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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 始動



     第二章  成り上がり


 第六十九話   「始動」




 夏本番。


 海が見える家にクルーザー。

 理想的な物は手に入ったけど、その実は薄っぺらい。

 家を買ったまでは良かったけど、船を買ったことで生活費まで圧迫してしまった。

 

 本当は毎日船で沖に出て遊んでたいけど、この後は俺もラザノフも学校に通わなくてはならない。

 なので、なるべく俺達はギルドの仕事を優先していたのだが……



 ギルドの帰り。


 たまたま近くに討伐の仕事があったので、ラザノフと討伐を済ませた帰り道……


 「ラルトオオリャ、強かったでござるな」

 「ああ、ユキナの情報があって良かった」



 ラルトオオリャとはオオトカゲに似た魔獣。

 肉食というより雑食で何でも食べるらしい。

 酸性の唾を吐き、その唾に触れると火傷のように皮膚がただれる。


 「少し引っ掛かっただけで、このただれ方でござるよ」


 ラザノフは腕に少しだけラルトオオリャの唾がかかってしまった。

 直ぐに高回復薬を飲んでも、傷跡は生々しいまま残ってる。


 「まぁ、俺は明日は姫様の稽古の日、ラザノフはゆっくり休んでよ」

 「ああ、ラリィも遅くまで1人にしてしまってる、明日はラリィとゆっくり家で遊んでいるでござるよ」


 今回の討伐は日帰りのつもりだったので、ラリィを置いて来てしまった。

 しかし、実際はもう日付けが変わっている。


 「もう少し急ごうか」


 急にラリィが心配になった俺達は、帰る道を急いだ。



 波止場から家へ向かう小道を登って行く途中、禍々しい気配に気づく。


 隣のラザノフも気づいたようだ……



 そして家が見える位置まで来ると、その気配の持ち主が見えた。

 2人の背の高い男女……


 俺達を見つけた女の方が、ラザノフに突っかかる。


 「貴方達、ラリィを放って何しているの!」


 その人は……

 ラリィの母ちゃんだった。


 ガルルルゥ、っと鋭い眼光で唸る犬……

 ブラッドドックと言う吸血族が飼う魔獣が2匹、コイツらが禍々しい気配の正体。


 「父者から連絡があったでござるか?」

 「そうよ! でも来てもラリィは居るけど玄関の鍵を開けてくれない、他にはこの時間まで誰も居ない、どういう事よ!」


 ラリィは鍵を開けなかった⁈


 「もういいだろうクラル、それより早く鍵を開けてもらってラリィの様子を見た方がいい」


 ガイスの兄の、君の名は……


 「そうね、ジルベッタ。 ……ラザノフ君に怖いお兄さん、ラリィに会わせてくれる?」

 「リコ、ケルン、大人しく待っててくれ」


 ジルベッタさんが魔獣に向けて言った。

 


 ブラッドドック

 狼型の2メートルはある魔獣。

 黒と赤のマダラ模様で紫色の瞳、カッコいいけど不気味な雰囲気。



 玄関を開けると、ラリィは玄関前で泣き崩れていた。

 

 「うぅぅ…… 母ちゃん、ごめんなさい……」

 「良いわよ、開けちゃダメって言われてたんでしょ。 ……それにしても貴方、頑固ね」

 「ハッハハ、クラルそっくりだ」


 ラリィは頑固でも融通の効かない子ではない。

 母ちゃんと分かっていても開けなかったのは、俺達の信頼を失いたくないからだ。

 前回は母ちゃんの友達設定の女にラリィは攫われた。

 なので知り合いを名乗られても鍵は開けてはダメと言い聞かせてあるのだ……


 「ラリィ、遅くなって済まんでござるぅ」


 ラザノフはそう言って、母ちゃんに抱かれてるラリィを母ちゃんから奪った。


 これがラザノフの強さ、まるっきり空気が読めない。



 

 リビングで2人の話を聞く。

 

