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転生 フリーダム  作者: 昨日シーサイドライン乗った
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 説得


      第二章  成り上がり


 第四十九話  「説得」




 スザンポリ村。


 ラリィの親戚のダルさんの家。


 話し合いの中、ダルさん夫婦はラリィを引き取って育てることを歓迎しているようだ。

 これなら心置きなく預けられる。


 もちろん懸念がない訳じゃない。


 ラリィはこの村で実際に攫われた。

 そして、ラリィが逃げ出したこともバレてる可能性が出てきている。

 もう一度、攫いに来るかも知れない。


 でも、それを言い出したら何も出来ない。

 俺達と一緒にいたって、留守番中に攫われる危険はいつでもあるのだ……


 「ダルさん、トアルさん、最後にラリィにサヨナラをしてもいいですか?」

 「ああ、いいだの。 本当に君には何度言っても足りないくらいだ…… 本当にありがとう」


 と言うと、2階からラリィを連れてきてくれた。


 「お兄ちゃん、もう行くだの?」

 「ああ、もう行くね。 今度、ラザノフと遊びに来るからね」

 「は? ラリィも行くの」

 

 ここでトアルさんが口を挟む。


 「ラリィ、お兄ちゃんを困らせないだの。 いい? これからは、おじちゃんとおばちゃんがラリィを育てるからね」

 「ラ、ラリィね、お兄ちゃんと空飛ぶ約束しちゃっただの。 それに、時計も買ってもらう約束もしたからお兄ちゃんと一緒に行くの」


 ……何でラリィは?


 「こ、此処に、父ちゃんも母ちゃんも居ないだの! もう、何処にも居ないだのぉ〜、あ〜、父ちゃ〜ん、母ちゃ〜ん」


 そうか……

 この村には思い出があり過ぎるのかも知れない……


 仲の良い父ちゃんと母ちゃんとの時間が突然終わり、それでも一生懸命に愛してくれた父ちゃんと一緒に居れて、ラリィは幸せだったはずだ。


 でも、今の現実は受け入れて生きていくしかない。

 

 「ラリィ、そんなわがまま言ってるとサークが悲しむぞ。 サークはラリィがこの村で育つのを望んでいる。 それは、分かるな?」

 「と、父ちゃ〜ん、で、でも、もう、父ちゃんは、父ちゃんは……」


 父ちゃんは俺が焼いた。

 こうやってトラウマが生まれるのかも知れない。

 だからヤダったんだよ……


 「ラリィ、1年に1回は遊びに来るよ。 良いよな?」

 「ラリィはお兄ちゃんと行く。 父ちゃんの骨も、ラザ兄もあっちだの」

 「また留守番ばかりになっちゃうよ」

 「いいの。 お兄ちゃんもラザ兄も優しいの…… ラリィのことを1番に考えてくれるの…… だから連れてってよ〜」


 ふぅ〜、ラリィは初めから俺とラザノフに懐いてくれた。

 あんな状況だったからかも知れないけど。


 でも自分の親戚に育てられるより、俺達に育てられるのを望んでる?


 「リュウ君、先に依頼のサインとコインを村長に貰って来なさい。 その間にラリィを説得しておくから」


 そうだな……


 たった数ヶ月でも、俺とラリィは一緒にいることが多かった。

 飛行訓練ではいっぱい笑ったし、頑張らせた。

 だからこそ、濃い記憶になっているのだ。

 

 俺は少し離れた方がいいだろう……



 ーーーーー



 村長に物資を渡して、依頼完了のサインとコインを受け取ったので、あとは帰るだけ。

 

 ダルさん家に向かい考える。


 俺はこの依頼後に、Cランクに上がるだろう。

 まだラザノフはDランクに上がったばかりなので、ラザノフよりは早くBランクになれそうだ。


 Bに上がったらパーティーを組む予定だ。

 でも2人だけ。

 俺もラザノフもバリバリの前衛なので、もし誰かを入れるなら後衛の魔術師がいいか⁈


 もし兄がいたら俺達のパーティーは3人で最強の気がするんだけど、もっと凄いパーティーはきっとあるだろう。

 でも、にいちゃんはあの道のりを、あのジェットでどう越えるのだろう……


 何て考えながらダルさん家に向かっていたら、前からトアルさんが走って来た。


 「リュウ君、終わった?」


 終わったので頷く。


 「今、やっとラリィを説得しただの。 でも、またリュウ君の顔を見れば付いて行きたいって言うと思うだの。 だから家には寄らないでそのまま帰って」


 あ…… 突然の別れ……

 もう少し俺も話して納得してもらいたかったし、飛ぶことも教えに来るつもりだったのに、それも伝えれない……

 でも、これから育てる人を優先しよう……


 「分かりまし……」


 と、言ったところで、ラリィが「お兄ちゃん!」っと走って来た。

 ……少し怒ってる⁈ のはいいけど、今日は天気が良い、大丈夫か?


