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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 魔術


      第一章  旅立ち


  第五話 「魔術」




 ポコポコとした感覚が懐かしい。

 この辺りは死海で魚は見当たらない。

 水中でも優秀な眼のおかげでクリアにくっきり見える……



 ーー ーー



 実は今日、シスターと兄に連れられ教会の奥まった場所にある部屋に行った。

 ソファーに座っているとシスターがデカいコップを持って来て俺に言った。


 「リュウ、この聖杯に触れてくれる?」


 

 聖杯……。

 聖杯のイメージは区の大会で準優勝した時くらいに貰える、ちょっとショボいトロフィーな感じ。


 つまりデカいコップ。


 その聖杯には安っぽいガラス玉が幾つも付いている。

 作った奴は高く見せようと必死だったのが分かる。

 

 まぁ言われたとおり聖杯を触る。

 すると小さなガラス玉は全てピカーッと光った。


 「やっぱりルークと同じね、対策をしておいて良かった」


 同じ? 対策?

 俺のハテナ顔に気付いたのか、兄が話を始めた。


 「リュウも知ってると思うけど、この国では15歳になると王都へ行き、歩兵見習いになる」


 それは知ってる。

 今年はシセが悲しそうな顔で、『行きたくない』と言いつつ王都へ向かった。


 「ちょっと長くなるけど、この国の事と魔術師の資格について話すよ」

 

 と、兄は俺にも分かるように話してくれた。



 この世界の三つの国は貴族制度で成り立っている。

 貴族は概ね魔力が高く、魔術師団も貴族が多い。

 逆に平民はほぼ歩兵になる。

 他にも騎士、弓矢、工作兵、補給、偵察、回復などがあるが、騎士団はほぼ貴族がなる。


 さっきの俺もそうだけど、平民でも稀に魔力の高い子供はいる。



 平民は5歳の誕生月に聖杯に触れ、王都にデータを送る。

 魔力が高く適正があれば魔術師になる。

 歩兵見習いは15歳、魔術師見習いは13歳で王都を目指す。

 その差は研修期間の長さらしい。



 「つまりにいちゃんと俺はその適正があった。だから13で戦争に行くって事?」


 まだ中1じゃん。


 「いや、リュウは大丈夫。 リュウの誕生月にはシスターがリュウの替わりに触れてデータを王都に送っておいた。 だから大丈夫だよ」

 「にいちゃんは?」

 「俺の時はシスターが2人いたし誤魔化すことは出来なかったよ。 でも俺は剣も出来る魔術師を目指したい。 剣だけならリュウに追い越されるイメージしか湧かないよ」


 でも、実際には俺はまだ1回も勝ってない。 


 「でも13なんて、まだ子供じゃん!」


 シスターも兄も何も言わない……


 実際、俺が魔術師を回避したと言っても15になれば戦争へ行き何の恨みもない人を殺める。

 でも、当然その逆もあるのだ。


 大体200年も戦争なんて普通じゃない。

 なんなのこの星……。




 外に出ると心配そうにローチェが駆け寄って来た。

 でもそれだけ、何も聞いてこない。


 「リュウ、ルークもいなかったけど何処に行ってたの?」


 マシェリだ。兄はまだシスターと話してる。


 「シスターの呼び出し。 シスターは説教が長いからね」

 「貴方が掃除とかサボるからでしょ。他の子に何を言われても全然気にしないし。本当にルークの弟?」


 俺は決まった時間に稽古をしている。

 なのでその時間に手伝いはしない。


 「なんで? そっくりじゃん。 王子様っぽいところとか……」

 「キャハーッ、笑える〜。ルークは分かる。でもリュウが王子じゃ、ダークすぎるよ〜」


 何故、俺が暗黒だ!


 「失礼な! でも、もう直ぐその王子も来るんじゃない」


 俺は先に行って早く蓮撃の練習をしたいのだ。

 

 

