大会の強者達
第二章 成り上がり
第六十四話 「大会の強者達」
レミアと別れてから急いで船に向かう。
昼間だけど堂々と飛べるのは、この辺りは土竜族の人以外は居ないから。
1時間弱で船まで着くと、もう皆んな船の上に居た。
どうやらラリィが居るので朝早くに来て待っていたようだ。
軽く挨拶して直ぐに出発する。
俺はラリィの様子を見に船内へ……
ラリィはベッドで1人でオモチャで遊んでいた。
俺を見つけて抱きついて来る。
「お兄ちゃん、ムジカね、もうすぐ里から出て行くんだって」
このくらいの年の子は、伝えたいことから先に話す……
でも確かにそう言えば、ムジカは氷竜族として生まれてきたので6歳になったら氷竜族の里に行くと聞いた。
「そう。 ラザノフと居れば氷竜族の里にもいつか行って会えるさ」
「うん、また会えるよね……」
俺はずっと寝てないし、夜に船の運転があるのでそのままベッドで寝た。
それからは昼間は寝て夜は運転の繰り返し。
ただベッドは2つしかないので昼間寝る組にサラノフさんが加わった。
夜の運転、ついでにサラノフさんにも運転を教える。
「サラノフさん、上位亜人の女は里から出れないって言ってたけど、サラノフさんも里から出たことがないんですか?」
「結婚前には他の竜族の里へは行けるわよ。 私は族長の嫁だから結婚後にも会合で行くときがあるけどね」
それなら他の人よりはマシなのか⁈
「でも他のところにはないわね」
「それじゃあ、今回が初めてなんですか?」
「ふふ、そうよ。 だから楽しみなの」
竜族の女は3人の子を産んだ後は、旦那さんに色々なところに連れて行ってもらえるらしい。
でもサラノフさんは族長の嫁という事もあり、他竜族の里に出掛けるときもあるので、他の女の人の手前、竜族の里以外の外出を控えてきたようだ。
っと言っても…… 他竜族の里へはもう数十年も行ってないらしい。
「本当はラザノフが特例だからね、私は断ろうと思ったの。 でもラザノフが『特例はリュウでござる』って言うから私もいいかな〜って。 特例だもんね、リュウ君は」
楽しんでもらえるなら特例でも何でもいい。
そんな会話をしながら帰りの船は潮の影響か、今回は5日で帰って来れた。
夕方に着いたので、俺だけは皆んなで直ぐ食べれる食料や酒などを買いに行く。
そして買って来てからは海の見えるリビングで6人掛けのテーブルの椅子に座り、食料を広げた。
家に帰って来てから感じてたけど…… 雰囲気が変。
「さぁ、リュウ君。 ラザノフにも聞いたけど、どうしてこんな家を買えたの?」
待ち構えてたように静かに聞くサラノフさん…… 怖い。
「ギルドの仕事で……」
ウソはついてないぞ……
「…………私はダンジョンには近づくなって言わなかったかしら?」
バ、バレてる!
チラッとラザノフを見ると、済まんって顔……
「注意はサラノフさんから聞きました、すいません。 でも、どうしても行きたいって言う人が居て……」
チラッとラザノフを見る……
ラザノフは、裏切り者〜って顔だけど、本当のことだ。
「やっぱりラザノフね! こんのバカ息子が!」
耳を引っ張られまくっております……
ラザノフ、謝りながら涙目……
「ガハハハ、まぁ良いまぁ良い。 せっかく酒を買って来てくれたんだ、つまみにダンジョンの話を聞かせてくれ」
ガルフさんが仲裁してくれた?
……もう少し早くしてくれれば息子は泣かなくても済んだのに。
それから夕食にしながらダンジョンの話……
途中、サラノフさんが呆れたように呟く。
「貴方達…… 何度死にかけてるの……」
そして最後まで話し終える頃には、ラリィは俺の部屋に寝に行った。
ちなみにラリィはまだ1人では寝れない。
寝る時だけは俺の部屋で寝る。
ガルフさんが難しい顔で話す。
「4本腕のレビッツェルか、よく勝てたな」
「リュウは余裕で勝ってるし焦ったでござるよ。 拙者が戦った中では1番の強敵だったでござる」
ラザノフは里でルカルスさんに挑み、三番勝負の最後で何とか勝てたようだ。
って言うか、1番の強敵は俺じゃないのかよ!
