偶然 2
第二章 成り上がり
第四十七話 「偶然 2」
俺は王子様だった……
リュウ王子……
に、似合う!
「私からも良いですか? リュウ君は来年学校に入学する? それなら魔術クラスにすれば、学校でも会えるかも」
王子の妄想してたら忘れてた。
この子はリシファ。
正確には、なんとかかんとか・リシファ。
貴族なので名前が長く、1回聞いたくらいじゃ誰も覚えられない。
それくらい…… 長い!
「リシファさんは学生なんだ…… 俺はゴールタールの住民じゃないよ。 だから学校には通わない」
「そ、そんな…… せっかく友達になれたのに…… それでは明日は…… 会えますか?」
俺は貴族が嫌いだ!
でも、女の貴族は嫌いじゃないようだ……
でも、それだとバランスが悪いので……
男の貴族は大嫌いだぁ〜!
「リシファさんさ、俺は朝、この街に来たばかりなんだ。 だから明日はこの街を案内してくれない?」
「ご、ごめんなさい…… 色々な理由で、この図書館以外では会えないの…… あっ、学校の友達と食事会をするって言えば…… でも、直ぐには無理よね……」
最後辺りは、独り言のようだった。
「まぁいいよ。 明日の昼間だったら図書館に来れるし。 本で調べるというより、今日と同じようにリシファさんが教えてよ」
本を読むと何故か眠っちゃう体質で生まれてきた。
コレは無詠唱種族の特性かも。
「はい、待ってます」
という事で、明日の昼間はリシファと勉強会、夜に飯を食ってから、スザンポリを目指そう。
ーーーーー
夜。
飯を食べるために外に出る。
プユスタールより体感的に寒く感じる……
「お兄ちゃん、何食べるだの?」
「まぁ、適当」
ラリィがミッションをクリア出来なかったので、適当な店に入ろう。
街を歩いていると、よくある酒場のような造りのお店が多い。
それともこの辺りが酒場なのか?
でも、この辺りでいいか……
入った店は食事も出来る酒場って感じの店。
いつものように適当に注文する。
「お兄ちゃん、今度からラリィが注文してもいい?」
「何で? 食べたい物とかあるの?」
「うん、あるだの。 ……いい?」
別に構わないので頷いた。
来た料理は、何かごちゃごちゃ炒めた物と、何かそこら辺にある野菜を油に放り投げたやつ。
これでは足りないので、ラリィが何か頼んでた。
この店の味は普通。
ラリィの高速箸捌きも見れない。
そして、酒がメインなのか、周りがうるさい。
まぁ、酒場なのでしょうがないけど。
「おい、お前。 昼間の少年か?」
誰だ?と思い見てみると、昼間に会ったアイリスさんのパーティーの男の人。
「確か、トロンかブルージェイズさんだったね。 アイリスさんも居るの?」
「おう、居るぞ。 ってか、吸血族の子を連れて、何やってんだ?」
「飯食ってるけど? この子はハーフだよ。 トロンかブルージェイズさん」
「マジか! 俺達と同じだよ。 俺達のチームはハーフかクォーターしか居ないんだ! 将来はウチのチームに入るんだぞ、吸血ハーフ」
「ヤダ!」
ラリィの断り方は無下だらけ。
「ガハハハ、じゃあ、兄ちゃんのチームに入るんだな。 ってか、パーティー組んでるのか?」
「組んでないよ。 まだ俺はそのレベルにないからね。 だから今、頑張ってるのさ」
最低でもBランクまではノーパーティー。
「そうか、頑張るんだな」
と言って、トロンかブルージェイズさんは奥に行った。
しかし、入れ替わるようにアイリスさんが飲み物とツマミを持って現れた。
「まさかまた会えるとはね。 運命かも知れないわ! 座っていい?」
このテンション…… 酔っ払ってる⁈
まぁ、ここは酒場だ。
酔って当たり前だと思って、座る事を勧めた。
すると、アイリスさんは俺の膝に座った……
お〜い、子供の前だぞ〜。
「ウフフ、冗談よ。 でも、冗談かどうかは君次第」
ナニソレ…… 意味分からない。
「結構、飲んでるの?」
「ふふ、全然。 あの後からずっとよ」
会話出来ますか?
「それより可愛い子連れてるわね〜、こんな小さな頃から唾つけとくの?」
「いや、めちゃくちゃ人聞き悪いから。 妹として扱っているよ。 なっ、ラリィ」
「うん。 ラリィね、父ちゃんと結婚する約束してただの。 でも、父ちゃん居なくなっちゃったからお兄ちゃんとするね」
突然、何の話をする!
