ダンジョン攻略 2
第二章 成り上がり
第五十九話 「ダンジョン攻略 2」
地下3階。
狭くて暗いトンネルを1時間近く下った先にあったのが、攻略されてる最後の階層、地下3階。
また崖の上に辿り着いたので下を見下ろし、辺りの様子を確認すると……
正面の100メートルくらい先に崖があり、その下に川が流れている。
こちら側も崖なので、崖に囲まれている。
今いる場所から下までは50メートルくらい……
下にはこの階に出てくる魔獣、ザナドゥが見える。
上から見える限りは川縁にザナドゥが多そう。
「リュウ、ここは下の川をずっと下って行くと、川が崖の中に入って行くらしい。 その横に洞窟のような穴があり、降り口があるでござる」
川が崖の中に入って行く……
「そこまでの距離は?」
「5キロくらいとユキナ殿は言ってたでござる」
川沿いを5キロ歩いて下ると、ザナドゥと何度も戦うことになる……
「ラザノフ、ここは飛んで行こう」
「え…… 5キロ、飛べるでござるか?」
「来る時にも数キロは飛べた。 5キロくらい飛べないと、この先に進むのは無理だと思う」
17年、攻略されてないダンジョン。
ラザノフが言うように、飛べないと攻略出来ない可能性が高い。
「分かったでござ〜る。 ……ところでリュウ、今何時でござるか?」
「ああ、腹減ったね。 ……って言うか、もう3時過ぎてるよ」
夢中だったから気づかなかった。
「ここなら安全でござる。 飯食ってから行くか?」
「いや、昼飯は抜かそう。 重くなるのも嫌だし」
後ろに誰かを背負うと体力が減るし、魔力の消費も多い。
特にラザノフをおぶると体力の消費が激しい。
なるべく軽い時の方が絶対楽だ。
ラザノフをおんぶって飛ぶ。
川の上を飛びながら、下にいるザナドゥを観察……
川の近くの草むらに群れで寝ている。
ザナドゥ 見た目はワニやオオトカゲに似ている爬虫類。 噛まれると数日は高熱がでる(餌になってなければ)。
そして右側の崖の壁を見ると、ポコポコと所々に2メートル程の深さの穴がある。
スッと寄って見るけど、ただの穴……
「リュウゥ、空はいいでござる〜」
……呑気だな。
俺にそんな余裕はないぞ!
しばらく進むとザナドゥのいそうな場所が分かるようになってきた。
ザナドゥは川から左の広いスペースに多くいる。
右の壁側には殆ど姿は見えない。
多分、降り口があるのは右側の穴、上手くいけば本当にザナドゥを交わせるかも……
5分も飛んだだろうか、前にも崖が見える……
「ラザノフ、そろそろ右側に深そうな穴がないか注意して見てくれ」
「了解したでござ〜る」
それから更に進むと前には崖が立ち上がり、川が流れる場所だけポッカリと穴が開き、川の水が壁の中に吸い込まれている。
「リュウ、この手前に小さい穴ならあったでござるぞ」
俺も見た……
でも、屈まなければ入らない程の小さな穴だった。
そこまで行くと……
穴 川の水面から1メートルくらいの高さに空いている。
多分だけど、穴が小さくてザナドゥは入れない……
そのまま入ると……
7メートル程進んだ所に蓋があって、それをズラすと階段が出て来た。
「ザナドゥは居なそうでござるな…… どうするリュウ? このまま進むでござるか?」
嫌な予感がする……
多分、ラザノフも嫌な予感がするから、進むかどうかをいちいち聞いたのだろう。
「何か息苦しいけど進まなきゃ意味がない。 注意して進もう」
「ああ、了解でござる」
階段を20段程下りると、そのままトンネルが続いていた…… 丁度、地下通路のようだ。
道には骨が落ちている…… 冒険者?
それにしても…… ガンガンに頭が痛い。
「リュウ、急いで戻ろう!」
ござる無し…… 緊急事態か!