「どうしても貴方は人間には思えないわ。 いったいどうやって戦って勝ったの?」
「実際はラザノフが言うような楽勝ではなかったです。 特にスピードでは負けてたので、無詠唱魔術を織り交ぜて戦いましたよ」
「どんな?」
「例えばこんな……」
丁度悪役のプロレスラーが炎を出すように、上を向いて口から炎をボワっと出す。
「何だそれは? 聞いたことすらないぞ。 まさか…… 他のところからも出るのか?」
「小さな頃に色々試したんですけど、手足、口以外は出なかったですね。 あっ、でも鼻からは大量の鼻水が飛び出しましたね」
「ガッハハ〜、それも使えそうだな。 きっと相手は笑い転げるぞ」
人族には使えても魔族には使えない。
それに俺の自尊心が傷つく。
「そうだ、父者。 拠点が出来たのでラリィの母ちゃんに伝えて欲しいでござる」
「ああ、分かった。 ここなら何人でも泊まりに来れるしな」
確かに部屋数に全く人が足りてない。
ラリィに立ち振る舞いや教養を教えてくれる人や料理を作ってくれる人、つまりしっかり者の家政婦さんを雇いたい。
一応ラザノフにも相談しているけど、まだ見つかってない。
次の日からは大会用に稽古の時間を増やした以外は通常通り過ごす。
ラザノフが両親と共に城への挨拶、街の案内などをしている時に俺はギルドの仕事を頑張った。
そしてガルフさん達が泊まって1週間、夕食時にガルフさんが話す。
「リュウ君、明後日に私等の歓迎で城の立食パーティーがあるんだ。 よければ来てくれ」
流石、竜族の長。
立場的には王様と同等なのかも。
「って言うか、姫が連れて来てって言ってるでござるよ。 だからリュウも一緒に行こう」
誰、それ?
「ラザノフさ、俺に姫の知り合いは居ないよ。 それにもうすぐ大会。 稽古に精を出したいんだ」
「お茶会の姫は忘れたでござるか? それに稽古時間とはズレてるから大丈夫でござるよ」
コイツ…… 俺が纏う、行きたくないオーラが見えないのか?
でもお茶会の姫……⁈
「あ〜、荷物持ちのお姫様か〜」
「プフッ、お姫様に荷物持ちさせたの?」
「いや、しつこく手を出すので仕方なく……」
考えてみると、平民の荷物をお姫様が持つなんて、無礼極まりないな。
名前…… 何だっけ?
「ふふ、流石にお姫様には手を出さないでね。 あの子はどうなの? ギルドの担当でラリィちゃんの家庭教師、良くしてもらってるんでしょ」
ユキナか……
ユキナは可愛い顔で明るくて良く笑う……
でも、最初がカミラさんの妹として見てたので、今更恋愛対象に入って来ない。
お姫様は先ず名前を覚えることから始めたい。
でも…… 本当はこの家を買った時にリリカを迎えに行けると思った。
でも、それには幾つも乗り越えなければならないことがある。
ソマルさんとナッソーさんに納得してもらえるのか?
今のリリカの気持ちは?