 ちなみにラリィは母ちゃんの胸に戻った。


 「ガルフさんから連絡があって、クラルが場所も含めて1回確認したいと言うので来たんだ。 クラルは頑固だから言い出したら聞かないし」

 「ふふ、凄く良い家ね、でもラリィ1人で留守番は不安しかないわ」


 今日はたまたまラリィが行かないって言ったんだ。

 ユキナに出された宿題をしたいって……


 「済まん、拙者達も家政婦を探してるんだが、信頼出来る人物がなかなか居ない、って言うか分からない。 だからもう少し時間がかかりそうでござる」


 それでも学校が始まる前には決めたいとラザノフとは話している。


 「そう…… それなら、私はどうかしら?」


 えっ、っという顔をしたのはジルベッタさん。


 「ちょ、そ、それは里に無断では容認できないぞ」

 「だったらジルベッタが説得してきてよ。 ねぇ、お願い、家政婦が決まるまでだから……」

 「ダメだ! 今回は諦めて、帰ってから自分で族長に話すんだ」


 ジルベッタさんが正論。

 俺達的にも助かるけど、スジが通らない。


 「だったら怖いお兄さんに頼もうかしら……」

 

 チラッとジルベッタさんが俺を見た。


 「そりゃあないぞ、クラル!」

 「え〜と、俺的にはあの事件はもう解決したこと、何よりラリィが許したことなので、吸血族に対してわだかまりはないですよ」

 「あれほど暴れれば当たり前でござるよ〜、腕、スパーン、足、スパーンと斬り落としたでござるぞ〜、恐ろしい〜、ガッハハハ」


 だから、その人のお兄さんが来てるんだって、空気を読んでくれ〜!


 「貴方達は黙ってて! ……ジルベッタ、貴方とガイスは一度私を諦めているわよね、怖いお兄さんに説得されて…… いい? ジルベッタ、 私はこの家に移り住むつもりはないの、ただ家政婦が見つかるまでは不安で里には帰れないってだけなの。 ……何ならジルベッタも一緒に家政婦、する?」



 ジルベッタさんは考え込む……

 

 このリュウと言う少年は裏の世界から飛んで来たと聞いた。

 恐ろしいまでの飛行能力と剣の腕、無詠唱魔術……

 ラザノフが言うには若干15歳で既に自由度の高い戦いでは、この世界のトップクラス。

 そして戦った感触でも身震いするような強さだった。

 あの少年との繋がりが欲しいなら、今回の事はうってつけ……


 しかも、クラルは吸血族の中で特殊だ。

 人間との間に娘を持ち、里の男とは結婚しないと宣言している。

 自分との子は産む予定だけど、その子が男であれ女であれ次は他の男との子を産むことが決定している。

 

 里で孤立してるクラル……

 5年近くある自分との子を授かる期間……


 「分かった、その代わり約束をして欲しい。 ……自分との予定は必ず守ると」

 「アハハハ、何言ってるの? 私は家政婦が決まるまでって言ってるじゃない、そんな長くはかからないわ、ね」


 ラザノフがコクンと頷いた。


 「それと2人にはお願いがある。 俺はクラルが心配だ、だからたまに来て様子を見させてほしい」

 「そんなのお安いご用でござるよ、部屋も余ってるからいつでも来てくれ」


 自分1人なら移動は楽だ。

 夜は飛び、昼はケルンの中に入り移動出来る。

 でもクラルはリコとの誓約が切れてるので、昼間は移動出来ない。

 それでもリコは、もうクラルと離れたくないようなので連れて来たけど。


 「それともう1つのお願いだ。 俺も2日ほど泊まらせてほしい、ここまで来るまでケルンを酷使したので少し休ませたいんだ」


 ケルンとリコには安全なルートを探してもらいながら来た。


 「それも良いいでござるよ、な、リュウ」

 「ああ、問題ないよ」


 という事でラリィの母ちゃんのクラルがしばらく滞在する事になった。

 学校が始まるまでにと焦っていたので、少しゆっくりと信頼出来る人を探せる。



 次の日。


 今日は2度目のユーリス姫との稽古日、学校まで行く。


 学校の校門の前に待っていてくれたマインさんに連れられ、学校内の王族専用敷地内へ。

 この前と同じように道場の前に居るもう1人の付き人、ラースビーさんに軽く挨拶して中へ入る。


 道場内にはわざわざ俺を正座で待つユーリスが居た。


 「こ、こんにちは、リュウ……様」

 「こんにちは、ユーリス。 今日は準備運動のやり方を教えるね、その後に掛かり稽古でもしよう」

 「は、はい、リュウ……様」

 「敬語禁止じゃなかった? 俺はリュウね」

 「う、うんリュウ」


 う、雲龍! ……相撲取りに見えた?


