偶然
第二章 成り上がり
第四十六話 「偶然」
あれから数ヶ月。
順調に依頼をこなしている俺とラザノフはランクを、Dに上げていた。
そして俺は依頼の帰り。
今回の依頼はチチコブ山にアリエッタという花を採りに行っていた。
この花がメチャクチャ厄介で、人の気配を感じると花弁を閉じて実を隠してしまうのだ。
その状態で採っても、実を隠した花弁が溶けて実まで溶かしてしまう。
でも、何とか採ることが出来た。
ーーーーー
ギルド。
いつものテーブル。
依頼終了の報告と、サインとコインを渡した俺はカミラさんとそのまま雑談。
「流石に仕事が早くてビックリね…… 苦労しなかった?」
「したよ! 近づくと隠すし、そのまま採ると溶かすし、しかも明け方の20分しか花が咲かないし」
「ふふふふ、でも、依頼料もポイントも高いのよ」
依頼料は依頼書に書いてあるけど、ポイントは冒険者には分からなくなっている。
多分、緊急コーナーにある依頼と討伐が、ポイントの高い依頼と冒険者の中では言われている。
「もうすぐ、貴方は早くもCランクに上がるわよ」
「ポイントって、どうなってるの?」
「その依頼ごとにポイントは設定されているのよ。 プラスされるのは、スピードと依頼主の評価ね。 リュウ君の場合、今までの依頼全てでスピードによる加点があるわ」
「依頼主の評価は?」
「一度だけ最高評価で後は普通ね。 何故か兜流の護衛の依頼だけど、何か心当たりはある?」
アトラスか……
今度、飯でも奢ってやるか。
「まぁ、無いことも無いけどね。 でもCランクか〜、それじゃあ頑張らないといけないね。 カミラさん、何かいい依頼出てる?」
「うん、あるわよ。 後で一緒に見に行きましょ。 それで…… リュウ君にプレゼントがあるの」
スッとカミラさんは俺の前に小さな箱を滑らせた。
開けると…… 欲しかった時計が!
「な、何でこんなのくれるの?」
「ふふ、だってギルドの職員は誰の担当になるかで大きく給料が違うの。 貴方とラザノフ君のおかげで私の給料も上がっているのよ」
でも、俺が欲しかった時計をピンポイントで……
「もしかして、ラザノフ?」
「ふふ、当たり。 ラザノフ君には正装をプレゼントしたの」
なるほどね。
ラザノフも喜んだろうな。
「ありがとう。 一生大切にして、墓まで持ってくよ」
「ふふふふ、じゃあ、私も一緒にいいかしら?」
ゴックン…… ヤ、ヤバい。
今一瞬、胸が高鳴ってしまった。
カミラさん…… 最初に会った時より確実に綺麗になっている。
そして服装も冬に近づくに連れ、胸元が大胆なカットの服になっている。 ……大きめな胸が近くにあるのは歓迎するけど…… 寒くないのかい?
……男でも出来たか!
「それは彼氏に頼んで。 それより依頼を見たいんだけど」
「彼氏なんて居ないもん! あ…… ご、ごめんなさい。 い、依頼ね……」
ビ、ビックリした…… 意外に大きな声だった……
ーーーーー
2階に上がると、カミラさんが依頼書を見せてくれた。
スザンポリ村への配達
ランク不問 期限 1月末 報酬 2,400トア
まだ期限は2ヶ月近く残ってる……
しかも2,400トア、かなり遠い村とみた。
「スザンポリ村って遠いの?」
「ゴールタールではなく、ホオヒューガ国にあるわ。 距離は3500キロね」
ホオヒューガ国
この世界の7つの国は全て海に面している。
海の位置は北西になり、ゴールタール国の南東とは、正反対になる。
しかし、7つの国全てが大陸の中心付近まで領土を持っているので、大陸の中心付近はそれぞれの国が近くにある。
それに伴い治安が悪いとも言われている。
ーカミラ 調べー
「つまりスザンポリ村は大陸の中心付近の村ってこと?」
「そうよ、ラポリ山というリーブルで2番目に高い山の麓にスザンポリ村はあるわ。 ねぇ、私なりに考えたのだけど…… 聞いてくれる?」
何をだろう?