 「リュウ君! 早く行って!」

 

 急かされたので、思わずジェットを起動、空へ。


 ラリィの飛行訓練では、まだ離陸の練習はしてない。

 いや、していたとしてもこの炎天下だ……

 空には来れないはず。 ……と、チラッと下を見るとラリィは居ない。

 周囲を見てもラリィは居ない……

 下でポツンと佇む、トアルさん……


 下に降りて、トアルさんに聞く。


 「トアルさん、ラリィは?」

 「わ、分からないだの。 急に消えて……」


 ま、まさか……

 太陽に当たり、溶けてしまった……

 やってしまった……

 俺のせいだ!


 「ラリィ〜! ごめん! もう連れてくからもう一度、固型の形に戻ってくれ〜!」


 液体はイヤだ〜!

 

 ん…… 液体はないぞ……


 すると……


 「今、お兄ちゃんと約束しただの。 お兄ちゃんの良いところは約束を必ず守るところだの。 それ抜かしたら、ただの女たらしなの」


 …… ちょ、ちょっと待てぇい!

 聞き捨てならん!


 「このアホが! 液体なんかになってるから毒舌になるんだ。 早く固形化しろ!」

 

 すると、ラリィは俺の影から顔だけ出して、俺の目を見て『バカ』と言って、また影に消えた。


 って言うか、5歳児に目を見てバカと言われる俺が、女たらしのわけがない!


 「ちょっと! リュウ君、どういう事?」


 はっ、、、!

 トアルさんに聞かれて、やっと今の状況を理解した……


 ラリィは吸血族のスキル "影入り" を継承していたのだ。

 ただ本人も確証があって影に入ったわけじゃない。

 イチかバチかの賭けだったと思う。


 ふぅ〜。

 なんて奴だ。


 「詳しくは、ダルさんも含めて話しましょう」



 ーーーーー



 ダルさん家。

 もちろん、皆さんもまだ居る。


 「それで、ラリィは何処に居るだの?」


 トアルさんが早速、尋ねてくる。


 「知っている人もいるかも知れませんが、吸血族には "影入り" というスキルがあります。 ラリィはそのスキルを母ちゃんから継承していたのでしょう。 今は俺の影の中に居ます」


 ここでさっきの女の人が喋る。


 「わ、私はクラルから聞いて、そのスキルを知ってるだの。 クラルは親友の犬に会いたがっていた……」


 ラザノフが言っていた、何とかドック(アメリカンではありません)だろう。


 「もうこうなったら、ラリィは誰の言うことも聞きません。 誰に似たのか、もの凄く頑固で、ついでに食いしん坊です。 先日も俺のパンと唐揚…… まぁ、それはいいでしょう。 とにかく、俺がラリィの面倒を見る許可を下さい」

 「そんな…… ラリィはサークの忘れ形見。 それに君はまだ若く、子供の面倒を見ていける年齢じゃない。 君には君の人生があるだの! ラリィ! 出て来なさい!」


 確かにダルさんの言うことは、もっともだ。


 しかし…… ラリィは出てこない。


 「ラリィ、聞こえてんだろ。 お前を連れて行くから安心しろ。 でも、お前の口からダルさん達にどうしたいか、しっかり伝えろ、それが条件だ。 あ、それとこれが1番重要だ。 ……お兄ちゃんは女たらしじゃない!」


 すると……

 少し不貞腐れた感じで、ラリィは出て来た。


 「お兄ちゃんはもう嫌いだの! でも連れてってくれるって約束したから行くだのぉ〜!」


 叫ぶように俺に言う…… でも相手が違う。


 「あのさ、俺に言ってどうすんの? ダルさん達にしっかり伝えろ」


 だけど……

 ラリィは大泣きした……


 まぁまだ5歳だ……

 出て来ただけでも頑張った方か?