 「リュ、リュウ、わ、私、リュウのことをもっと知りたい…… か、彼女のこととか…… 稽古が終わったら話を聞いてもいい?」

 「別にいいけど今は彼女は居ないから、参考にならないと思うよ」


 ユーリスはラザノフと付き合ったら、何をすれば良いかを聞きたいのだろう。

 まぁ、リリカと付き合ってた時のことを教えてあげればいいか。


 「い、居ない! ほ、本当リュウ!」


 ほ、本盗龍! ……野球はした事はありません。


 「ああ。 ……時間がないから進めていいかな?」

 「う、雲龍」


 だから、相撲取りじゃないって。



 今日は俺が小さな頃からやっている指先の強化トレと、体幹トレのやり方をユーリスに教える。


 

 指先の強化トレでは手が触れると真っ赤な顔で俺を見つめるユーリス。

 美人だけど態度は可愛いユーリス。

 ラザノフの上位亜人という壁は高いけど、ユーリスならもしかしたら越えられるかも知れない。


 そして最後は掛かり稽古。

 素振りではバランス良く振れてても、人相手の本番ではバランスの悪いユーリス。


 掛かり稽古は止めて、素振りを教える。


 「ユーリス。 基本、素振りは2種類と思って自分はやってきた。 1つはフォームを固めるために、ひたすら剣を振る稽古、何百、何千とね。 もう1つはしっかりイメージして振る稽古。 相手を想定するから同じポジションでは打てない、ユーリスはこっちが不足しているね」

 「相手を想定する素振り?」

 「そう。 例えば相手が上段に打ってくるのを交わして打ち返す。 このイメージで自分が納得するまで素振りをするんだ。 俺はもう何百、何千の素振りはしないけど、この素振りは毎日してるよ」

 「はい、リュウ。 だからあんな連続技が出来るのですね」


 また敬語になってる…… まぁ、徐々にか。


 「蓮撃を見せる約束だったね。 今日の稽古は終わりにしよう。 だけど最後に感想だけ聞かせてね」



 久しぶりの蓮撃。

 

 15セットを越えるとクオリティが駄々下がりだった蓮撃、今日は何セットまで続けられるか……


 そして、始める……



 ……16セット途中から異変。

 また目に、赤い魔法陣が広がったのだ……


 ただ良く見えるだけ! ……そう聞いていたけど違う。

 見える情報からの伝達が驚くほどスムーズだ。

 頭が冴え、次を考える前に身体が動くような感覚。

 現にもう、21セット目だ。


 とりあえず21セットで止めて分かったこと。

 ガクッと膝にくるほど疲れてる…… 

 その時は平気でも、疲れはいつもと同じ。


 

 「リュウ! リュウの眼…… よく見ると小さな模様があってカッコいいと思っていたけど…… 今は大きくなっている…… 大丈夫なの?」

 「ああ、大丈夫。 何かこの眼、昔の大魔導士が残した遺産らしいよ。 短命って言ってたから俺はハタチまで生きれないかもね」


 残りの時間は4年だけ。

 

 「リュウ…… 大魔導士とか短命とか…… 本当?」

 「本当だね。 それ以外に説明出来ないし、知り合いの信頼出来る人から聞いた話だから」


 何より鼻に継承した人の話は衝撃的だった。

 自分の屁でよく気絶してたなんて、悲運にも程がある。

 