でも、とりあえず頷く。
「そうね、先ず暗くなったら出発でしょ。 そして北西に進んで行くと、朝にはゴールタールの首都フェークスを通り過ぎると思うわ、疲れてたら休憩してね。 そして北西にずっと飛んで行くと、途中にアイハワ、テラミン、ソージャニールという小さな町を通り過ぎるはず。 でもその頃にはラポリ山も見えてるかもね。 そしてラポリ山を南西に見た麓に、スザンポリ村はあるはずよ」
凄い…… 俺のジェットのスピードまで考慮して、ルートを考えてくれた。
「ありがとう、カミラさん。 この依頼を受けるよ。 そして依頼から帰って来たら、飯でも奢らせて」
「え…… うん。 楽しみに待ってるね」
という事で、この依頼を受けることにした。
でも期限はたっぷりあるので、2、3日、ゆっくりしてから出発しよう。
ーーーーー
2日ぶりに宿に帰るとラリィが飛び付いて来た。
抱っこして話す。
「ラリィ、ラザノフと2人でどうだった?」
ラザノフは俺の依頼が終わるまで、ラリィの子守りをしてくれていた。
「ラザ兄といっぱい美味しい物、食べただの」
「ガハハハ、ラリィの食いっぷりは凄かったでござるぞ」
ラリィは美味しいものは凄く食べる。
でも普通だと、余り食べない。
「昨日は?」
「ミナトでチーズ三昧。 美味かったでござるよ〜。 な、ラリィ」
「うん、ラリィね、最初はラザ兄より、いっぱい食べてたんだよ。 ね、ラザ兄」
「ガハハ、そうでござるな、最初の2分は拙者より早かったでござるよ」
最初の2分でもラザノフを抑えるとはどんな5歳児だよ、末恐ろしい食いしん坊。
「もしかして、必殺技、出てた?」
「ガハハハ、出てたでござるぞ〜」
ラリィの必殺技、高速箸捌き、アンド頬っぺたに一旦ストックだ。
俺の唐揚げとパンを見事に奪った技だ。
でも、普段の箸の使い方はド下手。
「リュウ、それで…… 2人でいいか?」
ん、何だろ…… と思いながらラリィを下ろしてラザノフの話を聞く。
「昨日のミナトからの帰りに、ラリィへの視線を感じたでござるよ」
ラリィへの視線?
「え〜と、ラザノフってそんなに鋭かったっけ?」
「ガハハハ、すまん、拙者じゃない。 リュウ、覚えてるか⁈ 里を出て旅の始まりの頃、リュウの作った円形の壁の中に入らせてくれと言った冒険者パーティー」
「あ、うん。 強烈な個性の獣人の女だったから、名前は忘れたけど覚えてるよ」
「名前はリサナーラ、パーティーのリーダーがケリニッチ。 プユスタールの冒険者でござる」
懐かしいな…… もう大昔に思える。
「ミナトからの帰りにリサナーラ達と出会って、話している時に視線と念を感じたらしい」
「何、それ?」
「リサナーラの種族は獣人の中でもかなり古く、特殊な能力がある種族らしい。 その中に念を少し感じる能力があると言っていた」
「ラザノフ…… 皆んなにも分かるように説明して」
「皆んな? リュウしか居ないでござるよ」
「クッ、それでネンちゃんは何を感じたの?」
「恨むような感情、だったらしい」
恨むような感情?
