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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 簡単な試験



      第二章  成り上がり


 第六十ハ話   「簡単な試験」




 学校。


 この世界では縁遠いものだと思っていたけどリリカの送り迎えや知り合いからの学校への勧誘など、近くにはあった。


 行けるかは試験次第だけど、俺はあえて魔術クラスを希望するつもりだ。



 ーーーーー



 武闘大会から数週間、ガルフさん達が里に帰り、家にはまた俺とラザノフとラリィだけになった。

 

 週三回、ラリィに魔術を教えてるユキナが来る時は夕食もユキナが作ってくれるけど、その他の日は外食ばかり、やっぱり家政婦さんが必要だ。


 

 武闘大会を経て俺はこの街で結構有名になった。

 街を歩いている時やギルドに居る時によく話しかけられる。 ……そして、たまに柔らかいパンを貰える。

 フと気づくと付けられている時もあるので、ジェットは無闇には使えない。


 ストーカーっぽい奴も居るので要注意。



 そんなある日、城から戻って来たラザノフが来週に学校で試験があると言ってきた。

 ついでにその日にお姫様の稽古も見て欲しいとの事。

 試験に受かったらの話なのに…… と思いつつもラザノフからお姫様は結構強いらしいと聞いていたので、見てみたいと思って了承した。



 ーーーーー



 今日は夕方から海に出て、ラリィの魔術をお披露目してくれる日。

 もう少し暗くなったらラリィが空を飛んで、その後に買ってきた食材を広げて夕食、そして魔術のお披露目して帰る予定。


 「リュウ君、ラリィちゃんが飛んでいる時に私も空に招待してくれる?」


 約束してたので頷く。


 「リュウ、拙者もいいか?」


 何故だろう…… テンションが上がらない。

 でも、頷く。


 そんな上がらないテンションの時にユキナをチラッと見ると、ユキナは上着を脱いで上だけ水着になった、下は短パン。

 テンションが…… 上がっております。


 「アハハ、暑いから…… 変?」


 と言うユキナに、首を振る俺とラザノフ。

 カミラさんの妹だけにユキナもスタイルがいい。


 ユキナは可愛い顔をしている。

 性格は、リリカに似てサバサバしてるけど優しく明るい。

 ギルドの人気ナンバーワンなのは納得だ。


 「ユキナは付き合ってる男は居ないでござるか?」


 確かに、1人や2人居てもおかしくない。


 「キャハハ、居ないよ〜。 お姉ちゃんと違って学生時代からモテないの」


 本当は違うと思う。

 でも、そんなに異性に興味のないタイプそう。

 

 「2人が学校へ通ったら、凄くモテるだろうね」


 ユキナが言った。


 ラザノフは優しい風貌と包み込むような包容力があるので、近くにいると安心出来るタイプで確かにモテそう。

 俺はいつも兄のような正義の味方マスクに憧れたけど、俺のマスクもそこそこ良いらしい。

 

 「拙者が竜族じゃなかったらモテたら嬉しいでござるが……」


 ラザノフは真面目な男だ。

 普通の男と同じように女に対しての想いはあるようだけど、いい加減なことは出来ないタイプの気がする。


 丁度、武闘大会で戦ったタツタのように、上位亜人ハーフは結構居るようだ。

 ただ、ラリィのような母親が上位亜人のケースはほぼ居ない、だいたいのケースで父親が上位亜人、しかも夫婦になってない。

 ケースとしては上位亜人はモテるため、男が遊びまくるケースと、もう1つは女が上位亜人の子種を欲しがるケース。

 人間とのハーフより中位亜人とのハーフが多い、それをハーフと呼ぶならば、だけど。



 暗くなって来てからはラリィの出番。

 ラザノフもラリィと飛びたかったようで一緒に飛ぶが……


 飛んだ気になって両手を広げて気持ち良さそうにしているラザノフ、その下には必死な俺……

 ラリィは大笑いで『笑って飛べなくなるから付いて来ないで!』と言って俺達を拒否したのでラザノフは終了。



 次はユキナ。


 ユキナはいつものように高く上がるだけを選択。

 今日はいつもより高く上がった。


 「凄い、街が凄く小さく見える」


 こうやって見ると、平民街より貴族街の方が広さはある。

 でも平民街の方が色々と詰まっている。


 「リュウ君、お姉ちゃんね、もしかしたらギルドを辞めるかも知れないって」


 ギルドを辞める……


 「それって結婚と関係はあるの?」

 「うん。 数年前からリズーンでは色々な改革があって、その1つに他種族間の結婚にリーブルでは1番軽い罰則にしたのがあって、それでリズーンに行こうかって話になっているみたい」