何よりリリカを背負って海の滝を乗り越える自信がない。
やっぱりリーブルでいい人を見つけるしかないよな……
ーーーーー
2度目のカルムナージュ城。
前回は馬車を止める場所から城に入ったけど、今回は城の玄関前で降ろされた。
城の前では多くの人に歓迎されるガルフ夫妻……
その間に俺とラザノフは玄関前の庭園を、この前試合をしたジルザルさんとその姪っ子のセシルと言う女の子と回ることになった。
この城は小高い丘にあるので、玄関前と言っても堀で仕切られていて、下までの高さは10メートルくらいある。
ちなみにこの城の西側が湖に面していて、城の上からの景色はとてもいいらしい。
赤や紫の花畑を見ながら時間潰し……
「リュウ様…… リュウ様は私と同じ歳なのですよ」
このセシルと言う女の子も15歳なのか……
セシル 少しふくよかな感じ。 話しやすく貴族を感じさせない。
それは、リシファさんとジルザルさんも同じだけど……
「そうですか。 学校は楽しいですか?」
ここで俺はハッとした。
もうセシルさんの名前を覚えてしまったのだ……
今日、俺が覚えれる人の名前は後一人(俺の頭のキャパを考えると)。
「う〜ん、まだ微妙ですね。 リュウ様が居てくれたらきっと面白かったと思います!」
俺が居ても別に面白くないと思うけど……
「セシルさんは14歳から学校に通ってるんですか?」
「いえ、私は今年からですよ」
後から聞いた話では、貴族でも上級や王族は優秀な家庭教師を雇っているため、16歳になる年から学校に通うことが多いという。
ここで執事の人?が俺達を呼びに来た。
パーティーの準備が出来たようだ。
お城の門のような扉の先にある、天井の高い、だだっ広いスペースに面長のテーブルがいくつも置かれて料理が並んでいる。
奥の方には階段型に台座が置かれて王様夫妻とガルフさん夫妻が並んでいる。
そして王様の長〜い話。
要約すると、竜族とこの国の結びつきを大歓迎しているのと同時に、土竜族の暮らすリバティ国との友好関係もこれから進めて行くようだ。
やっと話が終わったので、早速料理を……
「はい、リュウ様」
ん…… そこには料理を取り分けたお皿とその奥にあるデカい胸が……
視線を上に逸らすと美しい顔の女性…… お姫様だ。
だけど俺をここに呼び出した犯人。
「ありがとうございます」
名前が分からないので余計な会話はしない。
ただ、もらったエサを食すだけ。
「あっ、リュウ様、こんなところに食材が……」
と言って耳の横辺りに付いた食材を取ってくれた女の人……
この人はお姫様に似ている…… 姉妹?
って言うか、周りの女率が高い…… チラッとラザノフの方を見ると、あちらは男率が高そうだ。
「私の弟も口の周りに食材を付けますけど…… プフフ、耳の近くは初めてです。 あっ、ごめんなさい、私、サーラ・リン・ランクーバーと申します、以後、お見知り置き下さい」
周りにもセシルさんや同じ歳くらいの人達が居たので、続々と自己紹介していった……
でも、お姫様はしない……
しなきゃ名前思い出せないよ!
俺の番かよ……
「リュウです。 食材を耳の近くに付ける以外はふつ〜うの、男です」
だから皆さん解散して下さい。 ……と心の中で付け加える。
しかし…… 何故か笑えたようで、更に緊張も解いたようで俺への質問だらけになった。
だいたい女の質問なんて似通っている。
恋人、出身、家族構成などだ。 ……リリカの時もそうだった。
当たり障りのない範囲内で受け応える。
何でこんなに女が多いの?
「あの…… 大会での代表、おめでとう御座います。 必ず見に行きますね」
お姫様…… 何で知ってるの、と思ったけど、ラザノフやガルフさんから聞いたのだろう。
「わ、私も見に行きます」
セシルさん…… 少しリシファさんに似てる。
リシファさんは見に来るのかな?
「まぁパーティー戦でこちらはラザノフと2人だけ。 負けるつもりはないけど厳しい戦いになるでしょう。 良かったら応援して下さいね」
周りに居る女性達を見ながら言った。
反応はさまざま。
顔を赤らめてコクコクと頷く人も居れば、フンッ、仕方ないから応援してあげるって感じの人まで……
でも、皆んな応援してくれそうだ。
「ラザノフ様は必ず勝つと宣言されてましたよ」
お姫様が少し遠い目をしながら言った。
「そうだ、前回ではダンジョンのお話を聞けなかったのでお呼びだてしたのですよ。 リュウ様、ぜひダンジョンのお話を……」
珍しいお姫様だ……
ダンジョンの話なんか面白いか?
まぁ皆さんも聞きたそうなので話すか……
俺はラザノフの活躍を大袈裟に話していった。
そしてそこで気づいたことが2つ。
1つはこのお姫様は魔獣に詳しいこと。
レビッツェルやデボイなど、何で知ってるの、と聞きたくなるくらい知っていた。
もう1つはラザノフの活躍がとても嬉しそうなこと。
さっきもラザノフの勝利宣言を遠い目をしながら嬉しそうに話していた。 ……まさか、お姫様と上位亜人の禁断の恋?