 「ヤ……ヤダ! 初めて好きになった人なのに〜! 死なないで〜リュウゥ」


 とユーリスは言ってペタンっと膝が崩れた。

 ……ワァ〜っと泣くユーリス。


 「え〜と、初めて好きって俺が? ラザノフから変わっちゃったの?」

 「だっ、ど…… どうして〜!」


 ワァ〜っと引き続き泣いております。

 こう言うの苦手…… さっさと感想聞いて帰りたい。



 10分くらい待っていると、ユーリスは落ち着いてきたのか俺を睨みながら話し出す。


 「どうして私がラザノフ様を好きなの? 私は初めからリュウが好きって態度をとってきたよ、周りにもバレるくらい!」


 全くノーマークでした。


 「ごめん、全然気づかなかった。 ……スゲェ、変わってる人かと思ってた」

 「う、うわぁ〜!」


 ま、また泣かせてしまった……



 今回は5分くらいで泣き止んだユーリス、赤くなった目で聞いてくる。


 「リュウ、私は貴方が好き、一目惚れだよ。 お姫様なんて嫌だよね」


 何も応えられません。

 俺の心の奥底にはまだリリカが居て、最近ではリシファさんと会うと嬉しい自分が居るのを確信したばかり……


 応えないのが答えと思ったのか、ユーリスは続ける。


 「……その眼についても調べてみるね、私の好きになった人がもう直ぐ居なくなるなんて、納得出来ないもん」


 ソマルさんは結構、人生経験豊富な人だった。

 昔の無詠唱の王様のことも前王? か前々王? に聞いたと言っていたので亜人国では顔が広かったと思う。


 もしこの継承するはずの眼や耳、鼻が人族以外に継承して、例えばその期間が長かった場合、人族でその事を知る人、伝える人は居るのだろうか……


 「ユーリス、気持ちはありがとうね。 今日はこのくらいにして次回ユーリスのことを聞かせてよ」

 「えっ、うん、知って欲しい……」

 「じゃあ、今日教えたことは毎日続けて、またね」

 「……はい、ありがとうございました」


 感想は聞けなかったけど仕方ない。

 夏休み中のユーリスとの稽古は、残り1回。



 ギルドに寄ってから帰る。

 いい依頼があればと思ったけど…… あったのだ!



 荷物の配達  


 リバティ国イチカーナ街 タスカータ商店まで

 ランク 不問  期日 9月10日  報酬 2000トア


 何故、この依頼がいいのかと言うと……

 最短ルートで行くと、途中ゴールタール国のフェークスを通過するのだ。 ……つまりリシファさんに会えるかも。

 前回はリシファさんから会いに来てくれた、もし今回俺から会いに行ったら…… 喜ぶかな。

 

 ……しかし、期日がたっぷりあるため、鳥人族の人が請け負ったらしい、残念。



 家に戻るといい匂いが…… やはり家政婦は正解!


 しかし、料理をしていたのはジルベッタさん。

 何でも吸血族は基本、男が料理をすると言う。



 ジルベッタ  196センチのスリムな長身。 

 ダンディな雰囲気の44歳。

 


 と、言うことは……

 ラリィの母ちゃんは料理が出来ない⁈


 しかし、クラルさんはあの村で料理を習い、郷土料理を作れるらしい。



 吸血族料理は…… 流石、グルメっぽい人が作っただけあって細部までこだわりがある。

 イメージ的には日本の懐石料理、つまり、美味い!


 「どうだい、僕の料理は?」

 

 俺を見て聞いてきた。


 「とても美味いですね」


 と言ってラリィを見た。


 ラリィの必殺技、高速箸捌き&ほっぺに一旦ストックが発動中……


 明日、里に帰るジルベッタさん、道中に危険はないのか?


 「ジルベッタさん、良ければ途中まで送りますよ」

 「いや、大丈夫。 ……ケルンもリコも居るからね」


 と言って帰った、ジルベッタさん。


 だけど、リコはガンとしてクラルさんから離れず…… なのでウチで世話することになった。


 エサ代は凄くかかるだろうけど、吸血族の女とその子供が居る家なので番犬として頼もしい。


 

 そのリコのために庭に大きな犬小屋を作ってあげた。


 ブラッドドックは賢く、よく考える魔獣として知られ、なるべく危険を回避する性格だそう。


 リコは俺達に懐かないけど、クラルさんと敵対してない人には攻撃的にもならない。

 だけどラリィにだけはクラルさんと同じように心を許している。

 きっとクラルさんの娘と分かっているのだろう。

 