 リズーンはよく聞く国だ。

 多分、リーブルで1番進んでる国。


 「仕事は?」

 「ギルドの空きを問い合わせているって。 お姉ちゃんは去年の売り上げがプユスタールで1番だったから、もしかしたらリズーンのギルドで働けるかも知れないって。 でも、何処の都市になるかは選べないみたいよ」


 去年は俺とラザノフが低ランクで一生懸命働いた。

 売り上げは低ランクの方がギルドの売り上げになる。

 でも当然、俺達以外の担当者も頑張ったのだろう。


 「キャハハ、私はナラサージュで1番だけどね、今のところ」

 

 カミラさんは都市の1番、ユキナは国の1番か……

 今のところ、だけど……


 ダンジョン攻略の凄さか……

 ラザノフに感謝だな。


 「ねぇ、寂しい?」

 「いや、全然。 ギルドならユキナを通して連絡出来るし、遊びに来てくれてもいいし、俺とラリィが飛んで遊びに行ってもいい。 カミラさんとリョーキが幸せならそれでいい」

 「ふふ、それでも寂しかったら言いなさい、お姉さんが慰めてあげるから」


 その格好でそう言われると、ドキッとする……


 ユキナ  158センチ。 黒髪で茶色の瞳。

 カミラさんは洗練されたボディって感じだったけど、ユキナはそこに若さが混ざってる。 カミラさんに似てるけど、幼く可愛い顔つきなので印象は違う。 


 「ありがとう。 いつも明るくて優しいユキナ、もう慰めてもらってるよ」

 「ふふ、上手だね。 年上キラー」


 年上キラーの称号、頂きました。



 そして夕食の後のラリィの魔術のお披露目。


 何かゴニョゴニョ言って風を吹かせたラリィ、小さいのに詠唱を覚えやがった。

 その次も精霊だ神だ女神だこの野郎だ言いながら詠唱して、火をボッと付けていた。


 「リュウ君は分かると思うけど、こんな短期間でここまで出来る子はなかなか居ないと思います。 今後も私の料理と共に楽しみにしてね」

 「ユキナには感謝しかないね。 ちなみに俺はその日のうちにファイヤーボールを打てたけどね」

 「無詠唱…… それは凄いの?」

 「どうだろうね。 きっと俺より小さかった兄はもっと優秀だった気がするけどね」


 兄は父さんに教わっている。

 俺が教わった頃よりもっと小さな頃に……


 「会ってみたいでござるな。 そして戦いたい」

 「俺も。 でも、俺もラザノフも魔術師に痛い目に遭ってるから、余裕で負けるかもね」

 「ガッハハ〜、強い魔術師、痺れるでござるな〜」


 俺よりラザノフの方が魔術師を苦手としている。

 

 「お兄ちゃんのお兄ちゃんだの?」

 「そうだよ。 優しくて知的な兄ちゃんだったな」

 「顔は? リュウ君に似てる?」

 「どうだろう? まぁ、そのうち現れるよ、約束してるから」

 「ああ、皆んなそれぞれ楽しみでござるな〜」


 ユキナとラリィがお互いを見て頷いた。

 


 

 それから数日、魔術クラスへの編入という事でゴタついたみたいだが、納得してもらえたようで試験の日を迎えた。


 学校はこの街の西側にある。

 緩くて長い坂を登って行くと前世と同じような学校がある。

 坂は両側に木が植えられ木漏れ日がアクセントになり、いい感じ。

 街側の景観もいいので坂を苦にならない。


 学校の中は前世よりずっと綺麗で、絨毯が敷かれてる。

 きっと王族も通うので綺麗なのだろう。

 そして貴族、平民の隔たりは学校内ではない、という事になっている。


 今日はもう夏休みになっているので生徒はほとんど居ない。

 玄関フロアで待っていると2人の男女が現れて、ラザノフは男の人と、俺は女の人について来るよう言われた。

 

