子とも言える。

 でも、俺はたまに嫌われるけど。


 「ふふ、それじゃ始めようか、え〜と、リュウ君はどの魔術を使うつもり?」

 「自分はオリジナル魔術にするつもりだよ」

 「ふふ、やっぱり無詠唱は違うね、ルールは知ってる?」

 「7人で3つの箱を破壊する競技だよね?」

 「そう。 下級魔術では破壊出来な…… いえ、貴方の高出力の魔術なら可能かも」

 「先生、大丈夫。 俺のオリジナル魔術は大会の為に作ったやつだから期待してて」

 「うん、私はいつも貴方に期待してるよ」


 女房?


 「それより先生、その痣はどうしたの?」


 目の横に痣がある。

 化粧で隠そうとしてるけど、この至近距離では隠せない。


 「えっ、うん、ボーっとして壁にぶつかっちゃったの」

 「そう…… 余りボーっとしないでシャキッとしなさい」

 「……はい」


 俺ってもしかしたら先生向き?



 ここでも俺はサインを見逃す……



 ーーーーー



 ゴールタール国、首都フェークス。


 俺はこの街に結構詳しい。

 闘技場近くに建設中だった宿舎が、大会に出る生徒達の泊まる宿になるのも知っている。 ……とは言え流石に広いので、図書館周りと闘技場、飲み屋街と限られてはいる。


 俺達は昼に着いたけど、他の国の生徒ではリバティ国と地元のゴールタール国の生徒だけ、明日のセレモニーまでは他の国の生徒達も着くだろう。


 