 「ラリィは連れて行きます。 俺と同じようにラリィが兄と呼ぶ奴は、土竜族の族長の息子で、俺とは違い頼りになります。 そして先日、土竜族の里にラリィを連れて行って挨拶して来たので、ラリィのことも力になってくれるでしょう。 心配しないで任せて下さい」

 「でも、本当に君はいいだのか?」

 「いいですよ。 俺は空を飛べるのでここまで数日で来れます。 それにラリィに飛ぶことを教えているので、いつかラリィもここまで1人で来れるかも知れません。 それでも遠いし、今は生活の拠点もないので約束は数年に1回、としか約束出来ないけど……」

 「いや、それでいい…… ワシ達だってそんなに遠ければ会いにも行けないのだから……」


 どの道、俺は海の近くで育ったので海の近くに住みたい。

 でもここは大陸の中心付近、海は遠い。


 「でもせめて、今日は泊まっていって……」


 トアルさんが涙ぐみながら言った。


 断る理由などない……

 俺とラリィは、次の日の夜までお世話になった。



 ーーーーー


 

 朝早くに宿に着いた。

 でも、ラザノフと約束した10日ではなく、9日で帰って来た。


 理由は1つ。

 ラリィに嫌われて、まともに話してくれないから。


 本当は帰りにまたゴールタールの首都、フェークスに寄って、リシファさんに会おうかな〜、なんて思っていたけど、リシファさんと会っている時にラリィが影の中にいたら、また女たらしと言われそうなので止めておいた。


 ラザノフは居ない……

 少し寝る……



 ーーーーー



 「……ウ、リュウ」


 目を覚ますとラザノフが居た。


 「ラリィは?」

 「……ラザノフのベッドで寝てない?」

 

 ラザノフはそっと確認する……


 「リュウと寝てないなんて珍しいでござるな。 ……リュウ、例のことで報告がある、向こうに行こう」


 俺もラザノフに話さなきゃ……



 隣の部屋に来て、ラザノフから報告を受ける。


 「リュウ、例の1件だが、それほど進展がない。 だがケリニッチさん達と拙者が連携して、奴隷商で働く "ゴルバト" という男がコチラを探っていることは分かったでござる。 このゴルバトの兄貴は、ラリィと父ちゃんが乗っていた馬車に引率役として乗っていたらしい」


 つまり何故アニキがまだ帰って来ないのか、ラリィに聞きたいのか?


 「後ろに黒幕は?」

 「……わ、分からんでござる。 リュウ、この1件は全て拙者に任せてもらえないか?」

 「それはダメだ。 理由は幾つかあるけど、隠密で動くなら俺の方が上手く動ける。 もちろんリサナーラのパーティーよりもね」


 もし任せてミスったら、そのままラリィの命に関わる。


 「リュウ。 お願いだ。 俺達はリュウの居ない期間で連携を深めて来たんだ。 必ずカタをつけるから頼む」


 ……ござる無し。

 少し違和感はあるけど、俺が呑気に依頼をしている間に皆んなは動いてくれてた……

 俺が動いて『あーでもない、こーでもない』と言ったんじゃ、これまで積み上げてきたものが崩れてしまうかも知れないな……


 「分かった。 でも何かあったら直ぐに言ってくれ」

 「ああ…… もちろんでござる」



 それから俺は、依頼であったことをラザノフに報告した。


 「影入りのスキル…… す、凄いでござるな。 それに偶然でもラリィの育った村を見つけるとは……」


 吸血族のスキル "ソナー" は、他の種族もスキルとして使っているスキルで、珍しくはない。

 土竜族の変身もそんなに珍しくない。

 でも、影入りは吸血族の完全オリジナルで、他に似たようなスキルは無い、とラザノフは言った。


 「でも、これで昼間も動くことが出来るでござるな」

 

 そう言えばそうだ……

 もう、お金も結構貯まった、昼間も動ける、それならサンカルムに行ける。

 ラリィの1件のカタがつけば、出発出来る。


 「それと凄く重要なこと…… ラリィを育てる許可をもらった。 これでラリィは俺達の本当の妹だ」

 「ゴクリ…… な、何があっても守らなきゃいけないでござるな」


 まぁ、自分でも何とか出来るように飛ぶことを教えてるんだけどね……


 「……ラザ兄」


 どうやら、ラリィも起きたようだ。


 「おお〜、ラリィ。 大変だったでござるな〜。 今日は久しぶりに3人で食事に行こう」

 「うん。 でもお兄ちゃんはヤダの」


 メチャ嫌われてんだけど、俺、何かラリィに酷いことした? ……全く分からん。


 「リュウ、何があったでござるか?」

 「知らない…… いいよ、2人で行ってくれば。 俺はギルドに報告して…… あ、カミラさんでも誘って飯食って来るよ」 

 「何かあったでござるな〜、グハッ、そうでござるか〜。 嫌われたでござるな〜」


 なんか嬉しそうだぞ……


 まぁ、俺も魔力が空っ欠つになるまで飛んで来たしラリィの機嫌取りも疲れた。


 人疲れもあるかも知れない……

 


 やっぱり今日は1人でゆっくり食事しよう……


 

 


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