「ラリィが恨まれるって? はっ、笑っちゃうね。 ラリィが何かしたと? 恨まれることを? ラザノフ、ラリィに出来ることは、人の唐揚げとパンを奪うことくらいだ。 ……しかもパンは2つだ。 恨まれるようなことは出来ない!」
「い、いや、リュウは結構恨んでない?」
だってパン2つだよ。
1つは残してくれてもいいじゃん。
「ラザノフ、それなら丁度いい。 俺は遠い配達を請け負った。 それにラリィを連れて行く」
「ああ、今はプユスタールから離れるのはいいでござるな…… それで拙者が出来ることは?」
「ラザノフは目立つ。 きっともうラザノフを探ろうとしてるはずだ。 ラザノフは付けられるだろう。 そしてこの部屋も調べられるかも知れない。 貴重品はジョコさんに言って、他の場所で保管してもらおう」
ジョコさんとは、この宿屋の主人のこと。
「せ、拙者が出来ることは?」
「普通に働いていて」
「いや、それなら拙者を付け狙う奴がいるか探るように依頼をだそう」
確かに、上手くいけば犯人を見つけられるかも……
「いいね、ミナトさんのパーティーかリサナーラのパーティーなら信頼できる?」
「ああ、出来るでござる。 リサナーラのパーティーなら全員、Cランク以上でござる」
パーティーは全員が高ランクじゃなくてもいい。
ギルドに報告する奴が高ランクなら、そのランク通りの報酬が貰える。
「じゃあ、リサナーラに頼んで。 内容は……」
1 ラザノフを探ろうとしたり、付け狙っている奴が居ないか?
2 この宿屋と部屋を調べようとしてる奴は居ないか?
期限 10日 報酬 500トア プラス2,000トア
「これでどう?」
「に、2,000トアも払うでござるか〜、それに10日に意味はあるでござるか?」
「2,000は犯人まで突き止めたらね。 下っ端が分かっても意味はないから、2,000は払えない、それは言っといて。 10日は俺の依頼が終わる頃…… つまりラリィも帰って来るから、出来ればそれまでに何か掴んで欲しい」
「わ、分かったでござる。 他に何かある?」
「もし、犯人が分かっても、ラザノフとリサナーラのパーティーだけで解決しようとしないで。 俺も絡んで根こそぎ不安要素をぶった斬る」
ラザノフは思う……
これがリュウの怖さであり、強さなのかと……
一度決めたら全くブレずに進みまくる。
味方で良かったと思わせる男だ。
「分かったでござる。 それでいつ発つでござるか?」
「一応、ラリィに聞いてからだね」
隣のベッドしかない部屋に居るラリィを連れてくる。
「ラリィ、今日の夕方から配達の仕事だ。 行くか?」
「い、行くでござるだの!」
お〜い、誰かさんの口癖が移ってるぞ〜。
「空、飛びたいだの」
ラリィは今、空を飛ぶのが楽しくて仕方ないようだ。
ラリィの今の飛行訓練は、俺がラリィを連れて高く飛び、そこから数キロ先に目標地点を定めてラリィを離す。
ラリィは翼を広げて目標地点を目指す。
途中、着けないと思えば翼を動かし、行きすぎると思えば迂回する……
ゲーム感覚の練習法なので楽しいようだ。
ーーーーー
スザンポリ村へと出発する。
今回はゆっくり行くので、泊まれそうなところがあれば泊まる予定。
とりあえずはゴールタールの首都、フェークスを目指す。
最近、空がめっきり寒くなった。
ゴールタール国は位置的には南東なので、それほど厳しい寒さではないけど、本格的な冬になれば寒いのかも知れない。
雪とか降るのかなぁ……
やはりさっきラザノフが言っていた、恨むような視線が気になる。
ラリィで大儲けする予定だったけど、出た馬車は姿を消した。
そして、馬車が崖から落ちていたけど、誰の遺体も綺麗さっぱりない。
不思議に思っていたが街で竜族と笑いながら歩くラリィを見た。
何故、コイツだけ?