 この宿舎は2階建てが2棟、3回建てが1棟で3回建てにはゴールタール国が入っている。

 そして俺達も3階建ての宿舎の、3階に入ることになった。

 全ての階に食堂があり部屋は10部屋ある。

 部屋は3人部屋で、俺は同じクラスのサルーと1年の体術代表のネトと同じ部屋だったけど、ラザノフが現れてネトと部屋を交換した。

 ただ強引に交換したのではなく、ラリィが居るので変わってもらったと言った方がいいか。


 ちなみにゴールタール国は1階、リシファさんはまだ未確認……


 「リュウ君、夕食まで自由時間だけどどうする?」

 「俺は図書館にでも行ってみようかな」

 「リュウが図書館でござるか? 似合わんでござるよ」


 俺も似合わないと思う、でもリシファさんは図書館が似合う。


 「ぼ、僕も行っていい?」

 「じゃあ、拙者も」


 別にリシファさんのことは内緒ではない、なので、3人プラス1で出かけた。



 図書館に着いて直ぐにリシファさんが居ないのが分かった…… それは前回と同じ図書館職員の人が俺の顔を見て『居ないよ〜』と言ってくれたからだ。


 ふぅ、それなら図書館に用はない。



 「リュウ君、この魔術って知ってる?」


 しかし、サルーが本を持ってくる。

 サルーが持ってきた魔術の本には、ボウアローと書いてある。


 「知らない、何それ?」

 「アロー系の中級魔術。 僕は明後日にこの魔術で競技に出るんだ」

 「サルーの種族の言語で?」

 「うん」

 「ちょっと、さわりだけ詠唱してみてよ」

 「じゃあ、ちょっとだけ」


 図書館ではラリィも出て来れるので、ラザノフに何か本を読んでもらってる……


 「ほんじゃらぶすぶすいぬくった〜、うまぐねくともいぬくった〜、あほりゃほりゃほりゃ…… こんな感じだよ」


 何か物騒な詠唱だけど、言語に関係なく俺の魔力も動くことが分かった。

 全部の詠唱を聞けば、中級くらいなら1発で再現出来そう。


 そんな話をしていると、ラザノフとラリィが本を持って話しかけてきた。


 「リュウ、不思議に思ったんだが"床が光って貴方が居た"ってどういう事か分かるでござるか?」

 「あっ、ラザノフ君、それはきっと転移魔法陣のことだよ、失われた技術の……」


 転移魔法陣…… リーブルでは失われているのか……

 まぁ、向こうでも亜人国でしか使われてないけど。


 「ん…… リュウは知ってるでござるか?」

 「流石ラザノフは付き合いが長い分、鋭いね。 知ってるよ、一度乗ったことがある」

 「えっ、リュウ君それって……」


 別に内緒じゃないけど、質問攻めに合うのは嫌だ。


 「まぁ、クラスの皆んなには内緒にしてよ。 でも、こっちでは失われちゃったんだ」

 「どんな乗り心地だったでござるか?」

 「乗り心地はない。 ……ただ一瞬で景色が変わるだけ」


 不思議そうに見つめるサルー。

 でも、俺は一瞬閃いた、兄がリーブルに来る方法を…… ズバリ、転移して来る!



 そんな俺の当たらない予想をしていると、もうラリィも外に出れるくらい暗くなっていた……


 ちなみに、当たらないと言ってもテストの点数は半分は当たっていた。

 俺の予想が70点で実際は7点、2個ある数字の1個は当たっているのだ。

 ……半分転移で来る?



 宿舎まで帰ると、丁度2階に入るもう1校が馬車から降りて来ていた。

 それを見ていたサルーが『フォルマップル……』と呟いた。


 フォルマップルだろうと何だろうと俺は忙しい、リシファさんを探すのだ〜、と思っていると、1階でリシファさんを見つけた。


 俺を見つけ嬉しそうに走り寄るリシファさん……

 


 ーーーーー



 フォルマップルからゴールタールまでは結構長旅だ。

 予定では朝には着くはずだったけど、結局着いたのは暗くなり始めの6時だった。


 「ゲイル、ラッキーだぞ、何とゴールタールとナラサージュが一緒の宿舎」


 コイツは1年の剣術代表のルノーパンノー。

 俺はルノパンと呼んでいるけど、一部ではノーパン男と呼ばれてる。 

 ……でも、確かにどっちもフォルマップルより軍事力が低い国、しかも3校入ってる宿舎に入れるとは本当にラッキーだ。


 2校なら最低2人の嫁候補を見つける。

 もちろん手段は選ばない。 ……気に入ってもらえるも良し、そうじゃなきゃ脅してもいい。

 何と言ってもナラサージュとゴールタールはフォルマップルより下の国だ、多少の無理は効く。



 そしていきなり俺は、心臓の高鳴りを感じる女の子を見つけてしまう……


 憂いの表情で外を見つめるメガネ女子……

 絶対メガネを取っても可愛いと確信出来る顔立ち…… つまり一度で二度美味しいという事。

 そして、ロケット型のお胸様……

 う、ううぅ…… た、堪らん! 声をかけよう。


 宿舎に入ると窓の外を見ていたメガネっ子が俺を見つけて走ってくる⁈


 う、運命の出逢い〜!


 両手を広げてガシッと受け止める。

 初めて会ってコレは…… 1人目の嫁確定! っと思ったけど、俺の腕は思いっきり避けられスルーされた。


 後ろではメガネっ子と背の高い男が抱きしめ合ってる。

 クッ、皆んなが注目して見てるのに2人の世界を作ってやがる……


 「リュウ君! わ、私、リュウ君が来てるって聞いて…… 会いたかったぁ〜!」

 「リシファさん、俺も会いたかった…… けど、皆んな見てるけど大丈夫?」

 「ふふ、いいの。 リュウ君が好きだから」


 クッソ、アンド、ガッデム!

 完全に惚れられてるな…… どんな男だよ。


 チラッと見ると、ドキッとするくらいのいい男。

 俺はリュウとか言うコイツが嫌いだ。

 でもコイツ…… 剣術か体術のフル代表だろう、めちゃ強そうだ。

 でも、魔術ありなら俺の足元にも及ばないはず!