 ーーーーー



 今日は夏休み最後のユーリスとの稽古。


 朝から学校の中の王族専門道場へ。


 ユーリスはまたしても正座で待ち構え、真っ赤な顔で挨拶してきた。


 「リュ、リュウ…… 様、おはよう…… ございます」


 ノー敬語チャレンジ…… 振り出し。


 「おはよう、ユーリス。 早速、準備運動から始めようか」

 「あっ、それは終わらせました」


 今日は朝からの稽古、当然自分も早朝の稽古で終わらせてる。


 「じゃあ、掛かり稽古の後に気になる箇所を洗い出して行こう、その後に関節マッサージのやり方を教えるね」

 「あ、はい」


 別にユーリスは長い目で見て強くなりたい訳ではない。 

 でも、ダイエット効果だとか、身体に良いことなので教えておく。



 そしてひと通りの稽古を終えた後、約束通りユーリスについて聞いた。



 ユーリス


 172センチの長身美人。

 バランスの良いスレンダータイプで巨乳。

 黒髪、黒目のお姫様。


 ユーリスは小さな頃から王様に可愛がられて育った。

 王様にとっては最後の子で、特別可愛い容姿をしてたので当然かも知れない。

 何処に行ってもチヤホヤして来る大人達…… そんな大人達もユーリスが成長するにつれ、好奇で舐めるような視線を送ってくるようになった。

 その視線に気づき出してからはユーリスは男嫌いになり、マインやラースビーのような女剣士に憧れるようになった。


 そして、ある日マインから竜族が認める剣士が明日城に来る、と言う情報を聞き、是非見てみたいと思っていたが……


 その男が顔を上げた瞬間、ユーリスは初めての恋をした。

 その後もジルザルとの一戦、ギルドの大会での勇姿を見て立場をわきまえず熱狂した。

 なので、マインやラースビーには速攻でバレて反対された。

 でも涙ながらに初恋を訴えて、なんとか協力してもらえることになった。


 

 なんて話をマインさんとラースビーさんも呼び、聞いた。

 ちなみに、ここに居る人だけの時は敬語禁止令が何処からとも無く発動している。


 「リュウ君、君は魔術を専攻したけどどうして?」


 ラースビーさんのお父さんは学校の校長だったな……

 

 「俺は羅刹種と言う種族の末裔、知らないか」

 「し、知ってるけど、500年前に絶滅した種族よ。 それに貴方は竜族の末裔でしょ」

 

 知ってるのか……


 「竜族には世話になってるだけ、出生は関係ない。 末裔の証拠は無詠唱スキルを継承した。 でも兄にちょっと魔術を教わっただけで、ほとんど魔術は知らない、だから魔術クラスにしたんだ」

 「む、無詠唱スキル……」


 ラースビーは思う、リュウ君は年齢詐称してる⁈

 500年前-(羅刹種300寿命+ハーフ人間寿命120)=80

 リュ、リュウ君は最低でも80歳! ……そんな訳はないわね。

 

 「リュ、リュウ…… その眼について、知ってる人も文献もなかったの…… でも、3人の魔術師が魔族を滅す話を知っている人は居たの……」

 「まぁ、居ないだろうね、だから早死に確定って訳でもない。 その内、知ってる人も現れるさ」

 

 ずっ〜と、考え込んでるマインさん、鋭い質問をしてくる。


 「リュウ君の出身国を聞いていい?」

 「ごめん、秘密その1」

 「もしかして…… フォルマップル?」


 と言ったマインさんも、聞いていたラースビーさんも殺気立つ……



 フォルマップル国  リシファさんが言うには、「余りいい噂は聞かない」だった。

 噂では羅刹種が生きている国とも……

 

 他はポルカ先生に聞いた話で、科学技術は最下位の7位なのに軍事力は上位の3位。



 確かに俺の出身国と言うにはうってつけの国。

 でも、嫌な国そうなので残念。



 「フォルマップルではない、という証拠がない限り、ユーリス様、この稽古は今日限りでお願いします」

 「そ、そんな…… リュウ……」


 すがるように俺を見るユーリス。


 別に今日限りでもいいけど、なんかフォルマップル出身と思われたくない。


 そして多分、マインさんとラースビーさんはユーリスのお願いに命を賭けている。

 平民と姫様の恋の手助けをしようとする護衛なんて、知られれば打首でもおかしくない。


 

 「ふぅ、仕方ない。 ……俺は裏の世界、レイモンの人間国の出身だ」


 と言って、話を始めたけど……

 

 ユーリスの喰い付きが良く、リリカとのことまで根掘り葉掘り聞き出されてしまった……


 そのくせ大泣きしてるユーリス。


 「ひどい〜! 私は初めての好きな人なのに〜!」


 俺を睨みつけ、泣き叫ぶユーリス……

 

 付き合ってもないのに何を言っているのか……

 流石、お姫様。


 「リュウ君、話だけでは証拠にはならないわ、せめてジェット? それで飛んでいるところでも見れれば……」

 

 確かに翼で飛ぶ羅刹種や鳥人族とは一線を画す、俺の飛び方ジェット。


 分かった…… と、天井の高い道場内を一周した。


 「す、凄い…… 凄い! 凄いでしょ!私の初恋の人!」


 何度も好き好き言われると…… う、嬉しい。

 

 「ちなみにジェットは何の魔力を使うか分かる?」

 「ふふ、リュウ先生、火と風の属性ですか?」


 ユーリス…… いい意味でイメージを壊してるな、凄く可愛いく思えてきた。 


 「そう。 ちなみに俺の風の魔力はMAX、火の魔力は24、それでも海の滝はギリギリでしか越えられなかった」

 「先生…… ステキ」


 この世界観が好きなの?


