カルムナージュ城
第二章 成り上がり
第六十三話 「カラムナージュ城」
やっと帰って来れた安堵から、ふぅ、っとひと息ついてギルドへの道を行く。
生きて帰って来れたことを実感すると、全てが美しく感じる。
街を歩く女の子も、今日は可愛い子が多い気がする。
ほら、今すれ違った双子? なんてめちゃくちゃ可愛い顔してる……
なんて思っていると……
「リュウ君!」
聴き慣れた声…… カミラさん!
カミラさんは走って抱きついて来る。
俺はしっかりと受け止めた。
「うう〜、リュウ君…… 生きていてくれた……」
そう、ダンジョンに入ってひと月、やっと帰って来れて、やっと報告に行けるのだ。
「カミラさん、もしかして心配してプユスタールから来てくれたの?」
「うん。 3日前に着いて色々探したんだよ」
「もう…… ダンジョン攻略をさせたって、お姉ちゃんに凄く怒られたんだからね、リュウ君。 ところで今まで何してたの?」
ユキナさんも一緒……
それにしてもカミラさん、プユスタールから心配で来てくれたって……
確か1500キロくらいあったような……
「カミラさん…… ありがとう、でも、リョーキさんは?」
「ふふ、来年結婚する代わりに、許してくれたよ」
「マ、マジで? そんなんでカミラさんとリョーキさんは幸せになれるの?」
「私は2人とも好き。 それをリョーキも知ってるし、貴方なら納得って言ってたよ」
心の広い人だ。
もし俺ならイジけて酒を飲みまくって泣いてるかも…… いや、あの人も多分同じか。
「仕事は?」
「有給もらったよ。 だから帰る前に無事を確認出来て良かった」
「それっていつ帰るの?」
「明日帰る。 船と馬車で10日近くかかるから……」
「それなら俺が送ってくよ。 夜だけ飛んでも2日あれば着くし、その分ゆっくり出来るでしょ」
流石に心配でここまで来てくれた人を、そのまま帰すなんて出来ない。
「本当! 嬉しい…… でも今日の夜も明日も暇になっちゃうな〜」
「当然、俺がこの街を案内とか…… 俺がこの街を案内されたいな、カミラさんに」
カミラさんはこの街で学校に通っていたのだ。
「ふふ、任せて。 昼も夜もお風呂も一緒だね」
「はっ? 何どさくさに紛れてお風呂まで付けてるの? お姉ちゃんは他の人の婚約者でしょ! 2人で会うのは禁止、私も付いて行きます」
「ユキナも有給取ってどっかに行って、ユキナも有給取ってどっかに行って、ユキナも有給取ってどっかに行って」
「呪いも催眠術も効きません。 ところでリュウ君はひと月もどこに行ってたの? ダンジョンには入ったの?」
「本当に担当の癖に無茶なことさせるんだから。 そう言う時は担当として『ダメです、認めません』ってビシッと言うのよ」
「ご、ごめんなさい……」
カミラさん…… シクシク泣いてたような……
「ダンジョンに入って、昨日戻って来たんだ」
「ひ、ひと月も?」
ユキナさんに頷く。
「リュウ君、私、ラザノフ君にも会いたいんだけどラザノフ君は?」
カミラさんの質問に応えようとした時、ビューっと突風が吹いた……
「リュ、リュウ君…… 何故、泣いてるの……?」
ーーーーー
あの戦いから3日、ラザノフは目を覚まさない。
医療のイの字も知らない俺とラリィでは、ただ寝かせておくしか出来ない。
ただ俺は10時間置きにゲリールをかけてる。
だけど回復薬と回復魔術の重ね掛けは意味がない、と聞いたことがあるので気休めでしかない。
ラリィはラザノフの手を握り、いつも話しかけている。
お母さんのことも話してたけど、また会えるのを今から心待ちにしているようだ。
ラザ兄におかげだよ、と言っていたけどアレは僕の活躍では…… と思ったけど、まぁいいや……
その日の夜、ラザノフは目を開けた……
それから2週間、ラザノフが起き上がれるまで回復してから帰りのスタート。
帰りは戦闘はせずに逃げる作戦。
ラザノフはまだ戦える状態にはない。
しかし……
違和感があったのは2つ上の階層、ゲンパチとルシフェルが居ないのだ……
その後もダンジョンに魔獣は居なかった……
今思えば、ゲンパチとルシフェルとの最後、何故か2人が寂しそうな顔をしてたのが今なら何となく分かる。
俺達がダンジョン攻略すればゲンパチとルシフェルは消える。