 女の人は小部屋に入り、お互いにソファーに座った。


 「私は魔術クラス、火、風、水、闇の担当をしてるポルカと申します。 貴方が噂のリュウ君ね、剣術が長けていると聞いたけど、本当に魔術クラスでいいの?」


 ポルカ先生。

 童顔、小ちゃい、つまりシスターに似ている。

 でも、少し幸薄そうな雰囲気がある。


 「お願いします」

 「ふふ、そう。 よし、早速簡単な試験を行おうか。 ……別に合否には関係ないからリラックスして答えてね」


 ご、合否には関係ないですと〜!

 俺はこの試験のために何ヶ月も前から勉強を…… した気になってたのに。

 ……良かった、しなくて。



 さぁ、早速簡単な試験。


 問1  上級魔術を3つ書き、それぞれどんな場面が有効かを説明せよ。


 う〜ん、上級魔術はサンダーしか知らない。

 素直に知らないと書くべきか、それとも……


 答え  サンダー  魚を捕るのに有効。

     ホンダー  移動するのに便利。

     オレノダー  持っていくなよ。


 まぁ、サンダー以外は適当だけど、どっちかは有りそう。



 問2  近年、詠唱の短縮に有効と言われている3つの言葉を書きなさい。


 詠唱したことないから分からない……

 3つの言葉か……


 答え  サカイ ヤスイ シゴトキッチリ


 これはワンチャンしかないな。



 問3  詠唱中に続く言葉を忘れた、どうすればいい?

 

 これは簡単。


 答え  剣で戦う!



 問4  風の女神を3名あげよ。


 3名か……


 答え  女風神と妹達。


 妹達と濁したので、間違いにされるかも。


 

 問5  __ には何が入る? 


 詠唱を終えた時、__ が邪魔になり、__した魔術を上に向けて打った。


 答え  ラザノフ  山



 問6  アロー系の魔術をスキルアップさせるにはどうする?


 アロー系?


 答え  実は僕、ジロー系と呼ばれたことあるの。



 問7  ウィルスケー ベローニトンは何属性の神?


 スケーベローニトン?


 答え  スケベな豚属性



 問8  上級魔術の詠唱、先行して読む人のことを何という?


 詠唱の問題が多いな……


 答え  3年1組、詠唱先生〜。



 その後も問題は続いた……



 時間になり、その場で採点するポルカ先生。

 何故か笑えたようで、たまに噴いてる時もあったけど……


 採点が終わってからは、厳しい口調で話してきた。


 「貴方、真面目に答えてないでしょ」

 「え〜と、真面目だったんですけど……」

 「魔術を知らない子供みたいな答えなのよ。 真面目な訳がないわ」


 やっぱり、学校は俺には合わない。

 ラザノフ1人だけでも大会で充分な成績あげれるでしょ。


 「一応、貴方は魔術代表に内定してるのよ。 こんな成績で…… 校長は何を考えてるのかしら」


 もう、面倒くさい……


 「それは校長に聞けば? こっちが頼んだ訳じゃない」

 「うぅ、特待生なのに問題児の匂いが…… まあいいわ、大会まできっちりと補習しなきゃ。 ところで貴方の得意な魔術は?」

 「先生、俺は補習は受けないよ。 だったら試験に落ちたことにしてよ。 まぁでも、最後に俺は何十点取れたのかだけ聞いておこうかな」


 最初の予想は70点だったけど、先生の反応から40点くらいか。


 「0点よ! 何、このスケベな豚属性って」


 この世界は不思議だらけ、スケベな豚属性があっても…… いいじゃん!


 「れ、0点か…… 本当?」

 「本当よ! 何、このサカイ、ヤスイ、シゴトキッチリって。 詠唱に入れる訳ないでしょ!」


 ぐ、ぐやじい!