 ローチェには悪いけど誰にも邪魔されたくなかったので、いつもと違う方向の海に来た。


 あれからパターン作り、それを繋げる作業、実際に蓮撃をやってみる、と言った作業で蓮撃には何が必要かを理解してきた。

 柔軟で体幹の強い身体だけでなく、無酸素状態での運動量に瞬時の頭の回転が必要。


 頭の回転は蓮撃と共に成長していくしかない。 ……って言うか、いい練習方法が浮かばない。


 そこで無酸素状態での運動量の稽古をする。  

 やり方は簡単、パンツ一丁で海に潜るだけ。

 とりあえずの目標は3分。



 ーー ーー



 ポコポコとした感覚が懐かしい。

 この辺りの海は下もずっと砂が埋まってる。

 この眼は優秀なので遠くまで砂になっているのが分かる。


 っと、ここで異変。 

 リュウーッと叫ぶ声が聞こえた…… あ、兄が俺を見つけ必死で泳いで来た。


 怖いので逃げる。


 ハァ〜? って感じの兄だけど、息が続かないのか息継ぎに戻った。

 また、泳いで来る兄……やっぱり怖いのでジェスチャーで語りかけてみる。


 手を前にやり "ストップ" のポーズ。

 手を自分に指し "俺" の意味。

 手を上に指し "出た方がいいの" の意味。

 兄は泳ぎながら頷いたので俺は一旦海から出ることにした。

 多分丁度3分くらいか。

 


 海面で顔を出すとドキッとした。

 シスターが海に入り大泣きしてるのだ。

 まさか心配させちゃった?



ーーーーー



 夜、やっと寝れる。

 あの後、当然皆んなに叱られた。

 兄やシスターはもちろん、マシェリに何故か? ローチェまで。 

 その流れで今まで拒否ってた字の読み書きまでローチェと一緒に兄に習う事になったのだ。


 フーッ、でも素潜りは辞めない。 

 はっきりと皆んなの前で宣言した。

 でも、これからは兄が付いてくるらしい。 


 ……過保護な!



 その夜、明日から魔術を教えるのでローチェを何とかしろ、と言われた。



 次の日。

 ローチェを何とかしろと言われても、ストーカーを撒く技術は俺にはない。

 正直に言って待っててもらおう。 


 皆んなでいつもの木の下前の試合場へと歩く。

 俺と兄は畑係なので、待っててくれるマシェリとローチェも一緒だ。

 

 「ローチェ、今日さ、にいちゃんが秘密の稽古をするって言うんだ、内緒のね。 だからちょっとだけ待っててくれない?」


 ローチェは不安そうに俺を見る。

 って言うか、本当にこの子に何があったの?

 知りたい……


 「にいちゃん、どのくらい?」


 兄は2時間くらいと言うので、ローチェはマシェリと木の下で待っててくれる事になった。


 

 海沿いを南に20分程歩くと、三方を崖に囲まれた広い場所があった。

 ここなら誰にも見られない。


 「先ず、魔術について説明する」


 兄は魔術について説明してくれた。

 魔術は属性がある。

 火の属性、風の属性、水の属性、土の属性、光の属性、最後に闇の属性、全6種。


 あの聖杯では、俺の属性は全部あり、魔力量はあの安い聖杯では測れない。

 あの聖杯で測れるのはマックス5まで。

 マックス26まで測れる高級な聖杯もあるらしい。

 魔術師の資格は3つ以上の属性と15以上の魔力量なのだそう。



 「にいちゃんも全部点いたの?」

 「ああ、点いたよ、もしかして魔術師になりたかった?」

 「心からごめんだね、死にたくなる」

 「プハッ、分かるよ。剣術大好きだからなぁ、でもやれる事はやろう。 俺は父さんと約束したんだ。 父さんに何かあった時は俺がリュウに教えるって」

 

 魔術はいいけど勉強は嫌。


 「早速やってみよう。 手を前に出して、そこに魔力を集めるイメージで」


 と言うと、兄は何かごにょごにょ言い出した。

 すると……俺の中の何かも、動く。

 

 「ファイアーボール」


 兄がそう言うと手から火の玉が海に向かい発射された。

 同じように『ファイアーボール』と言ったけど俺からは何も出ない。


 「身体の中で何か動いた感覚はあった?」

 「うん。 何かいるね」

 「ハハ、それなら出来るはず。 どんどんやってみよう」

  

 結局、何度も詠唱してもらってからファイアーボールは発動出来た。


 「次は今の魔力を再現して発動してみて」


 散々動いてたので、それはもう簡単。


 「ファイアーボール」


 ドヒューンと海に向かい火の玉は飛んだ。


 「やはり出来るか」

 「時間はかかったけどね」

 「そういう問題じゃあないんだ。 今、リュウがやったのは無詠唱。 無詠唱で魔術の発動出来るのは、多分、俺とリュウしかこの世にいない」


 それが内緒の理由か……


 「それってどういう事? なんで俺達は出来るの? それって誰からの情報なの?」


 質問だらけになってしまった。

 でも、不思議だらけ、兄は色んな情報を内緒にしている。


 「無詠唱は父さんから遺伝した。 父さんも無詠唱だったからね。 無詠唱が誰も出来ないって事も父さんから聞いたよ、ごめん」

 「何で謝るの?」

 「だって俺だけ父さんに習って…… リュウは父さんの顔も知らないから」

 「そんなのいいよ! しょうがないじゃん! それに……誰のせいでもないし」


 だから兄は過保護なのかな?


