ダンジョン攻略 1
第二章 成り上がり
第五十八話 「ダンジョン攻略 1」
ダンジョン攻略に必要なのは、山登りに持って行く物と似ているらしい……
ロープにザック? リュックにホップにヒップだ。
と、とにかくラザノフが用意してくれた。
便利スペースの俺の影に荷物を入れて出発。
移動は昼間は歩き、夜は少しだけラザノフをおぶって飛んで移動した。
ラザノフはラリィが飛んでいる姿にとても感動したらしく、涙を流した。 ……俺の背中に。
そして3日後、カチージャ山に着いた。
カチージャ山の中腹にあるダンジョンへの穴を見つけた時は、もう夜も更けていた。
俺達は慌てずにそのままそこで夜を明かして、明日の朝に穴に入ることにした。
「穴に入るの楽しみでござ〜るなぁ〜」
とラザノフが言うように、穴にはワクワクする魅力がある。
前世の言葉でこんな言葉がある。
もちろん有名な言葉なので知ってる人も居ると思うが……
でも、もう一度振り返ろう。
「そこに穴があるからさ」
知っての通り、これはインタビュアーに「貴方は何故、穴に入るのか?」と、聞かれた時のユキオの答えだ。
この言葉は、洞窟探検家や穴掘り愛好家からの指示を受け、あっという間に世界に広がり有名な言葉となったのは皆さんもご存知の通りだ。
アナハイムに住む有名アナリストのアナ・ユキオは、生前、3000の穴に入ったという。
最後の穴に何故、日本の井戸を選んだのかは分からない。
当初はアナ・ユキオの妹が日本の古い井戸好きだからでは? と、言われていたが違うようだ。
ユキオが言った、
「アナガアタラハイリタイチガウネバッキャヤローナメテルトヤッチマウゾゴラァアナガアタラハイリマシュネ」
を、日本語に訳すと、
「穴があったら入りたいは、中国から伝わった言葉だけど、日本人、間違って伝えていますよ。 本当は穴があったら入りましょう、が正解ですねん」
と訳す有識者が多かったように、ただ日本人に穴の魅力を伝えたかっただけのようだ。
そして、ユキオは人知れず井戸に入り、出られなくなって半年後、白骨化した姿で発見された。
それでもタダでは起きないユキオは、白骨化した顎の部分が笑顔だ、彼は笑顔で逝ったのだと話題になる。
そして数ヶ月後に出た、井戸から白骨化した顔だけを出してピースサインをしている、アナ・ユキオ人形が世界中で大ヒット。
そして、それに伴い創られた映画 " 穴とユキオチャーシュー " も世界中で大ヒットした。
……内容?
穴の中でひたすらユキオがチャーシューを貪り食ってる映画だ。
人形は日本でも売られたが、アナ・サダコという妹バージョンの方が売れたらしい(妹はまだ逝ってない)。
長くなってしまったが、穴の魅力は充分伝えられたはずだ。
皆んなもチャーシュー持って、今すぐマンホールの蓋をズラしてダイブするんだ!
……もちろん、自己責任で!
ーーーーー
ここは洞窟。
洞窟を40メートル程進んだところに、地下へ下る穴が空いている。
ご丁寧に穴の近くには、"ダンジョンへの入口、死ぬ前に戻れ " と書いてある。
穴を覗いてみると、真っ暗だけどかなり深そうなのが分かる。
「リュウ、作戦通り行くでござる……」
ラリィに俺の刀とラザノフの槍をとってもらい、ラザノフをおぶってゆっくり降りていく……
地下1階の作戦は……
1 お互いの間合いに入らない。
2 ゆっくり進み、ラザノフに付いて行く
1は、ラザノフの槍の間合いが広いのでお互い動きやすいように決めた。
2は、1階は攻略済みのため、階段の場所もラザノフが把握している(南東方面と言われても、俺には分からない)。
下まで降りて直ぐラザノフと離れる。
もうすでに誤算が1つ、真っ暗で光を照らすため片手が使えない、つまり1刀で戦わなければならない。
ガシャーン、ガシャーンという音が迫る……
姿を見せたのは150センチくらいの変な奴。
丁度、安い甲冑を着た落武者のようだ。
突っ込んで来る落武者の胴を甲冑ごと、ー斬ー ぶった斬った。
この刀なら、いける!