「ちょっと…… 何確定させてるの? 兄弟は結婚出来ないよ」
「えっ、そうだの⁈ それじゃあラザ兄とする」
俺、今、兄弟とは出来ないって言ったよな。
「そうだね。 それがいいかもね」
とりあえず、一旦、ラザノフに預ける。
「キャハハハ、面白そうな兄弟ね。 私は兄弟じゃないから…… しちゃう?」
「しません! って言うか、アイリスさんはパーティーのアイドルでしょ」
「ふふ、でも、私はハーフだから…… リュウ君がいつかパーティーを組む時にアドバイスを…… 女は入れない事、ハーフは入れない事」
どっちも自分を指している……
これ以上は立ち入らない方がいい。
「……何故、聞いてくれないの? ジャジャーン、それは私の奪い合いが起こるから。 ほら、私、いい女でしょ」
もう、ラリィは寝る時間、帰ろうかなぁ、という雰囲気を醸し出す。
「それでメンバー内でギクシャクしちゃうのよ。 ほら、私、いい女だから」
酔ってるから分からないのか?
それなら間接的に伝えるまで。
「ラリィ、もう眠いよな。 そりゃあそうだ、朝早かったもん。 帰ろうか?」
「ラリィね、いっぱい寝たから眠くないの。 あのね、アレ食べたい」
隣の人が食ってる串焼きを指した。
クッ、ラリィにはまだ空気は読めないか……
「それで最近はレムとランフランとハーテマルが拗れてて大変なの。 ほら、私って…… 言わなくても分かるでしょ」
いい女なんでしょ!
さっき散々言ってましたよ!
とりあえず、串焼きを注文する……
「まぁ、それが普通なんじゃない? だって、ほら、アイリスさんって…… 言わなくても分かるでしょ」
「プフフ、上手いわね。 でも言って!」
「じゃあ、一緒に……」
せ〜の!
「ほら、私って、いい女でしょ」
ハモった!
「キャ〜、上手い〜。 ……ねぇ、年上からモテるでしょ」
「モテません。 好きって言ってくれた人は居たけど、1人だけだよ」
年上、年下、関係なく、1人だけ。
でも、1番嬉しい、1人。
「じゃあ、貴方は相当な鈍感男なんだ。 分かったわ、今日から私達、一緒に暮らしましょ」
「絶対、分かってないでしょ。 俺は依頼中。 そして昼間も言ったけど、サンカルムを目指して……」
と、アイリスさんを向かいに来た男が3人…… 絶対ラン何とかと、レ何とかと、あと1人の奴でしょ。
「アイリス、そんな嬉しそうな顔して何話してたんだこのヤロオ、オンメエ」
「昼間のガキか。 クソッ、俺だって若い頃はかなりイケてるって母ちゃんが言ってたぞ」
身内!
「ちょっと待て! それだったら俺の姉ちゃんもボソッと言ってた! ……と思う」
ウソだろ。
立ち上がって、ラリィを抱っこする……
「アンタ等のことで、アイリスさんが悩んでいたよ。 でも…… 誰だっけ? 太っ腹な人って?」
「それは俺だバカヤロ、オンメエ」
「俺に決まってるだろ」
「姉ちゃんに誓って俺だ」
店員さんを呼ぶ……
「ご馳走様、会計お願いします」
チラッと3人を見る……
「サイフ…… 忘れたぞバカヤロ、オンメエ」
「姉ちゃんに聞いてからだ」
「少年、奢るぞ。 俺の名はハーテマル。 アイリスが認める太っ腹男」
アイリスさんは笑いを堪えて…… ない、大笑いしてる。
「ご馳走様、ハーテマルさん。 それとアイリスさん、来年、サンカルムで会おう」
「うん、やっぱり貴方は最高ね」
笑顔のアイリスさんは美しい。
ーーーーー
次の日。
朝、明るくなる前のトレーニングの帰りに、昨日の朝市に寄る。
昨日、飲んだスープがとても美味しかったので、また朝飯としてスープを頂く。
やっぱり凄く美味い。
今度、ラザノフも連れてきて飲ませてあげよう。
その後は夜に備えて宿で大人しくする、俺は少し寝た……
昨日、リシファさんと会った時間くらいに図書館に出掛ける。
今日は貴族のことや学校、武闘大会について聞こう。
図書館ではもうリシファさんが居て、昨日の小部屋を用意してくれていた。
俺ではなく、リシファさんが最初に質問した。
「リュウ君、君はどこの人ですか?」
「今は旅人。 でもサンカルムを目指しているよ。 サンカルムについて知ってる?」
「そうですね。 ナラサージュの首都です」