 ガン見してたからか、リュウと目が合った。

 そして奴はやってはいけない事をする…… 俺を見ながら口元を抑えて、プフッと笑ったのだ。

 それに気づいた周りも、俺を笑う……


 改めて言おう、俺はリュウとか言うコイツが大嫌いだ。



 ーーーーー



 夕食は6時から8時までの間に各自食堂で摂る。

 俺達はラリィが居るのでいつも通り7時にした。


 

 食堂。

 数種類の定食の中から好きな定食を選ぶタイプの食事。

 俺はシチュー系の物とパンをチョイスした。


 「お兄ちゃんとラリィは好きな物同じだの。 でもラリィは女たらしじゃないの」


 シチューで口の周りを汚しながらラリィが言った。

 でも俺は言いたい、君は女。


 「確かに1階で可愛い女子と抱きしめ合うとは…… 噂になっても知らんでござるぞ」


 ん、ちょっと嫉妬してる⁈


 「僕もびっくりしたよ、あの女の子ってゴールタールの子だよね?」

 「わ、私もいいかしら、ラザノフ様」


 話の途中で入ってきたのはユーリス!


 「えっ、あ、おお。 ユーリス姫か、いいでござるぞ」


 俺を見ながら席を進めるラザノフ、後ろにはオルキンと取り巻き達。

 きっと学校内での護衛か。


 「さっきの話…… ゴールタールの3年生、リトアーヌ・ディブ・リシファ様。 リュウ様の彼女ですか?」


 怖っ…… っと思ったけど、ユーリスを見るとツツーっと涙が流れていた。

 後ろのオルキン達には見えないけど、ラザノフやサルーは驚いている。


 「違いますよ。 俺がプユスタールで依頼をしていた頃に出会った人、古い友達かな」


 古くはないけど。


 「サンカルムの大会の時も会いに来た人ですね」


 声は震えてない…… けど、涙が止まらない。


 「そうだけど、俺は平民。 向こうもその辺りは分かってる。 ……付き合うことはないですよ」


 ラザノフもサルーも箸を止めて黙り込む。

 ラリィだけがズルズルとシチューをすする……


 「ラザノフ様、私もラザノフ様との朝の稽古、ご一緒させて頂けないでしょうか?」

 「えっ、あ、ああ、いいでござるよ」


 ラザノフがチラッと俺を見ながら答えた。


 「それなら私達も……」


 すかさずオルキン達が言った。


 「なりません。 学校以外はラースビーとマインの仕事、それにラザノフ様とリュウ様以上に強いお方は居ません」


 ユーリスの涙は止まった……


 しかし、俺はどうしたのか?

 さっきもリシファさんに抱きつかれて嬉しい反面、ユーリスにバレる事を恐れた。

 それでも今日1日、リシファさんに会いたくて仕方なかった……


 俺は…… 気の多い男なのだろうか……




 朝、3階の階段前で待ち合わせ。

 先に来たけど待つまでもなくユーリスも来た。

 まだ外は暗い。


 肌寒さを感じるようになったこの季節、それでもまだまだ寒くなる。


 「ハァ、ハァ、お姉ちゃん、何で昨日泣いてたの?」


 最近は結構走れるようになったラリィが、走りながらユーリスに聞いた。


 「お姉ちゃんね、お兄ちゃんのことが大好きなの。 でも、お兄ちゃんは振り向いてくれないから涙が出ちゃった」


 ちょっと居た堪れない気分ッス。


 「ハァ、ハァ、ハァ、ラリィね、お兄ちゃんと結婚するの止めただの。 お兄ちゃんは、ハァ、ハァ、天然の、ハァ、ハァ、ハァ、お兄ちゃん抱っこして」


 天然のパーマとみた。


 