逆に攻略出来ない時は俺達の死を意味する……
どちらにせよ、あの時で永遠のさよならだったのだ……
まぁ、それでも魔獣が居ないのは助かる。
俺達は細かい休憩をしながらも、3日で帰って来れたのだ。
ーーーーー
「え? 今の風で目にゴミが入った。 ラザノフは旅館に居るよ、怪我しちゃったから静養してる」
まだ回復しきってない。
ただ目を覚ました時に比べれば、体重なんかも徐々にだけど戻ってきている。
「ラザノフ君…… 大丈夫よ……ね?」
カミラさんは優しいな……
「大丈夫、2、3日すれば夜に皆んなで食事くらい出来ると思うよ」
「本当? 良かった…… でもその後は2人で……ね」
俺だってそうしたい。
何せゲンパチ、ルシファ肉を食べてから下半身が少し変だ……
「ダメです! リュウ君もそんな顔しないで。 どうしてもって言うなら婚約者の居ない私が相手します。 お姉ちゃんより若いし、今の担当なので仲良くしといてリュウ君的にも損はないでしょう」
何の相手をすると思っているのだろう……
「貴女みたいな子供が何言ってるの? 今、貴女がすべき事は有給を取って旅行に出かけることよ」
プフフフ、カミラさん面白い……
「行きません〜、もう! リョーキさんに言っちゃうから」
「いいよ、公認だもん。 それより貴女もいい人見つけなよ、一応ちょっとだけは可愛い顔してるんだから。 後はその性格ね。 新しいことを感じたり、見たりするの。 そうすれば少しは性格も良くなるはずよ。 ……つまり旅行ね。 今、この足で旅立ちなさい」
「旅立てるわけないじゃない、今から仕事なんだから。 リュウ君、お姉ちゃんと2人きりは禁止だよ!」
「あ、うん。 俺もギルドに行くから一緒に行こう。 カミラさんは俺達の泊まってるところに来る?」
「うん、 ラザノフ君もラリィちゃんも居るでしょ」
「居るよ。 きっとカミラさんが行けば喜ぶよ。 いいよね、ユキナさん」
「いいよ、2人きりじゃないなら」
という事で、カミラさんを旅館に案内してからギルドに行く。
そして報告。
「それで? ひと月もダンジョンに入ってて何階層まで進めたの?」
「最後まで行ったよ。 これが希少鉱石、鑑定してくれる」
と言って、希少鉱石を取り出す。
「えっ、えっ? はっ、えっ? こ、攻略出来たってこと……?」
「正直、何回も死にそうになったけどね」
ユキナさんは希少鉱石をジッと見ながら動かなくなった。
ダンジョン攻略。
攻略されたダンジョンには魔獣が居なくなり、何年もかけて、やがて穴が塞がる。
つまり、今ならギルドの職員が確認しに行けるということ。
「一応、本当に攻略したか確認させてもらうけど、希少鉱石の価値には関係ないはずです。 鑑定は少し時間がかかるけど、いいよね」
全く問題ないので頷いた。
それでも実際に俺達はお金がない。
とにかく回復薬代が嵩んだのだ……
ラザノフも働けないから俺がやるしかない。
幸い、まだ2週間程度は何もしなくても食っていける。
カミラさんが帰ったら、フルパワーで働こう。
夜、ユキナさんが仕事が終わってからカミラさんと一緒にサンカルムの街を案内してもらう。
俺達が泊まる海沿いの旅館から貴族街の方へ1時間ほど歩いて行くとあるのがギルド。
そこからまた貴族街の方へ歩いて行くと、見覚えのある建物が……
「リュウ君、この建物は何でしょう?」
「闘技場。 ゴールタールの首都、フェークスで同じのを見たよ」
「あっ、ラリィちゃんの時のね」
あの時はカミラさんが飛ぶルートを教えてくれた。
「うん。 今年、この闘技場で大会があるんでしょ」
「それはこの街に住む私が説明します」
と言って、ユキナさんが説明してくれた。
闘技場で行われる大会は、ギルド、学校、貴族などがメインである。
ギルドの大会。
開催は4年に一度。 パーティ戦と、2年ずれて開催される個人戦がある。
今年はサンカルムで6月にパーティ戦がある。
個人戦は2年後にリズーン国のパルモという都市で開催予定。
参加出場パーティ。
その都市のギルド職員による推薦で3パーティ。
1つの国から9パーティで63パーティ、プラス前回優勝パーティが無推薦で出場出来るので計64パーティのトーナメント戦。
俺が出れるとしたら、2年後の個人戦……
何としても、2年後の個人戦で優勝する!