 「古いね、先生は。 サカ〜イィ、ヤッスイ〜、ア〜、シゴト、キッチリ!」


 ブァ〜っと先生に向けて強烈な風を送る。

 目を丸くして驚く先生……


 「どう? 驚くほど早く詠唱が終わるでしょ」

 「な、な、な、何をしたの、あ、あ、貴方は……」

 

 ちょっとやり過ぎたか……


 「冗談だよ、俺は無詠唱。 だから詠唱は知らないし、覚える気もない。 やっぱり俺には学校は縁遠かったね、サヨナラ、小ちゃい先生」


 スッと立ち上がると……


 「ちょ、ちょっと待って。 ……さっきも言ったけど試験に合否は関係ないの。 それに…… 無詠唱って本当?」


 ふぅ〜、仕方ない。

 今度は何も言わず、さっきと同じ強風を送る。

 

 ブァ〜っと先生の髪の毛が後ろになびく。


 「す、凄い…… 貴方は羅刹種なのね…… 生きていたなんて……」


 羅刹種を知ってる!

 ガルフさんや、本好きのリシファさんだって最初は知らなかったのに……


 「俺は羅刹種の多分、孫。 先生は羅刹種に詳しいの?」

 「孫…… 奇跡の確率でスキル遺伝したのね…… 貴方…… ううん、リュウ君、聖杯で魔力量を計ったことある?」


 と言って、後ろにある豪華な聖杯をチラッと見た。

 それにしてもこの先生…… 色々と詳しそう。


 「ないよ」

 「一般的に言われていること、1つは無詠唱は全属性でそれぞれ10以上の魔力量がある。 もう1つはスキルを人間が遺伝出来ると、そのスキルがパワーアップしていると言うこと。 そして例は少ないけど孫は更にパワーアップしているという話もあるの」

 「うん、つまり分かりやすく説明すると?」

 「えっ、分かりずらかった? つまりリュウ君の場合、無詠唱に伴う魔力量が羅刹種よりも多い可能性があるの」


 そう言えば、ラリィの魔力量も多いと聞いた。


 「羅刹種の魔力量は知ってるの?」

 「それが…… 総量で60〜65としか書かれてないの」


 総量で60なら6属性、全ての属性で10づつ、そんな上手く振り分けられてるのか?


 「だからリュウ君、調べてみない?」

 「いいけど、魔力量に関しては俺と先生だけの秘密に出来る?」

 「ふふ、いいね。 うん、魔力が高いとそれだけでモテるしね。 リュウ君は絶対に秘密にした方がいいと思う」

 「分かった、約束ね」



 聖杯と対峙する。


 昔のことで忘れたけど、この聖杯は昔の聖杯より豪華な気がする。

 先生の話では、この聖杯はMAX26まで調べられ、緑が風、水が青、土が茶色、火が赤、光が黄色で闇が紫色の属性になっている。

 それぞれの色の上には26個の宝石みたいな物が付いてて、それが光る。


 触れてみる。


 ブァ〜っと色んな色が光る、特に赤と緑、属性的には火の属性と風の属性の光の伸びがいい。

 

 「な、何これ…… 凄い……」


 ポルカ先生は一瞬、放心状態だったけど、直ぐにメモを取る。




 ソファーに座りポルカ先生の話を聞く……


 「凄い新事実を発見したわ。 無詠唱はそれぞれの属性で10以上が必要、と言われていたけど、リュウ君の闇属性は9しかなかったの。 つまり10なくても無詠唱出来るってことね」


 闇は9か……

 闇は回復魔術で使う、レミアの教えてくれたゲリールとか……


 「それとリュウ君の風属性、全て点いたけど、私はそんなの見たことも聞いたこともなかったわ。 私が知ってる最高の数字がリバティのカザス王子の火の属性の17。 ハッキリ言ってリュウ君の火の属性24が如何にバケモノじみているか分かるでしょ」