 「それに先生…… そんな魔力量は聞いたことがありません。 ……も、もし本当なら私を抱きしめてください、そ、それも先生の仕事だと思います」


 何で?


 「無理」


 ハッキリと断った。

 束縛と妄想が激しそうなので、無理。


 「ユーリス様、少しはしたないですよ。 コホン…… リュウ君、それも証拠はないわよね」

 「ポルカ先生と一緒だったから先生も知ってるよ」


 黙ってしまった2人、しかし、暫くするとお互いを見合い頷いた。


 「分かりました。 疑ってしまってごめんなさい」


 と言って謝り、最近おきたフォルマップル国とのトラブルを教えてくれた。



 中心付近で全ての国が近くなるリーブル。

 その中心付近でやりたい放題な国がフォルマップルだ。

 他の国の村に窃盗、拉致、資源の横取り、他にも色々あると言う。

 特にターゲットになりやすいのは、隣の国で軍事力が低いホオヒューガ国。

 そして同じく軍事力の低いナラサージュも狙われやすい。


 フォルマップル国は亜人が王の国だが、他の国の王族や上級貴族の娘や息子などを、積極的に自国の貴族と婚姻関係にさせている。

 特に多いのが、自国より軍事力が低い国。

 体のいい人質、と言われている。


 

 「昨回の学校の大会では、ユーリス様のお姉様のミリスティ様にしつこく言いよるフォルマップルの中級貴族が居ました。 普通、他の国の王族へは中級貴族から言いよることなど許されることではありません。 今年の大会、私やマインも目を光らせますが、リュウ君もユーリス様をお守りください」


 目を輝かせ、頷くユーリス。

 守らなくてもユーリスは結構強い。

 守らなくてはならないのは…… リシファさん。

 何せ、ちょっと走ったくらいで、ゼェゼェ息を切らしちゃうくらいだ、俺が守る!




 それから数日、家ではラリィの母ちゃんのクラルさんが家政婦として働きだしていた。

 ラリィは嬉しそうだけど、フと寂しそうな顔もする。

 それはここに父ちゃんが居ないことを思ってか、それとも、母ちゃんがまた帰ってしまう日を思ってなのかは分からない……


 そう言えば父ちゃんのお墓とラリィのソナースキルのことを、クラルさんが居るうちに解決したい。

 早速、ソナーについて聞いてみた。



 「そうね、ソナーに関しては自然と使えるようになるのが普通ね。 教えると言うより、ヒントを与えるくらいなら出来るけど。 ……ラリィがスキルを継承してればの話だけど」


 ヒントとは、今までに額の宝石に自然とインプットされた人や動物を思い前方を見る、すると黒塗りのその人が見えるという。

 上級者になると落し物などの物も、探すことが出来る。


 ソナーの性能

 男は見える範囲の前方3キロ、女は5キロ前後。


 「うん、それじゃあ、明日から学校に行っちゃう貴方達をラリィに探させてみるね」


 と言ってたクラルさん。


 ひと月後に聞く話では、ラリィにソナーのスキルが継承されてたこと、そしてラリィのソナーは優に5キロを超えて見えることを知る。



 ーーーーー



 今日から学校へ通う日。

 学校は正式な7つの学校、それぞれで制服がある。

 サンカルムは女はオレンジと白のスカート、男は濃い青のズボンにそれぞれ白のシャツ。

 色の意味は青空と海と太陽を示してる……らしい。

 冬服はまだ知らない。


 建物は魔術棟、剣術棟、槍術、体術棟の3つに分かれているが、体育館のような練習場は2つしかない。

 1つは魔術専用、もう1つを剣術、槍術クラスで使う。

 


 早速、ラザノフと別れ、魔術棟へ……

 