ただ剣を持って突っ込んで来る落武者……
厄介なのはお互い仲間意識がないことだ。
譲らずに、我先に突っ込んで来るので逆に先を読みづらい。
3分…… 5分……
汗が滲んでくる……
ラザノフの荒い息が聞こえるのでまだ無事だ。 ……だけど、少し遠いみたいだ。
7分…… 10分……
俺も元居た場所より随分下がった。
でも、数は確実に減ってきている。
そして、それから数分……
ほぼ落武者が居なくなった……
ラザノフは⁈
ラザノフは壁を背にして戦っていた。
最後の落武者を倒すと、ホッとした様子で大きく息をした。
「ハァ、ハァ、リュウ、無事でござるか?」
「ああ、ラザノフは大丈夫? 結構、血だらけだけど……」
「大丈夫でござる…… 暗くて結構苦労したでござるよ。 ラリィに回復薬を取ってもらってくれ」
確かにラザノフと離れてしまったので、俺が照らす光が届かなくて殆ど敵が見えなかったはず……
回復薬の前に、" ゲリール " をかけてあげる……
「おお…… やっぱりこの " ヒール " はスーッと効き目が浸透してくるようで気持ちいいでござる……」
俺は誰かに " ヒール " を打ってもらった事がないから分からない……
友達少ないし……
「これなら回復薬を飲まなくて大丈夫でござる。 先へ進もう」
……と言っても、ラザノフはあっちにフラフラ、こっちにフラフラと、行く方向が定まらない。
忘れたのか⁈
「ラザノフ、南東方面だよ」
「知ってるけど、洞窟内では方向が分からんでござる〜、ガッハッハ〜」
「え〜と、拙者に任せろでござるぅ、ガッハッハ〜って最初に言ってたよね」
「……済まん。 リュウ、上に行けば方角が分かるでござる。 もう一度、洞窟の入口まで戻ってくれ」
……はぁ。
仕方ない……
ーーーーー
一度戻って方角を確認してから洞窟内を探しまくって、やっと人の入れるシューターを見つけた。
前に来た冒険者が残したロープが垂れてる……
シューターの中を照らして見ても随分と深そうで先が見えない。
「リュウ、ロープを手繰り寄せてみよう」
と言って、ラザノフがロープを巻くと……
「約15メートルでござるな…… もうこのロープは古くて使えないでござるよ」
「ラザノフ、俺が先に行って見てくる。 気を付けて待っててくれ」
実際、階段を探している時でも、まだ落武者の残党が居た。
シューターをジェットを使ってゆっくり降りてくと、突然シューターが無くなる…… それから更に3メートル程降りると、崖の上に降りることが出来た。
ラザノフを連れてくる……
30メートルはある崖の上だろうか、下には田園地帯が広がっている。
何故か明るいこの田園地帯…… 畑があり柵で囲ってあるけど、その柵がデカい。
「リュウ、デボイは何故か畑を作る魔獣でござる。 そして畑に近づく者にはとても攻撃的な魔獣でござるよ」
ここも階段の位置は攻略されて分かっている。
見える限りデボイはそんなに多くないが、デボイは大きく強そうに見える。
ラザノフにだいたいの降り口のある方角を指してもらい、デボイに見つからないようなルートを決める……
ラザノフと歩きながら降り口を目指す。
ルート通り歩けば、デボイと出会すこともない。
「リュウ、希少鉱石は凄い値段で売れるらしいでござるぞ」
心の中で、声デカいぞと思う……
「いくら?」
「分からんでござる〜、ガッハッハ〜。 でも階数が深いほど、鉱石が希少になっていくと聞いたでござ〜る」
「普通、ダンジョンは何階まであるの?」
「簡単なダンジョンで7階、厄介なダンジョンは10数階あるでござるよ」
このダンジョンは17年攻略されてない。
つまり、鍵を握るのはまだ攻略されてない地下4階?
「リュウ、多分このダンジョンは飛べないと攻略不可なダンジョン、リュウにかかってるでござるぞ」
「え〜と、それならラザノフにはダイエットして欲しかったな」
「ガッハッハ〜、竜族にそんな言葉はないでござ〜る」
……遠くから足音!
だから声がデカいんだって……
「リュウ、拙者がやろう」
1人でか⁈ 余裕だな……
「そんなに余裕なら、相手も素手だし、ラザノフも素手でやれば?」
「分かったでござる……」
マジか!