 「でも、にいちゃんは何で詠唱を知ってるの?」


 無詠唱なら必要ないはず。


 「魔術の事を書いた紙、って言うか手書きの本を父さんが残してくれた」

 「それって俺は見た事ないんだけど」

 「だってリュウは字が書けないし読めないよな。 昨日、ローチェは結構覚えてたけど」


 言い訳じゃないけど、日本語が混じる。

 

 「それはその…… 俺は後半追い込み型って言うか…… いや、騙されないぞ。 何で父さんは無詠唱なんて出来たんだ!」

 「いや、間違いなく誤魔化したのはお前だ。 無詠唱はもう父さんがいないから分からないよ…… でも、俺の予想では俺達の先祖に "無詠唱" スキルを持った亜人がいた。 そのスキルを父さんが先祖返りか何かで継承した。 そして、俺達にも遺伝した。 ……って言うのが俺の予想。 でも本当の事は父さんがいない今、誰も知らないし証明も出来ないんだ」



 何だろう、良く分からなかった。 

 俺は本当に後半追い込めるのだろうか……


 だいたいスキルって何?



 とにかく、詠唱してもらった時に動いた魔力を自分の中で再現出来れば魔術は発動する。

 でも、やっぱり初めは詠唱しないと自分の中の魔力は動かせないようだ。


 「今の魔力が火、そして少し風も混じっている。 リュウはこれから闇以外の全ての魔力を動かす事になる」

 「闇は教えてくれないの? それに魔術って何があるの?」

 「闇は回復魔術で使うらしいんだけど、俺も父さんから教わってないし本にも書いてないんだ」


 回復……1番教わりたいやつじゃん!

 でも、もしかしたら父さんは、直接教えたかったのかも……


 「にいちゃんは本に書いてある魔術の詠唱を全部覚えたの?」

 「いや、まだ覚えれないやつもある。 それに簡単に言うけど今の詠唱で1分以上、文字にすると700字以上、更に今の魔術は下級、もし上級の魔術なら今の10倍以上の詠唱の長さになる」


 俺はこの時点で魔術が嫌いになった。

 何故かって? 馬鹿に優しくないからだ。


 俺は言葉を覚えるのに4歳までかかった、アホ強者。 

 他の孤児達の名前も3年かかってやっと覚えた、マヌケダーク王子。


 俺の脳みその極小ぶり(ネズミよりは大きい)を馬鹿にしないで欲しい。

 


 そんな俺の気持ちを感じたのか兄は優しかった。



 「大丈夫、無詠唱スキルがあれば詠唱を覚えなくていい。 俺も全ての詠唱を覚えるつもりはない。 折角父さんがカンニング出来る本を作ってくれたんだからね」


 確かに…… カンニングで詠唱して魔力を動かし、次に無詠唱で再現すれば覚える必要などない。 

 でも兄は結構覚えているようだ……?


 「何でにいちゃんはカンニングしないでわざわざ詠唱を覚えてるの?」

 「いないと言われてる無詠唱で魔術を操る男が戦争に行く、すると戦争の要になるような激戦区に行かされ、上級魔術でバンバン人を殺める。 その中には俺達のような子を持つ親もいるだろう。 俺は戦争では無詠唱を使わない、隠し通すよ」


 凄いな、この人…… だから詠唱を覚えたのか。 ……って言うか本当に兄弟?

 皆んなが言うように俺の頭の中身、全て兄が取ってった?


 ……って言うか、俺は誰似?


 「魔術師って強いんだ」

 「弱いよ。 今の魔術では人は殺せない。 中級でも同じ。 でも上級は一度に何人も殺せる。 だけど上級魔術は普通は1人では発動出来ない。 だから魔術師は五人一組で動くんだ」

 「ふ〜ん、上級って何があるの?」

 「カミナリとか。 俺もそれしか知らない」

 「カ、カミナリ⁈ やろうカミナリ!」

 「プハハ、カミナリはカンニングしても中々再現出来ないんだ。 それにリュウはまだ火を少し動かしただけ、風や他の魔力を動かし最後にカミナリだ」


 まだ兄でさえカミナリは出来てないのか。


 それにしても、兄は俺の頭の中身を持ってるだけあって…… 優秀だな。


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