 ポルカ先生と合流して俺が入るクラス、1Aクラスへ。



 ポルカ先生の情報。

 1Aクラスは全部で30人。

 女23人、男7人(俺を含まず)。


 貴族女14、貴族男4、亜人女12、亜人男1、人間女11、人間男5、獣人男1。


 貴族が多いのは貴族の方が魔力が多いから。

 亜人が多いのは亜人の方が魔力が多いから。

 女が多いのは、男は魔術クラスより剣術、槍術を選ぶから。



 クラスの前まで来ると流石に女が多いからか、中がとてもうるさい。

 しかし、先生と俺が入るとシ〜ンと静まり返った。


 ガタッ、っと立ち上がり、慌てて座ったのはジルザルさんの姪っ子のセシルさん。 ……そう言えば魔術クラスの1年と聞いた気がする。


 「はい、知っている子も居そうね。 彼は特待生としてこの魔術クラス、1Aに来たリュウ君です。 途中からだけど仲良くしてあげてね」


 と、言ったポルカ先生だけど反応は……


 セシルさんだけ、うん、うん、と頷いてたけど他はほぼノーリアクション、ただ俺をガン見するだけ。


 ちなみに授業の流れは、先ず詠唱を覚える。

 そして詠唱の意味の理解をした後、その詠唱の魔術の実技、そしてその魔術はどのような応用が出来るか、又はして来たかを授業で学んだ後、その応用の実技をするので、1つの魔術でひと月くらいかかる。


 ポルカ先生の持ってる属性意外の授業は、ハテールという男の先生とリプリアという女の先生が担当する。


 

 という事で最初の授業……


 「火の女神、ジュラーレィよ、我に力を貸したまえ、ダメ? ダメと言わず貸したまえ…… そこは……

 何言ってんだか…… ファイト…… ぁ、皆んな一緒に」

 

 グガァ〜。


 「……ウ、リュウ君! もう!まだ5分しか……ふにゃらら……」


 グガァ〜、グガァ〜。




 「……ウ、リュウ様。 授業が終わりましたよ」


 ハッ、授業を受けていた気がするけど…… 覚えてない。

 寝ちゃったのか?

 

 ……まぁいい、そういう時だってある。


 「ふふふ、私は特待生と紹介されてから10分もしないうちに爆眠した人が同じクラスで幸せです」


 セシルさん…… それって褒めてるの?


 「リュウ君、僕は武闘大会見てたんだよ」


 ン…… 誰?


 「私も見てました!」


 誰? 


 「私なんて街ですれ違った時から知ってたもん、ね、カナリ」

 「うん、その時からだよね〜!」


 双子…… メチャ可愛い顔をしてる……


 「僕も知ってたよ、リュウ君。 僕はサルー、ギルドの前のお惣菜のミルーの息子だよ」


 あっ、よく買い物する店だ。



 サルー  獣人では珍しく魔力の多い種族、アハラテ族、猿人の一部らしい。

 背がとても低く、毛深い。

 


 「リュウ様、ポルカ先生がリュウ様が起きたらテストを受けた部屋まで来るようにと……」

 「俺に? 何のようだろう……」

 「プフフフ、呼び出しですよ、多分」


 ちょっと居眠りしたくらいで呼び出されるんだったら、この先堪らない。

 ムカつくから無視してギルドで仕事探そ。


 

 「ねぇねぇリュウ君、ちょっとこっち来て、私の秘密、教えてあげる」


 と言って、強引に手を引いてく双子の1人。


 連れて来られたのはテストを受けた部屋の隣の部屋。

 3畳程度の狭い部屋だ。


 「フフ、ここなら誰も来ないよね」


 双子の1人はそう言うと、上のシャツを脱いで上半身は下着1枚になった……


 なっ、何をされちゃうの〜!


 「フフ、リュウ君やらしいよ〜、そんなに見ないで」


 いや、そんなには見てません!


 「私ね、小さい頃に胸に大怪我しちゃったの。 ……だから心に決めた人には知って欲しかったの」


 と言って、胸の膨らみかけた場所を指した……



 その場所を見ると…… 確かに、蚊に刺されたような後はあるけど、これじゃないよな……


 「フフフ、リュウ君、そんなに顔近づけてガン見したら、私、恥ずかしいよ……」

 「えっ、ああごめん。 ……でも傷跡って、この小さいの?」

 「ね、酷いでしょ…… こんな傷跡のある女…… 嫌だよね…… ガン見されちゃったけど」


 いや、傷跡が小さくて、まさかと思ったから!