「リュウ様の活躍も私はいっぱい聞きたいです」
と言ってくれたのはお姫様似の女の人、サーラさん。
皆んなドレスを着ているけど、この人のドレスのスカートは短めで、何か良い。
「自分はラザノフに嫌味を言われ続けるほど逃げ回っていたので…… でも、それも活躍と言えるなら活躍ですかね?」
ウソではない。
俺のダンジョンの思い出は、ラザノフをおぶって逃げ回り、ラザノフに嫌味を言われてる思い出が多い。
「はい。 私はそういう人間っぽいところが大好きです」
ドキッとした……
この人の名前、覚えとこ〜っと。
え〜と、サーラ、何とかさんだったな。
「リュウ様は! ……リュ、リュウ様はラザノフ様より剣術の腕がたつとお聞きしましたが……」
リュウ様は! は、大きな声でびっくりした……
泣きそうな顔で訴えるお姫様…… 情緒不安定?
『関係ありません! 私はお姫様の前に1人の女です』
『ござるはござ〜る、ござる……』
『うぅ…… そんな…… ひどい……』
『ノーござ〜る、ノーござるよ』
お姫様は思った…… これは会話が成立しないと。
そこで友達である俺を呼び出し、ラザノフのことを知ることから始めようとしたのであった。
……と、こんな感じか?
……それで、何だっけ?
俺の番ではあるよな…… 皆んな注目してるし……
「と、とにかく大会では全力を出します。 っと言っても皆さん、大会を見に来られるのですか?」
何と言ってもこの人達はお嬢様。
現に俺との会話を後ろの方で聞き耳をたてて居る奴等はこの人達の護衛だろう。
中には俺への苛立ちの視線を送る奴もいる。
「ふふ、私達はチケット持ってますよ」
喰いついてくれたので、上手く誤魔化せたのだろう。
でも、そうか……
大会は各国を順番に回っているのでサンカルムの街では大いに賑わっているのだ、金持ちがチケットを持っていない訳がない。
「リュウ様、必ずやリュウ様の勇姿、目に焼き付けたいと思います」
セシルさん…… ん?
セシルさんがリュウ様って言ってんのにド平民の俺がセシルさんでいいのか?
「セシルさんも、皆さんも、俺は竜族と繋がりがあると言っても所詮は平民。 リュウ様は止めてリュウでいいですよ。 ね、セシルさん」
「えっ、あ、いえ…… リュウ…… ふふ、ダメです、リュウ様」
セシルさんは真面目そうだな……
真面目な貴族娘と言えば俺の中ではリシファさん。
大会前に一度会いに行こうかな……
「平民、平民、へいみ〜ん。 お嬢様方、そろそろ同レベルでのお話をしませんか?」
「ええ、本当に。 僕達の愛馬と共に、お嬢様方を連れ出したい」
「ハハハ〜、それはいい。 僕のコポンチルア (牡馬) の後ろの席はサーラ、君のために空けてあるのだ」
突然、会話に乱入して来た3人組の同じ歳くらいの男。
正直、助け舟としか思えない。
「それでは俺はこれで…… またいつか会いましょう」
僕はもうお城にはラザノフに頼まれても来ません! けど。
しかし、颯爽と去ろうとした俺を呼び止める奴が……
「ちょっと待て。 ……ユーリス姫に対してその別れの挨拶はひどいな。 しっかりと挨拶をするべきだ」
面倒くさい奴等は決まって貴族と俺の中で確定した。
でもユーリスって言うのか…… 初耳だ⁈
「ハハハ、だから平民と言われるのだ、礼儀もなってないな」
「僕のコポンチルア (牡馬) より知能が低そうな男だ」
いや、俺だって馬よりは知能が高いはずだ!
……でも、3人がかりでバカにしまくってるな。
「ハァ、黙れお前等、俺に関わるな」
この瞬間、近くに居た人達が凍てついた……
「なっ、何〜! 平民が無礼な!」
大きな声でアピールかよ……
ざわっと周りの注目がこちらに集まる。
「お前等の基準を俺に押し付けるな、俺は自由だ。 気に入らなきゃ3人まとめてかかって来いよ。 あっ、護衛達も含めていいぞ」
「なっ……」
流石にコイツ等でも俺との実力差は感じてるのか、躊躇いがある。
そこで面倒くさい男、1番手のあの男が来た。
「リュウ! こんな席で揉め事は止めろ!」
ござる無し……
「お前等も拙者の弟同然のリュウをバカにするとは許せん! 拙者が相手する、表に出ろ!」
茶番?
「も、申し訳ない〜ぃ。 こんのバカ息子共め! 竜族と仲良くする会で竜族の関係者に喧嘩を売るとは! ラザノフ様、ガルフ様、申し訳ございません〜」
この人は誰かの親か?