恨みとは違うかも知れないけど、カギはラリィが握ってるとでも思ったのかも。
まぁ、ラザノフとリサナーラ達に期待しよう。
今の時期は日照時間が短い。
その分、長く飛べるのでいいけど、今回はゆっくり行くつもりだ。
でも、フェークスには明るくなる前に着いておきたい。
フェークスまでは1000キロちょっと
夕方、暗くなる前に出発したので余裕か……
「お兄ちゃん、空飛びたいだの」
リュックの中に居る、ラリィの声。
「分かった。 高くまで行ったら出すよ」
と言って、高くまで来た。
リュックからラリィを出す。
何故かラリィは怖がってしがみついて来る……
もう堕ちても大丈夫なのに。
「ラリィ、今回は10分間、飛び続けて」
「じゅ、10分は無理だの!」
「明日はフェークスに泊まるつもりだ。 夕食が豪華になるかはラリィにかかってる。 やるか?」
「意地でも飛び続けるの!」
流石の食いしん坊。
結果。
4分を過ぎた頃からフラフラしだして、5分を過ぎると堕ちた。
評価は……
俺がキャッチしたけど、力の使い所が分かってない。
気絶するまで飛び続ける根性はあるけど、先ずは着地までしっかり終わらせて欲しかった。
11点 もう少し頑張りましょう
リュウ隊長
ーーーーー
首都 フェークス
上空から見たフェークスはプユスタールの3倍の広さがあり、大きなお城が目立っている。
そして、レイモンの人間国と同じように、貴族街がとても広く感じた。
建物も立派なものが多く、野球場のような円形の建物、そして、やはり円形でモダンな造りの建物に目が行った。
また、街の奥にはとても大きな湖がキラキラと光っていた。
街に入った俺とラリィは、朝市で売っていた魚貝の出汁の効いたスープに感動、明日も食べに来ようと言い合うのであった……
という事で宿屋。
ラリィは速攻で寝たので、俺は街を見て回る。
先ずは野球場。
本当に野球場のような造り…… 中で何をやっているのだろう?
1周回ってみる……
「ふふ、そんなに闘技場が珍しい?」
声をかけてきたのは、4人組の唯一の女の人。
すげぇ〜美人だが、上位亜人か?
きっと、お上りさんと思われてるに違いない。
「闘技場なんだすってけれよ〜、そんたらすったらへっぺでねか」
はっ? という顔のお姉様。
「こ、言葉、分かる?」
「いや、冗談。 田舎者に見られてるから、適当に訛ってみた」
「キャハハハ、変な子」
「ああ、言われたことあるね。 でも本当に田舎者だけどね。 ところで闘技場なんだ、コレ」
レミアに変人と言われたことある。
「そうよ。 私達も前回大会に出たんだから。 ふふ、結果はグループ決勝で敗退。 でも来年は優勝するわよ。 だってメンバーが2人も増えたんですもん。 トロンとブルージェイズ」
トロントブルージェイズ! ……確かに野球場と間違えたけど!
「まぁ、選考では、もう2人も良かったけどな、ヤンキとスー」
男3人のうちの1人が言った。
確かにヤンキとスーだと、ヤンキスーになり、中途半端だ。
やっぱりトロンとブルージェイズの勝ち。
「そうなんだ。 俺は来年はサンカルムに居る予定なんだ。 だから大会を見に行くよ」
「ふふ、貴方は不思議な子ね…… 見られちゃうと思うと嬉しいような、恥ずかしいような、ゾクゾクしちゃうわ」
カミラさんに負けず劣らず、妖艶な雰囲気。
でも、カミラさんは意外と純情。
「ところで、この街でおすすめの食事処を教えて」
ここで、後ろで不満そうに見てた1番大きな男が、ずいっと前に出て来る。
「それは自分で探せバカヤロ、オンメエ」
「ちょっと、それくらいいいじゃない。 心の狭い男!」
ふぅ〜、来たばかりの街で揉めるつもりはない。
「大丈夫、自分で探すよ。 え〜と」
「アイリス…… アイリスよ、覚えてて」
「分かった。 俺はリュウ」
と言った感じで、アイリスさんとその仲間達に出会った。
アイリスさんの容姿を少し……
170センチくらいの22、3歳。 水色のロングの髪の毛。
妖艶な左目の横にカミナリマーク⚡️のアザ。
次はモダンな円形の建物。
近くまで行くと、もう建物が何か分かった。
匂いで眠くなるのだ…… そう、皆んなの予想は当たってる。
一応、中に入り様子を伺うけど、この規模の図書館では少ない時間で読みたい本は探せない。
「あの、何かお探しですか?」
見ると、育ちの良さそうな受付の子が話しかけてきた。
この図書館の制服か? 高そうだ。
「いや、探せそうにないので今度また来ます」
「良かったら私が探しますよ」
「えっ、じゃあ無詠唱について書いてある本を」
「はい。 では個室をお取りしますので、そこで待っていてください」
という事で、小さなテーブルがある小部屋に案内された。
少ししてから、本を持った受付の子が入ってくる。
「ごめんなさい、無詠唱に関しては本当に少なくて…… もしかしたら貴族街の中の図書館にあるのかも」
「そうですか…… その本は?」
「あの、詠唱しないで魔術を出す、魔獣の姿絵です」
確かに無詠唱だけど!