「あのさ、それくらいは知ってるよ」
「ふふ、では…… それぞれの国の首都には同等の学校が設立され、3年に1回、代表者同士の定期戦があります。 丁度、来年この国での開催ですよ。 ちなみに勉強はコーラン、実技はリズーンが強いですね。 ……知ってますか?」
「ちょっとバカにし過ぎじゃない? 知るわけないじゃん。 何、コーラとかレーズンって?」
「リュウ君…… コーラン国とリズーン国ですよ。 え〜、リュウ君はどこの人?」
「だから旅人。 俺は孤児でまともな教育を受けてなかったからさ…… だから今、リシファさんに教わってるじゃん」
「プハハ、微妙に偉そうですね」
「偉くはないんだぞ、バカヤロオンメエ」
「な、何ですか、それ?」
「いや、気にしないで、1回やってみたかっただけだから。 それで、この国の定期戦での順位は?」
「勉強が3位、実技が4位、ハッキリ言って真ん中ですね。 ふふ、私は勉強での代表を狙っているんですよ」
育ちの良さそうな、頭のいい女の子って感じ。
凄く親切で気さくだし、こんな貴族がいるのが驚きだ。
なんとかかんとか・リシファ。
17歳。 貴族。 メガネっ子。 155センチ前後。
人間。 いつもニコニコしてる。
ふくよかな感じで、服の上からでも分かる大きな胸なので、その道が好きな人にはドストライクだろう。
「3年に1回じゃ、1年生は不利だね」
「そうなんですよ。 学年代表戦には出れても、フル代表戦には選ばれない方が多いですね。 だから来年の新入生は最悪、逆に再来年の新入生は最高のタイミングです」
「頭がいいんだね、リシファさんは」
「ふふ、図書館が好きな頭でっかちな女なだけです。 それに勉強のフル代表は、100%3年生なのですよ」
まぁ、1、2年生は習って無いから分からないよな……
「でも凄いよ。 代表になれるといいね、応援してるよ」
「ありがとうございます。 本当に嬉しい…… あっ、じゃ、私が代表になれたらお花をプレゼントして下さい」
それを確認する術がない……
あっ!
「あ…… ご、ごめんなさい、はしたない事言って…… 私…… 男の人からお花をプレゼントして貰うのが小さな頃からの夢だったのです……」
「そうなんだ。 ちょっとトイレ」
と言って、外に出る……
外にはやっぱり昨日も居た、貴族っぽい年増のおば様。
リシファさんが1人で出掛けて来るわけがない。
それに昨日、図書館の中でだけは自由にさせてもらってると言っていた。
だから、外で待っているのだろう。
近づき、話し掛ける。
ーーーーー
おば様の正体は、リシファさんの付き人か、護衛。
一応、リシファさんが代表になれたら花を送るよう手配して来た。
もちろん、おば様の協力無くしては何も成り立たない。
もう、きっと俺はリシファさんと会うことはない。
だから、昨日と今日の御礼として花を贈りたかった。
まぁ、代表になれなくても花屋とおば様に頼んでしまったから花は贈られるけど……
その後もリシファさんに色々と聞いた。
特に貴族について……
この国、ゴールタールは中位亜人が王様の国。
だからなのか、亜人が多い。
人間の貴族は少なく、上級貴族は殆ど居ないそう。
リシファさんのお父さんは中級貴族。
さて、そろそろお別れの時間だ。
「リシファさん、初めから終わりまで親切にしてくれてありがとう。 もう行くね」
「リュウ君…… また、会えるよね?」
「もちろん。 ……と言いたいけど、どうだろうね」
「あ、会えます、会いに行きます! お父さんに言って武闘大会の時期にサンカルムで……」
サンカルムに俺が居るという保証はない……
「まぁ、縁があればまた会えるさ。 それまで、やるべき事をきっちりやって行こうぜ、リシファさん」
「う、うん。 ……リュウ君、私、頑張るね……」
少し寄ったゴールタール国の首都、フェークスで、アイリスさんとそのパーティー、そして嫌いなはずの貴族の人、リシファさんと出会った。
冒険者を続けている限り、アイリスさんとはまたいつか会えるだろう。
でもリシファさんとは分からない……
この後、ラリィと夕食を食べてから食料を買い込んで、俺達はフェークスを後にした。