走って穴の入り口まで戻る……
「ハァ、ハァ…… 息苦しさと頭が痛くないでござるか?」
「うん、痛い…… 何で?」
「多分、あそこには酸素がない…… あのまま数分あそこに居たら、拙者もリュウも意識を失い亡くなってた可能性が高いでござるよ」
……その後、ラリィが様子を見ると、俺とラザノフが倒れてる……
ラリィはこのダンジョンでは生きていけない……
「とりあえずここも安全でござる。 飯でも食べて作戦を練ろう」
「ああ、でもここより崖に空いてた穴に行かない? 高い位置にもあったから」
「そりゃあいい。 そこで休憩しながら作戦を立てよう」
という事で……
なるべく過ごし易そうな穴を選んだ。
ここならラリィも呼んで一緒にご飯を食べれる。
ラリィを呼んで食べ物も取ってもらい、食事にする。
パンと果物だけ、だけど……
「リュウ、これからは魔獣も食べなきゃいけないでござるぞ」
下を見ると、ザナドゥが……
意外と美味そうだ。
「そんでどうするの?」
「そうでござるな…… 空気を充分送り込めればいいが……」
ラザノフが申し訳なさそうに俺を見て言った。
「分かった。 でも今日はここで過ごして、寝てからにしよう」
もう、朝とか夜とかはない。
「分かった。 魔力を回復させてくれ。 ラリィ、堕ちたら喰われるでござるぞ」
ラリィは下を見て、ニヤッと笑った。
「ラザ兄、ラリィは飛べるのであ〜る。 堕ちるのはラザ兄だけなのだ〜、ガッハッハ〜」
「ラザノフが堕ちても喰われないと思うよ。 不味そうだし……」
「なっ! 美味いでござるぅ。 拙者は美味いでござるぅ」
このぶりっ子っぷり……
俺がスカウトならアイドルとしてスカウトするな。
「グゥワハッハッ〜」
やっぱり絶対しない。
「お兄ちゃん、ラリィ、飛びたい」
最近、少し方言が抜けてきたか⁈
「いいよ、その代わり自力でこの穴に入ること」
「……ラザ兄、いい?」
「おお、いいでごっざ〜る。 受け止めるでござるよ〜」
そういう意味で言った訳じゃないけど……
まぁいいか。
というわけで、下にザナドゥがいることを構わずにラリィは飛んだ。
ーーーーー
寝た後に時計を見ると…… 夜中の3時だった。
地下なのにずっと明るく、暗くならない。
ダンジョンとは不思議な場所だ……
「リュウ、そろそろ行くか?」
ラザノフはもう起きていた……
頷き、出発する。
穴を入った所から、風を送り続ける……
1時間も送り続けたろうか、ラザノフが少しづつ進もう、と言ってきた。
少しづつ進み階段を降りる。 ……その間もずっと風を送り続ける。
地下通路を進んでいても頭が痛くならない、成功か⁈
「それにしてもリュウの血に入る亜人は何でござるかな? 上位亜人で間違いないけど、それにしても魔力が多過ぎる」
ラザノフに分からないなら、俺には絶対分からない。
「竜族と吸血族の魔力量は?」
「吸血族は多いでござるよ。 だから、ラリィにリュウが魔術を教えてあげてほしいでござるよ」
「絶対無理。 俺、詠唱なんて覚えられないし覚えてないもん。 だいたいコレって何て名前の魔術?」
口の中でアイス何とかを作り、ブッと吐く。
ズキューンとアイス何とかが飛んでいった。
「や、やっぱり凄いでござるな…… もう変態としか思えんでござる…… あ、その魔術の名はアイスアロー、下級魔術でござるよ」
アイスアローか……
でも、もうアイス何とかでいいや。
「竜族は?」
「飛竜は魔力が多いでござるよ。 飛竜化で翼が生えて魔力が増える。 でも竜族の中で一番力が弱い。 土竜と氷竜は魔力が少ない代わりに力が強いでござるよ」
なるほど…… 強そうだな……
などと話していると、壁があって行き止まりになった。
しかし……
3メートルくらい上に塞がっているけど穴がある。
「あそこに穴があるけど、何かで塞がってるでござるな」
と言ったラザノフが、ジャンプして穴の縁に掴まり穴に詰まっていた木やら草を退かした。
そして穴の向こうを覗く……
パッと降りて来たラザノフが俺にも見ることを進めた……
穴の向こうは真っ直ぐに切り立つ崖があった。
向こうの壁までは僅か10メートル。
こちら側も壁、ただ穴の下に1メートル幅のスロープがある。
その下はこの眼でも真っ暗で見えない、深そうだ。
「何とか行けそうでござるな」
「ああ、でも危険過ぎるからおぶって行くよ」
滑ったら最後、天国へ真っしぐら。
「あ、ありがとうでござる」
という事で、ラザノフを抱えてスロープの上をゆっくり下がって行くと……
下からバサッ、バサッという音と、悍ましい気配がした……
姿を現したのは竜!
竜は大きな咆哮と共に、口から炎を出す。
手が塞がっているのでアイスシールドで防ぐ…… が、口からでは容量が少な過ぎて防ぎきれない。
……その時、後ろからラザノフが大きく叫んだ。
……すると、竜は炎を吐くのをやめて、下に降りて行った……
スロープに沿ってしばらく進むと、崖に穴があり、そこには螺旋階段があった。
少し火傷をしていたのでゲリールをかける……
スーッと痛みが引く…… レミア…… 会いたい。
「ラザノフ、さっきのは何?」
「火竜でござるな」
凄くカッコいい動物? 爬虫類?