ガルフさんとサラノフさんも近くに来てる……
「ガッハハ〜、構わぬ! だが相手はラザノフにしておけ。 五体満足でいたいならな〜」
えっ、って感じの皆様。
「この子は怖いわよ。 ふふ、大会を見れば分かるかもね」
ガルフさんもサラノフさんもラリィ絡みの吸血族との事を知ってる……
「ガルフさん、サラノフさん、すいません。 トラブルメーカーの俺は先にお暇させてもらいます」
「ん⁈ 馬車じゃないと帰れんぞ」
「このくらいの距離なら問題ないです」
10キロちょっとだろう。
「そ、その格好で走るのですか? それなら私が馬で貴族門までお送りしましょう」
お姫様…… アホか?
そんな事してもらった日には、夜、暗殺者が俺の部屋を訪ねて来てもおかしくない。
「結構です。 平民はこの格好でも気にしないので」
俺はパンツ一丁マンとまで言われた男、正装でランニングしてても気になる訳がない。
その後、俺を追いかけるように馬で追いかけて来た男が、「乗って下さい」と何度も声をかけてきたけどガン無視して貴族門まで走って来た。
俺は本当に貴族が大嫌いだと再認識した日となった。
別に特別嫌なことをされた記憶などないのに、何故なのか?
少しは改善してかないと、いつか大事件を起こしそうな気がする…… まぁラザノフが居なければプユスタールで大事件を起こしただろうけど。
ーーーーー
大会まで1週間を切った今日、俺はギルドのAランクに上がった。
ちなみに最速、最年少Aランカーだそうだ。
そして今日はユキナがラリィの家庭教師の日、終わってから話があるらしいのでラザノフと待つ。
「リュウ、先日のお城の件、あれはお姫様が可哀想だったでござるぞ」
「え? 何でお姫様が可哀想なの?」
「拙者も分からんでござるが、あの後、お姫様はずっと泣くのを我慢してるようだったでござる」
それは俺がいる時もそうだった。
きっとラザノフのことで悩んでいたのだろう。
「ラザノフさ…… 鈍感も悪いとは言わない、でもさ、時には敏感に感じてあげなきゃ、そりゃあ泣きたくもなるよ」
「ん…… 何のことでござるか? それにそのセリフ、リュウに言われると妙にムカつくでござるぞ」
ふぅ…… まぁ仕方ないか……
自分が鈍感な奴って認識している奴は居ないしな……
ここでユキナが地下のラリィの部屋から上がって来た。
ユキナの話を聞く。
「先ずはラリィちゃんの魔術の進行から…… ラリィちゃんは詠唱で風と火を出すことが出来ます。 かなり優秀と言えるでしょう。 今度、船で出かけた時にでもお披露目したいと思いま〜す」
ラリィは最初のイメージはトロそうな子のイメージだったけど、直ぐにコイツ優秀なんじゃねぇ? っと思うようにはなっていた。
なので、やっぱり優秀なんだと思った。
「でも、お披露目は大会が終わったらね。 その時はリュウ君、今度は海底に招待してね」
「別にいいけどユキナは何十分息を止めていられるの?」
「何十分も息を止めれる人は人生でもリュウ君以外に会えない自信があるよ、私は。 私は1分弱、ラザノフ君は?」
「3分は止めたいでござるな〜」
願望かよ!
「分かった。 海底は諦めて空にしてくれ」
「キャハハ、逆にラッキー、約束だよ」
何故、初めから空に連れてってと言わないのか……
まぁいいけど。
「では本題に入ります。 大会も近づきパーティーメンバーの情報も各ギルドに流れて来てます。 そこで…… ジャジャーン!ユキナリポートを作って来ました〜」
「お〜、流石ユキナ、要注意パーティーが分かるでござるな〜」
「ふふ、ラザノフ君鋭い。 さぁ、感謝しなさ〜い」
と言って紙を俺達に渡した。
そこに書いてあったパーティーは……
コッティ率いる……
" 柔らかスコッティ " 6人パーティー
前回 2回戦負け。
リーダー巨乳コッティが率いるこのハレンチ集団は、セクシー衣装を纏い、試合が長引くと必ずポロリする。
「え〜と、ユキナ。 このパーティーって要注意なの?」
「リュウ君…… 君は興味ないの?」
「別に試合中に見たいとは思わないけど。 なっ、ラザノフ」
「あ、えっ、お、おお。 み、見たいとは思わないでござる」
ラザノフ…… 見たいんだ〜。
「試合中じゃなければ見たいの?」
何故そこを掘り下げる!