 クソ〜、もう少しで風に続きMAXだったのに……

 もうちょっと頑張れよ、俺の中の火の属性。


 「そして、水が17、土が14、光が11。 全て足すと92。 伝説の魔力量と言われた羅刹種が60〜65だから、如何にリュウ君の魔力量が異常か分かるでしょ」

 「小っちゃい先生、闇を忘れてるよ」

 「もう! ポルカ先生よ、ポルカ。 そうね、闇を足すと…… 101…… この学校の卒業生も含めて私が知る最高が58、貴方の魔力は異常すぎる……」


 確かにラザノフにも上位亜人にも居ないくらいの魔力量、と言われたことがある。


 「ちなみに先生は?」

 「わ、私は…… ふふ、何か言うのが恥ずかしいけど、風が6で火が7、水が5で闇が3、総量でリュウ君の火の属性にも届かない21。 ……ね、バケモノでしょ」


 先生は貴族なので魔力は属性も魔力量も平民より多めで、更に下級貴族ではあるが魔力が多い方だと言う。


 「スキルって次の世代でどのくらいパワーアップするの?」

 「ハーフの場合は少しね。 40%の壁をクリア出来れば高性能なスキルを使えるわ。 孫は現実的に言うと…… 例えば上位亜人と人間が結婚して3人の子供が産まれたとする、その子達がまた3人の子供を産み、スキルを継承する確率が5%。 つまり40%をクリアして更に5%だから……」


 どのくらいの確率だ⁈


 「ふふ、私は魔術の先生。 数学は昔から苦手だったの」


 だったら何故、例えた!


 「とにかく凄く薄い確率は間違いないわ」

 「薄いね…… ちなみに俺の兄ちゃんも無詠唱なんだけど」

 「えっ、ウソ…… その確率は……」

 「先生、どうせ分からないんだから例えなくてもいいから。 でも俺達、ハーフって可能性、ある?」

 「両親は?」

 「俺は生まれた時から親は居なかった。 でも兄ちゃんは2人共、人間だったって言ってた」

 「リュウ君…… うぅ…… 辛かったね……」

 「何が? 勝手にシンミリしないで。 それでハーフ説は?」

 「ないわね。 魔力の跳ね方がハーフのそれじゃない。 そうね…… お兄さんは?」

 「皆んなに驚かれたって聞いたよ」

 「うん、多分、クォーターね。 お兄さんは知らないけど、リュウ君の魔力量はやっぱりハーフの跳ね方と違うの。 羅刹種のハーフなら多くても70くらいと思うわ」

 「70…… そこから一気に跳ねるんだ?」


 30ちょっと跳ねたぞ。


 「それが5%の壁ね。 サンプルは少ないけど、やっぱりハーフとは跳ね方がグンと違うの」

 「そうなんだ…… じゃあ、その次は?」

 「ふふ、残念ながら次のサンプルは0よ。 リュウ君のテストの点数と同じね」


 上手くまとめたつもりにならないで!


 「とにかく私も大きく納得よ。 ふふ、問題児君、よろしくね」


 本当にシスターを感じる……

 少しイジリたくなると言うか、からかいたくなると言うか……

 でも、今の先生に幸薄そうな感じはない。


 「こちらこそよろしく、小ちゃい先生」

 

 先生は少し微笑みながら「こら」っと言った……




 一旦校門まで戻り、待ち合わせ。

 校門の前には、もうラザノフと姫様の護衛のマインさんが待っていた。

 

 俺を見つけたラザノフが聞いてくる。


 「お〜、リュウ、テストはどうでござったか?」

 「えっ、ああ、まぁ…… そっちは?」

 「拙者は凡ミスで1問間違えたでござる。 ク〜、悔しい〜」


 1問間違えて悔しい気持ちが分からない。

 全部間違えて子供の答えとまで言われた俺は、どう生きていけばいいの?


 「それでリュウは何点だったでござるか?」


 コイツ…… 俺の、もうそこは掘り下げるなオーラを感じないのか?


 「ラザノフさ、俺はまともな教育を受けれなかった男、むしろそれでもテストを受ける気概を褒めて欲しいな」

 「ガッハハハ〜、テスト、ダメだったでござるな〜。 じゃあ、学校には通えないでござるか?」

 「いや、合否に関係ないって」

 「それは良かったです、リュウ様。 ユーリス姫がお待ちです、そろそろ宜しいでしょうか……」


 そう言えばユーリス姫……

 この為にわざわざ学校に来たのだろうか?