 ラリィを抱えて来たのは市場。

 ここで朝に売られる魚介のスープが絶品なのだ。


 スープは一杯だけ、余り食べ過ぎるとこの後の朝食がもったいない。


 ラザノフは食べたの? と言うくらい早く完食。

 ユーリスもラリィと笑顔で話しながら食べていた……




 セレモニーが始まり、各国のフル代表のみが紹介された。

 ゴールタールでもモニターがあって、俺とラザノフが映されると一際大きな歓声があったのは、サンカルムで行ったギルドの大会を見てた人や聞いた人などが居たからだろう。

 ちなみに今回はプユスタールからは誰も応援に来ていない。 ……って言うか、教えてない。


 セレモニーではこの大会のスケジュールもおさらいするようだけど、俺はスケジュール自体聞いてない。

 ……良かった、学校休んでて。


 明日から各競技が始まり、魔術はその日に優勝者が決まる。 ……つまり、威力や正確性にスピード、更に魔力量もないと優勝出来ない。


 剣術や槍術、体術は、2回戦まで戦い、明後日の午前中に決勝戦。


 フル代表パーティー戦は明後日の午後に1回戦、次の日に準決勝と決勝を行う。



 そして最後は勉強の試験結果。


 フル代表のリシファさんは何と2位になっている。

 このリーブルで2番目に頭の良い子…… でも、俺なんかが好きらしい。



 勉強部門の各国の順位、総合。


 1 コーラン国

 2 ゴールタール国

 3 リズーン国

 4 リバティ国

 5 ホオヒューガ国

 6 ナラサージュ国

 7 フォルマップル国


 と、なった。


 

 セレモニーが終わると自由時間、俺は直ぐに女の子達に囲まれた。

 自分の名前を言って挨拶する子やこの後の予定を聞いてくる子、極め付けはこの会話。


 「あの…… 私を何番目でも良いので貴方のお嫁さんにさせて下さい」


 囲んでる女の子達も驚いている。 ……って言うか、何でリシファさんまで後ろで順番待ちしているの?


 「あの〜、自分は平民ですよ。 君は貴族でしょ」


 囲んでる一部は"えっ"っとざわつく、一部は"やった〜"っと喜ぶ。


 「え…… ウソ…… ごめんなさい……」


 俺はこの子を知ってる…… セレモニー前に3階から降りて来る俺をジッと見ていた子の1人、2階で見てたのでフォルマップルの子か。



 その後も平民の子達(だと思う)の話を適当に受け流してやっとリシファさんが来てくれた。


 「分かっていたけどリュウ君はモテるのね」

 「有名になっちゃったからかな? でももっと早く前に出て来てよ」


 貴方が最後です。


 「それだけじゃないよ。 ……だって大会の事なんか知らない子ばっかりだよ」


 俺だってバカじゃない、何となく分かっていた。

 俺がモテるのは、きっとバカだから。

 女はバカが大好きなのだ。 ……いや待て、俺は何となく気づいたからバカじゃない。

 ……でもモテるからバカだ。


 ん〜ん、どゆこと?



 「何か分からない。 俺の顔面なんて大したことないでしょ⁈」

 「が、顔面⁈ ……ふふ、私は大好き」


 クッ、何でユーリスの顔がチラつ…… って遠くで見てるよ、アイツ。


 「私ね、パパもママも大好き。 ……私はね、親にわがまま言ったのはサンカルムに行った時だけなんだよ。 きっと私は卒業したらコーラン国に行って、コーラン国で…… 誰かと結婚して此処には帰って来ないと思う」


 引っ掛かりがある…… 誰かとは大まかには決まってるのかも。

 裏切ることは出来ない親や貴族としての立場、貴族の取り決めに結婚が絡んでても不思議じゃない。


 「リュウ君の今日を私に下さい」


 決意ある瞳、きっとその後は会えないのだろう。


 「いいよ、何する?」

 

 リシファさんは何も言わずに赤くなった……


 そ、その反応だと勘違いしてしまうッス!


 何とかかんとかリシファ。

 中級貴族。

 156センチで肉づきが良い。

 メガネを外すと更に可愛かった。

 ユーリスもそうだけど、抱きしめると真っ先に胸が当たるので必要以上に抱き寄せてしまう。


 「ふふ、外出届けを出して、外で何か食べましょう」


 が、外食かい!