学校の大会。
今回の大会場所はゴールタールの首都、フェークス。
11月に魔術と剣術を闘技場で、勉強は10月に代表がテストを受ける(リシファさん頑張れ)。
各校の魔術と剣術の代表は夏休み前に決まる。
貴族の大会。
興味ないので、耳に入って来なかった。
その後は2人の思い出深い場所、学校まで案内してくれた。
学校は前世と余り変わらない。
ただ魔術練習場があるのと、王族だけが使用出来る道場が奥まった場所にあるらしい。
つまり、王子もこの学校に通うってこと?
「ユキナさんはいつ卒業したの?」
「前年度だよ」
「王子とかも通ってたの?」
「王子様は居なかったな〜。 でもお姫様は通ってたよ。 最後のお姫様」
「最後のお姫様?」
「うん。 最後のお嫁さんの末っ子って意味。 凄く綺麗な子だったよ」
正直、俺は綺麗より可愛い子がタイプだったりする。
「貴族やお姫様に嫌なこととかされなかった?」
カミラさんは貴族に妾になれと脅されてた。
「うん、全然。 お姫様が居たから皆んな行儀良くしてたよ」
確かにお姫様の前で、平民の娘に妾になれとは言えないだろう。
「私の時は王族は通ってなかったな〜。 でも、王子から妾になれって言われたら断れないから良かったかも」
そんなの俺がリョーキの立場なら、王子でも関係なくぶっ飛ばす自信あるぞ……
「それでも面白かったな〜、学生時代……」
「学校はここだけ?」
「16歳以下の学舎は3つだっけ?あるけど、16歳からの学校はここだけよ」
つまり、金持ちで頭が良い人しか通えない学校か……
まぁ、王族まで通ってるならアホは通えないだろう。
「リュウ君はゴールタール国生まれなの?」
カミラさん…… ユキナさんに何も教えてないのか。
「俺の出生は秘密。 でもカミラさんは直ぐに当てたけどね」
「それはギルドの職員だからね。 飛竜族ハーフ、ラザノフ君と友達、最初の冒険者登録はゴールタール…… それらを踏まえて考えると候補は限られてくるからね」
「ハズレ。 だいたい俺は飛竜族ハーフじゃない、そう登録してるだけ。 俺はクォーターらしいよ、無詠唱種族の」
「無詠唱…… ウソ…… 何で……?」
「知ってる? 無詠唱種族」
「ごめんなさい、信じられない…… 500年前に絶滅した種族だよ」
何故、レイモンとリーブルで絶滅した時期が大きくズレているのか……?
謎の種族…… 詳しい人は居ないのか?
「お父さんやお母さん、兄弟は?」
「俺は孤児で兄が1人。 今は兄も遠くに居るよ」
「孤児…… 見事な大逆転ね……」
大逆転? っていう顔をしてみた。
「あの希少鉱石を売れば、リュウ君は大金持ちになるはずだから」
大金持ち! ……ラリィがいるので家が欲しい。
買えるかな……
その後、食事に行ったり、海へ散歩したりしながら数日を過ごし、カミラさんはプユスタールへ戻った(送って行った)。
ーーーーー
それから1ヶ月、ラザノフが全快する頃、フルパワーで働いてた俺はとっくにBランクへと上がっていた。
季節は春。
この世界でも4月から新入学となる。
俺の頭が良ければ学校に通ってもいいけど……
「ちょっと聞いてよリュウ〜。 皆んな酷いんだよ」
何だろう?っと思っても言葉が喋れない……
「だってリュウの頭の中身が全部ルークに持ってかれたって皆んな笑ってるんだよ〜。 パンツ一丁のアホだって〜。 キャハ、酷いよね〜」
いや、わざわざ教えるマシェリが1番酷いから!