 「ええ、大丈夫です、それと俺のことはこれから、リュウかリュウ君でお願いします。 リュウ様はちょっと恥ずかしいと言うか……」

 「え…… ふふ、分かりました。 これからはリュウ君と呼ばせていただきますね」


 マインさんの笑顔、初めて見たな……


 

 それから学校の裏手にある門の鍵を開けて、山道を歩く。

 道幅は2メートルで両側に木の手摺りが付いている。

 

 直ぐに道場は見えて、入り口の前にはラースビーさんが立っていた。

 

 ラースビーさんはただ『お入りください』と言った後、『ユーリス姫にお優しくお願いします』と追加した。


 俺は初めて稽古を見る女の人にスパルタはしないよ、と思ったけど「分かりました」と応えてドアを開けると……


 

 白い稽古着で、髪の毛を後ろで束ねているユーリス姫が、正座をして待っていてくれた。

 飾りのない服装、髪型だからこそ美しさが際立つ。


 「リュウ様、わざわざお時間をお取りいただき申し訳ございません」

 「え〜と、丁寧過ぎて何言ってるか分からないので、軽く丁寧でお願いします」

 「ふふふ、はい、師匠」


 師匠…… まだ似合わない。


 「それでリュウ様、テストはどうでしたか?」


 ここでもか…… 面倒くせ〜。


 「テストは0点。 見事な0点でした」

 「えっ、そ、それじゃ…… 学校に通えない…… そ、そんな〜」


 この人よっぽど稽古を見て欲しいんだな……

 

 「大丈夫ですよ、合否には関係ないので」

 「そ、そうですか、良かった…… では、これから半年くらいですけど、よろしくお願い致します」


 ユーリス姫は3年なので、卒業まで半年くらい。


 「こちらこそよろしくお願いします。 早速、アップから素振りまでしましょう。 自分の稽古の特徴は準備に時間をかけます。 これからもそうなので、今日みたいに時間がある時はアップを済ませておくと次に進みやすくなります」

 「はい、分かりました」



 ラザノフとの稽古でも同じように、軽いジョギングから各関節やスジをびっくりさせないように伸ばす作業、丁寧に首から足の指まで負荷をかけていく。

 その後は体幹トレーニング。

 ユーリス姫の身体は若干硬そうだが、体幹はなかなか良い。


 そして、素振りでも何年も真摯に剣術と向き合ってきたのかが分かる。

 ただ、鋭さや力強さは感じない。


 「ユーリス姫、今日はここまでにしましょう」

 「はい、ありがとうございました」


 姫様にお礼を言われるのは変な感じだ……


 「それでリュウ様、いくつかお聞きしたいことがあるのですが……」


 と言ってユーリス姫が聞いてきたのは、稽古時間と頻度。


 「週に2回でいいですか? 一応、仕事をしないと食べていけないので…… 稽古時間は1時間半から2時間くらいです」


 今日は1時間半。


 「はい…… 大会があるのでもう少し見て欲しかったのですが…… 仕事では、仕方ないですね」

 「大会? ユーリス姫は大会の代表なのですか?」

 「剣術の3年女子の部の代表です」


 女子の部もあるのか……


 「あの…… 夏休み中はどうですか?」

 「週2ならいいですよ」

 「やった〜、よし! あ……」


 きっと世話係の人が見たら、『ユーリス様、はしたないざます』とでも言われちゃうのだろう。


 「それと…… お願いがあります」


 世話になる国のお姫様だ、お願いの1つや2つは聞いてあげたい。 ……もう1つは聞いてるけど。


 「何ですか?」

 「今日から師匠と弟子の関係です。 せめて2人の時は敬語をやめて欲しいです。 それと今度の稽古で、大会でリュウ様が出した連続技を見せて欲しいです」


 蓮撃か……

 手を怪我していたので暫く打ってない。


 「分かりました。 連続技はOKです、ちなみに自分は蓮撃と呼んでます。 敬語は2人の時はお互いにやめましょう」

 「え…… そ、それじゃあ、ユーリスと呼んでください!」

 「いいよ、そのかわりリュウって呼んで」

 「い、今、呼んでもらっても良いですか?」

 「名前を?」


 ユーリス姫はジッと俺を見つめて頷いた。 ……変わった人だ。


 「ユーリス」


 コクンと頷くユーリス。


 「も、もう一度」

 「え〜と、ユーリス」

 「はい、私も……」


 何が?

 変な人過ぎる……


 「と、とにかく次に会う時はユーリスも敬語はやめてね。 それと『リュウ』だからね」

 「はい……」


 うっとりと俺を見つめる瞳……


 もしかして俺に惚れてる⁈



 いや、この人はラザノフに惚れてるはずだ。

 次に来た時はラザノフの話をしてあげよう。




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