 一旦、宿舎に戻って外出届けを書く、理由はフェークスのお店でご飯を食べたいから、と。


 「リュウ君、出かけるの?」

 「うん。 ザ、デート」

 「ハハ、リュウ君はモテるもんね。 でも、相手にするのは珍しいよね」 

 

 そうだろうか? ミナリとカナリやセシルさんなど、いつも一緒に居るイメージがある。


 「あの頭の良いメガネっ子でござるな。 確かに不思議な魅力のある女子でござるが……」

 「お姉ちゃんがまた泣くよ!」


 ラリィのひと言……

 

 ユーリスは泣くだろう。 

 でも、リシファさんもこれからいっぱい泣くのだ……


 そして、俺だってやらせない気持ちで心を焦がす、それが身分制度。

 

 

 ーーーーー



 セレモニーから帰って来た俺は、同室のルノパンとパセリの話を何気なく聞いていた。



 パセリ  本名 ガイガダル

 1年体術代表

 何故、パセリと呼ばれているかは知らない。

 一説にはガイガダルのワキの匂いが、パセリの匂いだから、と言われてる。

 


 「3年の人間で1番可愛かったルイ先輩が他国の1年に振られたらしいぞ」


 フォルマップルの人間の女が他国へ嫁ぐチャンスはこの大会くらいだ。

 だから、頑張って代表になるって奴も多い。


 「マジで⁈ どんな風に?」

 「何人目でもいいから嫁にしてくれって言って、俺は平民だから無理って言われたらしい、女達が凄え順番待ちしてたらしいぜ」


 貴族の女が平民と貴族を間違うとは笑える。

 でも、ルイ先輩は俺が狙ってた女、その女を振るとは、ぶっ殺してやりたくなる。


 「ぷふっ、笑えるな、その男。 モテるけど手は出せません〜って感じかよ、流石平民」

 「ナラサージュの1年らしいぜ。 あっ、ゲイルと同じ1年で魔術のフル代表だ」


 !!……アイツだ。 ……だがアイツが平民? 平民が魔術のフル代表?


 しかし、これでゴールタールの勉強2位だったメガネっ子は俺のものだ。

 あの子は貴族!



 「お前達も覚えてる? ゴールタールの勉強フル代表のメガネっ子、あの子って貴族だよな?」

 「ああ、何か分からないけど凄えいいよなぁ、あの子。 中級貴族らしいぜ」

 「俺もいいと思ってた。 俺は亜人だから正妻は無理だけど愛人にして〜もん」


 中級貴族か……



 フォルマップルの人間の上級貴族はガーデンター侯爵だけ。

 元々、フォルマップルの人間は平民か下級貴族しか居ない。 

 それでもガーデンター侯爵が上級になれたのは、ホオヒューガ国の王族を妻に出来たからだ。

 他にも中級なら居る。

 その人達は主要国の上級貴族を妻に娶っている。


 俺がメガネっ子を娶っても、ゴールタール国の中級女では階級は上がらないだろう。

 それでも、あの子は俺のもの。


 「ダメだ、あの子は俺の嫁にする。 既成事実を作るから付き合ってくれ」

 「ああ、ゲイルはあの子と初めて会った瞬間から気に入ってたもんな、だけどお前以外の男は、ほぼナラサージュのお姫様狙いだぜ」


 俺はあの子に一目惚れした⁈

 それにナラサージュの姫って……


 「俺は見たことないけど、お前達は姫様見たの?」

 「取り巻きの真ん中に居るらしくて見づらいって話だ。 だから見てないけど、見た奴の話だと人生で出会った人間で1番美しい、って言ってる」


 1番かどうかは人それぞれの主観の違いで別れる。

 それより俺はメガネっ子に一目惚れが気になる。

 それこそ人生で初めてだ。


 まぁいい、アイツを嫁に出来れば今回の大会は成功とする。

 既成事実は皆んなの前でキスをすればいい…… が、考えるだけでドキドキする。

 本当に一目惚れかもな……


 「既成事実ってどうするの?」

 「ああ、皆んなの前でキスをする」

 「マジか⁈ それだと抵抗されたら無効になるぞ」


 それは分かってる。

 "リシファは嫌がっていた"と言う証言では既成事実とならない。


 「余りに抵抗するようなら、口を塞いだまま気絶させる。 そして部屋まで連れて来るさ」

 「や、やる気だな!」


 俺の高なる下半身は…… 誰にも止められない!