とにかくペットとして飼いたい。 ……もちろん散歩にも毎日連れて行く。
「そう言えば、火竜族っていないの?」
「……ああ、絶滅したでござる」
今は土竜族と氷竜族が多いらしい。
でも、血が濃くなり過ぎないように、それぞれの種族同士で結婚しても、生まれる子供が同じ種族に偏ったらそれだけで絶滅の危機にさらされる。
それでも竜族は上位亜人の中では恵まれているのだと、ラザノフは笑った。
螺旋階段をひたすら下ると……
地下4階には、木々が生い茂る森が広がっていた。
「これで地下5階、1番気持ちいい階でござるな」
……そうか、1階ごとに1魔獣だとすると、火竜が出て来た所が4階になるのか⁈
地下5階。
木々が生い茂り、木には果物が成っている。
花も多く、綺麗な蝶が飛んでいる。
「リュウ、コレめちゃくちゃ美味いでござるぞ」
いつの間にか、果物を採って食べているラザノフ……
俺も採って食べると……
う、美味い…… 甘い水分の多い梨のようだ。
「ラザノフ、美味いからいっぱい採って、影にストックして置こう」
「ああ、でもラリィに殆どやられそうでござるな」
確かにアイツは容赦なく食いまくりそうだ。
そして……
沢山採ったのでラリィを呼ぶと……
「え〜、何これ〜、初めて見ただの〜」
「影の中に入れといて」
「ラリィも食べていいの?」
「少しは残しておいてね」
「……これ、ラリィ大好きだの〜」
と言って、影に消えてしまった……
初めて見たけど、大好きと言っていた……
「残して」と言っても、それに対しての返答はなかった……
「ラ、ラザノフ、もう少し食べておこう」
「りょ、了解でござる」
この階からは降り口が分からないので、端っこを歩きながら降り口を探す。
「此処が5階なら、後2階で希少鉱石がある可能性もあるって事?」
「ああ、でも油断は出来ないでござるよ。 まだこの階で魔獣…… リュウ! 動くな」
!! ……拳大はあるデカいハチ。
刺されたら…… 俺は死ぬ。
俺もラザノフも動いてないけど…… デカいハチは俺達を敵認識したようだ……
襲って来た!
ヒュン!っと刀を振る。
デカいハチは斬られたことに気づかないように、羽を動かしながら真っ二つに別れた。
「み、見事でござる。 この魔獣はデケーハッチと言って、刺されると毒で命を落とすでござるよ」
ん…… デカいハチは前世の言い方……
こっちでもデケーハッチ⁈
ま、まさか…… 以前にラザノフが転生者ではないか疑ったことがあったが……
やはりラザノフはインド人!
「リュウ! 上から来る!」
ん…… っと見ると、雲のようにデケーハッチの大群が……
「気を付けろ、ラザノフ! インド、カリー等が来た」
……ラザノフに変わった様子はない。
インド人じゃないのか? それともカレー嫌い?
いや、今はそれどころじゃない!
俺は1刺しでも喰らったら死ぬかも知れないんだ!
刀を抜いて、集中する……
デケーハッチ、数は多いけど的がデカく動きも速くない。
やられる訳にはいかない!
2刀で回転速くデケーハッチを斬っていく。
途中、ウッっと、ラザノフの声が聞こえたけど視界に映るラザノフは立って戦っている。
先ずは、自分の相手に集中だ。
あらかた俺の方のデケーハッチが居なくなったので、今度は両手ジェットで蹴散らしていく。
そして、ラザノフと合流してデケーハッチを退治した……
「ハァ、ハァ、リュウ…… 拙者は4箇所も刺された…… 流石に竜族でも4箇所は致命傷だ……」
回復薬は怪我に対応している。
毒は解毒薬があるけど、買ってこなかった……
一応、痛み止めとしてゲリールをかける……
そして、ラリィを呼んだ……
「ラリィ、拙者はもうすぐ逝くでござる…… リュウの言う事をよく聞いて、リュウを導いてやってくれ……」
ん⁈ 何かちょっと変じゃない?
「ラザ兄〜ぃ、逝かないで〜、ラリィ、お兄ちゃんとじゃ…… お兄ちゃんとじゃ…… お兄ちゃんとじゃ〜!」
何なんだよ。
「大丈夫だ、ラリィ。 リュウだって、リュウだって、リュウだって〜ぇ」
だから何だよ、早くその先を言っておくれ!
「……っていうかラザノフさ、元気だよね」
「あっ…… 確かにおかしいでござるな。 デケーハッチに4箇所も刺されたのに段々と楽になってるでござるよ」
それなら理由は1つしかない。
「リュウ、人が悪いでござるぞ! 裏のヒールには解毒の作用もあるでござるな! ありがたいけど、拙者は死ぬ覚悟でいたぞ」
まぁ、ラザノフにはレミアのことを喋っても問題ないだろう。
「ラザノフ、コレは裏のヒールじゃない。 ラザノフはドリアードって知ってる?」
「ドリアード…… 木々を守る森の精霊…… 噂では500年生きるとか言われてる伝説の生きし者」
まさか、知ってるとは……
「会ったことは?」
「はっ? 伝説の生きし者、本当の話かどうかも分からんでござるよ」
「その人に " ゲリール " を教わった。 多分、ゲリールはドリアードのオリジナルだと思う」
と言っても、勝手に再現しただけ。
「ま、まさか…… どんな人だったでござるか!」
それから俺はレミアがどれだけ可愛く、どれだけ綺麗かを喋り続けた。
驚くほど舌が回る、回る。