「ありがとう、受付さん。 その本を少し読んだら帰るので、受付業務に戻って下さい」
「えっ、私は受付ではないですよ。 普通にお客さんです。 常連ですけどね」
マジか。
図書館で働く女の人のイメージピッタリの人なのに。
「え〜と、親切なんだね。 俺はリュウ、 名前聞いてもいい?」
「リトアーヌ・ディプ・リシファと申します。 17歳です。 リュウ君は学生ですか?」
「俺は15歳、学生じゃないよ」
ゴールタールも学校があるのか……
「お、大人っぽく見えますね。 同じ年くらいと思っちゃった」
大人な男、それが僕!
「それよりリシファさんでいい? 名前が長いのは何で?」
「え…… あ、名前は、父の家系…… すいません、貴族なのです。 貴族街の図書館は小さくて飽きちゃって……」
こんな親切で偉そうじゃない貴族なんているんだ。
「そうなんだ。 本が好きなんだね」
「はい! リュウ君も好きだよね、本。 ふふ、私は図書館の中では、自由でいられるんだ〜」
いい笑顔…… さっきからずっとニコニコしてるし、少しレミアと雰囲気が被る……
リシファ…… 本好きのメガネっ子。
「じゃあ、無詠唱の事は知らないんだ」
「はい、もう500年も前に絶滅した種族ですからね。 私が知っているのは、長寿で300年の寿命があった。 怒ると般若のように変身した。 見た目は人間に近かった。 くらいですね。 でも、間違って伝わっている事もあると思いますよ」
さ、300年……
でも竜族も200年の寿命があるからな。
「リシファさん、凄く参考になった。 ありがとう」
「ふふふ、リュウ君って、不思議な子ですね。 それに貴族と分かっても、全く態度を変えない人。 私は良いと思います」
本日2度目の不思議な子。
絶対、ラリィの方が不思議な子だと、俺は思う。
まぁそれはいい、情報を整理しろ。
俺の無詠唱のスキルから、ほぼ、俺の爺さんか婆さんが無詠唱種族だった。 ……しかも父方の。
父親が無詠唱種族の可能性は、ない訳じゃないけど、兄がそれを見落とすとは思えない。
レイモンでもずっと昔に絶滅したと言われていた。
だけど、少なくとも60年前には生きていた。
父親の年齢は分からないけど、生きていたら60歳にはなってないはず。
つまり確実に60年前には絶滅していなかったけど、絶滅したと思わせていた。
理由は分からない。
もしかして……
レイモンの亜人国の曾祖父だっけ?は、無詠唱だったとソマルさんが言っていた。
名前を忘れたので、仮の名前を「鈴木 正夫」にしよう。
正夫は退屈な日々を送っていた……
亜人国の王を引退して何百年経ったのか。
今の王は孫だ。 ……もう自分より爺いだけど。
そんな正夫の楽しみは人間国に忍び込み、遊んでくることだ。
何と言っても戦争中なのでスリルがある。
しかしある日、人間国に忍び込んだ正夫は獣人に襲われていた人間を、見過ごすことが出来ずに助けてしまう。
「ハァ、ハァ、だ、大丈夫かい?」
そう言って、その女性を見た時に、正夫は年甲斐もなく一目惚れしてしまう。
「貴女の名前は?」
「なな、です。 貴方は?」
「鈴木 正夫と申します」
これが俺の爺さんと婆さんの出会いだ(多分)。
人間の3倍の寿命がある正夫は、性欲もちょっぴり多めの4倍あった。
そう、爺さんは頑張ったのだ……
そこから、俺の父さん、兄、俺へと繋がる。
そう、俺は……
1歩か2歩間違えれば……
本物の……
王子様……