 1階までぞろぞろ下がって来ると、メガネっ子はおあつらえ向きに玄関前で立っていた。

 近づき、話しかける。


 「俺はフォルマップルのゲイル、リシファだよな? 俺はお前を気に入った、フォルマップルに嫁いで来い」


 女は不思議そうな顔、しかし……


 「私はコーラン国へ就職、そしてそこで私を気に入ってくだされた方との婚姻が決まっております。 それでもゲイル様、ありがとうございます」


 ドキューンって来た!

 それでは強引にキスするのみ! って思った時、リシファの瞳が俺の後ろに流れ、ありえない程の美しい笑顔になった。


 一瞬で分かる、奴だ!

 

 背中に集中してリシファ、パセリの視線で奴の気配を探り、俺の後ろに来た時に振り向きざまに右フックをお見舞いする!


 ガシッ! と当たったけど、手応えが…… 薄い⁈

 そして次の瞬間、俺の記憶が途切れた……

 

 

 ーーーーー



 「リュウ君、大丈夫?」


 びっくりした。

 俺は生まれて初めて人の後ろを通っただけなのに殴りかかられた。

 タイミングが良かったので避けることが出来なかったけど、スリッピング・アウェーで流して、返す刀の肘打ちでアイツは気絶した。

 それにしても危ない奴。


 「全然、大丈夫。 まだ早いけど何する?」

 「ふふ、リュウ君と初めて会った場所に行きたいなぁ」


 図書館か……  

 今日はリシファさんの付き人のようなおばちゃまも居ない。

 それでも図書館を選ぶところが、リシファさんらしくていい。



 図書館


 図書館に入ると俺たちに気づいたいつもの職員が寄ってきて、リシファさんには『お久しぶりです』と言い、俺には『やっと会えたね』と言った。


 「リュウ君、やっと会えたって、何?」

 「ふふ、リシファ様を何度も探しに来たのですよ、羨ましいです」


 ちょっと恥ずかしいです。


 「リュウ君……」


 リシファさんが抱きついて来る……

 昨日会ってからの距離感が近い。


 「すいません、個室をお願いします……」

 

 リシファさんが抱きついたまま言った。


 「あ、あの…… ここは図書館なので、その…… 何て言うか…… あっ、でも少しくらいなら良いか……」


 何が少しくらいは良い!

 それが図書館の個室でも俺だって男だ、そのうち爆発するぞ!



 何か緊張する…… するとトントンと、ドアを叩く音が聞こえた。


 リシファさんが真っ赤な顔で部屋に入って来る。

 俺の隣に座り、更に少し身体を寄せた。

 憂う瞳とリシファさんの体温で、理性が飛びそうだ。

 リシファさん…… 少し厚い唇が……


 「この本にはね、レイモンから来たと言われてる人達が載っているのよ」


 本の前でリシファさんがスケベモードになる事はない。


 「特徴を調べたの、そしたら全員が男、名前的に平民、300年前に多い、が特徴ね」

 「どうして多いと分かったの?」

 「300年前に漁師が海で助けてるの。 その前も助けてるかもしれないけど、いっぺんに多く溺れてると目立つでしょ」


 仲間同士で海の滝を越えた?


 「300年前以前の法則は?」

 「300年前以前はまばらで、法則も特徴的なことも分からなかったな〜」

 「リシファさんはどういう種族と思う?」

 「全部、同種族。 ……リュウ君以外は、だけど」


 うん、俺も同じ意見だ。

 そして俺の情報では、西のドリアードと一緒に居る男は海の滝を越えて来たと言う。

 


 ……まだ確信は出来ないけど、俺の予想は羅刹種!