 「だ、大丈夫だと思うよ、そんなに気にしなくて。 俺なんか凄い傷跡があるよ」


 と言ってシャツを脱ぎ、パッツァンに噛まれた傷跡を見せた。


 「す、凄い…… さ、触っていい?」

 「うん、いいよ」


 と、軽く言ってしまったけど、下着姿の可愛い子に触られると変な気持……



 バンッ、っとドアが開き、ポルカ先生が……


 「貴方達、何をしているの!」


 と言った。


 ドアの向こうには、偶然⁈ 部屋の前を通り過ぎるユーリスと取り巻き達が……

 チラッとこっちを見たユーリスと目が合った。


 この状況…… 皆んなに誤解されるよな……

 

 それにしてもユーリスは何で魔術棟に居るのだろう、何にせよタイミングが悪い……



 ーーーーー



 散々説教されたけど、何とか誤解は解けた。

 一緒に説教を喰らった子の名前は "ミナリ" と言う名前だった。


 ミナリ

 薄いピンク色の髪の毛を持つ中位亜人。

 妹の "カナリ" とそっくりだけど、ミナリの方が目が大きく、目の下のホクロがアクセントになり、見分けるのに便利。


 そのミナリは先に帰った……



 「ふぅ、初日から問題児っぷり全開ね。 貴方に注意する事があって呼び出したの、それとその先ね」


 何が言いたいか分からない。


 「先生、俺は制約を受けるつもりはないよ。 問題があるならいつでも辞めるから」

 「またそんな事言って先生を困らせる。 もう…… そんなに学校は嫌い?」

 「嫌い」


 控えめに言っても嫌い。

 控えなければ大嫌い。 


 「リュウ君…… 私は結構ショックだよ…… でも貴方が卒業するまでに絶対に好きにさせる! ……せめて普通にはしたいな」


 集団生活は友達や好きな人が出来たりして、楽しい。

 でも、ルールが厳しく自由がない。

 無詠唱である以上、本当は学校ではなく、個人的に家庭教師を付けた方が効率がいい。


 「それで何? その先だとか注意とか」

 「そうね、他の先生にも言ってあるけど、授業中に関しては邪魔しなければ寝ててもいいわ、もちろん授業を出なくても…… 貴方が優先するのは大会で優秀な成績を収めること。 それと無詠唱について私が論文で発表するので協力して欲しいの」

 「それが条件ってこと?」

 「条件ではないわ、私がお願いしてるだけだから」


 俺の扱いが上手そうな先生だ。


 「分かった、その条件を飲むよ」

 「ふふ、ありがとう。 それじゃあ早速、この前全ての属性が10以上の説が崩れたわ、リュウ君の闇属性が9しかなかったから。 じゃあリュウ君と私達って、何が違うの?」


 先生の話では、全属性の人は稀に居るらしい。

 学校の生徒でも今は俺だけだけど、いつも1人くらいは居るらしい。

 その子達の魔力量は他と比べれば高いけど、それでも、全て10以上には大きく足りてなかった。


 「その答えは意外と簡単なんだ。 俺達は身体の中の魔力の流れを感じれるんだ」

 「魔力を感じる…… 魔術を想像すると勝手に魔力が動くの?」

 「間違いじゃないけど当たりでもない。 その魔術の魔力の流れを再現する、が正しい」

 

 少し考え込んだポルカ先生……


 「俺が教わったのは兄から。 兄が詠唱をしてその時に体の中を流れる魔力を覚えて、そして再現するって感じで覚えてたよ」

 「そう、優秀なお兄さんね。 いったいどんな魔術を貴方は知ってるの?」

 「ファイヤーボール、アイス何とか、アイスシールド?、土の盾、石がいっぱい出るやつはケンカで相手が使ってた。 最近ではやっぱりケンカで吸血族のファイヤースネークとか言う魔術」

 「ケ、ケンカ中にも覚えられるの? それは凄いけど…… 最後のファイヤースネークは知らないわ」


 アイス何とかは知ってるの?


 「あ〜、頭がこんがらがる〜。 新しい事実ばかりだけど、やっぱり懸念が消せないわ。 ………貴方はフォルマップル出身ね」



 やっぱり無詠唱はフォルマップルを疑うのか………

 行ってみるか⁈


 「残念、違う。 頭のいいポルカ先生なら直ぐに辿り着くさ」

 「ふふ、何故か貴方に褒められると嬉しいわね。 じゃあ、次のこの時間までに考えておくね」


 

 説教込みだったので遅くなってしまった……



 でも一応、ギルドに寄って帰るか……

 


 

 

 

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