はっ、昔の嫌な思い出が……
……まぁ、と言うように俺はなかなかのアホ強者、学校などとは無縁だ。
ーーーーー
「リュウ、ユキナ殿が来たでござるぞ」
今日はユキナさんに家を見に連れて行ってもらう。
希少鉱石をギルドに引き取ってもらったのだ。
値段は94万トア。
諸経費を引かれてこの値段、何回か死にかけたとは言え、この値段は凄すぎる。
……と言っても、俺にはピンとこない。
ラザノフが16年間で貯めたお金が700トア……
思えば、兄、ルカルスからはウスノロと罵倒され、父、ガルフからは狩りもまともに出来ないとは…… と、ガッカリされ、母、サラノフからは貴方のいいところはデッカいあそこだけね、と言われながら貯めたお金に違いない。
そして計算では、ラザノフが160才の時に貯まってるお金は7000トア。
……やっぱり94万トアは凄すぎる。
「え〜と、リュウ君の希望が海の見える場所、ラザノフ君の希望は両親を招待出来るような大きな家、ラリィちゃんの希望は地下に広く暗い部屋がある、それらを踏まえて探したのがこの家です」
ここは船着場から近い高台の住宅地。
細く入り組んだ道を登ってくるとある、高級感溢れる白の大きな家。
この辺りは角張った家が多いが、この家は円形が使われている。
海に面して庭があり、家に入ると1階は大きな窓の大きなリビングがあり、そこからも海が見える。
後は部屋が1つにトイレと大きな風呂。
地下はやたら広い大部屋があるのでトレーニングルームにしたい。
2階は海に面して5部屋もあるが、それほど大きな部屋ではない。
海に面してない部屋も2つあり、2階にも小さな風呂、トイレが付いている。
「お兄ちゃん、ラザ兄、ラリィこの家がいいだの」
いいと言われても、値段を聞かないと何とも言えない。
「そうか〜、ラリィ。 ユキナ殿、ここに決めるでござる」
なっ…… 値段も俺の了承も聞かずに決めるとは、流石デッカいあそこの持ち主、豪胆だ!
「え…… いいの?」
チラッと俺を見ながらユキナさんは言った。
「別に俺はいいよ。 俺の希望通りではあるし」
俺は海が近くて見えれば何でもいいのだ。
「そう、この家の値段は74万トア。 お金持ちしか住んでないエリアだから治安なんかもいいんだよ」
それならラリィ的に安心出来る。
「それとリュウ。 出来れば拙者、馬車が欲しいんだが……」
「いいよ、里に帰りたいんだろ」
「お〜、そうでござる。 出来れば両親をこの家に招待したいでござるよ〜」
「ラザノフ君、それなら船なんてどう? 今、中古だけどまだ新しい船が安く売られているの」
船…… 確かに馬車なんて比べ物にならないほど早く着きそうだ。
しかも、土竜族の里は海から近い。
「欲しいでござる〜。 リュウ、いいか?」
今度は聞くのか。
「いいよ」
ちなみにダンジョンの報酬で買った物は、2人の持ち物になる。
船は5万トアで中々の値段だ。
家の引き渡しはひと月程度、船は半月程での引き渡しらしい。
「それでリュウにもう1つ、明後日に拙者と一緒にカルムナージュ城に行って欲しい」
お城? ナゼ、ワタクシノヨウナイナカモノガ?
「ヤダ」
ラリィっぽくキッパリと断ってみた。
「頼む、頼むでござるよ、リュウ。 お城でダンジョンの話をしたら皆んなリュウに会いたがったでござるよ〜。 ダンジョンを1人で攻略したことには出来なかったでござる〜、だから頼む、リュウちゃは〜ん」
そ、それは!
ドスケーベがリリカを呼ぶ時に使っていた、リリカちゃは〜ん。
今、確信した…… この世界は繋がっている!
「ラザノフ君はお姉ちゃんにプレゼントされた正装があるけど、リュウ君はあるの?」
「頼めるでござるか? ユキナ殿」
何で、行く流れになってるの?