「まぁね。 って言うか、こんなパーティーばかり書いて来たの?」
わざわざ2回戦負けのハレンチパーティーを書く理由が分からん。
「まぁねってことは、例えば私とかお姉ちゃんとか私のとか見たいの?」
ゴキュリ……
ほ、掘り下げないでおくれ…… 2度も私のって言うからついユキナの膨らみを見てしまった……
この子も良い感じの持ってるな……
「ユキナはギルドの職員の中で何位なの?」
ユキナは冒険者によるギルドの職員、人気投票で1位を取っているのだ。
ちなみにカミラさんはプユスタールのギルドで、毎年2位か3位らしい、その理由は男にとても塩対応だから。
でも、俺にはムフフでハハハだぜ。
「ふふふ、1位で〜す」
「じゃあサンカルムの冒険者全員が、ユキナの乳を見たいと思ってるよ」
「そういう気持ち悪いことは言わないで。 でもリュウ君になら考えてあげよ〜かな〜」
「ユキナ、リュウに惚れたでござるか?」
「な、な、何言うかな〜、ラザノフ君。 さっ、次に行きますよ」
土竜族ラザノフ率いる……
" ステキな変人達 " 2人パーティー
前回大会 不参加
土竜族、族長の次男ラザノフと謎の人間リュウ。
ラザノフは土竜族の槍術ランクで8位、しかし実力は既にトップスリーに入っている⁈
謎多き男、リュウは最速、最年少のギルドAランカー。
得意の依頼は配達。
「ちょっと。 ……俺等の情報書いたって意味ないじゃん。 って言うか、この " ステキな変人達 " って何?」
「えっ、だってパーティー名が必要だったんだもん、コレにしちゃった」
まぁ、ステキな変態達よりはマシか……
どんな想像されるか分からないしな。
「さぁ、ここからが本番よ」
初めからお願いしたかった……
ムジナ率いる……
" 同じ穴のムジナ " 7人パーティー
前大会優勝パーティー
ムジナ 獣人 2年前の個人戦でも代表に選ばれて3位の順位だった。
剣の達人で獣人特有の柔らかさやスピードが今大会でもトップレベルという評価だ。
ローランド 人間 ムジナに弟子入りしてからもう直ぐ節目の10年。
個人戦にも選ばれたが、残念ながら2回戦負け。
コメータ 獣人 棒術道場の師範代。
ムジナとローランドを補佐するように立ち回る。
以上が前衛。
ナンナン 亜人 スキルで矢が曲がるので要注意。
スライダーが得意とエッチな店の女の子に豪語していた。
ピーニー 人間 回復魔術を使う。
前回大会はメンバーではなかった。
バイコス 亜人 シッタ街にある魔術専門学校を10年前に首席で卒業した。
シノスコイバ 人間 バイコスの師と言われてる魔術師シノスコイバ。
ただ前回大会では目立った活躍はなかった。
う〜ん、たまにツッコミたくなる件があるな……
「俺からは1つだけ。 本当にシノスコイバはバイコスの師って言われてるの? 反対から読んだだけじゃなくて?」
「キャハ、ちょっとアレンジしちゃった。 本当の名前はラニー。 つまらない名前でしょ」
「いや別に面白おかしくアレンジしなくていいから。 本当の名前書いてあげてよ」
「キャハハ、了解〜」
可愛いから許す!
……ラザノフも何か言いたそうだけど思い止まっている。
そう、きっとナンナンの件が気になるのだろう。
でもそれを言ったら、貴方達もそういう店に行きたいのね、と難癖をつけられそう。
ラザノフがグッと堪えたところで次のパーティー。
タツタ率いる……
" クララがタツタ " 5人パーティー
前回大会 不参加
オウケン地方を席巻している体術 " タツタ流 " が遂にギルドの大会に参加する。
タツタ タツタ流の創始者。
竜族ハーフで書類上はリュウ君と同じだけど、竜族、ラザノフ君を強く意識しているとの情報がある。
クララ タツタの息子。
1才を過ぎても中々立てなくて両親を心配させた。
しかし、1才半になりようやく立てるようになる。
その時タツタは「クララが立った、クララが立った〜」と喜びまくり、山の上のブランコで遊びまくったという逸話がオウケン地方では有名だ。
ペーター 羊飼いの素朴な少年。
体術を初めて3ヶ月、素質は計り知れない。
他の2人は師範代という情報しかない。
また気になる件が……
何故、2人の師範代の情報を調べず、クララの小さな頃の情報を調べたのか?