 でも、そうなると羅刹種は絶滅してないって事になる。



 

 図書館が閉まる時間になり、外に出る。

 流石にフェークスでは恋人のように手を繋ぐことも出来ない。 ……って言うか、たまにユーリスの顔がチラつくのだ。


 バッと後ろを向く!

 ……ユーリスは居なかった。


 「貴族の知り合いに見られないといいね」

 「ふふ、もう気にしないよ。 それよりリュウ君、何食べに連れて行ってくれるの?」


 平民街のお店は、リシファさんは知らない。

 でも、俺は散々電撃メンバーを探して食事処を色々見たので知っているのだ。


 「洒落た店。 ……でも、酒がメインの店かも」

 「ウフ、行きたい。 行こうよ、リュウ君」



 少し落ち着いた雰囲気のある洒落た店、トランペットのような楽器の落ち着いた音楽が流れてる。


 「ステキ……」


 うっとりして周りを見渡すリシファさん、だけど、まさかのあの人が登場する。


 「おう、もしかしてリュウかよ、このヤローオンメエ」

 

 ん? この喋りは……


 「あっ、リュウだ。 この前トロン達と会ってたろ」


 ハーテマルさんは奢ってもらったから覚えてる。


 「うん、会った。 アイリスさんのこととか聞いたよ」

 「ちょっと待て、その子は恋人かバカヤローオンメエ」

 「キャハハ、リュウ君リュウ君、やって、やって」


 リシファさん、キャラ変わった?


 「今日はそうだぞ、バカヤロオンメエ、それより2人か、バカヤロオンメエ」

 「キャハハハ、面白い〜、ふぅ、思い出すな〜、ん? 今日は恋人⁈」


 またユーリスを思い出してしまった。

 2人共魅力的だ、と思うと、気の多い男でもいいやと思ってしまう。


 「ああ、2人だ。 ……アイリスが帰って来るまではメンバーはバラバラさ」

 「アイリス…… 早く帰って来い〜! バカヤロ〜」


 確かリバティの離島に行ってるって聞いたな。


 「1年くらいで帰って来るんでしょ」


 軽く言った言葉に、2人は難しい顔になる。


 「俺達は帰って来れないと思ってる。 ……理由なら沢山あるさ、だけど俺は迎えに行くけどな」


 アイリスさん…… 俺が思っている以上に魅力的な人なんだろうな。

 メンバー達の反応を見れば分かる。


 「まぁ知り合いのよしみだ、俺が依頼を受けてもいいよ。 俺はね、極秘任務が得意だよ」


 アイリスさんを奪って来いと言うなら速攻で奪って来よう。


 「いや、あいつがリュウに惚れる確率がグンと上がりそうだ、俺達で何とかする。 それより、そのいいオッパイの子と上手くやってくれ」


 ん⁈ っと思って見たらリシファさんがすかさず腕で隠そうとした。 ……でも、大きいから隠しきれない。


 

 ここも個室での食事、あの2人は帰った。


 ピザのようなものにお酒、リシファさんも飲みたいと言ったから……

 

 「リュウ君、今日は恋人って本当?」

 「いや…… リシファさんさえ良ければだけど……」

 「うん、好きだから良いに決まってるよ……」


 と言っても、あと数時間。


 初めてと言っていたお酒を飲むリシファさん、冷静に考えてみてもよく分からない魅力がリシファさんにはある。


 確かに可愛いけど、ミナリやユキナの方が俺のタイプの顔をしてる。

 胸が大きいけど、俺の理想はリリカやカミラさんくらいの大きさ、スタイルが好み。

 ……でも、絶妙に惹かれる。


 「リュウ君…… 湖の向こうに私の家の別荘があるの、もちろん誰も居ないよ…… 今日、2人で泊まろうよ……」


 リシファさんの少し厚い唇が濡れている……

 前回はあの厚みが心地よくて止まらなくなったものだ……


 は、鼻血の…… 感覚!



 

 


 

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