「キャハハ、いいよ、その代わり2人共『ユキナ』って呼んで。 『ユキナ殿』は特にイヤ。 それとリュウ君は船が来たら私を空に招待して欲しい。 お姉ちゃんが帰った時、リュウ君と空を飛んだ自慢ばかりするの。 だから私もいい?」
爛々と目を輝かせて俺を見るユキナさん…… いや、ユキナ。
もう断ることは出来なそうだ。
明後日
タキシードに身を包み出発する。
タキシードはユキナがプレゼントしてくれた。
何でも、ダンジョン攻略の担当報酬がサンカルムのギルドのレコードだったらしく、どうしてもプレゼントさせて欲しい、と言うのでプレゼントしてもらった。
宿屋から貴族門まで歩き、そこから迎えに来てくれた馬車に乗り込む。
馬車に乗ったのは2度目。
前回は海の孤児院から首都の近くの孤児院まで馬車に乗った。
とても乗り心地が悪かったのは馬車自体が悪かったのと同時に、道もガタガタだったからだろう。
今回は、もう馬車の中に入った瞬間からゴージャスな内装で前回とは違う。
しかも道も整備されてるので気になるガタつきはない。
走ること30分くらい……
馬車を降りて、執事? のような人にお城の中の一室まで案内されて待機するよう言われた。
お城は湖の近くにあるけど、ここから湖は見えない。
「リュウ、今日は謁見の間でビッシュ王に会う。 リュウに興味のある人も集まってると思うが失礼のないよう頼むでござるぞ」
「大丈夫、俺が嫌いなのは貴族だ。 王族は別にどうでもいい」
ラザノフは思う。
王族は王位継承権を持つ貴族。
でもリュウには黙っておく。
それから執事に呼ばれて、謁見の間へ。
王の前まで進む。
跪いて頭を下げて、呼ばれたら返事をすればいい、とラザノフにザックリと教わった。
本当にザックリでびっくりだよ……
「其方がリュウか、面を上げよ」
頭を上げて王を見る。
そして軽く自己紹介した。
王の名は長いから「ビッシュ」だけ覚えろとラザノフにザックリと教えられた。
そのビッシュ王。
歳の頃は60才を超えてそう。
人の良さそうな目元。
平民への理解が深いと聞いたような、聞かなかったような、ぶっちゃけ忘れた。
その周りに14人の成人の男女に子供達……
少し離れて兵士達。
美形が多いのは美人ばかりを奥さんにしてきた証だろう。
でも中にはブサイクもいる。
俺はそんなブサイクさんが意味はないけど好きだ。
ホッとする。
「リュウよ、ラザノフが言うには其方はハーフの人間。 しかし恐ろしく剣の腕が立つという。 どこの流派の剣だ?」
「自分の剣は我流、つまり自己流です」
「なっ⁈ でも誰かに教わっておろう」
面倒くさいので兄とでも言っておくか……
「じゃあ、兄で……」
ゴホ、ゴッホンと、ラザノフが何か俺に合図した。
……ナンデスカ?
「じゃ、じゃあ兄…… 兄で間違いないな。 それなら兄が誰かに習っていたと言うことか…… 見てみたいの〜、竜族が認める剣の腕を」
「……機会があれば」
この流れは……
「僭越ながら申し上げます。 その役、私にやらせてはもらえないでしょうか」
「ん…… ジルザルか、面白い……」
やっぱり……
ど〜せ、仕込んでたんだろ。
でも俺は負けてあげないぞ……
結局、茶番のやり取りの後、俺はジルザルと言う人と試合をすることになった。
場所は中庭。
ゾロゾロと中庭まで移動する中、ラザノフは王族の人と仲良く話している。
俺はぼっちだけど…… ん、と思い周りを見渡す。
バチ、バチバチっと色んな女の人と目が合った。
俺の周りには…… お姫様だらけ?
中庭は観賞用の植物が多く生り、テーブルや椅子まである。 ……きっとここでお茶会でもするのだろう。
もちろん、試合が出来るだけの広いスペースもある。
さっきの執事が多くの木刀を抱えて来たので、いつも使っている長さに近い木刀を選んだ。
タキシードの上を脱ぎ、シャツのボタンを外す……
しかし、ここでハッとする。
ラザノフが遠くに居てタキシードを渡せないのだ。
タキシード…… 俺が買ったなら適当にそこらへんにぶん投げるけど、これはユキナからのプレゼント、どうしよう、と思っているとスッと腕が伸びてきた。
何だ、この腕は? と思ってその腕の主を見ると、さっき目が合った人の1人……
「リュウ様、持ちますよ……」
リュ、リュウ様! に、似合う。
って言うか、アンタ誰?
「ありがとう」
でも、持ってもらう。
少し動いてみる…… 動きづらいけどこんなもんか……
試合が始まる前、集中して全体を見る……
地形に有利不利はない、つまり有利になるように動く必要はない。
さっき居た王族の人達、全てがここにいる。
憧れの人を見るように俺を見る子供までいる。 ……何で?