ドカン、ドカンと走って来るデボイに待ち受けるラザノフ。
体格はラザノフの2メートル弱に対して、デボイは2メートル20くらいか⁈
ラザノフが体格では大きく負けている。
ー20センチの差についてー
スタンドおっさんラザノフ
僕はね〜、背がね〜、本当にね〜、ガッハハ〜
ー中略ー ねぇ、分かるでしょ。
と言うことで、20センチの差はデカい。
ラザノフの前で止まったデボイは、大きな声で威嚇する、が、構わず突っ込んだラザノフが左ボディと右ストレートをヒットさせる!
怒ったデボイも応戦するが、スピードもパワーもラザノフが上、徐々に押し込むが……
デボイはラザノフの腕を掴み噛みつき攻撃!
バッと腕を引き抜いたラザノフだが、その表情は怒りで仁王のようだ…… い、嫌、違う…… これは土竜化だ!
土竜化したラザノフは鉤爪でデボイの頭部を破壊。
デボイはゆっくり崩れた……
強い! あっさり完勝!
土竜化した意味はあったのか?
後で聞きたいけど、答えは何となく分かる。
「ガッハッハ〜、その場のノリでござるよ〜」
とでも言うだろう。
でも、土竜化は1日1回だけのスキル。
今日はもう使えないのは痛い。
……と思っていると、反対側の道からデボイが走って来る。
さっきのデボイの叫び声を聞きつけ、駆けつけてきたのか……
「次はリュウでござるぞ。 ……素手で頼む」
ちょっと待ってくださいよ〜、俺の体格と比べると大人と子供の戦いみたいっスよ〜、と言う暇もなくデボイは迫り来る。
仕方ない…… 虎峰は良く使っているけど、虎鉄は全く使ってない。
たまに使わないと魔力の集め方を忘れてしまう。
俺の頭なら充分考えられる…… 悲しいけど。
左に虎峰、右に虎鉄を仕込む……
走り来るデボイに向かって俺も突っ込む。
そして、止まって待ち構えるデボイの股の間をスライディングをしてすり抜け、ジェットを使い急ブレーキ。
振り向きざま、デボイの背中に虎峰!
スッパーンと前のめりに吹っ飛ぶデボイ。
ドーンとデッカい柵にぶつかったデボイだが……
気を失うでもなく、直ぐ起きあがろうとしている…… 流石にタフだ。
近づき、デボイの側頭部に軽く触れるように虎鉄!
デボイは俺をギロッと睨み、威嚇の雄叫び……
……の、途中でボンッと小爆発。
デボイの目と耳から血が噴き出して、デボイは倒れた……
これが俺の中で唯一禁じ手となった技、虎鉄!
ー失敗虎峰と呼ばないでー
今でも思い出す あの頃を
失敗虎峰と呼ばないで ×2
迎えに行くと いつも笑顔で走って来たね
失敗虎峰と呼ばないで ×2
下から見つめる君を 思い出すたびに……
ムフフでハハハでヒヒヒだぜ ×4
これが俺の愛の歌
失敗虎峰と 呼ばない でぇ〜
作詞/作曲 リュウ
Wミリオンも狙え……
「リュウ〜、な、な、何でござるか〜! 今の技。 ズルい、ズルいでござ〜」
ラザノフは初めて見たのか……
「今のは虎鉄。 虎峰を開発した時に偶然出来た技。 失敗虎峰と呼ばない、でぇ〜」
「な、何でござるかソレは? とにかくリュウばかり必殺技があってズルいでござる」
そんな事、俺に言われても……
「拙者にも必殺技が欲しいでござるぅ〜!」
ハァ…… そういうのは自分で考えるんだけどな……
でも、このままだとラザノフはうるさい駄々っ子のようだしな……
ラザノフが出来そうな必殺技っぽいやつ……
「分かった。 ラザノフに必殺技を伝授する。 先ずは腰を低く落として両手をボールを支えるようにしてグッと引く…… そして、ハ、メ、ハ、メ、波〜、っと撃つ。 ……どう?」
「い、いいでござ〜る。 必殺技の名は?」
「え、だからハメハメ波」
「なんか名前が嫌でござる〜。 微妙にいやらしいし……」
何でそんな事を言う!
少年マンガのパクリだぞ……
「じゃあ、自分で付けて。 そろそろ行こう」
「いいでござるか? ガッハッハ〜、カッコいい名前にするでござるぞ〜」
……実戦では使えない必殺技だけどね。
さぁ、次は地下3階だ。