はっきり言って大会とは無関係だ。
でも、グッと堪えて次のパーティー。
ターレル率いる……
" 出る杭は打ターレル " 6人パーティー
前回大会 不参加
前回大会は不参加だが前々回大会では準優勝しているパーティー。
ターレル 亜人 剣の道において、ターレルの名を知らぬ者は居ないと言われるほどの剣士。
中位亜人だけど肘の関節が伸びるという珍しい特性を持つ。
ルクイ 亜人 ターレルの息子。
小さな頃から人見知りが激しかった。
あれはルクイが8歳の時、学舎で馴染めずに居たルクイに声をかけてくれた少女マトリーン。
それがルクイの初恋の相手だ……
レコ 人間 中性的な男。
ターレルの1番弟子。
実力的にはターレルと遜色ないとも言われてる剣士、しかも対戦相手は一様に、もう二度と戦いたくない、と口を揃える。
ゴンゾーラ 亜人 棒術の使い手。
前々回の大会でターレルに気に入られ、今回の大会では味方として出場。
パーフロー 亜人 魔術師。
リバティ国にある正式な学校、トリミュージャー学校の魔術クラスの卒業生。
間違いなく卒業生の中では歴代1位の腕前だ。
メーテツオ 人間 魔術師。
同じくトリミュージャー学校、魔術クラスの卒業生。
卒業生の中では歴代ナンバーワンの腕前との評判だ。
う〜ん、我慢出来ん!
「え〜と、卒業生で歴代1位がパーフローで歴代ナンバーワンがメーテツオなんだね?」
「…………… 次が最後よ。 グダグダ言う前にちゃんと対策してね」
……初恋の相手の情報で対策なんて出来ません!
でも、グッと堪えて最後のパーティー。
ハーテマルが率いる……
" 電撃ハーレム " 7人パーティー。
前回大会 ブロック決勝敗退
ハーフとクォーターで構成されてるパーティー。
だけどスキルを遺伝してない人も多い。
ハーテマル 中位亜人 上位亜人、エステルズ族と中位亜人とのハーフ。
スキルは " 計算 " 。
勝つための計算をして的確に指示するリーダー。
ランフラン 人間 亜人とのクォーター。
スキルは遺伝されてないが、大剣を操る大男。
レム 人間 獣人とのハーフ。
特殊能力 " 予測 " が遺伝されている。
つまり " 予測 " と " 計算 " で味方を動かし勝利を掴むのがこのチームのパターン。
アイリス 人間 上位亜人、雷将族と人間のハーフ。
人間の母は上級貴族で、本人は離島で隠されるように育った。
スキルは " 雷撃 " 、中指と人差し指から電流を飛ばす。
クールビー 人間 回復魔術を操る女子。
ここサンカルムの学校の魔術クラスの卒業生。
魔術の腕前は歴代トップなの?
トロンとブルージェイズ。 人間 中位亜人と人間のクォーターで双子。
スキルはないけど剣術の腕前はトップなの?
……何で質問されてるんだ。
とりあえずはスルー。
「このパーティーはフェークスで俺は会っているよ」
「マジでござるか…… 強そうだったでござるか?」
「分からない。 そういう目で見てなかったから」
アイリスさんと戦うことになったらヤダな……
「ちょっと、ちょっと貴方達…… 私のレポートに対して何もなし?」
「ありがとう、ユキナ。 面白いレポートだったでござるよ」
ユキナは満足そうに笑っている……
自分の担当パーティーとはいえ2人だけのパーティー。
レポートを面白おかしく作ったのは、そこまで期待はしてないからか。
「とにかく貴方達は2人だけ。 2人共、絶対に無理しないでね。 特にリュウ君は人間、大怪我なんてしたら私は泣くよ!」
それは分かっている。
ラザノフと比べてこの身体がひ弱なことくらい……
まぁ今回は純粋な腕試し。
俺の剣が通用するのかしないのかは、俺も楽しみだ。