視点を徐々にジルザルさんに合わせる。
多分、30才くらい。
この国の4人いる兵団長の1人で1番若い。
ガッチリしてるけど、痩せ型、175センチくらい。
ちなみに俺の背は鈍化はしたけど伸び続け、今は180近くある。
試合が始まる。
俺はいつものように相手を見るスタイル。
壁紙に描かれてる肖像画の宮本武蔵のように……
ジリジリと間合いを詰めて来るが打ってこない。
それならこっちから打って出る!
踏み込んで内側から右下段、流れるように左上段が追いかける!
カン、カンっと下がりながら上手く捌いたジルザル。
そのままジルザルは攻撃に繋げようとするが、ハッとしたように慌てて俺の右中段を防御する。
その後も防御一辺倒になるジルザル…… そう、もう蓮撃は始まっている!
4セット目にレビッツェルとの戦いで進化した、微妙なスピードの強弱により、ジルザルは数撃当たった後、参ったをする……
捌くのが上手かったジルザル、もう少し様子を見て攻撃力も見れば良かったか。
まぁでも、完勝!
ーーーーー
その後、何故だかお茶会みたいになった……
面子は、俺、ラザノフ、ビッシュ王、ジルザルさん、荷物持ちのお姫様、ビッシュ王に似てる人の6人。
テーブルが6人掛けなので、これ以上は座れない。
ビッシュ王がさっきの試合について話しだす。
「どうしたジルザル…… どこか痛めておったのか?」
「いえ、そう言う訳では…… 何と言うか試合前、対峙した時に、全てを見透かされているような不思議な感覚になってしまって…… 実際その通りの試合になってしまいました」
「その感覚、拙者も分かるでござるよ。 特に剣術でのリュウとの試合で感じる感覚でござる」
ラザノフは変わった。
ダンジョン攻略してから雰囲気が出て来たのだ。
格上に対して少し気後れするところがあったラザノフ、しかし格上のレビッツェルを倒したことで自信が雰囲気に出ている。
「お父様、リュウ様をぜひ私の剣術の先生に」
荷物持ちお姫様……
さっき自己紹介してたけど、今日はもうビッシュ王とジルザルさんの名前を覚えてしまった。
なので…… 忘れた。
「ならん。 剣術の趣味はここまで、これ以上はならん。 それより花嫁修行に勤しめユーリス」
ユーリスか……
綺麗な人だ……
ユーリス
歳は同じくらい?
170センチはありそうな長身。
美形が多い王族にあっても目立つほどの小顔美人、おまけに胸がデッカいっス。
落胆の色が濃いユーリス姫、泣きそうな顔で何故か俺を見る……
な、何よ…… 僕は関係ないでしょ……
「それよりこの国の団長がこんなにアッサリやられたらマズいでしょ。 大丈夫なの、この国?」
この人は多分ビッシュ王の息子。
歳は40才近いので、ユーリス姫とは母親が違うのだろう。
名前は…… え〜と、多分、王子だから、多分王子でいいや。
「土竜族の兵団長の我が兄者とも互角だった男、むしろジルザル殿の防御技術に感服したでござるよ」
リュウは強い。
自分が死ぬ間際だったレビッツェルとの戦い、だけどリュウは余裕で勝っている。
しかし本当に強く怖いと思わせるのは "悪リュウ" だ。
コイツは躊躇なく、破壊や不意打ちなどをして来る。
もし今度アイツが出て来るなら、100パーセント味方でいたいと思う。
「な、なぁ、リュウ君。 君は学校へは通わないのかい? ラザノフ君と通えばナラサージュの剣術は1番になれるんじゃないか?」
この空気を誤魔化すようにジルザルさんが話題を変えた。
平民の俺にも "君" 付けしてくれるのは、俺を竜族の親戚と思ってて、実際にガルフさんが後ろ盾になってくれてるからだろう。
「大会でござるな、出たいでござるよ〜」
「そ、それならリュウ様も学校に通いましょう」
ヤダ!と言いたいけど、失礼になっちゃう。
「ラザノフはせっかく里を出てるんだ、通えば良い。 でももう1人は働かなきゃいけない。 ラリィのこれからもあるし……」
ラリィには教育費がかかる。
魔術を教える人や一般教養を教えてくれる人を雇わなきゃならない。
「確かにそうてござるな…… それなら拙者だけ通うわけにはいかないでごっざあ〜る」
後で通いたいなら通え、とラザノフに伝えよう。
その後、俺の兄や出生に関してビッシュ王や多分王子に聞かれたけど、ラザノフが上手く誤魔化してくれた……




